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【HERO X × JETRO】大型ロボット操縦ももはやラジコン並みに!? AIとロボットが生み出す安全

宮本さおり

JETROが出展支援する、世界最大のテクノロジー見本市「CES」に参加した注目企業に本誌編集長・杉原行里が訪問。遠隔操作のできる災害対策用ロボットや、指を触れずに操作ができるタッチパネルを開発し、人々の安心と安全を守ろうとする会社、知能技術株式会社だ。最新のAI技術を駆使したプロダクトで、日本の社会をどう変えるのか挑戦をはじめている同社。社会課題に直接アプローチする同社の活動について、代表取締役の大津良司氏にお話をうかがった。

非接触でタッチパネル操作ができる
「UbiMouse」

杉原:御社はCES 2021の日本パビリオンに出展されましたが、いかがでしたか?

大津:今回、二つの製品を出展しました。1つは空中で指を動かすことによってタッチパネルに触れることができるもの、もう1つはロボットが自由に動き回れるものです。今回はオンライン開催でしたが、二製品とも実際の展示場で触れてもらうようなプロダクトなので、見せ方という意味では難しかったです。ただ、私も今まで海外のメディアには何度か露出をしてきたのですが、その中ではやはり非常に充実しているなと感じましたし、日本の企業さんからも問い合わせがありました。

杉原:タッチパネルのものは、「UbiMouse(ユビマウス)」ですか?

大津:そうです。「UbiMouse」が登録されている商標です。

杉原:簡潔に言うと、どういうものなのでしょうか?

大津:大きく分けると二つの仕組みがあって、1つは映像を見て、カメラがまさしく「指」を認識することです。例えばパソコンやタブレットやスマホであれば、すでにカメラが内蔵されているので、それを使ってAIが指の一番先の部分がどこにあるか、さらにモーションも認識します。カメラが付いていないものは、後付けのWEBカメラを付けていただければ、非接触が実現する仕組みです。

杉原:どのカメラでも稼働認識やモーション認識ができるアプリケーションを開発しているということですよね。

大津:はい。パソコンやタブレットは、それぞれ画面のサイズが違いますし、同じ15インチでも縦横比や解像度が違いますが、それも自動で認識して、デバイスに合った形のセットをして使えます。

杉原:よくSF映画であるフューチャービデオみたいな操作ができるということですね。まさに『アイアンマン』の世界観ですね!!笑。

タッチパネルに触れることなく空中で操作ができる「UbiMouse」。

大津:おっしゃるとおり、どこでも誰でも簡単に空中操作ができます。

杉原:カメラがあればできるとなると、導入障壁はかなり低いと思うのですが。

大津:カメラを使うシステムはサブスクモデルで月5000円くらいです。ただ、カメラに近づきすぎると上手くいかないなど、操作に慣れが必要という意味では、まだまだ普及のための努力がいるなと。もう1つの仕組みは、実際にハードウェアを付けるやり方で、スクリーンのような光センサーを装置に着けるタイプです。1台数万円なので、コストが障壁だと思います。

杉原:コロナ禍では非接触で衛生的という点にかなりフォーカスされると思うのですが、現状ではどのようなところに「UbiMouse」の技術が使用されているのですか?

大津:一番有名なところでは、くら寿司(回転寿司チェーン)です。まだ一部店舗しか入っていませんが、今年中には全店舗、2000台導入の予定で進めていただいています。くら寿司はカメラ型ではなく、スクリーン型ですね。そのほかには、スーパーマーケットのセルフレジや、まさしくコロナ患者を受け入れている病院の自動会計機などでも使われています。

杉原:銀行のATMにはすぐに活用されそうですね。セキュリティ的にも今はカバーで隠していますが、非接触であれば必要ないですし、僕としては、ATMで知らない人が触った後に触れるのがどうも苦手なので、そこもカバーできる。

大津:そう、そこです。我々が開発をはじめたきっかけもその点にありました。我々は2019年くらいから開発を始めたのですが、杉原さんと同じように、ATMや回転寿司のタッチパネルに不特定多数が触わるのがイヤだと思ったことがきっかけなんです。今はコロナですが、当時はインフルエンザも気になりました。そこで、空中でやればいいのではないかと考えたのです。ですが、銀行のタッチパネルについては、キャッシュレス化の流れの中で、銀行側がATMにはあまり新しいことを求めていない感触を受けます。

杉原:なるほど。今、コンペティターは多いんですか?

大津:カメラについてはもうすぐ特許になりますので、そこは抑えられているのではないかと思います。かたやスクリーンのものは、様々な所が出し始めています。

杉原:でも、デバイスを取り付けるとなると、みなさん障壁が高くなる。そうなると、やはりカメラ機能を最大限生かす前者のほうが可能性は高そうですね。

大津:我々もそう思っています。アプリケーションの広がりもあるので、そこに期待をしています。「UbiMouse」に対する我々の提案は二つあって、1つは非常に衛生的な世界を作ること。もう1つは、パソコンの世界に奥行きを作ることです。パソコンというのは、二十数年前にマッキントッシュがマウスとキーボードで操作できるようにした時代から、全く変わっていません。画面自体はガラス面でフラットで奥行きがないですよね? でも、「UbiMouse」は三次元で色々なことができて、中に突っ込むとか、速度を見るとか、モーションを作るとか、様々なことができるんです。

マスター/スレーブで現場のロボットを動かす

杉原:2007年に会社を創設された時は、まだAIはディープラーニングの域ではないですよね。どんなきっかけで会社を設立されたのですか?

大津:私はもともと富士通に勤めていて、その後、起業をしました。当時は災害対策向けに、建設機械をロボットにする仕事をずっとやっていましたが、大阪のロボット産業の活性化のために、経済産業省と大阪市から招聘を受けたのがきっかけです。

杉原:御社の消防用無人ロボットは、とても面白いですね。僕もシリコンバレーからエンタメ系のメガボッツというロボットを企業譲渡で持ってきているんです。無人化というのはロボットを遠隔操作できるということですよね。

ラジコンを操縦するように手元のコントローラーを動かすだけで重機を動かすことが可能に。操縦席の必要性もなくなるため、重機のデザインも変えられる可能性もある。

大津:ええ。よくご存じかと思いますが、オートノマスのロボットって全然賢くなくて、一回教えたらその通りに走るだけですよね。

杉原:SLAM (自己位置推定とマッピングの同時実行)の技術を使った位置情報だけですよね。

大津:おっしゃる通りです。そうすると周辺の状況が変わったら二度と走れませんとなります。我々もSLAM型自動清掃ロボットなども作ったのですが、このままでは先行きがないと思い、やり方を変えたんです。例えば天井にカメラが1つ付けて、そのカメラがフロア全体を見渡すと。その見渡した画像を見て、AIが「こう動かすのがベストなルート」というのを決めて、モノを運ぶというロボットを作ったんです。

杉原:マスター/スレーブ(*1)ということですよね。

(*1)複数の機器や装置、ソフトウェア、システムなどが連携して動作する際に、一つが管理・制御する側(マスター)、残りが制御される側(スレーブ)、という役割分担を行う方式

大津:そうです。マスターが本来人間だったところが、AIに代わったということです。

杉原:すごい。これ、導入はされているんですか?

大津:徐々に進んでいます。このシステムのいい点はいくつかあって、1つはご指摘の通りマスター/スレーブなので、スレーブ側が全く賢くなくてもいいんです。無線で操作できるものであれば、子どものラジコンカーでもいいんですよ。小さなおもちゃから建設機械まで全部動かせて、実際に建設機械がこれで動いています。

杉原:確かに。制御の部分をしっかりAIでコントロールすればいいんですよね。

大津:マスターがAIなので、人はそこに介在しなくていい。逆に色々なルートを作りたい時は、パソコンの画面を見ながらマウスでクリックしてルートを作ることもできます。それから、パソコンで操作できるということは、リモートで動かすことができるから、例えば物流や建設などの3Kと言われて人材が集まらない世界がどんどん変わってくると思っています。

杉原:あくまでも今プロダクトアウトしているのが建設機械ですが、何にでも応用できますよね?

大津:なんでもいいんです。例えば、今は物流倉庫の中で動くロボットについて、大手の物流企業さんと検討しています。

杉原:お話を聞くと、日本人の社会課題の一つである災害、被災した時にどう支援するかというのにも、すごく有効的だと思うのですが、例えば逃げる時とかもうまく遠隔でできそうですよね。

大津:そうですね。自治体への導入は現状ないのですが、今、多くのプラントが老朽化しているので、いつ災害が起こるかわからない。それで、ガス会社さんとやっているのは、1日三回、6時間かけて人が点検している所を、ロボットがグルグル回って点検をすると。スラムのようにただ動くだけではないので、止めて、特定の場所を見に行かせようと思ったら、マウスで操作するということも可能です。

社長業は毎日トライアルで楽しい!?

杉原:この対談で様々な方にインタビューさせていただいているのですが、これから社長になりたい、起業したいという方に一言あればお願いします。

大津:私もサラリーマンをやって、そのあと自分で会社を作りました。サラリーマンは、すごく狭い範囲のスペシャリストでいれば定年まで勤められますが、やはり社長はオールラウンドプレイヤーで様々なことを知らないといけないので、すごく人間が大きくなります。それと、自分でリスクを負うので、何をやってもいいんです。これまで自分では実現できないと思ったことを徐々に実現できるようになるのが社長業だと思います。あとは、すぐにポッと売れるわけではないので、毎日失敗しながら考えているのが楽しいです。

杉原:最後に、これから御社が向かう未来はどんな未来でしょうか?

大津:もともと我々は、ロボットやAIを使って社会課題の解決や、人の命を守ること、最近の言い方ですとSDGsの実現が目標でした。今後も同じように、社会のために役立っていければいいなと思います。

大津良司(おおつ・りょうじ)
博士(生命医科学)。富士通株式会社にて核融合システム開発等を経て1995年阪神淡路大震災を契機に「社会に直接貢献できるもの作り」をコンセプトに、災害対策ロボットなどを開発する株式会社新社会システム研究所を設立。2007年、経済産業省・大阪市からの招聘を受け、ロボットとAIを開発する知能技術株式会社を大阪市に設立。2008年、横浜国立大学の画像処理シーズを事業化するベンチャーである株式会社マシンインテリジェントを設立。

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(text: 宮本さおり)

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義足の裏にも、ブリヂストンあり!“接地を科学する”技術をスポーツのために【2020東京を支える企業】

中村竜也 -R.G.C

世界最大手のタイヤメーカーとして、創業より87年の歴史を誇るブリヂストンが、2017年「チームブリヂストン ジャパン」(以下、チームブリヂストン)を発足した。様々な困難と向き合い、夢に向かって挑戦し続ける人々の旅を支えるという思いを込め、このメッセージを体現する萩野公介選手(競泳)、スマイルジャパン(女子アイスホッケー)らオリンピックを目指すアスリート、谷真海選手(パラトライアスロン)や田中愛美選手(車いすテニス)らパラアスリートをアンバサダーに任命。さらに、彼らの挑戦を長きにわたり培った技術を活かして支援している。そして、その先へと繋げるための活動とは一体どのようなものなのだろうか?

ワールドワイドオリンピックパートナー、東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナーとして、選手たちの支援を行っているチームブリヂストンであるが、主にどのような活動をしているのかがまず気になるところ。

「具体的には、IOC(国際オリンピック委員会)のワールドワイドオリンピックパートナー、東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナーとして、東京2020に向けて大会の開催を支援し、また国内の機運を高めようという活動を行っています。例えばその一環として、オリンピアンやパラアスリートに当社の拠点や技術センターに来ていただき、子供達が彼らと一緒にスポーツを体験するイベントを開催しています。多くの方にオリンピックやパラリンピックへの理解を深めてもらう良い機会となっています。

また、ブリヂストンの従業員にパラリンピックを目指す国内トップアスリートがいます。彼らはチームブリヂストンのブランドアンバサダーとして、当社が掲げるメッセージ「CHASE・YOUR・DREAM」をプロモートしてもらっています。アスリートやパラアスリートの活動は、主に東京2020に向けたオリンピック・パラリンピックのマーケティング活動となっています

企業として、どのように社会に貢献出来るかを、常に考えている広いビジョンが、活動から伺える。そしてもう一つは、アスリートを技術面でサポートする活動だという。

「会社としてのコア技術を活かし新しいことに繋げることが出来ないか、というのを常に探し出すことを前提に、世の中の困りごとが解決できたらなという思いで活動しています。その中で、パラアスリートと話す機会をいただいたことで、パラアスリートの用具に関する不便さを実感し、この取り組みが始まりました」と話してくれたのは、ブリヂストン イノベーション本部の小平美帆さん。

どんな路面でも安心して走らせたいという思い

「そこでの具体的な活動内容は主に選手たちを技術面からサポートするということ。たとえば、パラトライアスロンの秦由加子選手だと、自転車の供給はもちろんなのですが、使用している義足のソール部分も開発させていただいています」。ソールは、地面とのインターフェイスとなる最も重要な箇所。一体どのような視点から開発が進められているのだろうか。

「ソール部に関しては、二つの視点から取り組んでいます。まずは、ゴムや高分子複合材というものを扱う技術がブリヂストンにはあるということ。プラス、タイヤを開発するときに重要になってくる接地という概念。この二つに通ずる部分から我々が持っている技術として何か出来ないかというところを軸に、ソールの開発をしています」

そもそもトライアスロンは、水泳、自転車、長距離走の三つの種目で一つの競技として成り立っている。それぞれ全く違う競技だけに、一つのソールを付けた義足だけで行うのは難しいと感じるが、実際はいかに。

秦選手の場合は、自転車と長距離走で義足を使い分けています。その中でも私たちが関わっているのは、水泳から自転車に乗るところまでに装着する義足と、長距離走の義足です」

開発中の義足ソール(プロトタイプ)。

普段当たり前のように歩いている我々が接地という概念を気にするはずがないのだが、小平さんの話を聞かせていただき、これだけ地面と接する部分がアスリートやパラアスリートには大切なのかということを痛感した。そこには、世界各地どんな路面でも安心して走ってもらいたいという願いが、原動力として確実に存在している。

選手たちとの連携や
コミュニケーションが開発を進める

「やはり、開発するにあたり重要なのは、選手がどんなことに困っているのかを的確に把握すること。その上で練習や試合の場に足を運び、選手からのフィードバックを分析して開発につなげていくという地道な作業が重要となってきます。そして、選手たちの意見をどう科学的に組み立てていくということが、私たちにとっても思ってた以上に新しい分野で、日々学びながら私たちも選手と一緒に成長させていただいています」

選手をサポートするには、パートナーとして互いを理解し信頼関係を築くことが重要なのがよく伝わった。ではそもそもどんな出会いから、チームブリヂストンの選手達と繋がっていったのか。
「通常は何のコネクションも無いところから私たちがコンタクトを取り、ヒアリングをさせていただく形でチームブリヂストンに加入していただいたのですが、秦選手に関してはちょっと特殊で、ブリヂストンのグループ会社であるブリヂストンサイクルが自転車のサポートを行っていた選手というのがたまたまマッチした珍しいケースです」

これだけの大企業が、草の根運動的な動きで選手たちと繋がっていったのかと思うと、頭が下がる思いになる。

夢を追いかける人をサポート

「また、チームブリヂストンは、いわゆる実業団のチームとは違う位置付けで、メンバーやチームを応援してくれている皆さんがいて成立しているチームです。端的に言うと意識の共有。その核に、“CHASE YOUR DREAM”というメインテーマが存在しているわけです」

小さな技術の種を、世界レベルまで育て上げてきたブリヂストンだからできる社会貢献の方法。彼らが見据えるその先には、進化とともに開く明るい未来が常に存在しているのだろう。今後もHERO Xは、チームブリヂストンの動向に注目していきたい。

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 河村香奈子)

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