テクノロジー TECHNOLOGY

患者も医師も負担軽減!自動採血ロボット登場

Yuka Shingai

検査や健診時、採血が一度で成功せず、やり直しで気まずい思いをしたことのある人は少なくないだろう。つい先ごろ開発された自動採血ロボットは、患者だけでなく臨床医の負担やコストダウンにも大きく寄与してくれる予感大だ。

採血や点滴における静脈穿刺(針を刺す行為)は医療的な手順としては最もポピュラーで、その件数は米国内において年間14億回にものぼるのだという。一方で、静脈が目視で確認できない患者の場合は27%、触診できない患者の場合は40%、やせ細っている患者の場合は60%と、臨床医が静脈穿刺に失敗してしまう確率についての研究結果も発表されている。

採血の失敗が度重なると、静脈炎や血栓症、感染症を引き起こす可能性が上昇するうえ、それによってより太い静脈や動脈への穿刺をせざるを得ない状況となれば、リスクだけでなくコストも増大する。例えば穿刺に1時間かかると想定しスタッフを増員すれば、人件費だけで年間40億ドルかさむなど、採血のスピード感がもたらす影響範囲は多方面にわたるのだという。

ラトガーズ・ニュージャージー州立大学の生体医療工学の修士で、研究チームのリーダーでもあるJosh Leipheimer氏が「患者が不必要な合併症や痛みで苦しまなくていいように、迅速に、安全に、そして安心感を持って血液を採取できるようになります」と語る本デバイスは、静脈への針の穿刺を行う超音波画像診断ロボットと、血液サンプルを扱うモジュール、そして遠心分離を利用した分析機器から構成されているもの。

31人の患者で採血を試してみたところ87%が成功、この数字は臨床での標準を満たしているそうだ。静脈を探し当てやすい患者に対しては成功率97%と上々な様子で、なかなか発見できない静脈へのアクセス向上ができるようデバイスの改善を検討中とのこと。
研究で得られたデータはヘルスケアロボットの人工知能としても活用する予定だという。

病院やクリニック内はもちろん、ベッドサイドや救急車、救急処置室などでも利用できることもデバイス化のメリットのひとつ。

自動採血が常識となる未来はすぐそこまで来ているかもしれない。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/IpdTeGPruFA

(text: Yuka Shingai)

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ルーク・スカイウォーカーのあの右腕が現実に!? 最先端義手「ルーク アームス」の実力

長谷川茂雄

米国防衛省高等計画局(DARPA)が主導するプロジェクトの一環で、上腕を切断した人向けのロボット義手が実用化。モビウス・バイオニクス(Mobius Bionics)社が量産を担当した最先端義手は「ルーク(LUKE) アームス」と名付けられ、国立ウォルター・リード軍病院に2セットが寄贈された。LUKEとは、Life Under Kinetic Evolutionの略だが、世界中の誰もが知っているSF映画『スター・ウォーズ』の主人公、ルーク・スカイウォーカーの名にちなんでいるという。つまり、彼が劇中で装着している高性能な義手をイメージしているのだ。その驚くべき機能とプロダクトデザインに迫る。

生活の質を飛躍的に向上させる繊細な動きが可能に

1980年に公開されたSF映画の代名詞『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』で、主人公のルーク・スカイウォーカーは、宿敵のダース・ベイダーに右腕を切り落とされる。それ以後、劇中の彼は高性能の義手を装着するのだが、約40年前には空想でしかなかった繊細な動きをする高性能義手は、もはや現実のものとなりつつある。

DARPAは、上腕を切断した人向けのロボット義手を作るべく2006年にプロジェクトを発足させた。開発を担ったのは、パーソナルモビリティー「セグウェイ」を発明したディーン・カーメン氏が率いるDEKAリサーチ&デベロップメント。DARPAと復員軍人局(VA)等の協力を得て、より細やかで自然に近い動きをする義手を目指したという。

完成プロダクトは「ルーク アームス」と名付けられ、モビウス・バイオニクス社により量産を開始。2014年には米食品医薬品局(FDA)から医療機器の承認を受けた。そんな流れを経て、2017年、ついに軍病院に2セットが納品され、具体的な実用が始まった。

バッテリーで駆動する本体は、関節に該当する部分が最大10軸あり、それらは同時に作動させることが可能だ。腕を頭の上まで持ち上げたり、背中に持っていくこともできるため、ユーザーが日常生活でできるパフォーマンスの幅は飛躍的に広がる。

さらに、力加減をコントロールするためのセンサーが組み込まれているため、ミルクをコップに注いだり、ぶどうをつまんだり、というような繊細な動きも可能だ。

そんな「ルーク アームス」の操作は、切断された部位の皮膚に調節接触するソケットの電極から筋電位を取り込む方式のほかに、足の甲の動きを無線でアーム側に送信する方式も選択できる。加えて、重量やサイズ感は、一般的な成人男性の腕にほぼ近づけているため、ユーザーにも広く普及することが期待される。

スター・ウォーズで描かれた夢のテクノロジーの実現へ、世界はまた1歩近づいたのだ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/hEltvQx583g

(text: 長谷川茂雄)

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