テクノロジー TECHNOLOGY

わずか19万円!?手の届く価格帯の筋電義手がイタリアからついに登場

岸 由利子 | Yuriko Kishi

昨今、筋電義手の開発における技術革新は目覚ましい。しかしその多くは極めて高額で、50,000ユーロ(約638万円)前後が相場というのが現状だ。一般に手の届く価格とはとても言えないものだが、ここに来てついに入手しやすい筋電義手が登場した。イタリアのスタートアップディベロッパー「Youbionic」が手がける3Dプリント筋電義手「Youbionic Hand」は、1,499ユーロ(約19万円)。プロトタイプの発表から約4年、低価格での提供を実現するとともに、性能もデザインも格段に進化を遂げたYoubionic Handの魅力をご紹介しよう。

ケーブルやワイヤーを必要とする義手とは違って、Youbionic Handは、付ける人の筋肉の動きに反応し、汎用マイコンボードのArduino(アルドゥイーノ)によって制御を行う。この制御システムを筋電義手で実現させたことが、3Dプリント技術を導入したのと同じくらい、低価格化に貢献している。3Dプリント用のファイルのみなら、Youbionicのウェブサイトから簡単に入手可能だ。腕のパーツである「Youbionic Arm」が199ユーロ(約25,000円)、手のパーツ「Youbionic Hand 2018」が99ユーロ(約12,600円)といずれも筋電義手の常識を覆す破格の価格での提供となっている。

徹底的にパーツを見直し再設計されたYoubionic Handの最新モデルは、作動中の抵抗力を高めるとともに、パラメーターを修正し、強度もさらに向上させた。これによって、ものを持ち上げる、ハンドルを握るなど、ほとんどの日常の動作が可能になり、“第2の腕”として、外の世界と相互に作用することができる。

もうひとつの特徴として、モジュール性が挙げられる。指の1本ずつは独立しており、繊細な素材の物体でも握りつぶさずに、掴むことも可能。従来のモデルでは、義手の甲にあたる部分に平面を採用していたが、このモデルでは“先史時代の生物の背中”を想起させる三角形状の立体的なデザインへと進化した。

「Youbionic Armは、人間の腕を精密に復元したものです。本物の腕に取って代わることができるリアルな動作で動きます」とYoubionic創業者のフェデリコ・チッカレーゼ氏は話す。

さらなるアップデートやイノベーションの発表を予定しているが、現在のところ、まだその多くは明かせないという。2018年5月11日に公開された3D PRINT.COMのインタビューでチッカレーゼ氏は“ある計画”が進行中だと述べ、次のように説明を加えた。

「幾何学や自然の造形を日中に研究することによって得たあるアルゴリズムをYoubionicのデバイスに採用します。また(Youbionic Handに)インストールするソフトウェアの機能の実装にも、この算法を使います」

「今ちょうど、人体とジェネレイティブデザインを徹底的に研究し終えたところで、これから次のデバイスの開発に取り掛かるところです」

創業以来、着々とレベルアップを図り、わずか4年の間に、圧倒的な機能性とコストパフォーマンスを兼ね備えた筋電義手を作り上げたYoubionic。次なるお披露目の日を心待ちに、HERO Xでは今後も動向を追っていく。

[TOP動画引用元:引用元:https://www.youbionic.com/#arm

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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患者も医師も負担軽減!自動採血ロボット登場

Yuka Shingai

検査や健診時、採血が一度で成功せず、やり直しで気まずい思いをしたことのある人は少なくないだろう。つい先ごろ開発された自動採血ロボットは、患者だけでなく臨床医の負担やコストダウンにも大きく寄与してくれる予感大だ。

採血や点滴における静脈穿刺(針を刺す行為)は医療的な手順としては最もポピュラーで、その件数は米国内において年間14億回にものぼるのだという。一方で、静脈が目視で確認できない患者の場合は27%、触診できない患者の場合は40%、やせ細っている患者の場合は60%と、臨床医が静脈穿刺に失敗してしまう確率についての研究結果も発表されている。

採血の失敗が度重なると、静脈炎や血栓症、感染症を引き起こす可能性が上昇するうえ、それによってより太い静脈や動脈への穿刺をせざるを得ない状況となれば、リスクだけでなくコストも増大する。例えば穿刺に1時間かかると想定しスタッフを増員すれば、人件費だけで年間40億ドルかさむなど、採血のスピード感がもたらす影響範囲は多方面にわたるのだという。

ラトガーズ・ニュージャージー州立大学の生体医療工学の修士で、研究チームのリーダーでもあるJosh Leipheimer氏が「患者が不必要な合併症や痛みで苦しまなくていいように、迅速に、安全に、そして安心感を持って血液を採取できるようになります」と語る本デバイスは、静脈への針の穿刺を行う超音波画像診断ロボットと、血液サンプルを扱うモジュール、そして遠心分離を利用した分析機器から構成されているもの。

31人の患者で採血を試してみたところ87%が成功、この数字は臨床での標準を満たしているそうだ。静脈を探し当てやすい患者に対しては成功率97%と上々な様子で、なかなか発見できない静脈へのアクセス向上ができるようデバイスの改善を検討中とのこと。
研究で得られたデータはヘルスケアロボットの人工知能としても活用する予定だという。

病院やクリニック内はもちろん、ベッドサイドや救急車、救急処置室などでも利用できることもデバイス化のメリットのひとつ。

自動採血が常識となる未来はすぐそこまで来ているかもしれない。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/IpdTeGPruFA

(text: Yuka Shingai)

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