対談 CONVERSATION

目指すはAIの民主化。低コストAIで企業を応援したい

小泉恵里

なんとなく理解しているようで、理解していないワード、“AI”。AIをビジネスに導入しようと考えても、莫大な投資だけでなく、何をAI化するか・できるか、導入後の運用などAI導入の障壁は大きいように思われる。そんなAIの壁に一石を投じるのがトルフテクノロジーズ株式会社(以下、トルフ)だ。同社は、様々な企業に実用的なAIプロダクトの提供と、技術を生かしたコンサルティングを手がけている。さらに採用に特化した自社プロダクト「トルフAI」でも注目を集めている。「AIの民主化」を目指すCEO 高橋雄介氏、COO 川原洋佑氏、CTO 細川馨氏にお話を伺った。

プロダクト思考の専門家集団
だからできる、AIの民主化

企業の事業モデルをデジタルで変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が、コロナ禍でますます加速している。リモートワークやオンライン診断、B to Bマーケティングの分野でもイノベーションが進み、特にAI(人工知能)の活用が事業発展のために必須になるだろうと予測されている。ところが、AIなどの先端ITを活用したデジタル事業をどう立ち上げるか、推進組織をどのように構築するか、莫大なコストがかかるのではないか、と多くの企業が二の足を踏んでいるのが現実だ。

AIに対する敷居は高まり、特に中小企業や飲食店などスモールビジネスを展開する事業者にとって、AIの導入・活用は難しい状況にある。そこで、誰もが気軽にAIを!と「AIの民主化」を目指すトルフが昨今注目を浴びている。社名のトルフに込めた意味をCEO 高橋氏はこう語る。

「トリュフ(弊社では「トルフ」と呼んでいます)は、美味しいのに高価でなかなか手に届きにくい食材です。AIを含むテクノロジーも同様で、開発・導入・運用のコストや専門的な知識・スキルが要求されるため、その費用を負担できる大企業以外には手の届きにくいものとなっています。弊社では、高度な専門知識やスキルを背景に、手の届きにくかったAIやテクノロジーを、飲食店や小売店、中小企業を含む多くの皆様に活用いただきたいという想いがあり、これを、“美味しいトルフをより多くの皆さんの手元に”という意味を込めて表現しています。これは尊敬する友人が同じ名前でベーカリーを作ったストーリに着想を得てつけた名前です。」

シリコンバレーで起業経験のある高橋氏を中心とした天才頭脳メンバーが集い、AIプロダクトと活用法を提供していることがトルフテクノロジーズの強みだ。

「我々の強みは、高速でAIプロダクト化を可能にするチーム力です。社内にはAIをはじめ、データ工学・データマイニング・プログラミング言語・消費者行動心理学・UXデザイン等の専門家やボットのシナリオライター等、博士号取得者が在籍しています。研究だけにとどまらず、クライアントの課題を明らかにし、解決策を導き出し、社会の中できちんと機能し役立つプロダクトに完成させることに情熱を持っています」

お客様のニーズを製品に落とし込んでプロダクトにする、起業家的なマインドを持ったメンバーだからこそ、実用的なAIプロダクトを生み出せているのだ。

「また、弊社はAIを本筋としたコンサルティングを強みとしており、多様な領域に対してAI導入をサポートできる点も特徴だと言えます。AIチャットボットの基礎技術を多様なニーズに展開することで、企業の成長を目指しています」

誰もがAI技術の中で
快適に暮らす未来のために

AIプロダクト化だけでなく、技術的な観点から経営を支援するレンタルCTO(技術支援)事業も手がける同社。何をAI化するといいか、そのためにはどのようなプロダクトが必要か、などAI専門家の視点から経営効率化のサポートを行っている。さらに「リーンスタートアップ」という開発手法を取り入れることで、本来であれば莫大にかかる初期投資費用を低コストに抑えていることも魅力だ。

リーンスタートアップとは、短期間で初期の製品を作り、実際のお客様に使っていただきながら、修正・改良を高速で行うスタートアップ手法。

クライアントからの課題やニーズを聞き、プロダクトを開発し、使いながら修正していく。二人三脚で実際にAIを活用していくことがトルフのコンサルテーション。AI導入のハードルを下げ、大企業・中小企業問わず、活用を当たり前にしていきたいと高橋氏は語る。

「AIを使って幸せな暮らしを。AIの民主化を目指し、技術先行ではなく、UXの観点で実用的なプロダクト提供を行なっていきます。あらゆる企業の課題に対して、いかに最小限のコストで最大限の価値を出せるか、知見をどれだけ生かせるか、にフォーカスしています。そのため、AIが不要なのでは?というご提案になることも多々あります。」

飲食店採用向けAIプロダクト
「Truffle AI」

「トルフ AI」は月額5,000円~30,000円で提供しており、課金額に応じて使える機能は変わる。お試しプランでは、面設設定1件につき1,000円。多様なニーズに応えている。(※販売代理店ごとにサポート内容・料金は異なる)

企業向けにAIプロダクト開発を手掛けているトルフだが、自社のプロダクト開発・提供も行っている。そのなかで、飲食業界に旋風を巻き起こしているのが、飲食店の採用に特化したAIチャットボット「トルフAI」だ。トルフAIを開発するきっかけは、近所の飲食店の店長から「店の仕事で忙しい中、面接のスケジュール調整をするのが難しい」と聞いたことだったという。飲食店のアルバイト採用フローがいたってシンプルであることもあり、開発を進め、“採用に特化した”AIチャットボットが完成した。「AIとビジネスの間に距離があるから、その距離を縮めたい」という思いがあるからこそ、「トルフAI」とのやり取りは、まるで人間とチャットしているようなスピード感と柔軟性がある。

トルフAIのサンプル画面。応募者(黄色)の内容に対し、チャットボット(グレー)が回答。「インターネットに接続していないタイミングでもbotが機能するから会話速度が早いんです。botを開いているブラウザ側で判断して会話ができるようにしています」と川原氏。

「繰り返し頻繁に発生するシンプルな作業は、人に代わってAIがやるべきだと考えています。AIが提示した選択肢に、人間ははい、いいえを選択するだけでいい。企業側は管理画面を見に行かなくても、メールで面接スケジュールを確認できます。また、応募者側は予約メールの文面に面接日時の変更、辞退など必要なリンクが全て記載されているので、ワンクリックでアクションが起こせるところが大きな特徴です」

特定の分野に特化して開発されたからこそ、管理側にとっても、使う側にとっても、ストレスのないアプリが実現された。現在では、焼肉ライクなどで知られる人気企業ダイニングイノベーション社がトルフAIを使って、寿司業態の新店舗オープニングスタッフの採用を行なっている。

現在トルフAIは、大手グルメ予約サイトを手掛ける企業をパートナーとして、販売拡大するとともに、データ拡充のフェーズにある。今後は、基盤技術であるチャットボットを採用領域以外のニーズに対してカスタマイズし、スポーツジムや医療機関等、多様な業種への展開を目指しているようだ。

「例えば会員制のパーソナルトレーナーのノウハウをAI化できると、AIという脳みそがトレーニング手法を学び取って遠隔でのトレーニング指導が可能になる。そうすれば、会員限定ではなく3億人に届けられる。さらに翻訳することで日本人以外の生徒にもノウハウを提供できます。コスト効率が上がり、ビジネス拡大も狙えるというわけです」

誰もが知らず知らずの内にAI技術の中で快適に暮らしている、そんな世界を目指し、トルフテクノロジーズは挑戦している。

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(text: 小泉恵里)

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対談 CONVERSATION

枠から飛び出せば本当の自分に出会える!小橋賢児が「東京2020 NIPPONフェスティバル」に託す想い 前編

宇都宮弘子

東京2020大会の公式文化プログラム、日本文化を世界に発信する「東京2020 NIPPONフェスティバル」で、パラリンピック開幕直前に実施されるプログラムのクリエイティブディレクターに就任した小橋賢児氏。テーマ「共生社会の実現」に向けた小橋氏の想いと、日本人が本当のアイデンティティを見つけるためにしていくべきこととは。イベントプロデューサーとして活躍する小橋氏と『HERO X』編集長の杉原行里が語り合う。

杉原:まずは、小橋さんがクリエイティブディレクターに就任された「東京2020 NIPPONフェスティバル」についてお話を聞かせてください。

小橋:オリンピック・パラリンピックはスポーツの祭典であるとともに文化の祭典でもあるんですよね。「東京2020 NIPPONフェスティバル」は来年の4月~9月にかけて実施される東京2020オリパラの公式文化プログラムです。世界中からたくさんの人が集まる機会に日本の文化を世界に発信していこうというもので、大きく4つの取り組みを行なう予定で進められています。1つ目がプログラムのキックオフともなる「大会に向けた祝祭感」をテーマとした歌舞伎とオペラによる舞台芸術、2つ目が「東北復興」をテーマにしたプログラム、3つ目が、オリンピック開幕直前に開催される「参加と交流」のプログラム、そして4つ目が、私がクリエイティブディレクターとして関わっているパラリンピック開幕直前に開催する「共生社会の実現」に向けた “きっかけづくり” のプログラムです。

伝統・文化は変わっていく

杉原:「HERO Ⅹ RADIO」(2019.01.25放送分)にゲスト出演いただいた際の「文化というものはその時代によって変わって成長していく」という小橋さんのお話が大変印象に残っているのですが、今回の “きっかけ” というのはそこに通じるところがあるんですか?

小橋:もちろんあります。21世紀に入り情報革命が起きて世界中と繋がったことにより、みんなの中で多様な文化とか、多様な考え方というのが当たり前になってきています。しかしその一方で、目の前にある社会はあまり大きく変わっていない。そこのジレンマに多くの人が苦しんでいる気がしています。

日本人が持っている民族的な文化の “和の心”、僕はこの “和” は、調和の “和” だと思っているんです。日本人は様々なものを取り入れて調和していく力があって、元々ものすごく多様性のある文化を持っている民族のはずなのに、今は真逆に走っていて、“感じる力” や “空気を読む力” が強くなっているように感じています。さらに言うと、同調圧力が強いからか、“気にする” になってしまって、本当の自分を見い出せずにいる人が多い。自分のアイデンティティすら分からない自分が、他者を認めるのはなかなか難しいわけで、これが今の日本の姿だと思うんです。

そんな日本において、東京2020のタイミングで、日本から調和という “和” が始まっていくきっかけづくりができることは、ものすごく意味があることだなと思うんです。全てを変えられなくても、イベントがきっかけで人々が変わっていくとうことは大いにあり得ると。

杉原:特にパラリンピックの文脈は変わりましたよね。

小橋:2012年のロンドンオリンピック・パラリンピックが突破口を開いたなと思うのは、“アンリミテッド” という部分。オリンピックが終わって人々の機運が下がってきたときに、障がい者とアーティストがコラボレーションして、いろんなところでパフォーマンスやアート、演劇をやったんですよね。それまでの、障がい者をそんな風に扱ってはいけないんじゃないかっていう世の中の意識が変わって、それがパラリンピックに繋がっていった。街中で、これまで体験したことのない多様なライフスタイルや文化を感じていろんなマイノリティーを知ることで、自分もある種のマイノリティーなんだと知ることができる。そうなって初めて理解できると思うんです。

本当にそうなのか?と価値観を疑うこと

杉原:僕は、小橋さんが総合プロデュースされた「STAR ISLAND」で花火を観るまでは、花火というものがある程度の自分の想像を超えることはなかった。でも、「STAR ISLAND」で花火を観た瞬間、僕のそれを超えてしまった。これが文化の継承という新しいスタイルなんだと思ったら期待が高まりますよね。小橋さんは東京2020のオリパラを機に、自分たちの時代において何を変化させていきたいですか?

小橋: 一見、ネガティブに思われていることに対する価値観を、本当にそうなのかな?と一度疑うことで、変えていきたいですね。ネガティブに思われていることも、「誰から見るか」というだけの話ではないかと。それらはよく考えてみると特徴や個性で、もっと上手く使い合えたらいいなって思うんです。例えば、障がいを持っている人に対して、「助けてあげる」だと、完全に弱者を見る視点になってしまっていますよね。そうじゃなくて、その人が持っているものの良さを引き出せるような社会になった方がいい。

杉原:海外では、男性女性関係なく、重そうな荷物を持っている人やベビーカーの人を見かけたら、躊躇なく声をかけて手伝ったりする文化がありますよね。でも日本では、知らない人に声をかけるとなんか変な空気感になってしまうことがあるから声をかけたくてもかけられない。“調和” と、“空気を読む” が混在してしまった結果ですよね。

小橋:結局、感じてしまうが故に、先に想像して行動するのをやめてしまう。多様な生き方や文化を一気に知ることができる東京2020は、きっと二度とないチャンスですよね。世界中から否応なく人がいっぱい来て、ものすごい数のイベントが一気に開催される。こういった、ある意味での “カオス感” って必要だなと思んです。普段触れ合えない人たちと触れ合うことによって、自分の概念やリミッターが外れる。そうなって初めて理解できることがあると思います。例えば音楽フェスって、みんな既知のアーティストを目的に行くんですけど、気づいたら全然知らなかったアーティストに出会って、そこから価値観が変わっていくことがある。そんな風になったらいいなって思うんです。

後編につづく

小橋賢児(Kenji Kohashi)
LeaR株式会社 代表取締役/クリエイティブディレクター 1979年東京都生まれ。88年に俳優としてデビューし、NHK朝の連続テレビ小説『ちゅらさん』など数多くの人気ドラマに出演。2007年に芸能活動を休止。世界中を旅しながらインスパイアを受け映画やイベント製作を始める。12年、長編映画「DON’T STOP!」で映画監督デビュー。同映画がSKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティ アワードとSKIPシティDシネマプロジェクトをW受賞。また『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任。 『STAR ISLAND』はシンガポール政府観光局後援のもと、シンガポールの国を代表するカウントダウンイベントとなった。 また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会主催の東京2020 NIPPONフェスティバルのクリエイティブディレクターにも就任したり、キッズパークPuChuをプロデュースするなど世界規模のイベントや都市開発などの企画運営にも携わる。

Born August 19th, 1979 and raised in Tokyo. At the age of 8, he started his career as an actor and had played roles in various dramas, films and stages. He quitted his acting career in 2007 and travelled the world. Experiences through the journey inspired him and eventually started making films and organizing events. In 2012, he made his first film, DON’T STOP, which was awarded two prizes at SKIP CITY INTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL. In the event career as creative director, He has acted as Creative director at ULTRA JAPAN and General Producer at STAR ISLAND. Not only the worldwide scale events, he produces PR events and urban development

(text: 宇都宮弘子)

(photo: 増元幸司)

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