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間違いなく世界初!「義足の図書館」が遂にオープン

中村竜也 -R.G.C

義足歩行者が自らに合った競技用義足(=板バネ)やひざ継手を試せる場所があったらという思いから、Xiborgを率いるエンジニア・遠藤謙さんや、アスリート、義肢装具士たちが中心となり、クラウドファンディングサービス“Ready for”で資金を募った「義足の図書館」が遂に、2017年10月15日、新豊洲Brilliaランニングスタジアム内にオープンした。

新豊洲Brilliaランニングスタジアム。

1本あたり約20~60万円と高価な板バネと、競技用義足の装着に必要なひざ継手などの部品を豊富に取り揃え、本棚のように並んでいる。また壁には、今回この「義足の図書館」に出資した方々の名前が全て記載してある。

セレモニーは遠藤謙さんから「義足の図書館」の利用の仕方や、今後の展開への思いを込めた挨拶から始まった。
「多くの義足ユーザーの方々に、もう一度走る喜びを与えられたらなという気持ちはもちろんですが、それだけではなく、多くの方たちの希望へとつながる場所としてや、義肢装具士さんたちの情報交換の場として活用していただけたらいいなと思っています」。

 山下千絵選手が、競技用義足を実際に装着し、ランニングのデモンストレーションを行った。今までは、歩行用義足でテニスを続けてきた彼女だが、競技用義足と出会ったことで、もう一度走る喜びを実感したという。

佐藤圭太選手や、「義足の図書館」を作るきっかけにもなった斎藤暖太(はるた)くんや義肢装具士の沖野敦郎さんが参加し、出資者からの質疑応答も行われた。

気になる利用方法は、1回500円と施設使用料を払い、Ottobock社(ドイツ製)とOssur社(アイスランド製)の子供用から大人用の計24本の中から選び着用。

基本的には義肢装具士は利用者自身で装着しなければならないので、自分で出来ない方は、義肢装具士の同伴が必要となってくる。ただ、それが難しい方のために、月一回開催している“Monthly Run”に参加すれば、装着の仕方を学べるとのこと。

多くの人に走る喜びを与えたいという思いが、この世界初となる「義足の図書館」を完成させた。ここをきっかけに遠藤さんは今後、義足の移動図書館のようなこともやってみたいとも話している。こんな素敵な笑顔になれる場所が、もっともっと増えていくことを願ってやまない。

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 河村香奈子)

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視力を失ったスケートボーダーが再び宙を舞う!「PROJECT BISHOP」に迫る

Yuka Shingai

Not Impossible Labsは「HELP ONE,HELP MANY」の哲学のもと、ありとあらゆる社会問題に対してテクノロジーでのソリューションを提供するプロフェッショナルチームだ。2018年の夏に始動した「PROJECT BISHOP」では、視力を失ったスケートボーダーの復帰を実現した。「永遠に不可能なものなんてない」と謳う彼らのプロジェクトに迫ってみよう。

スケートボーダーのJustin Bishopは25歳の時に網膜色素変性を患い、左目の視力を完全に失い、右目は網膜剥離となった。目の端で物の形と影のみを感じることはできるが、視力を失ったことで悲しみに暮れたJustinは、しばらくスケートボードから遠ざかることになった。

そんな彼を再びスケートボードの世界へ連れ戻したのはNot Impossible Labsのチームメンバーで、自身もスケートボーダーであるJovahn Bergeronだった。Not Impossible Labsの創設者、Mick Ebeling氏が不条理だと感じるものや、不条理な想いをしている人に向けて立ち上げた「Abusurdity Project」のアイデアを集める中で、Jovahnは「Justinが、かつてのようにスケートボード界にカムバックできるような解決策を生み出したい」と発案し、Justinにプロジェクトへの参画を持ちかけた。

視力を失ったJustinがスケートボードをするためには、遠近感を伝え、自分のいる環境を理解する必要がある。そこでプロジェクトが作り上げたのは、ビープ音とともに方向指示を行うビームを出す小さなスピーカーだ。Mickいわく「Justinのスケートボードはすごくスピード感があってあっという間に移動してしまうから、高速かつ正確にナビゲートできる必要があった」と開発の苦労について語っている。

またJustinも「音がどのように聞こえるかで自分がスケートしている様子が頭の中に思い浮かぶようになったよ。サウンドスケープ(音の風景)って感じだね。ただ、Not Impossibleは僕が再び宙を舞うテクノロジーを作り出したわけだから、それはすごく危険なことだと思うけど」とスケートボードの世界に戻った喜びを感じているようだ。当該のメンバーは「このプロジェクトの成果はテクノロジーではなくて、Justin本人だと思う。彼がエキサイティングなことをどんどん導いてくれたからね」と語る。

「HELP ONE,HELP MANY」が示すように、世界を大きく動かすのは、たったひとりの変化なのかもしれない。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/1NFXAAvVpUE

(text: Yuka Shingai)

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