テクノロジー TECHNOLOGY

究極の二脚ロボットを研究する「Amber lab」が、ロボット義足を開発中!

長谷川茂雄

“実世界で生活できるロボット”を目指し、二脚ロボットの研究を続けるカリフォルニア工科大学の研究所「Amber lab」。彼らは、ロボットを転ばせようとするなどして負荷をかけることで、ロボットの性能を高め進化させてきた。何度も繰り返すそんな実験は、ロボットの歩行に関する新しいアルゴリズムを最適化し、“どんな環境でも二足歩行できるロボット”を具現化しようとしている。さらにそこで得た知見は、ロボット義足の開発にも適用されているという。ロボットの歩き方の進化は、同時に義足ユーザーのあらゆる可能性も高めているのだ。

ロボットの可能性は、義足の可能性でもある

カリフォルニア工科大学にあるAmber(Advanced Mechanical Bipedal Experimental Robotics)Labが目指しているのは、人間が取り組めることであれば、なんでもできるというロボットの開発だ。

同ラボのロボット研究家、アーロン・エイムズ氏は、自分たちが作るロボットは、「芝生も砂利道も、雪や氷の上も歩けるものにしなければならない」と明言する。そのために歩行を数学的に理解し、常に改良を加えることで「ロボットを人間のように、効率的かつダイナミックに、そしてスムーズに歩けるようする」という。

それを実現させるために同氏が率いるチームは、トレッドミル(ウォーキングマシーン)の動きに合わせて歩くロボットを何度も転ばせようとしたりして、常にアルゴリズムを最適化している。ちなみに、歩行するロボットを転ばせようとすることは、「かく乱試験」と呼ばれる。

そうやって得られた数値をもとに、例えばミシガン大学では、ロボットに火の中を歩かせたり、セグウェイに乗せたりと、さらに多様な実験も行われているという。

ロボットにあらゆる負荷を与え、構造化されていない未知の環境でいかに機能させるかを模索する。そうやって人間のような歩行に近づけていくのだ。

さらにAmber Labでは、ジャンプする動作も追求するために、ピストンのように上下に跳ねるロボットの実験も盛んに行われている。それらの試みは、まず単純なロボットで行われ、得られた知見をもとに、より複雑なロボットへと応用されていく。そういった作業を繰り返すことで、ロボットの性能に何が足りないのかが明確化される。

さて、これらのロボットで獲得した成果は、電池式のロボット義足“Ampro”の開発にもすべて適用されているという。

アーロン氏は、「ロボットで目指していることは、すべて義足でも実現したいと思っている」と語る。“Ampro”は膝と足首にモーターが入っていて、バネが組み合わされた画期的なプロダクト。ユーザーの歩いている場所の状況をセンサーで検知して、必要な場合はモーターを作動させる。そしてユーザーと同期させることで動かすという仕組みだ。

「義足を装着した人が走ったり、サッカーをしたり、ジャンプをしたりできるようにする」。Amber Labの開発実験から、ロボットだけでなく、義足の新しい未来も見えてきた。

(text: 長谷川茂雄)

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テクノロジー TECHNOLOGY

「妊活」「不妊治療」にAIとセンシングが使われる時代へ!悩めるカップルに最新技術が貢献

HERO X 編集部

日本の夫婦の10組に1組は不妊に悩んでいるといわれている。不妊治療は保険適用されず、経済的な負担も大きいことが社会問題となっている。政府もこれを重く見て、公的保険適用の拡充を検討しているが、年末までには不妊治療への助成額・条件等の見直しを決定する方針だ。そんな中、不妊治療に貢献するテクノロジーが注目を浴び始めている。新しい技術が少子化問題の光明になるか!?

センシング技術を不妊治療に応用
良好な精子の抽出を自動化

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この装置では、熟練した胚培養士の「良好な精子像」データと、AIによるディープラーニングを組み合わせて、採取した精子の中から良好な精子を判別する。実はAIによる自動判別の技術自体は他の研究チームも開発しているのだが、今回の技術が新しいのは、選別した精子を素早く抽出できること。JOMDDでは2020年中に市場に出したいと考えているという。

今まで男性側の不妊にアプローチするのは難しいとされており、男性側が治療をいやがるケースも耳にする。しかし、自動抽出という手段が広まれば、治療への心理的なハードルも下がっていくのではないだろうか。「子どもが欲しい」と願う夫婦にとって、新技術が妊活を支えることを期待したい。

妊活にテクノロジーで光!
ウェアラブル計測器「Ava」

肉体的な負担も多い不妊治療。できれば、無理せずに継続していけることが理想だ。「妊活」自体がストレスになり、妊娠を妨げているケースもあるという。不妊治療には、まず女性側の基礎体温がベースになるが、これがなかなか厄介。起きて活動する前に検温しなくてはならず、正確な体温が測れないこともある。

アメリカやスイスに会社を置くAva Scienceが開発したウェアラブル計測器「Ava(エイバ)」は、そんな悩みを解決してくれるアイテムだ。シリコン製のブレスレットを装着すれば、体温、脈拍、呼吸数、心拍変動、組織の毛細血管系の血流や睡眠リズム、発汗量などがセンシングできる。同社によれば、月経周期が安定している人ならば、妊娠可能な期間についてもかなり信頼できるデータが取れるという。

あまり知られていないことだが、実は妊娠可能な日数は、1回の生理周期の中でたった6日間。従来の排卵日検査薬ではそのうち2日間ほどしか検知できなかったが、同社の臨床検査では、妊娠可能日を正解率89%で平均5.3日検出できたという。

「Ava」は毎日、寝る前に女性が腕につけるだけで済む。計測されたデータは自動でスマホに転送される。基礎体温をコツコツ測る手間が省けるだけでも、女性にはありがたい。妊活だけではなく、日々の体調管理にも役立つため、月経前症候群(PMS)のケアにも役立つ。テクノロジーの力を借りるだけで妊活のプレッシャーがほんの少しでも和らぐのなら、当事者たちにとっては朗報といえるだろう。

(text: HERO X 編集部)

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