テクノロジー TECHNOLOGY

CEATEC 2021 ONLINEからSociety 5.0の未来社会が見えてくる?

長谷川茂雄

ITやエレクトロニクス関連技術を中心にした国際展示会CEATEC(Combined Exhibition of Advanced TEChnologies)。毎年10月、幕張メッセで開催されてきたアジア最大級を誇るこの総合展は、昨年(2020年)、コロナ禍の影響でオンライン開催を余儀なくされたにもかかわらず、延べ来場者数は15万人強を記録した。その盛況ぶりからは、国内外からの注目度の高さが窺えるが、果たしてその理由はどこにあるのか? エグゼクティブプロデューサー・鹿野 清氏のお話を交えながら、次なるフェーズを迎えつつあるCEATECの新たな魅力と、そこから見え隠れする未来図を考える。

時代とともに形を変え
進化してきた展示会

前身となるエレクトロニクスショー(1964〜1999年)とCOM JAPAN(1997〜1999年)が統合して、CEATEC JAPANが始動したのは2000年。それから20年以上が経過した現在、同イベントの掲げるビジョンは、かつてのそれとは様変わりしている。鹿野氏は、そのターニングポイントは、2016年にあるという。

「CEATECは、日本の産業の移り変わりとともに成長してきた展示会ですが、2016年にそれまでのテーマとなっていたデジタル“家電” から、CPS(Cyber-Physical System)とIoT(Internet of Thing)に大きく舵を切りました。そこから特に意識をしているのが、来場者と出展者、そして出展者同士が“共創”できる場を提供するということです。少しずつですが、新たなイベントとして成長してきた自負があります」

2019年までは、毎年10月に幕張メッセにてリアル開催されていた。

昨年は、コロナ禍というこれまでにない事態に直面し、完全オンラインで開催。にもかかわらず、来場者数は15万人(延べ)、出展社数も350社を超え、これからの未来を担う学生から大手企業の役員、政府関係者まで、様々な方々の訪問があった。それはCEATECが、ユニークなアイデアや技術に出会える貴重な機会として、着実に浸透してきた表れでもある。興味深いのは、新規の出展企業が増えている点だ。

新規企業、スタートアップの
参加が目に見えて増加

「近年は、電子部品やIT関連企業の出展に限らず、建設機械メーカーやメガバンク、ゼネコンといった異分野の出展企業が増えています。しかも全体の3〜4割は、新規出展という状況です。加えて、国内外のスタートアップ企業の参画も増加傾向にあります。まだ創業して間もない企業が、大手企業に自らの技術やアイデアを訴える場として、CEATECが利用されてきている。それも年を追うごとに顕著になっています」

国内外のスタートアップ企業の参加は、まさにあらゆる“共創”が生まれる起爆剤となりうる。それが増加しているのは、CEATECにとって好ましい傾向であるが、背景には、JETRO(日本貿易振興機構)との連携がある。特に海外スタートアップの積極的な誘致活動が功を奏している。

CEATECエグゼクティブプロデューサー・鹿野 清氏

「昨年の実績で言いますと、スタートアップ企業の参加は、約170社。そのうちの海外企業は半分弱です。これまでも多かった中国、台湾、香港といった近隣アジアの出展企業に加えて、近年では欧米企業の出展も増えています。JETROとの連携で、グローバルな視点での誘致活動も確実に実を結んできました」

欧米のスタートアップ企業が、アジア進出も見据えた市場開拓、そしてアイデア交換の場としてCEATECをチョイスし始めている。その根底には、日本企業の意識の変化もあるようだ。いわゆる“オープンイノベーション”を推し進めようという動きが、ようやく日本企業にも広がってきているのだ。

日本にも浸透してきた
“オープンイノベーション”

「諸外国では、オープンイノベーションは常識化していますが、日本のITエレクトロニクス産業や家電メーカーでは、技術の“囲い込み”などの文化が根強く、それが世界から遅れを取る一因にもなっていました。ようやく近年になって、日本企業も外から柔軟に多くのものを取り入れようとする機運が高まり、積極的な企業も増えています。外に門戸を開く企業が多くなれば、必然的に提案をするスタートアップも増える。徐々にそういった流れができています」

昨年(2020年)のCEATECオンラインサイト

日本は、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く新たな社会を、“サイバー空間とフィジカル空間を融合させることで、社会課題を解決して経済発展を遂げる社会”として「Society 5.0」を掲げている。CEATECも、そんな来るべき新たな社会「Society 5.0」を見据えた展示会としての役割を掲げ、柔軟に変化を遂げているのだ。

「日本国内を見ても、大手企業のビジネス構造は、ここ5年余りで大きく変わってきたと感じています。簡単に言えば、課題解決型、すなわちソリューションを含めた製品提供が当たり前になりつつあります。CEATECも単なる製品展示というよりも、近年は、よりソリューションに重きを置いた展示スタイルへと変貌しています。オンライン開催でもインパクトのあるソリューション提案をするには何が必要か? インフラ整備も含め、いまはそこが大きな課題です」

世界中のスタートアップから
ソリューションを募集

さらにCEATEC 2021では、「Japan Challenge for Society 5.0」と称したコンテストも行われる。これは、JETROが主催し、日本の3つの社会課題(チャレンジ)を提示して、そのソリューションを世界中のスタートアップから募集するという画期的な取り組みだ。社会課題解決型ビジネスは世界的な潮流になっているが、それを日本が掲げるSociety 5.0とスマートに結びつけるべく、立ち上げられたプロジェクトだ。

「3つの社会課題は、CEATECの主催団体である、JEITA(電子情報技術産業協会)の会員企業やJETROのお客様約1000名にアンケートを実施して、特にニーズの高かったものを選んでいます。6月から7月末にかけて、スタートアップによるソリューション募集を行いました。今後、応募されたソリューションを選定して、最終的には45社ほどCEATEC 2021にご招待する予定です」

この取り組みは、まさにオープンイノベーションを体現するとともに、CEATECの活性化にも直結するとてもユニークなものだ。ちなみに、気になる3つの社会課題とは、1. 環境配慮型社会への転換、2. 労働力減少への対応・生産性向上、3. 都市・地域のバランスの取れた成長、というもの。どれも根が深い課題だが、このコンテストを通して、解決策の手がかりが見つかればという期待が膨らむ。

「Japan Challenge for Society 5.0」で募集された3つのテーマ概要。

「『Japan Challenge for Society 5.0』の募集を締め切ったところ、50を超える国・地域のスタートアップ数百社からソリューション提案がありました。このコンテストは、斬新なアイデアや技術に出会えるだけでなく、今まで交流のなかった国や地域の企業を積極的にお呼びする契機になると考えています。ここを出発点に、日本の企業や自治体との商談に結びつけられれば本望です」

オープンイノベーションの推進や、それに伴った産業構造の変化、SDGsに向けた取り組み、新型コロナウイルスの蔓延などと、ビジネススタイルや人々の価値観が大きくシフトチェンジしてきたここ数年。

それに伴い、アジア最大級を誇る総合展CEATECもその在り方を進化させてきた。よりスタートアップ企業との新しい結びつきが期待できる今年のCEATEC 2021 ONLINE(10/19〜22)では、これまでにない更なる“共創”が生まれるに違いない。

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(text: 長谷川茂雄)

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テクノロジー TECHNOLOGY

子供の“得意”を伸ばす 「DigSports」がもたらす未来

長谷川茂雄

文部科学省が昭和39年から行なっている子供の「体力・運動能力調査」によれば、昭和60年頃を境にして、子供たちの走る力、投げる力、握力といった基本的な運動能力は、全国的に低下の一途を辿っているという。また運動をする子供と、しない子供の二極化も著しいといわれる。もちろん、その原因を探り改善を図るための取り組みは、さまざま行われているが、近年注目を浴びるのは、AIやセンシングなどのテクノロジーを駆使したプロジェクトの数々だ。今回は、お手軽に、しかも楽しく子供たちの適正が診断できる「DigSports(ディグスポーツ)」に着目して、この画期的なサービスの利点と、そこから見える未来を考えてみた。

ライフスタイルの変化で
子供の体力は低下の一途

“日本は、子どもの運動能力が年々低下している”。そういわれて久しいが、その原因はさまざまだ。根底には、高度情報化社会によるライフスタイルの変化があることは間違いない。生活の利便性は高まったけれど、その反面、運動をする機会が確実に減っている。代わりに、子どもたちのスクリーンタイム(ゲームやスマートフォンの利用時間)は増加傾向にある。

ほかにも、自由に運動ができる公園や施設が限られている、地域に指導者がいないといった環境的な要因や、また、食習慣の乱れなど、子どもの体力低下を招く要素は多々ある。

そんな現状に対する危機感と、東京オリンピック・パラリンピック等のビッグイベント開催に伴うスポーツへの関心の高まりなどを見据えて、株式会社電通国際情報サービス(以下ISID)が2017年に開発したのが、子どもの運動能力をAIで自動測定し、個々のスポーツ種目の適正を判定するシステム「DigSports」である。

近年、欧州を中心に発達してきたスポーツ分野におけるセンシング技術の導入は、日本でも少しずつ広がりつつある。

使い古された根性論などではなく、合理的に選手の能力やパフォーマンスを測定し、可視化することで適切な指導を行う。そんな取り組みは、例えば、全国に名をとどろかせるスポーツ強豪校では、当たり前に浸透してきている。

一口にセンシングといっても、方法はさまざまだが、「DigSports」は、I C搭載バンドを装着して(記憶媒体のため、近くに置くだけでも構わない)モニターの前に立つだけで、文部科学省の新体力テストに採用されている5項目(反復横跳び、垂直跳び、50メートル走、ボール投げ、持久走)の自動測定ができる。

注目すべきポイントは、いくつも器具を装着する必要がないお手軽さ、そして、5m四方のスペースさえあれば実施可能というコンパクトさだ。

小スペースでモニターを見ながらお手軽にセンシングできるのが、「DigSports」の強み。

面倒な機器装着がなく
さまざまな測定ができる

ISIDが同サービスを開発した経緯は、先述のとおりだが、このプロジェクトには、スポーツ嫌いの子どもたちが自分にマッチしたスポーツに出会うことで、スポーツを好きになってほしい、そして、できれば生涯スポーツを、長く楽しんでほしいという期待も込められているという。

もちろん、適正に合致したスポーツにのめり込むことで、将来のトップアスリートが生まれる可能性もある。

代表的な体力測定のメニューは全て網羅されている。オプションで投球フォームの指導なども受けられる。

わずか5m四方のスペースで、50m走や持久走の記録を測定できるというのは興味深いが、そこには、スポーツトレーニング専門家として名高い、遠山健太氏(全日本スキー連盟フリースタイルスキーフィジカルコーチ)が考案したスポーツ診断メソッドを応用したアルゴリズムが活用されている。

測定者の体格(足の長さなど)や、膝を上げるスピード、垂直跳びの結果などから、数値を割り出すため、大きなスペースも細かなモーションキャプチャも不要なのだ。

各々の種目の測定結果からAIで運動能力が分析され、特徴を割り出すとともに、自分の属するタイプは動物で表現される。わかりやすい図表で結果が出てくるため、子どもも理解しやすいのが大きな特徴だ。

測定結果はすぐにアウトプットされる。まるで星占いのような動物のタイプ分けや見やすい図表入りというのもユニークだ。

地域に根ざしたカスタマイズで
さらに提案性を高める

センシングというと、限られたスポーツエリートを効率よく育成するために使われる技術というイメージがあるが、「DigSports」は、あくまで、お手軽に、そしてわかりやすく子どもたちの“得意”を見つけ出すために活用されている。いわば、スポーツを始めるきっかけを提供しているのだ。

ただ、「DigSports」の対象者は、必ずしも子どもだけではない。小学生以上であれば、基本的には誰でも活用ができる。運動能力を分析する際の平均データは、70歳までインプットされているため、高齢者であってもトライすることも分析することも可能だ。

また、これまでさまざまな自治体と、地域に根ざした活用法も模索してきた。例えば、鹿児島県沖永良部島の知名町で、スポーツ庁と取り組んだ成人のスポーツ習慣化促進事業では、島に住む子育て中の女性を対象に「DigSports」が活用された。

子育て等の理由でスポーツから遠ざかる成人女性は少なくないが、改めて自分の適正を測定、分析することで、またスポーツを始めるきっかけができる。このプロジェクトでは、20〜40代の女性が「DigSports」を通して、新たなライフスタイルを見つける機会を得たという。

これからの「DigSports」の課題としては、知名町での事例のように、地域の特性とニーズを踏まえた活用法、そしてそれに合わせたカスタマイズなどが考えられる。

現在は、分析結果から提案する適正スポーツは74種類。ただ、場所によっては、気候などの影響により、競技人口が極端に少なかったり、指導者がほぼいないというスポーツがあることも考慮して、より地域にマッチした提案が望まれる。

そんなアップデートがなされれば、今後、「DigSports」を媒介にした官民一体のプロジェクトやイベントが、全国で盛り上がることも期待できる。

“得意を見つける、得意を広げる”。当初のコンセプトを具現化したこの画期的なシステムが、あらゆる場所で、より簡単に活用できるようになれば、スポーツを幼少期から始める人口も増える可能性がある。

加えて、国民全体に広がった“体力低下”という大きな問題解決の糸口が見えてくるかもしれない。

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(text: 長谷川茂雄)

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