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億劫な検査をストレスフリーに!低被ばくPET-CT検査機器「Discovery IQ 2.0」

HERO X 編集部

スタイリッシュな映像で紹介されているのは、今やがん診断には欠かせない検査機器として日本でも広く普及が進んだGEヘルスケア・ジャパンが販売を手掛けているPET-CT検査機器「Discovery IQシリーズ」。販売開始から5年、新たに低被ばくをはじめとする、さまざまな高性能を搭載した「Discovery IQ 2.0」の販売を開始した。MotionFree (モーションフリー)、StressFree (ストレスフリー)、ArtifactFree (アーチファクトフリー) という3つのフリーを掲げ、現場従事者、患者双方にとって快適な検査を可能にしたようだ。

放射線を使った検査と聞いて、まず思い浮かべるのはX線撮影、通称 “レントゲン” だろう。健康診断やケガをした際などに、多くの方が経験したことがあるはずだ。レントゲンをはじめとする放射線を使う検査は、現代医療に不可欠な技術と言っても過言ではない。だが、わりと手軽な印象のレントゲンとは異なり、CTやPET-CT検査中には体の動きに制約を受けたり、検査に長時間を費やすこともあるため、検査を受ける側としては、ストレスになることもあった。撮影中は健康上全く問題無いと言われるほどのごく微量な線量ながらも、がんなどの治療中の患者であればとくに、毎回放射線を浴びることに対して一抹の不安を覚える人もいたことだろう。検査で生じるそんな患者の心配やストレスを解消するべく、同社が開発した検査機器では動きの制約を少なくし、放射線量もこれまで以上に抑えられているのだ。

現在、がんを発見するための検査として非常に有効と言われているのが、PET-CT検査だ。

まずPET検査とは、がん細胞が正常な細胞と比べてブドウ糖を多く必要とするという性質に着目したもの。ブドウ糖に、ごく微量の放射線を放出する成分をくっつけた薬剤 (以下、FDG) を体内に注射し、検出器というカメラのような装置を用いて、FDGの全身への分布状態を撮影する。がん細胞にはFDGが正常な細胞よりたくさん集まるため、そこから放出される微量の放射線を検出器でとらえて、がん細胞の位置や大きさ、進行度合いを調べるという仕組みだ。PET-CT検査は、このPET検査にCT検査 (X線を体の周囲から照射して断面図を作る検査) を組み合わせたもの。さらに克明に病気の状態を探ることができる点が特徴だ。

がんの発見に優れた力を発揮するPET-CT検査だが、放射性物質を含んだ薬剤を体内に取り入れるうえにCT検査による放射線照射も行うため、PET検査と比較すると当然被ばく量は多くなる。そのため、患者だけでなく、患者を介助する現場従事者にも微量ながら被ばくのリスクが発生する。さまざまな医療機関や研究団体が、医療検査による被ばくは健康に影響を及ぼす量ではないと発表しているものの、当事者の心理としては、たとえ微量だとしても懸念があるというのが正直なところではないだろうか。

今回リリースされた「Discovery IQ 2.0」は、低被ばく、高速ワークフロー、高画質化を実現したPET-CT検査機器。まず注目したいのは、超高感度で幅の広い検出器の搭載。これにより、検査時間の短縮が可能となる。従来、PET-CT検査に要する検査時間は受付から検査終了まで3~4時間を要するものとされていたが、当機器を使用する場合、検査時間は最大10%削減されるという。

検査時間の短縮自体が現場従事者と患者のストレス低減になることはもちろん、高感度検出器の搭載によるFDG投与量の減少と併せて、低被ばく化にもつながる。具体的には、現場従事者の被ばく量は1ヶ月あたり2時間分の低減が見込まれている。操作室で遠隔での操作が可能となったことで、現場従事者が患者と接触することによる被ばくのリスクを抑えられる点もメリットのひとつだ。

また、業界初となる患者の呼吸による動きを自動補正するシステムを採用することで、画像のブレを低減するシステムを搭載。従来の検査では、呼吸によるブレを防ぐために、患者が一時的な息止めなど意識的に呼吸をコントロールするケースもあったが、そのような検査時のストレスを低減することができる。

さらに、従来の画像再構成法ではできなかった、「画質」と「定量精度」 双方の向上を実現。ノイズの多くなりやすい部位でもクリアな画質を実現するため、診断精度が飛躍的に向上した。

ただでさえ億劫になりがちな病院での検査。せめてなんのストレスも懸念もなく受診したいと思うもの。「Discovery IQ 2.0」はそんな気持ちに寄り添った、まさにストレスフリーな最新技術だ。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=mNOrlphDaf4

(text: HERO X 編集部)

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患者に寄り添う次世代のリハビリとは?かながわロボットリハビリクリニックに潜入取材

Yuka Shingai

しんどい、辛いというイメージがつきもののリハビリ。暗い病院の一角で、黙々と作業に励む、そんな姿が思い浮かぶだろう。だが昨今、楽しくリハビリをするという取り組みをはじめているリハビリテーション病院が全国に広がりつつある。今回はそんな病院のひとつ、神奈川リハビリテーション病院を取材、筋電義手や訓練ロボットを活用したリハビリテーションについてお話を伺った。

経済活性を目指す「さがみロボット産業特区」への協力から、
リハビリ用ロボットの導入がスタート

神奈川県厚木市にある神奈川リハビリテーション病院(以下、神奈川リハ)に一歩足を踏み入れると、その明るく開放的な雰囲気に、新鮮な驚きを感じるかもしれない。まず目を奪われたのは廊下の床に配された目盛だ。

「昔ながらの病院では、ガムテープで目盛りを引いてあることも多いのですが、設計士の方から『いっそのこと床の模様にしてはどうか』と提案を受けたんです。歩行距離が一目で分かるので、モチベーションの向上にもつながります」。と案内してくれたのは再編整備室長で社会福祉士の前田智行氏。訓練室の部屋番号には応援の意味をこめた旗の形のサインをつけたと話す。たしかにこれならば、リハビリに通うのが楽しくなりそうだ。
社会や外の世界に出る社会参加をリハビリのゴールとしているため、歩行訓練などの理学療法、作業療法を行う訓練室はあえて広々とした作りに。理学療法、作業療法から言語訓練、体育訓練に加えて、入院中から職能リハビリテーションまでを行い、復職を目指す人に、より早期の社会復帰を促している。そんなリハビリテーションに特化した治療や研究を続けてきた神奈川リハがロボットによるリハビリテーション導入を決めた。

人口減少や超高齢社会の到来を始めとする課題の解決に、生活支援ロボットが有効であると考えた神奈川県。2013年に地域活性化を目的に「さがみロボット産業特区」を申請していた。
リハビリテーション系ロボットの評価依頼先として白羽の矢が立ったのがこれまで企業との協力で福祉機器の開発にも携わるなど豊富な実績を誇る神奈川リハだった。平成25年から実証実験の協力をスタート。
また、それまで神奈川リハでは処方が少なかった筋電義手について、導入・普及を推進したいという神奈川県知事・黒岩祐治氏の積極的な後押しを受けて、2017年に神奈川リハ内に「かながわリハビリロボットクリニック (KRRC)」が開設、ロボットの研究開発を行っている企業や大学研究室の試作品の評価、相談から、実際に患者が使用した場合の評価までトータルで受け持つ相談窓口となっている。

リハビリはハードながらも患者の満足度は高い。
普段意識しない体の動きにより得られる効果も

神奈川リハビリテーション病院 診療部長の横山修氏

KRRCで使われている代表的なリハビリテーションロボットは脊髄損傷等の患者を対象とした、歩行アシスト装置の「Rewalk」、パワードスーツの「HAL®」の2種類。まだあまり知られていないのだが、この補助ロボットを使ったリハビリは、誰でも指導できるという訳ではない。

「リハビリテーション用ロボットといっても、使い始めたらすぐに歩けるようになる万能な存在ではなく、特性を理解し、訓練して初めて身につくものです。また、特性を理解するという点においては利用者だけでなく、セラピスト側も同様で、事前に講習会を受講して、『Rewalk』と『HAL®』それぞれが定めるライセンスを取得しなければ患者にリバビリテーションを行うことがきません。
完全麻痺の患者さんは足の骨が脆くなっていることも多く、普段負荷がかかっていない足がロボットの力で立ち上がることで骨折する可能性もあることや転倒により骨折する危険性もあるので、とにかく安全面において万全を期すことが不可欠です。患者さんには事前に骨密度をはかって骨粗鬆症でないかを確認し、絶対転倒しないように、前方と後方に訓練士を2人つけてリハビリを開始します」(診療部長の横山修氏)

訓練は患者自身の体調に合わせて1日1時間ほど行う。屋内歩行が中心だが患者によっては屋外歩行も行う。時間だけを見た場合、かなりハードな印象を受けるが、補助ロボットを使うと、患者は楽しく歩くことができて、満足度も高いのだという。補助ロボの装着により普段意識しない体の動きが求められるため、最初はみな汗をびっしょりかきながら訓練を進めているそうだ。

脊髄損傷後、排便障害を抱えていた患者の場合、立って歩く動作により腸管の動きが活性化、排便の時間が短縮されるケースや、訓練によるカロリー消費で減量に成功するなど、副次的な効果が得られることも。
早期から取り組むことで、診断上は完全麻痺と言われていた患者に、筋肉の収縮が出始めた事例もこれまでにあったというほどだ。

「対麻痺の患者さんのリハビリは長下肢装具で固定して足を棒状にして立たせるという事もします。ロボットを使った歩行では股関節を屈曲進展させ、より通常の歩行に近くなるため神経が活性化されるのかもしれません」と横山氏は推測している。

筋電義手の公費申請は難関。
「片手があれば大丈夫」ではないことを伝えていきたい

また、先天性や労災などによる前腕欠損の患者には、親指、人差し指、中指の3本の指が動く、3指駆動型の筋電義手を処方している。2つのセンサーが前腕伸筋群と前腕屈筋群が生じる筋電位を感知し、義手を開閉する仕組みになっており、患者は病院内での訓練、調整を経たのちに、自宅や学校、職場などでも実際に利用して習熟を深めていく。障害者自立支援法の補装具費支給制度を利用して、公費の負担の申請を行うが、横山氏いわくこれが難関だとのこと。

「筋電義手そのものが高価ということに加えて、評価の大きなポイントとなる、『その人の実生活に本当に必要か』という部分がなかなか伝わりづらいのです。片手が使えない状態であっても、『もう片方は使えるのだから書いたり、食べたりはできるのではないか』と判断される場合があるからです。それを『できる』と言ってよいのだろうかというのは疑問に感じる部分です。片手と両手では見える世界が全然違うはずですから。
今は県が予算をつけてくれているので、貸出用筋電義手を複数台用意することができますが、その予算がなくなってしまったらシステムが崩壊してしまい、訓練を希望する人が来てくれても提供することができなくなってしまいます。永続的なバックアップを可能にするためにも、論文を出す、HPなどに情報を掲載する、メディアに出るなど、こちら側からのアピールをしていく必要性を感じています」(横山氏)

リハビリ用ロボットも筋電義手も開発を手掛ける企業は増えているが、認知されるようになったのはごく最近のこと、世の中に浸透していくにはまだ時間を要しそうだ。

通常の訓練であればセラピスト1人で済むところを2人がかりで行うため、人件費も考慮すると、コスト面でのハードルは高いが、「患者さんがやりたいことを実現する、夢を叶えること、こうしたいという想いをサポートすることがリハビリなのかもしれない」と横山氏はリハビリテーションの意義を話す。歩く、書く、食べるという動作だけではない、その先にリハビリテーションの本質があるのかもしれない。

(text: Yuka Shingai)

(photo: 増元幸司)

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