対談 CONVERSATION

ポジティブマインドで前進あるのみ!TEAM POSITIVE・鈴木隆太が目指すところ

中村竜也 -R.G.C

健常者、障がい者を問わず、スポーツを通して様々なことにチャレンジする人をサポートする団体・「TEAM POSITIVE」。今回、その代表を務める鈴木隆太さん(以下、鈴木さん)と、HERO X編集長・杉原行里(以下、杉原)との対談が実現。“楽しむ”ということに重きをおく2人に科学反応は生まれるのか!?

新しい何かが始まる予感!

鈴木さんが不慮のバイク事故により左下腿を失ったのは、血気盛んであった17歳の時。一度は失意のどん底に落ちたものの、強い気持ちで前向きに生きることを決意。そこからその時の経験を活かし、TEAM POSITIVEの立ち上げに至ったわけだ。

これまでの人生や展望について語っていただいた第1弾のインタビュー(http://hero-x.jp/article/6015/)。前回のインタビューからHERO Xと何か一緒にできることは無いものかという話が上がり、今回の対談が実現した。

杉原:第1弾として、今年の初めに取材させていただきましたね。その節はありがとうございました!その時に、「TEAM POSITIVE」発足の経緯や、義足になった理由などはお話いただいたので、今回は、我々がもし何かを一緒にできるのならば、どのような可能性があるのかをお話できたらといいなと思い、楽しみにしていました。

鈴木さん:こちらこそ宜しくお願いします!

杉原:急に、何か一緒にできる可能性って言われてもって感じですよね(笑)。でも現実的に考えると、まず一番は、私自身がプロデューサーを務めるエクストリームスポーツとストリートと音楽のイベント「CHIMERA GAMES」などのイベントへの参加が一番近道なのかなと思います。

鈴木:そうかもしれませんね。僕自身もバックカントリーやバイクに乗る時などのアクティブなことをする時に使用する、BIO DAPTというアメリカ製の義足の展示はマッチすると思います。なぜなら、社長のMike Schultz自身もモトクロスやスノーモービルを乗っているので、義足でのデモンストレーションを行なってもらうなどはいいかもしれません。また、海外のパラリンピアンを招集したり、実際に私たちの使っている道具や義足、今まで行なってきたスポーツトレーニングの紹介なども現実的なのかなと。

杉原:確かにそれは、イベント自体のコンセプトにもはまってそうですし、取っ掛かりとしてはいいかもですね。その中で、鈴木さんが今まで積み重ねてきた経験を次世代へ伝えるためのトークショーなどがあったら、より深みが出るかも。

鈴木:僕自身、足を失ってから初めて感じられたことはたくさんありますからね。人と比べるのではなく自分自身と向き合うことの重要性。そして、やれない、出来ない事に理由を探すのではなく、やれる事を探す。そこから目標を持ち、諦めず、挑戦し続け楽しむ。そういった場で、本当の意味の心のバリアフリーを伝えられたら僕自身も嬉しいし、もっと言うと、これが伝われば世の中が変わると信じているので、ぜひ機会があればと常々考えています。

強く想い続けることの重要性

杉原:様々なエンターテイメントやスポーツが入り混じっている中に、当たり前のように、HERO Xのような存在がある。今までこのようなイベントってなかったのかなと、僕自身感じていますし。決して悪いことではないのですが、ほとんどの場合はそのカルチャーや競技に特化したイベントになってしまっている現状を打破したいという気持ちが強いんです。
どんなことでもそうだと思うのですが、今まで通りに進めているだけではいつか行き詰まってしまう時が来る。そうならないためにも、様々な方向から先手を打っておくことって大切じゃないですか。

鈴木:出来ることを無理のない範囲で日常から行っておく。例えば、ステッカーを配るくらいのことから始めてもいいと思うんです。お互いを拡散しあい様々な人に認知してもらう。もちろん大々的にお金を掛けたプロモーションも大切だとは思うのですが、それとは別にそういった草の根的な活動も、テクノロジーが発達した現代だからこそ意味を成してくるのではないかな。

HERO Xと直接何か出来たらいいな、というのも考えていまして(笑)。例えばTEAM POSITIVEで引率できるイベントを開催し、HERO Xに窓口的な事をしてもらう。私の得意分野であるスノーボードや山登り、カヌーなど。そして、新たなチャレンジを行いたいとHERO Xに連絡が来たら、こちらの持っている情報でサポートを行うなど。実は今、義足の冒険家としても活動していまして。その活動を都度発信してもらうなど協力し合えたら、僕的にもすごく嬉しいなって思っているんです。

杉原:義足の冒険家とは、具体的にどんなことをしているのですか?

鈴木:今のところは、バックカントリーを中心に動いています。バックカントリーというのは、レジャー用に整備された区域ではなく、手付かずの自然が残っているエリアに入っていってスノーボードで下山すること。ちゃんとした知識としっかりとした装備を整えないで山に入ると、確実に命の危険に晒されるので、軽い気持ちでは絶対にできないんです。今後は海外にも出向き、様々なことにチャレンジしたいと思っているので、TEAM POSITIVEだけではなく、僕個人の活動にも是非注目していただけたらなと思っています。

杉原:それは面白いですね。そういった活動をすることで全ての人に勇気を与えられたらすごく素敵なことだと思います。でも絶対に無理はしないでくださいね(笑)。

杉原:話をしてみると色々と出てくるもんですね。もちろん何かを実現するためには、しっかりと話を詰めていかなくてはいけない。その第一歩として今回のような対談は、大きな前進だと僕自身も思っています。引き続き何ができるかを模索していきましょう!

自分の置かれた状況を楽しむことを大切にする二人が直接話すことで、一緒に出来ることと、出来ないことがある程度見えてきた今回の対談。新しい何かの実現に向けたTEAM POSITIVEと HERO Xの動向に、今後も注目していただきたい。

オフィシャルサイトhttps://www.teampositive.biz/

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 増元幸司)

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「ちがいを ちからに 変える街」とは?渋谷区長に突撃取材! 後編

岸 由利子 | Yuriko Kishi

ありとあらゆる世代や人種が集まる街、渋谷。そこは、多彩なコミュニティが生まれ、新たな文化が沸き起こる一大メトロポリス。障がいのある方をはじめとするマイノリティや福祉そのものに対する“意識のバリア”を解き放つべく、従来の枠に収まらないアイデアから生まれた「カッコイイ」、「カワイイ」プロダクトや「ヤバイ」テクノロジーを数多く紹介する『超福祉展』をはじめ、街がまるごとキャンパスとなり、教えると教わるを自由に行き来できる新しい“共育”システム『NPO法人シブヤ大学』や『渋谷民100人未来共創プロジェクト』など、多様性社会の実現に向けて、多彩な取り組みが次々と行われている。本当のダイバーシティ(多様性)とは?渋谷の未来はどうなる?渋谷区長を務める長谷部健氏にHERO X編集長・杉原行里(あんり)が話を伺った。

「超福祉」を街の景色にしていきたい

杉原:超福祉展では、「2020年、超福祉が実現した渋谷の街の日常」をテーマに、最先端テクノロジーを駆使して開発された超クールな車いすやパーソナル・モビリティ、芸術的な美しさを持つ義足など、多彩なプロダクトが紹介されています。今後、これらの「超福祉」をどのように実装していく予定ですか?

長谷部:街の景色にしていきたいです。今、少しずつ取り組み始めているのですが、街を使ってできることに対して、大きな可能性を感じています。例えば、今回の超福祉展の開催期間中、SHIPS渋谷店をはじめとするショーウィンドウには、車いすなどの斬新なプロダクトが展示されているんです。これって、街の景色のひとつですよね。

また、同展を渋谷区と共催する特定非営利活動法人ピープルデザイン研究所の代表理事・須藤シンジさんが、アシックスとコラボしたスニーカー「プロコート・ネクスタイド・AR」の打ち出し方が、個人的にはすごく気に入っています。四肢にまひがある人や、片手が欠損していたり動かせない人でも、ラクに脱ぎ履きできるという、ハンディキャップを補う機能がさりげなく盛り込まれているハイカットの“バッシュ”(バスケットボールシューズ)なのですが、第一作目から福祉的なアピールは一切せず、ファッション感度の高い人たちが集まる渋谷やニューヨークのセレクトショップで販売されているんです。純粋に“ヤバくてカッコいい”スニーカーとして人気を博し、即日完売が続出した日もあったそうです。このように、健常者向け、障がい者向けといった括りを超えて、誰が見てもカッコイイと思えるプロダクトやアイデアが集まる場所が渋谷であり、ここを拠点に発信されていけば、人々の心のバリアもおのずと溶けていくのではないかと。そんな未来を実現するために、できるかぎりの力を注いでいきたいと思っています。

杉原:須藤さんがアシックスと生み出したスニーカーは、本当の意味でのユニバーサル・デザインといえますよね。

長谷部:また、福祉の要請から生まれた最新テクノロジーや身体の機能を拡張できるプロダクトは、補助器具としての域をはるかに超えて、装着することをクールと感じられるものです。現状、それらを先立って体験できるのが、障がい者の人たちというだけで、今後の課題は、いかにマジョリティに普及させていくかということになるでしょう。多様性を持つ人々が混じり合い、溌剌と生きていく社会を実現するための鍵だと思います。

パワードスーツなどについては、腰を傷めて介助が必要な人だけでなく、いずれ運送業など腰を酷使する仕事の人も使うようになってくるのではないかと想定します。きっと今が、その分岐点。パーソナル・モビリティについても、渋谷区内の街中で走れる場所を作りたいとも思っています。

杉原:それはぜひ実現していただきたいです。

目指すは、「ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷区」

杉原:モノづくりに携わるデザイナーのひとりとして、茨城県つくば市のつくばモビリティロボット実験特区などは、僕にとって夢のような場所です。渋谷区にもそういった特別区域ができる予定はありますか?

長谷部:具体的にどのような形になるかは未定ですが、クリエイティブやエンターテイメントを渋谷周辺に集める特区については思案中です。数あるアジア都市の中でも、文化的、エンタメ的にも渋谷という街は、ひと際秀でていると思うんです。そこを伸ばしていけば、“東京”に貢献することにもつながるのではないかと。

杉原:足りない部分を満たしてゼロに近づけるのではなく、特性や長所を伸ばしていくということですね。

長谷部:ゼロに引き上げるための取り組みも当然必要になってくると思いますが、現時点ではおっしゃる通りです。世界を見渡し、歴史を振り返ると、クリエイティブな人々が集まり、新たなイノベーションが生まれた都市といえば、やはり、「ロンドン、パリ、ニューヨーク」でしょう。ロンドンならロンドンっ子、パリはパリジェンヌ、ニューヨークはニューヨーカーというように、シティプライドを象徴するそれらの言葉は、各都市の文化やエンターテイメントの発展と共に、自然発生的に生まれてきました。渋谷区もそこを強化して、「ロンドン、パリ、ニューヨーク、渋谷区」となれたら理想的。これについては、実現したいと本気で思っています。あと、日本各地に点在する「○○銀座」のように、「◎◎渋谷」が世界中にできたらいいなと。リトル東京ではなく、リトル渋谷とかですね。

2020オリパラは、
マジョリティの意識が変わるビッグ・チャンス

杉原ところで、内閣府の高齢社会白書(平成28年版)によると、2025年には、国民の約3.4人に1人が65歳以上、約5.8人に1人が75歳以上になると推測されていますが、超高齢化社会に突入することについては、どう捉えていらっしゃいますか?

長谷部:個人的な予想ですが、平均寿命が100歳を超えるのがこの国のスタンダードになっていくのではないでしょうか。日本は、世界で初めて超高齢化社会を迎える先進国ですから、さまざまな不安があることも否めません。でもその一方で、これをうまく乗り越えられたら、世界に対して、また新たな価値を提案・発信できる大きなチャンスの到来ではないかとも思います。

現時点では、やはりテクノロジーの分野にチャンスが見える気がしています。AIなどの先端技術をどのように使えば、豊かな老後が過ごせるか。そう考えると、また新たなイノベーションが起きてくるのではないでしょうか。

杉原:そういったことも踏まえて、これからの渋谷の街はどのように変わっていくのでしょうか?

長谷部:未来の渋谷でどんな変化が起きているか、漠然としたイメージはあるけれど、正確には私にも分かりません。「YOU MAKE SHIBUYA」で、皆で作っていく街ですから。今言えることは、ダイバーシティも、福祉も、バリアフリーも、「頭ではなんとなく分かっているけれど、腑に落ちていないことをハートで感じた時、人は一番変われる」ということでしょうか。その意味で2020年のオリパラは、マジョリティの意識が変わるひとつの大きなチャンスになるはずです。

幸い、東京2020パラリンピックにおいて、渋谷区では、ウィルチェアーラグビーやパラ卓球、パラバドミントンが行われます。今年の夏から秋にかけて、区民をはじめとして、一般の方々がそれらの競技種目を区内のスポーツセンターで観戦できる「渋谷区リアル観戦事業」を開催しています。やはり、実際に会場に足を運んで、試合や選手を身近に見て感じることほど、強いものはないと思います。競技や選手への理解が深まることで、きっと応援したくなったり、2020年の大会本番のときには会場で観戦したくなるはず。

特に、ウィルチェアーラグビーの選手たちは、車いすを使って練習できる施設がなかなかなく、練習場所の確保に苦労していました。そこで、昨年のリオパラ日本代表選手の合宿に、渋谷区内の体育館を提供したんです。練習風景なども含めて、彼らの活動を見てきた区民の方たちは、同大会で銅メダルを獲得した時、我が事のように喜んでいました。「手を差し伸べる対象」ではなく「混じり合う対象」―そう感じている証拠だと思いましたし、「地元にいるときより、渋谷に来た方が、スター感がありました!(笑)」と選手側からも喜びの声をいただきました。

少し突飛な発想ではありますが、例えば渋谷のスクランブル交差点でウィルチェアーラグビーの試合を開催できたなら?日本全国だけでなく、おそらく世界中にその魅力を届けることができるでしょう。そんな想像を色々と巡らせていると、まだまだやれること、やらなければならないことがたくさんあるぞと、エネルギーが果てしなく湧いてきます。

前編はこちら

長谷部 健(KEN HASEBE)
渋谷区長。1972年渋谷区生まれ。株式会社博報堂に入社後、さまざまな企業広告を担当する。2003年に同社を退職後、NPO法人green bird(グリーンバード)を設立。原宿・表参道を皮切りに、清掃活動やゴミのポイ捨てに関する対策プロモーションを展開。活動は全国60ヶ所以上に拡がり、注目を集める。同年、渋谷区議に初当選。以降、3期連続でトップ当選を果たす(在任期間:2003~2015年)。2015年、渋谷区長選挙に無所属で立候補し当選。2015年4月より現職を務める。

超福祉展
http://www.peopledesign.or.jp/fukushi/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 河村香奈子)

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