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ブラインドサッカーの「なでしこJAPAN」が初の国際大会で優勝!

田崎 美穂子

女子選手を対象とした、初の国際大会「国際視覚障害者スポーツ連盟(IBSA)女子ブラインドサッカートーナメント」で、日本代表チームが優勝の快挙を成し遂げました。

この大会には世界16カ国が参加、日本選抜チーム、イングランド・ギリシャ選抜チーム、ロシア・カナダ選抜チーム、IBSA選抜チーム(日本、イングランド、ギリシャ、ロシア、カナダの選手を除いたメンバーで構成されたチーム)の4チームに振り分け、1回戦総当たりのリーグ戦が行われました。日本は今大会最多得点記録者となった菊島選手の活躍もあり、3戦全勝で予選を通過、4チームのうち予選上位2チームで行われる決勝戦でIBSA選抜チームと対戦し、1-0で勝利、見事優勝を勝ち取りました。

提供:日本ブラインドサッカー教会

「人間の情報源の8割」とも言われる視覚。これを抜きに戦うブラインドサッカーでは、ボールの音とまわりの声だけを頼りにボールをゴールに向かわせます。アイマスクを着用したフィールドプレーヤー4名と、晴眼者または弱視者が行うゴールキーパー1名、ゴール裏で指示を出すガイド、そして監督の計7名が声でコミュニケーションを取りながら戦います。

障がい者と健常者があたり前に混ざり合う社会へ

日本でこのブラインドサッカーの普及に努めているのはNPO法人日本ブラインドサッカー協会(JBFA)。ブラインドサッカーは健常者と視覚障がい者が一つのチームを作って戦う競技。メンバーの協力を得た選手たちはピッチの中を自由に動き回ります。2002年の設立以来、JBFAは「ブラインドサッカーを通じて、視覚障がい者と健常者が当たり前に混ざり合う社会を実現すること」を目指して活動を進めてきました。

この期待に応えるかのように優勝を勝ち取ったブラインドサッカーのなでしこたち。スポーツを通して視覚障がい者への理解が深まれば、サッカーのフィールドに留まらず、日本中が彼らにとっても自由なフィールドとなるはずです。扉を開く大きなきっかけをブラインドサッカーのなでしこたちがつくり出そうとしています。

(text: 田崎 美穂子)

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F1スポンサーの変遷にみる世の中の潮流

高橋二朗

「F1マシンは走る広告塔」だ。
数百億円の年間予算で運営されているF1参加チームは、スポンサー無しにはどうにもならないのである。しかしF1がスタートした1950年にはチームとスポンサーという関係はなかった。当時は、自動車メーカーの参戦が主で、繰り出すマシンには、社名かエンブレムが描かれていたのである。そして、マシンのカラーリングは、イタリアメーカーのマシンは赤、イギリスは濃い緑、フランスは青、ドイツは銀、というようにナショナルカラーで彩られていた。日本からF1の黎明期に参戦していたホンダは、白地に日の丸をデザインしたカラーリングだったのである。

やがて、自動車メーカーに代わってレースを専門とするチームが参入するとF1の世界にチームとスポンサーという関係が生まれ、マシンのカラーリングはナショナルカラーからスポンサーのカラーリングを纏うようになる。

タバコメーカーがこぞってスポンサーに

初めての例が1968年のこと。イギリスのチーム・ロータスがインペリアル・ブランズ社(イギリスのタバコ会社)のいちブランド「GOLD LEAF(ゴールドリーフ)」のパッケージと同じカラーリングを施したのである。ロータスは、それまでブリティッシュグリーンを基調にイエローラインがマシンにカラーリングされていた。それが一新されて赤・白・金のカラーリングにブランド名がボディにデザインされた。これは大きな出来事であり、以降、せきを切ったように多くのタバコメーカーがF1チームのスポンサーとして、ボディカラーリングとブランドロゴを露出し始めたのである。
スポンサー企業の目的は、自社と自社ブランドの広告宣伝である。喫煙とF1のイメージが融合してグローバルにPRできるというメリットと、巨額のF1チームの運営予算が捻出できるという互いの思惑が合致したのだ。タバコの市場は世界中にあり、F1チームをスポンサーすることによって、各国で開催されるF1グランプリで多くのモータースポーツファンがサーキットの現場で、さらに、テレビ放映によって約1億人の視聴者がそのロゴを目にすることになるのである。

フィリップ・モリス社のブランド「Marlboro(マルボロ)」は、フェラーリとマクラーレンの2チームのスポンサーをしていた。マクラーレンは、マルボロのパッケージデザインをそのまま踏襲し、色は赤と白。デザインは赤の矢羽とロゴを配していた。一方のフェラーリは、伝統のイタリアンレッドを頑なに守り、スポンサー名が分かるのはロゴだけ。また、禁煙の機運が高まり出して、開催国によってタバコの広告宣伝が規制されていた場合は、サブリミナル効果を狙ってロゴを連想させるデザインを施したのである。しかし、タバコの広告宣伝は、2006年をもって一切禁止されてしまい、ロゴは見ることができなくなった。だが、現在もフェラーリには、赤いボディに『MISSION WINNOW』というロゴデザインがされている。これはフィリップ・モリス社のプロジェクト名なのである。何を目指すプロジェクトかは定かではないが、依然として同社はフェラーリを支援している。他のタバコメーカーも同じようなプロジェクト名を掲げている例がある。

タバコの広告宣伝が禁止されるまでにどれだけ多くのタバコメーカーがF1のスポンサーになっただろうか。John Player Special(ジョン・プレイヤー・スペシャル)、GITANES(ジタン)、CAMEL(キャメル)、LUCKY STRIKE(ラッキー・ストライク)、WEST(ウエスト)、Rothmans(ロスマンズ)、GAULOISES(ゴロワーズ)などなど挙げればキリがない。日本からもCABIN(キャビン)、MILD SEVEN(マイルドセブン)がスポンサー参入していたこともある。これだけ多くのタバコメーカーがF1にスポンサードしていたのは、タバコのイメージ戦略とF1の存在がとてもマッチしていたからだ。

(画像元:https://www.facebook.com/CamelF1/posts/1577500425651457
黄色のボディーで人目を惹いたCAMELのマシン。このときのドライバーはアイルトン・セナ。

変わるスポンサー企業

依然として自動車メーカーがスポンサーであり、レーシングチームオーナーである形態も残っているのがフェラーリとルノー、そしてメルセデスである。
実は、ホンダもチームを有していたことがある。既存のメルセデスチームの前身として3年間ではあったが、「ホンダ」というチームが存在していた。これは、直前のオーナー、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ社がエンジンを供給していたホンダにチームの株式を売却したことでそうなったのだ。そして、そのチームがやがてメルセデスとなった。現在ホンダは、メルセデスと覇権を争うレッドブルにエンジン供給をしている。かつては、BMWとジャガーもチームを抱えていた。自動車メーカーがチームを有するということは、強さと速さをアピールするイメージ戦略と技術開発の両面のメリットを考えてのことだ。しかし、勝てないことで逆の結果を生むこともある。

タバコ、自動車メーカーの他にF1のスポンサーに名乗りを上げたのがファッション、飲料、エンジンオイル、ホイール、銀行、IT、コンサルティング、電気機器メーカー。ちょっと変わったところでは浄水器メーカーもある。タイトルスポンサー、サブスポンサー以外の、小口のスポンサーや技術供与のテクニカルスポンサーに至っては、相当数の企業が参入している。蛇足だが、アメリカのモータースポーツには飲食店チェーン、洗濯洗剤、清涼飲料水、スーパーマーケット、家庭建材など生活に密接な企業のスポンサーが目立つ。そして、海外の場合、時折軍隊がスポンサーに付くことさえあるのである。これらはより多くの一般層への露出を考えてスポンサーしていることがうかがえる。

スポンサーはF1チームの株式を買い取って、F1チームのオーナーになることが多いが、その代表的なものがレッドブル社だ。1990年代の終盤に参入したスチュワートがジャガーへ、そして2005年にレッドブルへとオーナーが変わった。近年のF1ではメルセデスとレッドブル、自動車メーカーとエナジードリンクのチームが覇権を争っている。同じ場で戦っているのだが、チームオーナーでありスポンサーでもある企業の思惑が全く異なるという面白い現象がF1には存在しているのである。
レッドブルは、久々の日本人F1ドライバー・角田裕毅選手が所属するアルファタウリを傘下に収めているチームである。アルファタウリは2019年までチーム名がトロロッソ(イタリア語で赤い雄牛)、英語で表記したらRedBull だ。メインスポンサーがレッドブルかつ、アルファタウリはレッドブルのファッションブランドである。レッドブルは、モータースポーツの他のカテゴリーにも積極的にスポンサー活動を展開している。若い有望ドライバーの育成をも行なっており、角田選手もその一人だ。モータースポーツ以外にもあらゆるスポーツのアスリートをサポートしている。

筆者は、1980年代のトールマンチームが日本の電子機器メーカーのスポンサードを受けるために来日し、プレゼンテーションを行った際に通訳として同席した経験がある。トールマンは、未だに日本のレースファンのみならず世界中のファンから慕われ、人気がある故アイルトン・セナがF1デビューを果たしたチームだ。トールマンはその後、ベネトン、ルノー、ロータス、そして現在は再びルノーとして参戦している。当時のプレゼンテーションのポイントは、グローバルに企業展開を目指すためのコラボレーション、F1のハイエンドステイタスが企業イメージアップに貢献すること、企業のロゴが世界中に露出することだった。現在もチームがスポンサーに対してプレゼンテーションをする際の内容は大きく変化していないだろう。そしてプレゼンテーションやオファーを受けた企業は、メリットがあると判断すれば、巨額のスポンサーフィーを支払うわけである。

唐突ではあるが、相撲とF1はとても似ている。
相撲部屋とF1チーム、相撲巡業とグランプリ転戦。各巡業には勧進元がいてその巡業を司り、F1のグランプリは主催者が仕切る。相撲部屋とF1チームをそれぞれ束ねる相撲協会とF1グループ。各相撲部屋には後援会があり、F1チームにはスポンサーが存在している。力士個人にも贔屓の谷町さんが居て、F1ドライバーにも個人スポンサーが居る。相撲の後援会とF1のスポンサーの大きな違いは、F1のスポンサーはスポンサーをすることによって企業の存在を強くアピールしようとすることであり、その先の利益に繋げようとすることにある点だ。F1のスポンサーたちは、F1GPを通じてマネーゲーム、マネーレースに参戦していると言っても良いのである。

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(text: 高橋二朗)

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