プロダクト PRODUCT

東日本大震災から着想。有事の際には子どもの命を救う幼児用カート

イタリアで開催される世界最高峰の国際デザインコンペティション「A’ Design Award & Competition 」、今年度ブロンズを受賞した『RDS Gaaba Infant Cart(アールディーエス・ガーバ・インファント・カー)』は、日常の走行性能と非常時の防災性能を両立させようというまったく新しい発想から生まれた幼児用カートプロダクトだ。震災の経験から日本の防災事業をリードするワンテーブル社と人を科学し最先端技術で形にするRDSの共同開発から生まれたというが、なぜこのプロダクトを開発することになったのか。そこには震災当時の経験が生かされていた。

災害大国日本だからこそ
世界に発信できるプロダクト

日本は、地震多発国と言われている。地震は世界各国で起こっているが、世界のマグニチュード6.0以上の地震の約2割が日本で起きているとされるデータもあり、生活を脅かすような規模の地震がたびたび発生している。なかでも大きな被害をもたらした2011年の東日本大震災の記憶は新しい。あの時、どこで何をしていたのか、いまも鮮明に覚えている人も多いのではないだろうか。忘れることのできない出来事だ。

東日本大震災では、保育園や幼稚園から保護者に引き渡した園児が、避難中に保護者とともに津波にのまれて亡くなった。だが、子どもたちを高台に逃がしたことで、死者を出さなかった保育所もある。子どもの命を預かる施設で、対応を議論するのは大切なことだが、国の最低配置基準では保育士1人あたりでみる子どもの数は0歳児なら3人。しかし、実際にやってみると、1人で3人の子どもを抱えるのは無理だとわかる。大人一人が園児を抱っこやおんぶで連れ出せる人数は限られているし、運ぶ人数が増えればそれだけ逃げ足も遅くなる。

このプロダクトを生み出した開発者の一人であるRDS代表の杉原行里は、島田氏との対談で「乳母車のでっかい版みたいなものがあって(中略)これって今まで、あまり進化がなかった。軽くて数人の子どもを一気に運べる子どものためのモビリティになったら、いざという時に子どもを救うものになるのではないか」という発想で開発を進めたと話していた。

有事の時にだけ用いる防災グッズではなく、普段から使い、慣れ親しんだ物が、震災の時にも役立つ。こうした発想が、本当に東北のためになる復興を成し遂げ、世界に送り出せる防災グッズとして広まることに期待したい。

島田氏との対談はこちら▶震災からの復興10年 東北バージョンアップはここからはじまる!

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彫刻のように美しく、唯一無二の存在を目指して。Scott Summitが義肢に込めるデザイン哲学

Yuka Shingai

タトゥーやレース、パンチング模様…まるで工芸品かオブジェのようなデザインに思わず目を奪われてしまう。「生きている人間のためにデザインをするならば、最低限の使用仕様で満足してはいけない。それを実現できればそれ以降の誰かの生活の質を日々改善することができる」とデザイン哲学を掲げる Scott Summit 氏は、義肢をただの装具品としてではなく、ひとつのアートとして、また、クリエイションとしても捉える工学デザイナーだ。

Summit 氏が手掛ける作品は PC やオーディオ関連、スケートボード、骨折時に腕にはめるギプスに至るまで、独創的でかつ洗練されている。全く同じ物を多く生み出す工業デザインが個性に欠けることを危惧する彼は、「体は彫刻。大量生産に縛られるのではなく、体を考慮した個性的な唯一無二のデザインであるべき」と義肢のデザインにも独自性や優美性を追求している。

前述の通り、義肢に限らず多くのプロダクトを3Dプリンターから作り出している Summit 氏。体をスキャンし、機能している脚を反転させると左右対称が実現でき、指紋と同じくらい唯一無二のものが出来上がる。

デザインの力によって驚くべきことは、元サッカー選手の友人のために、義肢にスポーツバッグを彷彿とさせるデザインを施したところ、装着時に体が記憶していた感覚を取り戻し、ボールをコントロールできるようになったという。はたまた、バイク事故で片足を失った友人には、ひざ下のタトゥーを柄としてあしらい、バイクの素材を用いたハイブリッドな義肢を作り上げた。

さらに、使用するカーボンフットプリントは極小で資源ゴミとして再生でき、制作費用は4000ドルほど。低予算で高品質の義肢を作れることも大きな特徴だ。

Summit 氏が世に送り出したいのは「人間らしいものではなく人工的なもの、かっこよく、美しく、姿を変えたことを世界中に見せたくなるもの」。これからも工業デザインの世界に新しい風がどんどん巻き起こりそうだ。

[TOP動画引用元: https://www.youtube.com/watch?v=fir5HI0Gwrc&t=29s

(text: Yuka Shingai)

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