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“移動” まつわる価値観、どう考える?環境にも社会にも優しいベルリン発シェアリングモビリティ「TIER」

Yuka Shingai

2019年に約740億8000万米ドルに達し、2026年までの年平均成長率20.21%以上が予測されている世界のライドシェアリング市場。各国のスタートアップから次々と新しいサービスが立ち上がり、ダイナミズムを巻き起こしている。 今回紹介する、ドイツ・ベルリンのシェアリングモビリティサービス『TIER』は、2018年に設立、2019年にサービスローンチとまだその歴史は浅いながらも、強力なステートメントで確固たる地位を築こうとしている。日本でもさらなる普及が見込まれるシェアリングモビリティについて世界の事例をチェックしてみよう。

TIERは電動キックボードのライドシェアからサービスを開始し、2020年5月からは電動モペット(エンジン付き自転車)の提供もスタート。
専用アプリをモビリティにかざし、ロックを解除すれば乗車でき、利用を終えるときはパーキングの所定エリアでアプリの「END RIDE」をタップすればOK。

電動モペットを利用する場合は免許証をアップロードする必要があるが、着用義務が課せられているヘルメットは自分で用意しなくても付属のトランクに内蔵されているため、気が向いたときに「ちょっとそこまで」の感覚で試せる大きなアドバンテージとなっているはずだ。

TIERの事業背景には環境保護が大きく関わっており、気候変動防止に努める組織ClimatePartnerとパートナーシップを締結し、CO2排出量の減少を目指すほか、モビリティの生産や輸送プロセスにおいても排気を減らす取り組みを模索し続けている。
更には、モビリティの充電や倉庫の運営にはグリーンエネルギーを使用、社内イベントではベジタリアンメニューを提供し、日々の業務から交換可能なバッテリーを導入、カーボンオフセット活動に注力するなど環境対策を徹底した結果、何と6000ヘクタール(サッカー場8400個分)の森林保護に成功しているという。

また、コロナウイルスの流行下ではフランスとノルウェーで「TIER HEROES」という特別プログラムをスタート。医療従事者からスーパーマーケットや薬局の職員、運送業者などを対象にTIERのモビリティを無料で利用できるクーポンを発行し、感染リスクに晒されながらも通勤するエッセンシャルワーカーをサポートしている。

現在、ドイツ国内の主要都市を筆頭に、オーストリア、スイス、フランスや北欧諸国など利用可能エリアは欧州がメインだが、そのエシカルな魅力で、これから大きくシェアを伸ばしていくことになりそうだ。

前回紹介した「Whim(http://hero-x.jp/article/9470/)」をはじめ、欧州でシェアリングモビリティが普及しているのは、EU領域の自由な往来など “移動” の概念が他地域とで異なるからであるという説もある。“移動の自由” を価値とし整備されてあきた欧州と風土は違えど、ライフスタイルや時間への価値が見直されているわが国でも、所有欲は何に向けられていくべきなのか、未来を見据えていきたいものだ。

(text: Yuka Shingai)

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義足の裏にも、ブリヂストンあり!“接地を科学する”技術をスポーツのために【2020東京を支える企業】

中村竜也 -R.G.C

世界最大手のタイヤメーカーとして、創業より87年の歴史を誇るブリヂストンが、2017年「チームブリヂストン ジャパン」(以下、チームブリヂストン)を発足した。様々な困難と向き合い、夢に向かって挑戦し続ける人々の旅を支えるという思いを込め、このメッセージを体現する萩野公介選手(競泳)、スマイルジャパン(女子アイスホッケー)らオリンピックを目指すアスリート、谷真海選手(パラトライアスロン)や田中愛美選手(車いすテニス)らパラアスリートをアンバサダーに任命。さらに、彼らの挑戦を長きにわたり培った技術を活かして支援している。そして、その先へと繋げるための活動とは一体どのようなものなのだろうか?

ワールドワイドオリンピックパートナー、東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナーとして、選手たちの支援を行っているチームブリヂストンであるが、主にどのような活動をしているのかがまず気になるところ。

「具体的には、IOC(国際オリンピック委員会)のワールドワイドオリンピックパートナー、東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナーとして、東京2020に向けて大会の開催を支援し、また国内の機運を高めようという活動を行っています。例えばその一環として、オリンピアンやパラアスリートに当社の拠点や技術センターに来ていただき、子供達が彼らと一緒にスポーツを体験するイベントを開催しています。多くの方にオリンピックやパラリンピックへの理解を深めてもらう良い機会となっています。

また、ブリヂストンの従業員にパラリンピックを目指す国内トップアスリートがいます。彼らはチームブリヂストンのブランドアンバサダーとして、当社が掲げるメッセージ「CHASE・YOUR・DREAM」をプロモートしてもらっています。アスリートやパラアスリートの活動は、主に東京2020に向けたオリンピック・パラリンピックのマーケティング活動となっています

企業として、どのように社会に貢献出来るかを、常に考えている広いビジョンが、活動から伺える。そしてもう一つは、アスリートを技術面でサポートする活動だという。

「会社としてのコア技術を活かし新しいことに繋げることが出来ないか、というのを常に探し出すことを前提に、世の中の困りごとが解決できたらなという思いで活動しています。その中で、パラアスリートと話す機会をいただいたことで、パラアスリートの用具に関する不便さを実感し、この取り組みが始まりました」と話してくれたのは、ブリヂストン イノベーション本部の小平美帆さん。

どんな路面でも安心して走らせたいという思い

「そこでの具体的な活動内容は主に選手たちを技術面からサポートするということ。たとえば、パラトライアスロンの秦由加子選手だと、自転車の供給はもちろんなのですが、使用している義足のソール部分も開発させていただいています」。ソールは、地面とのインターフェイスとなる最も重要な箇所。一体どのような視点から開発が進められているのだろうか。

「ソール部に関しては、二つの視点から取り組んでいます。まずは、ゴムや高分子複合材というものを扱う技術がブリヂストンにはあるということ。プラス、タイヤを開発するときに重要になってくる接地という概念。この二つに通ずる部分から我々が持っている技術として何か出来ないかというところを軸に、ソールの開発をしています」

そもそもトライアスロンは、水泳、自転車、長距離走の三つの種目で一つの競技として成り立っている。それぞれ全く違う競技だけに、一つのソールを付けた義足だけで行うのは難しいと感じるが、実際はいかに。

秦選手の場合は、自転車と長距離走で義足を使い分けています。その中でも私たちが関わっているのは、水泳から自転車に乗るところまでに装着する義足と、長距離走の義足です」

開発中の義足ソール(プロトタイプ)。

普段当たり前のように歩いている我々が接地という概念を気にするはずがないのだが、小平さんの話を聞かせていただき、これだけ地面と接する部分がアスリートやパラアスリートには大切なのかということを痛感した。そこには、世界各地どんな路面でも安心して走ってもらいたいという願いが、原動力として確実に存在している。

選手たちとの連携や
コミュニケーションが開発を進める

「やはり、開発するにあたり重要なのは、選手がどんなことに困っているのかを的確に把握すること。その上で練習や試合の場に足を運び、選手からのフィードバックを分析して開発につなげていくという地道な作業が重要となってきます。そして、選手たちの意見をどう科学的に組み立てていくということが、私たちにとっても思ってた以上に新しい分野で、日々学びながら私たちも選手と一緒に成長させていただいています」

選手をサポートするには、パートナーとして互いを理解し信頼関係を築くことが重要なのがよく伝わった。ではそもそもどんな出会いから、チームブリヂストンの選手達と繋がっていったのか。
「通常は何のコネクションも無いところから私たちがコンタクトを取り、ヒアリングをさせていただく形でチームブリヂストンに加入していただいたのですが、秦選手に関してはちょっと特殊で、ブリヂストンのグループ会社であるブリヂストンサイクルが自転車のサポートを行っていた選手というのがたまたまマッチした珍しいケースです」

これだけの大企業が、草の根運動的な動きで選手たちと繋がっていったのかと思うと、頭が下がる思いになる。

夢を追いかける人をサポート

「また、チームブリヂストンは、いわゆる実業団のチームとは違う位置付けで、メンバーやチームを応援してくれている皆さんがいて成立しているチームです。端的に言うと意識の共有。その核に、“CHASE YOUR DREAM”というメインテーマが存在しているわけです」

小さな技術の種を、世界レベルまで育て上げてきたブリヂストンだからできる社会貢献の方法。彼らが見据えるその先には、進化とともに開く明るい未来が常に存在しているのだろう。今後もHERO Xは、チームブリヂストンの動向に注目していきたい。

(text: 中村竜也 -R.G.C)

(photo: 河村香奈子)

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