医療 MEDICAL

コロナ期だからこそ乳がんなど基礎疾患の早期発見を予防医療に役立つテクノロジー2選

HERO X 編集部

新型コロナウイルスの流行で、人間ドッグなどの予防医療にも影響が出ている。しかし、気になる症状を放置していたり、定期健診をおろそかにしたりすることは、重大な疾患を見逃す事態にもつながりかねない。そこで、触診などを受けなくても、病気の予防ができるシステムやアイテムに注目してみた。がんの早期発見に役立ちそうなテクノロジー2例を紹介する。

「乳がんミアテスト」の精度向上に
AIを提供着けるだけで早期発見!
乳がんリスクを感知するブラジャー

「乳がんミアテスト」の精度向上にAIを提供

血液だけの検査で疾患因子を検出し、疾患リスクの判定に役立てる「ミアテスト」。このたび、株式会社ミルテルが提供する乳がんミアテストに、AIプラットフォーム「DataRobot」と、診断への支援プログラム「AIサクセスプログラム」が提供されることになった。

従来の乳がんミアテストでは、手動で作成した数式ベースの予測モデルを活用していた。今回、乳がんミアテストの開発にAIプラットフォームやプログラムを適用することで、さらなる乳がんの早期発見・診断をめざす。また、AIによる分析で検査の精度を上げていくと同時に、人材育成支援なども推進していく。

乳がんには早期発見が重要だということは広く知られているが、新型コロナウイルス流行下では、医師の触診を含む通常の定期検診は受けづらい。今後、流行が長引けば、数か月間は全く検診が受けられないこともありうる。血液によるリスク診断の精度が上がることは、多くの女性にとって朗報といえるだろう。

着けるだけで早期発見!
乳がんリスクを感知するブラジャー

元記事URL:http://hero-x.jp/article/4068/

バイオセンサーに特化したメキシコの企業 Higia Technologies では、乳がんの早期発見を促すブラジャーも開発された。同社が昨年量産化に踏み切ったのは、『EVA』というセンサーブラジャー。乳がんの腫瘍発生時の部位の変化や、乳房の体温の変化に注目し、その変化が続けば乳がんリスクが高いとして、ユーザーに警告する。

装着は1週間に一度、1時間でOK。Bluetoothを介してユーザーのタブレット内のアプリへ結果を送信し、乳がんリスクを分析する。1着120ドル (約1万3千円)というお手軽さも良心的。高めの下着を購入する感覚で手に取ることができる。

疾病流行下では、予防医療や定期健診は後回しにされがちだ。しかし、健康を維持するためには、早期発見が重要。通院しなくても病気のリスクが感知できるテクノロジーは、今後ますます必要とされそうだ。

(text: HERO X 編集部)

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たった1分で病理診断が可能に。AIで医療を変革する会社「メドメイン」に注目 前編

下西 由紀子 | Yukiko Shimonishi

「精密検査」と聞くと、検査を受けてから結果が出るまで時間がかかるもの、というイメージをお持ちの方が多いだろう。時間がかかる最大の理由は、細胞組織を診断する病理医の不足だ。そんな中、わずか1分程度で病理画像を解析するAIソフトの開発に取り組み、急成長を遂げている会社がある。九州大学医学部の学生が立ち上げたスタートアップ、株式会社メドメインだ。

医学部生が立ち上げた
医療に特化したスタートアップ

社名のメドメイン(Medmain)は、医療を表す「Med」、IT用語でネットワーク領域を表す「Domain」、将来的に医療の中枢にという願いを込めた「Main」の3つの言葉を組み合わせた造語。九州大学の医学部生、飯塚 統(いいづか おさむ)さんが中心となり、2018年1月11日に立ち上げた医療ITの会社で、九州大学「起業部」第1号のスタートアップだ。患者から採取した細胞組織にがん細胞や腫瘍がないかをAIで診断する病理画像診断ソフト「PidPort」(ピッドポート)を開発し、2019年中の製品化を目指している。

創業時4名だったスタッフは、わずか1年で約60名に(うち4名は大学在学生)。資金も2社を引受先とした第三者割当増資により、1億円を調達した。開発の中枢を担うのは、飯塚さんと韓国人のAIエンジニア、フランス人のWebエンジニアで、ほかにもイギリスとクロアチアのエンジニアが母国よりリモート参加している。開発にあたっては、19名の病理医と契約、また国内外20の医療機関と連携して共同開発を行っている。

日々データ画像を見ながら開発を進めている

PidPortは、大量の病理画像をAIに学習させるDeep Learningと独自の画像処理技術によって開発された。患者の病理画像データをアップロードすると、AIが診断項目をチェックして解析を行う。かかる時間は、わずか30秒から1分。スピーディーなだけでなく超高精度。その解析をもとに医師が最終的な診断を行い、早ければ検査当日に患者に結果を告げることが可能だ。

従来、病理医が行う方法は、患者から採取された細胞組織の標本を、顕微鏡を使って確認し、診断していくというもの。現在、日本には約2000人の病理医しかいないことから、ほとんどの病院では、病理医のいる施設へ標本を送り、診断結果を待つことになる。患者は結果が出るまで1週間から3週間、待つことを余儀なくされる。メドメイン社の事業開発責任者、岡本 良祐(おかもと りょうすけ)さん(熊本大学 医学部在籍)によると、「乳がんの疑いがあると言われた患者のうち、約3割の人が検査結果が出るまでに軽いうつ病にかかるというデータがある」という。

患者側、医療者側、
双方に生まれる大きなメリット

現時点では、研究のためα版として特定の医療機関のみでテスト運用しているが、もし製品化されれば、患者側、医療者側、双方にとって大きなメリットがある。

患者にとっては、待つことに伴う精神的な負担が軽減される。また、待つ間に症状が進行してしまう場合もあるので、それを食い止めることも可能になる。

一方、医療者側にとっては、早めに適切な医療サービスを提供できるという利点がある。

しかし、それだけではない。「このソフトは病理医の労働環境の改善にもつながる。病理医の仕事は、膨大な量のデータを顕微鏡で見て慎重に診断を行う過酷なもの。ソフトを導入することで、病理医1人にかかる負担を軽くすることができる。AIはレアな病気を発見することも可能なので、支援ツールとしても活用できる。また、病理医の多くは、病気を発見するだけでなく、その病気の原因や進行の様子を研究したいと考えている。AIを導入することで、病理医が自分の研究に力を注ぐ手助けになると考えています」(岡本さん)

現在は、ニーズの多い胃と大腸の診断に限定しているが、次は乳がんなどの婦人科系にも力を入れ、最終的には全部位を網羅したいと意欲を示している。

メドメイン株式会社HP https://medmain.net/

後編へつづく

(text: 下西 由紀子 | Yukiko Shimonishi)

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