対談 CONVERSATION

スポーツ弱者を減らせ!「ゆるスポーツ」の仕掛け人、澤田智洋の挑戦 後編

運動音痴でも気軽に楽しめるスポーツの創造。この挑戦を続けるのが一般社団法人 世界ゆるスポーツ協会。こたつの上で湯呑を使ってデジタルみかんを弾き飛ばしゴールを決め合う「こたつホッケー」や、ばらばらになった靴下からペアを見つけて籠に入れる「くつし玉入れ」など、くすっと笑えて誰もが楽しめる斬新なスポーツをいくつも生み出している。自らをスポーツクリエーター・福祉クリエーターと呼ぶのが同協会で代表理事を務める澤田氏だ。澤田氏はスポーツを通して何をなそうとしているのだろうか。『HERO X』編集長の杉原行里が澤田氏が見る未来について伺った。

スポーツをリノベーションする

杉原:前編に引き続きお話を伺いたいのですが、新しいスポーツの創造により、澤田さんは何をしたいと思っているのでしょうか。

澤田:一番わかりやすいのはスポーツの再定義です。これについてはゼロから何かをつくるのではなくて、リノベーションでいいと僕は思っているんです。明治維新以降に入ってきた近代スポーツって、日本の場合、過去の悲しい歴史色が入ってしまい過ぎなところがある気がしているのですが、その後についても経済成長と共に歩んで来てしまったためか、スポーツの定義がすごく狭いなと。前編でもご紹介いただいたトントンボイス相撲は、スポーツを薬に見立てているんです。発声をすることによって心肺機能の強化につながる。遊んでいたらリハビリもできちゃったみたいな状態を生み出せるので、高齢者にスポーツを処方するみたいな。そう考えると、僕らは色んな風に健康に寄与できるスポーツをつくっているわけです。

“ゆる”が飛び越えられる壁

杉原:そうなると、狭かった定義が広がりますね。

澤田:そうなんですよね。せっかく2020東京があるのですから、これを活かせたらおもしろいなとも思います。何か日本は面白いスポーツの解釈をし始めたぞというのが世界に少しでも認知されたら十分かなと思っています。

デジタル技術との融合でこたつがホッケー台に変身

澤田:そんなわけで、「ゆるスポーツ」は今年から海外にも出して行っているんです。

杉原:なんか「カワイイ」と同じ感じで「ゆるスポーツ」が日本発の言葉として定着したら面白そうですね。

澤田:そうなんです。ゆるって言葉が実はポイントで、ダイバーシティやバリアフリーとかも言葉は入って来ていましたけれど、日本人がそれを腹落ちするレベルで理解するには時間が掛かったじゃないですか。イノベーションって言葉も認知はしたけれど、ちゃんと理解されてない感じもしますよね。僕は日本人だったら日本語ワンワードで勝負すべきだと提唱していて、直訳できない日本語に価値があると思うんです。

澤田:ゆるって言葉をアメリカ人とかに説明する時、ゆるっていうのは、リベラル、オープンでクレイジーで多様性があって創設的でみたいな。これはもう僕の解釈ですね(笑)。だけどゆるってコンセプトはやはり英語圏にはないんです。ゆるって言葉のすごくいいのが、みんなばかにするわけですよね。そこががすごいよくて。

杉原:なるほどね。たしかに英語にはできない表現ですね “ゆる” は。

澤田:人間の営みって放っておくと敷居が高くなって硬直してくるのですよね。組織も人の体もそうだし。それを人工的にもう1回ほぐすということが、“ゆる” だと僕は思っています。

杉原:狭い捉え方しかできていなかったスポーツの捉え方をほぐしてくれるということですか?

澤田:そうですね。人間、カッコいいものが好きな人もいるけれど、カッコいいアレルギーみたいなところがある人もいて、クスッとできる “ゆる” の要素は意外と万能だと思うんです。だから今、手掛けている視覚障がい者用に作っている肩に乗せて道案内とかをしてくれるロボットも、ちょっとかわいい忍者風にしていて、これ、多言語化して外国人観光客が使っても面白いと思うんですよ。スポーツも、どこかカッコいいばかりじゃなくて、遊び心がある “ゆる” が入ることでアプローチできる人が増えると思っています。

前編はこちら

澤田智洋
1981年生まれ。幼少期をパリ、シカゴ、ロンドンで過ごした後17歳の時に帰国。2004年広告代理店入社。映画「ダークナイト・ライジング」の『伝説が、壮絶に、終わる。』等のコピーを手掛けながら、多岐に渡るビジネスをプロデュースしている。
誰もが楽しめる新しいスポーツを開発する「世界ゆるスポーツ」協会代表理事。一人を起点にプロダクトを開発する「041」プロデューサー。視覚障がい者アテンドロボット「NIN_NIN」プロデューサー。義足女性のファッションショー「切断ヴィーナスショー」プロデューサー。高知県の「高知家」コンセプター。

 

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対談 CONVERSATION

【HERO X × JETRO】トップランナーは中国発のスタートアップなのか!世界が注目する無人販売EV

HERO X 編集部

「New Normal (ニューノーマル) 社会と共に歩む」をテーマに昨年開催された日本最大級のテックイベント『CEATEC 2020 ONLINE』にて、17カ国・地域から45社の有力スタートアップが集結した、JETRO設置の特設エリア「JETRO Global Connection」。参加した注目の海外スタートアップ企業を本誌編集長・杉原行里が取材。無人配送にも使える小型自動運転車両を提供する中国の新石器(Neolix)。同社の小型自動運転車両は、受注台数を着々と伸ばしており、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、ピザハット、コカ・コーラ等のリテールや飲食企業も顧客に含まれている。中国から日本へ、国境を超えたイノベーションの創出をめざす、同社の海外事業総代表にお話をうかがった。

マルチに使える自動運転車両

杉原:御社が手掛ける事業内容について教えて下さい。

呉:自動運転車両の研究・開発と生産を行っています。自動配送のみならず、小売、セキュリティパトロールなど、さまざまな業種で幅広いサービスの展開を考えたカスタマイズ可能なモジュール方式のスマート車体、電池交換により7日間24時間連続稼働を実現するノンストップサービス、車体の製造とシステムの構築を自社で手掛けており、現在の工場(の設計上)生産能力は1年間に1万台ほどです。

杉原:ホームページを拝見し、「時代の潮流に乗っているな」と。医療サービスの提供や食品の販売など、あらゆるソリューションを柔軟に搭載でき、搭載された内容に合わせてEVが自由自在に走り回る。その姿に感激しました。

呉:ありがとうございます。最新モデルの『X3』はモジュール設計になっていて、用途によってさまざまなスマートハードウェアを組み合わせ、コンテナ部分をカスタマイズできます。たとえば食品の小売では、食品ごとに最適な温度管理がされた貨物ボックスのモジュールを用いることで、天候に左右されず、温かい食事や冷たい飲み物などを最適な温度管理のもとで運搬し、ユーザーに提供することが可能です。今後もこうしたモジュールを追加していく予定です。また、車両に搭載されたタッチパネルやスマートフォン上での簡単な操作で、購入や決済もできるといった、エンドユーザーにとって高いインタラクティブ性も実現しています。

杉原:御社の取り組みは、次世代の流通サービス「ラストワンマイル」の課題解決という面において、非常に価値の高い製品だと感じました。

呉:そうですね。物流や配送に限らず、リテール、パトロール、教育等公的サービスなど、さまざまな用途を構想できるのが弊社のサービスの強みです。

杉原:現在日本においても、このような無人走行はさまざまな分野の課題解決につながるものとして、熱い注目を浴びています。スペック面ではどのような特長があるのでしょうか。

呉:国の規制や利用条件などによってかわりますが、スピードがある程度出ることも特長だと思います。平均運行時速は5-11km、最高時速は時速50kmに達することが可能な設計です。

杉原:先程の話だと、自社でバッテリーも開発しているのですね。

呉: そうです。自社でバッテリー工場を有しており、一回の充電で満載状態の無人車を100km走行させることが可能です。

法的壁を乗り越え実証へ

杉原:ハード面・ソフト面に加え、開発・製造・サービス展開まで自社で手掛けてるところに、御社の製品の独自性やプライオリティ(優位性)があるように思います。このサービスの開始当時は、どのような分野から取り組んでいったのでしょうか。

呉:この会社を立ち上げたのが2012年、自動運転車両に着手したのは2015年頃です。アイデア段階から車両の研究・開発を行い、2018年には現在の小型自動運転車両のモデル車両が完成し、ローンチしました。

杉原:なるほど。中国で無人運転を行うのは法律や規制の面で障壁はありましたか。

呉: 公道の走行許可取得には相当な時間を要しました。政府の関係部門は事故の危険を防ぐために安全性の調査を実施するとともに、半年ほどの時間をかけて地域住民へのメリットの有無を仔細に検討します。許可証の取得条件はエリアによっても異なりますが、2021年5月25日には北京のハイレベル自動運転模範地区の無人デリバリー車管理政策で、当社は初めて無人デリバリーのトップ企業として「NX0001」無人デリバリー車両ナンバー(図参照)の交付を受け、中国初の合法的な公道走行を実現しました。また、お客様に一番近い無人デリバリーコンビニエンスストアとして、中国初のスマートネットワーク自動車政策先行実施エリアで無人車サービスネットワークを構築し、今では(エリア内の)お客様に広くご利用いただいています。

杉原:とくに御社のテクノロジーに高い関心を寄せてくるのはどのような分野の方々なのでしょうか。

呉:サービスをスタートした当初から、いろいろと用途が広がってきています。中国では現在フードカートの需要が最も高く人気があり、今後も力を入れる予定です。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって非接触型のサービスが一気に高まり、徳邦物流(デッポンロジスティクス)、中国郵政(チャイナポスト)、スイスポストなどから受注をいただいています。

医療サービスや街の安全も無人EVにお任せ!?
パトロール車としても役立つ

杉原:コロナ禍で小売業のみならず、医療サービスの分野でも自動運転車両のニーズが高まっています。御社でもそうしたサービスを展開しているのでしょうか。

呉:はい。医療分野に関してはタイのバンコクにある病院とパートナーシップを結んでいます。そのほかにも用途は多岐にわたり、中国では無人セキュリティパトロールの実証が始まっており、遠隔で授業ができるスマートキャンパスの実験など、教育サービスへの活用もスタートしています。

シンガポールの病院と行ったコロナの感染予防キャンペーン

オーストラリア企業YDriveとのオーストラリアでの自動運転教育車分野の活用

杉原:日本では超高齢化社会をはじめ、さまざまな問題を抱えていますが、それらに対しても御社の技術は大きく貢献してくれそうです。今後日本ではどのようなサービスを展開していこうとお考えでしょうか。

呉:日本での展開に関しては新しい用途を考えていて、すでに日本企業とのパートナーシップを締結しています。

杉原:すでに御社の製品に対する注目は高いですが、今後の展望や課題はありますか。

呉: 当初は大手企業の用途に合わせて、受注生産のような形で対応してきましたが、それには大規模なコストがかかり、導入可能なのは大企業に限られています。今後私たちのビジネスをスタンダートなものにしていくために、いま挑戦しているのが、製造費をコストダウンし、大規模な商用化を実現することです。製造費を安く抑えることができれば、より広い分野で、より大規模にビジネス展開が可能になります。製造コストと大規模商用化においては、現在のところ、我々は業界のトップリーダーの地位を占めています。

杉原:これだけマルチに使えるとなると、今後御社の製品はますますシェアを大きく広げていくでしょうね。それによって大きなパラダイム・シフトが起きると予想されますが、今後5年で未来はどんなふうに変貌していくと思いますか?

呉:そうですね。実は今、街の管理やセキュリティのような公的サービスのほか、広告サービスも考えています。多岐にわたるパートナーと組んでいくことで様々なニーズを網羅し、自分たちの技術でスマートシティを実現したいと思っています。また、情報をプラットフォーム化したり、データ化したりして、より細かなニーズや潜在的なニーズにも対応できるようにし、新しいライフスタイルを提供したいと願っています。

杉原:スマートシティの実現が目に浮かぶようで、とてもわくわくするお話でした。ありがとうございました。

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(text: HERO X 編集部)

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