テクノロジー TECHNOLOGY

Monthly Selection:8月のおすすめ記事Best5

HERO X 編集部

おすすめの記事をまとめて紹介する「Monthly Selection」。まだまだ暑さの残るこの季節、さまざまな分野で情熱を燃やす、熱きイノベーターたちの記事をピックアップしました。

ロボットを着て動き回れる世界を夢見る、
社会実装家・藤本弘道
【the innovator】

自らを“社会実装家”と呼ぶ株式が社ATOUNの藤本弘道社長。物流と工場に特化したパワーアシストスーツを中心にした製品展開の先に見ている、「パワーバリアレス社会」とは?藤本社長の創造力の源泉を探りました。

“脳卒中が治る”未来を描く、
リハビリテーション神経科学の可能性
【the innovator】

「脳の機能は、一度でも深刻なダメージを受けると回復できない」という医学界では当たり前の概念が覆そうとしているのは、工学と医学の世界を行き来する異端の研究者牛場潤一氏。まるでバーが併設したアート展示空間のような、ユニークな研究室でお話しを伺いました。

センシング技術のプロが、
「帝人フロンティア」とタッグを組んだ理由
【the innovator】

あの繊維メーカーの「帝人フロンティア」と、主にスポーツ分野における動きや生体信号を計測するデバイスの開発を得意とする「帝人フロンティア」。そんな二つの会社がタッグを組み、革新的なウェアラブル製品の開発を目指す「帝人フロンティアセンシング」という会社が誕生したと聞き、取材に向かいました。

「半分、青い。」に登場した、
ピアノを弾くロボットハンドの生みの親とは?
【the innovator】

高視聴率を誇ったNHK連続テレビ小説「半分、青い。」その中に登場した、ピアノで「ふるさと」を演奏したロボットを覚えている方も多いのでは?今回は、そのロボットアームの開発者、深谷直樹准教授にインタビューする機会をいただきました。

テクノロジーを基盤に、
コミュニケーションの垣根を越える。
『WITH ALS』武藤将胤の目線
【the innovator】

ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患いながら、“テクノロジー”と“コミュニケーション”を軸に音楽、ファッション、モビリティなど多彩な活動を展開する『WITH ALS』代表、武藤将胤氏。そんな彼に、人間の能力を拡張しうるテクノロジーの役割について聞いてみました。

(text: HERO X 編集部)

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テクノロジー TECHNOLOGY

未来のものづくりはコラボレーションから生まれる!「ダッソー・システムズ」のプラットフォーム 前編

富山英三郎

全世界で25万社以上の法人顧客を抱え、世界1万7000人の社員数を誇る、フランス最大のソフトウェア会社『ダッソー・システムズ』。技術革新のみならず、積極的な M&A で成長してきたビジネス界では名の知れたビッグカンパニーだ。しかし、製造業をはじめとした B to B (企業間取引)、B to B to C(企業が個人消費者向けに商売するのを手伝うビジネス)向けのサービスが中心で、しかもソフトウェアという目に見えないものを提供しているために、一般にはあまり馴染みがない。 そこで、まずは同社の歴史やサービスの歴史を踏まえながら、これからのものづくりが進んでいく未来について、アカデミアプログラムディレクターのフィリップ・コカトリックスさんに話を訊いた。

地球上の9割の航空機は
同社のソフトで設計されている!?

ダッソー・システムズの設立は1981年。もともとは、フランスの戦闘機『ミラージュ』や、ビジネスジェット機の『ダッソー・ファルコン』の製造で知られる、ダッソー・アビアシオン社の開発部門であった。

1960年代、設計といえば製図道具を使い手で線を引いていたが、メインフレーム(汎用大型コンピューター)の登場により、コンピューターで設計をおこなう動きが加速。ダッソー・アビアシオン社も1970年代後半より、設計や風洞実験ができる独自のソフトウェアを開発することとなる。その後、自社ソフトを一般販売することになり、分社化して誕生したのが『ダッソー・システムズ』というわけだ。

そんな経緯もあり、ダッソー・システムズ = CADソフトの会社として認知している人は多い。もちろん、現在も3D CAD設計ソフト『CATIA(キャティア)』は主力製品であり、特に航空産業では広く使用されている。地球上で飛んでいる9割の航空機はこのソフトを使って設計されていると言われるほどだ。

1989年、設計されたパーツを
パソコン上で組み立てることに成功

「当初は、CADソフトを使って各種パーツを設計すること自体が革新的でした。その後、それらのパーツをデジタル空間の中で組み立ててモックアップ(試作品)まで制作できる、“3D DMU“という手法を1989年に打ち出します。ボーイング777は、ダッソー・システムズのDMUを全面的に使用して設計された最初の商用航空機でした。」

一般的に、製品を販売するまでには各種の検証が必要である。そのためには、フィジカル(物理的)な試作品を作るのがセオリー。しかし商用航空機のような試作品を制作するには、膨大なお金と時間を要する。しかも、仕様変更があれば、新たに試作品を作りなおさなければならない。しかし、デジタルモックアップであれば、設計変更や検証をデジタル上のデータモデルを使って行えるため、お金も時間も大幅に削減可能だ。

CATIA Version 4では、製品の完全なデジタルモックアップ(DMU)を実現し、仮想空間での製品の検証や確認が可能に。

他部署との連携を可能にした3D PLM

「10年後の1999年には、3D PLM(プロダクト・ライフサイクル・マネジメント)を打ち出しました。これは、設計から所有まで、製品のライフサイクル全体を管理できるシステムです。各種実験やシミュレーションをデジタル上でおこなうのみならず、製造から販売後のメンテナンス、廃棄処理の方法までもデジタルデータを連携させながら管理できるようになりました。それまで、企業の各部門(設計、解析、製造など)は、それぞれ専門性が高いゆえにサイロ化(他部署と連携できずに孤立化)してしまう問題がありましたが、PLM によって各工程をシームレスにつなげて連携することができるようになりました」

従来、各部署の設計や解析といったデータはそれぞれのソフトでおこない、仕様書のようなファイルの受け渡しと変換が必須だった。しかし、お互いの分野が専門的すぎるがゆえに、各部署の連携がうまく行かず、ファイルの散逸やファイル変換に伴うミスがおこるという欠点も。PLM はこうしたサイロ化を回避しミスを削減できるという画期的なものであった。

現在はVR でクルマのドアの開閉音も確認可能

「2012年にはさらに進んだ、3DEXPERIENCE プラットフォームを発表しました。こちらも主な目的は、連携時のサイロをなくすというものです。さらに、製造部門のみならず、マーケティングやセールス、パートナー会社、さらにはユーザーまでもが同時にコラボレーションできるようになりました」


ダッソー・システムズが提唱する産業の未来、インダストリー・ルネサンス。「映像内の富士山とチューリップ以外は、ほぼダッソー・システムズのソフトウェアで作られたもの」とは広報担当者の弁。

EXPERIENCE(エクスペリエンス)とは経験や体験という意味。クラウド化されたプラットフォームの中心には、プロジェクトが目指すべき「エクスペリエンス」があり、それは3Dのデジタルツインで表現される。

「VR を使えば、クルマの運転席からの視界や、ドアの開閉音までも確認できます。また、高速道路を走っているときのエアコンの音と、田舎道でのエアコンの音の違いも確認できます。これまで、音に関しては何デシベルといった数値で表現されていましたが、マーケティングやセールスの人間は数値を見てもよくわかりません。逆に、ユーザーが納得する音のレベルがどの程度なのかは、技術の人間だけでは判断に迷うこともある。誰もが参加できるプラットフォームを設け、極めてリアルに近い3Dデジタル・モックアップを使いながら、音や質感などの細部も含めて経験する。そうすることで、部署を超えて問題点を議論することができます。ユーザーの体験は、音や質感、機能など、すべてを含む総合的なものですから」

プラットフォーム化およびデジタルツインの革新性は、部署を超えて対等&スピーディに話し合える点にある。しかも、物理的な試作品を作る前にあらゆる問題点を確認できるので、お金もかからない。もちろん、仕様変更もパソコン上でできるので簡単だ。製品の発売後も、ユーザーがネットに書き込んだ問題点などを即座に検討して対応することもできるなど、これからの製造業に必要な機能が詰まっているのだ。

後編へつづく

(text: 富山英三郎)

(photo: 増元幸司)

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