福祉 WELFARE

空の旅をバリアフリーにするANAの取り組みが、内閣総理大臣表彰を受賞

宮本さおり

セキュリティーチェックをスムーズにした樹脂製車いす「morph(モルフ)」をはじめ、誰もが安全で快適な空の旅を楽しめるための工夫を模索しつづける全日本空輸株式会社・ANAウイングス株式会社は、内閣府が創設した「バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」で内閣総理大臣表彰を受けたと発表した。内閣府がはじめたこの表彰は今回で16回目。航空業界の受賞は初めてとなる。

今回は、以前「HERO X」でも紹介した前述の「morph(モルフ)」や、絵文字などで分かりやすく説明するピクトグラムを活用し、多言語での案内を可能にした「コミュニケーションボード」、車いす利用者のプロペラ機への搭乗を楽にした「搭乗橋アダプター」の開発が評価され受賞となった。

樹脂製でありながら強度も万全の「morphモルフ」(写真提供 ANA)

「コミュニケーション支援ボード」はすでに実用化が進んでおり、現在17言語でサービスを提供している。同社は、天候の影響で便が遅れるなど、イレギュラーな事態が起こった際にはアナウンスをかけていたが、聴覚障がい者や英語が分からない海外の旅行者は聞き取ることができずに不安になることもあったと言う。こうした状況を打破するために開発されたのがタブレット型の「コミュニケーション支援ボード」だ。イラストや文字、音声で案内ができるため、言語、障がいに関係なく円滑なコミュニケーションが可能になった。

絵と文字、音声で分かりやすく伝えてくれる「コミュニケーションボード」

機体の高さが低く、通常の搭乗橋が接続できなかったプロペラ機への搭乗を、車いすに乗ったままの状態で可能にした「搭乗橋アダプター」は現在、松山空港、千歳空港、青森空港、鹿児島空港で運用されている。同社は、今後はプロペラ機が運航し、搭乗橋が設置されている全ての空港への設置を目指すと話している。

雨にもぬれず、余分な装置を装着しなくても簡単に搭乗できる「搭乗橋アダプター」

(text: 宮本さおり)

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「歩きたい」という想いを高める!歩行能力評価デバイス「AYUMI EYE」

Yuka Shingai

超高齢化社会が加速する中で、大きなカギとなっている高齢者に対する自立支援。今回紹介する『AYUMI EYE』は、歩行能力の評価により、高齢者の体力を測定するとともに、「運動したい」「自由に出かけたい」というモチベーションも高めてくれそうなアイテムだ。

モジュール(加速度センサー)を腰部に装着し、6~10メートル歩くだけで、独自のアルゴリズムにより歩行状態が「推進力」「左右バランス」「歩行リズム」の3点から分析され、合わせて「歩幅」や「歩速」も測定ができる。

画像提供元:AYUMI EYE (運営:株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団)

この分析結果は専用のiPad(iPhone)アプリで解析され、点数・マップ形式でスコア表示される。以前の結果と比較することで、機能訓練の成果が目に見える形で分かり、「歩きたい」というモチベーション向上に結びつけられるのが『AYUMI EYE』の大きな特色だ。

画像提供元:AYUMI EYE (運営:株式会社早稲田エルダリーヘルス事業団)

また従来、非常に複雑で時間がかかっていた体力測定が簡略化され、利用者やその家族が分かりやすい形で結果を伝えられるため、負担がかかりがちな介護スタッフの業務改善にもつながっている。

「AYUMI EYE」の開発を手掛けた早稲田エルダリーヘルス事業団が運営するデイサービス事業所「早稲田イーライフ」ほか、大学病院などの医療機関や自治体の地域支援事業など、導入事例も増加中。

これからより一層、介護の現場でテクノロジーの活用が求められることになりそうだ。

[TOP動画引用元: https://youtu.be/T-3G2XZQoO0

(text: Yuka Shingai)

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