テクノロジー TECHNOLOGY

リアルで器用すぎるロボットハンド 「バイオニック・ソフトハンド」の凄さとは!?

長谷川茂雄

人命救助はもちろん、高所や危険地帯で、あらゆる作業をこなしてくれるロボットは、多大な可能性を秘めている。その開発や技術はまさに日進月歩。昨今はAIを組み込むことで、さらに画期的なパフォーマンスを可能にしたプロダクトが続々と登場するようになった。なかでも世界176ヵ国でイノベーション・テクノロジーサービスを展開するドイツの企業、FEST(フエスト)が発表した「バイオニック・ソフトハンド」は、人間とそっくりな動きをすることで話題を集めている。その驚くべきテクノロジーとは?

仮想世界で自ら学習する、
安心安全な有能プロダクト

ドイツを拠点に、世界中でイノベーション・テクノロジーサービスを提供するFEST は、車輪型にも変形するクモ型ロボットや、古生代に棲息していたアノマロカリス型ロボットなどを続々と発表し、注目を浴びてきた。

そんな先端企業が次に手掛けたのは、空気圧ロボットと AI を組み合わせた「バイオニック・ソフトハンド」と呼ばれるソフトシリコン製ロボットだ。

この新たなプロダクトの大きな特徴は、人間の手と見間違えるほどのスムーズな動きをすることだが、ロボットそのものの内部には、骨に当たる構造がない。空圧で膨らむ蛇腹が弾性線維で編まれた表皮に包まれているため、とても柔らかく、人間が直接触っても極めて安全だ。そのため、工場での人間との作業連携においても心配は無用だ。

柔らかでありながら物をしっかり掴むというハイパフォーマンスや、12面体を激しく動かしても落とすことはない器用さを生み出しているのは、指先に配備された慣性(移動)センサーと力覚センサーだ。

これらセンサーは、手や指が動いているときのみならず、静止しているときもロボットの制御システムにフィードバックを提供する。人間でいえば、触覚のような役割を担っている。

しかも「バイオニック・ソフトハンド」は、センサーで情報を読み取りながら、タスクを実行する方法を自分自身で学習する。その工程は、AI と機械学習を搭載したデジタル・ツイン(仮想世界で現実の状況を再生・訓練)を使用するため、現実世界での経験を積むことなく、仮想的に何十億回も間違いをおかして、自らパフォーマンスレベルを高めていく。

これだけ安全面、機能面で信用度が高いロボットハンドならば、あらゆるタスクへ活用を期待せずにはいられない。今後のさらなる進化と具体的な実用化を待ちたい。

 

[TOP動画引用元:https://youtu.be/5e0F14IRxVc

(text: 長谷川茂雄)

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テクノロジー TECHNOLOGY

世界との差を巻き返せるか!?立教の大学院がAIに特化した研究科を開設

HERO X 編集部

脱「MARCH(*日本の大学群の通称)」宣言により注目を集める立教大学が2020年4月開設を目指して AI に特化した大学院研究科を設けることを発表した。メディカル、スポーツとテクノロジーの融合のなかで、今後ますます連携が見込まれるであろう AI 分野の研究に同大学はどう切り込もうとしているのか。

大学や企業研究所での研究が加速度的に進む人工知能 AI。だが世界的に見れば日本の研究はまだまだ浅く、アメリカや中国が拠点となりつつあるのが現状だ。最先端を追いかける研究が注目されるなかで、立教が視線を注いだのは AI やデータサイエンスに関わる人材の不足。AI 開発における国内の現状について、数カ月間の短期的な講座や研究室単位での部分的な取り組みに留まるものが多く、機械学習や深層学習(ディープラーニング)を中心とした AI 領域について学習・研究するカリキュラムが少ないのではないかと判断、これらの部分を中心にカリキュラムを設置し、文理融合型のプロジェクトを実際に動かす研究科を立ち上げることにした。

企業との連携も強化、産学連携による社会実装にも積極的に取り組む環境を整えるとしている。輩出する人材のモデルとして、「AIサイエンティスト」、「AIエンジニア」「AIプランナー」、「AIプロデューサー」といったものを置き、倫理的、法的、社会的諸課題に配慮したスペシャリストの育成を目指す予定だ。

育成する人材モデル

AI サイエンティスト
機械学習の数理モデルを深く理解し、高度な情報科学や統計学の知識を持ち、論文から最新の AI 技術を実装できる力を育成。先端的な機械学習モデルを主導できる人材を目指す。

AI エンジニア
エンジニアやプログラマー経験のある社会人が、AI 関連技術と既存技術を合わせて発展的に生かす力を育成。既存の AI 技術をソフトウェアで実装でき、実データに対して機械学習の応用ができる人材を目指す。

AI プランナー
基礎的な AI 関連知識を有し、業務活用を企画できる力を育成。ソフトウェア実装を経験し、エンジニアやプログラマーとコミュニケーションできる人材を目指す。

AI プロデューサー
ビジネス経験の豊富な社会人が、幅広く、そして深い AI 関連の知識や技術を身に付ける。それらを生かして製品開発やサービスの企画立案を主導できる人材を目指す。

医療の現場でも画像診断ソフトの開発をはじめ、AI技術を使った新しい研究が進められているが、この研究科の出現は医学の専門知識を持ちながら AI サイエンティストとしての力をつけられるチャンスとも言えよう。選考は今年4月下旬ごろを予定している。詳しくは同大学のHPへ。
https://ai.rikkyo.ac.jp/
※2019 年4月下旬に文部科学省へ設置届出を予定、記載されている内容は予定であり、変更の可能性がある。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/mi8VelUvwpo

(text: HERO X 編集部)

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