テクノロジー TECHNOLOGY

スキーや四輪レースの滑走・走行データを可視化!Cerevo発のセンサモジュール

長谷川茂雄

“IoT製品が生み出す新しい豊かさ” を求めてコネクテッド・ハードウェアの企画・開発を行っている株式会社Cerevo(セレボ)。同社がラスベガスで開催された電子機器の見本市、CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー) 2019に合わせて発表したのは、スキー板に取り付けるセンサーモジュール「XON SKI-1」と、四輪レース用のデータ表示・配信機器「XON ZECH-1」だ。ともに躍動感のあるスポーツの世界を、ヴィジュアル化する画期的なプロダクトだが、発売前にも関わらず、いま多方面から大きな注目が集まっている。その魅力に迫る。

スポーツのダイナミズムを
可視化するという試み

2018年には創業から10年の節目を迎えた株式会社Cerevoが、スポーツ用品ブランド「XON(エックスオン)」の新たな製品を発表した。そのひとつが、スマホやクラウドとの連帯機能を備えたスキー専用センサーモジュール「SKI-1」だ。

このプロダクトは、スマホ等のデバイスと連携することで、重心や負荷のかけ方といった滑りの状態を、グラフィカルに可視化してくれる。それにより、スキーのテクニックを合理的に向上させることができる。

しかもSKI-1は、GPSとLTEモジュールを内蔵しているため、万一、高価なスキー板を雪山で紛失してしまっても、スマホで位置情報を簡単に確認することが可能だ。

2015年に発売されたスノーボード用のセンサーモジュール「SNOW-1」も大きな話題となったが、その機能を踏襲したSKI-1は、いま最も旬なセンサーモジュールと言えそうだ。

さらに「XON」に加わった製品はもうひとつ、自動車レースの様子を走行データ付きで動画配信するためのデバイス「XON ZECH-1」である。

このXON ZECH-1をレース車両に搭載すれば、速度やエンジン回転数はもちろん、アクセル踏込量などの細かな情報を取得し、映像に重ねて表示することができる。

リアルタイムの可視化情報をYouTubeなどでライブ配信できるというのは、非常に興味深い。さらにピットにいるチームのメンバーも、いまどこを走っているのか? 残燃料はどのくらいか? といったことが共有できるため、レースの戦略を組み立てる際のツールにもなる。

「SKI-1」は2019年後半のスキーシーズン、「XON ZECH-1」は、2019年夏頃の発売予定。ともにCerevoならではのユニークな着眼点と確かな技術が結集した、独自性の高いプロダクトだ。

「XON SKI-1」画像引用元・参考
https://xon.cerevo.com/ja/ski-1/

「XON ZECH-1」画像引用元・参考:
https://xon.cerevo.com/ja/zech-1/

「XON ZECH-1」動画引用元:
https://youtu.be/TYz47sDLCTM

(text: 長谷川茂雄)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

テクノロジー TECHNOLOGY

最先端ロボットを実際に体験できる!藤沢に誕生した「ロボテラス」が凄い

Yuka Shingai

経済産業省が昨年5月に発表した調査結果「ロボットを取り巻く環境変化等について」によると、世界の産業用ロボット販売台数は2013年から2017年の5年間で2倍に増加し、今後も年平均14%増見込みとのことだ。ロボットを活用したビジネスや取り組みについても益々拡大することが予想される一方、私たち一般消費者がロボットを実際手に取って気軽に試すことができる場はまださほど多くない。もし身近な場所にそんな場所があったら…? まだまだ先と感じていたロボットと共生する未来も、すぐそこにあることを多くの人が体感することになるだろう。

60種類以上のロボットが常設で
展示・体験できるのは日本でここだけ

そんな場所を提供しているのが、今回取材した藤沢市にある『ロボテラス』。

ロボット業界でいま神奈川が “アツい” のをご存知だろうか? 藤沢市を含む神奈川県の10市2町を対象区域とした「さがみロボット産業特区」は、地域活性化総合特区として (2013年2月に国から指定) ロボットの開発・実証実験の促進、普及啓発や関連産業の集積促進事業に取り組んでいる。

対象区域のひとつである藤沢市は、生活支援ロボットに関して先進的な取組を開始し、2015年から「藤沢市ロボット産業推進プロジェクト」をスタート。 ロボットと共生する未来社会を目指して、関連事業への支援やロボット実用化の推進に積極的に取り組んでいる。『ロボテラス』は、そのプロジェクトの一環として普及・啓発を担う、最先端の生活支援ロボット展示・体験施設なのである。

昨年12月の某日、辻堂駅からすぐのロボテラスを訪れると、同施設の管理運営を行う公益財団法人 湘南産業振興財団の業務課課長補佐である秋本英一氏が出迎えてくれた。

公益財団法人 湘南産業振興財団 業務課課長補佐 秋本英一氏

早速試乗を勧められたのは、折り畳み式のトラベルスクーター『ブギウギ・ラギー』だ。

正式にはハンドル型電動車椅子(シニアカー)に分類されるが、公道走行可で最高速度は時速5㎞。実際のスピードを体感してみると、「高齢者のサポートを目的としたゆったりした乗り物かな」という想像が覆され、驚いた。スピードは歩行者とほぼ同じで、従来のシニアカーとは異なりコンパクトなので、幅狭な場所も気にせずスイスイ移動ができるのだ。

また、電動アシストウォーカー『RT.2』は、歩行器を押す速度と傾斜を検知してタイヤの回転数を自動で制御する機能により、傾斜があるところでは軽くなり、下り坂ではブレーキがかかって歩行をよりスムーズにしてくれる。

クラモトのトラベルスクーター『ブギウギ・ラギー』

『ロボテラス』には、これらの移動支援機器やロボットスーツ、ベッドからの移乗アシストを行うものなど介護・リハビリ系のロボットが豊富に揃っているが、スピーカーや掃除機といったかなり馴染みのあるスマート家電、さらには「癒し」効果にフィーチャーしたペットや赤ちゃんの形をしたヒーリングロボット、また会話を目的としたコミュニケーションロボットなど、取り扱うロボットの用途は多岐に渡る。

なかでも、子ども受けバツグンの『しっぽクッション Qoobo (クーボ)』は、秋本氏も一番のお気に入りだという。思わず抱きたくなる毛並みと、撫でると愛らしくしっぽを振るようすに、多くの人が虜になっていると聞く。製造販売元であるユカイ工学の実証実験でも高齢者から10代まで、セラピーロボットの癒し効果が確認されているようだ。

「最初は『何だろう、これ?』と訝しげに見ていた人も、抱いてみるとすぐに魅力にハマってなかなか手放せなくなるほど。可愛らしい、癒し系の商品でロボットを身近に感じてもらいたい」(秋本氏)

ユカイ工学の『しっぽクッション Qoobo (クーボ)』

2014年のオープン当初は、サイバーダイン社のロボットスーツ『HAL®︎』の実装を行う「湘南ロボケアセンター」がロボテラスの運営にあたっていたため、福祉系ロボットの展示がメインとなり、対象者が限定されることにより集客は若干難航していたという。

そこで、地元の住民にとって、より馴染みの深い施設を目指し、生活支援ロボットを取り扱うスペースとして2018年8月にリニューアル。新事業の創出や創業支援、中小企業等を支援し、地域産業の振興を図る公益財団法人 湘南産業振興財団が施設の運営を引き継いだ。同時に、今回取材対応をいただいた秋本氏がこれまで20年近くインキュベーションマネージャーとして起業家支援に携わってきた経験から施設責任者として抜擢されたほか、ロボットの使い方やスペックについてレクチャーする常駐のコンシェルジュが配属された。

期間限定のイベントや展示会、企業のショールームなど、特定のロボットが展示される機会は全国各地にあるものの、60種類以上のロボットが常設で展示・体験まででき、かつロボットの説明を受けられる展示場は、現在日本ではここだけであると海外からの見学者は口々に話すという。

「私が着任する少し前に、友人の家で遊んだ「aibo」が欲しいが、高価なためもう1度ここで触ってから買おう」と思っていた高齢の女性がいらっしゃったのですが、そのタイミングではまだ取り扱っておらず、体験してもらうことができなかった。その時の残念そうな顔が忘れられなくて今でも悔やんでしまうほど。

1万、2万の買い物ではないのだから絶対に体験した方がいいし、いろんな種類を自分の目で見比べてみた方が実際ご家庭で使用されるイメージも沸くでしょう。だから1種類でも多くのロボットを展示したいし、どんどん増やしていきたいと思っています」(秋本氏)

 開発段階から積極的に企業にアプローチを行い、
早期からの展示を実現

(株)エルエーピーの『パワーアシストハンド』

販売代理店や企業から直接持ち込まれることもあるが、なかには開発側が製作初期の段階から、ロボテラスに置かせて欲しいとアプローチしてきたものもあるという。体験者だけでなく、開発者にとっても魅力ある施設のようだ。

『ロボテラス』は、マッスルスーツなど最新モデルが登場すると早々に展示がスタートしていることもあり、話題の製品にはかなりの高確率で巡り合える場になっている。ロボットの導入を検討するベンチャー企業や起業家などの視察も多く、ロボットに関心のある人や企業を繋ぐハブの機能も果たしている。

来場者数はリニューアルから1年と2ヶ月強で1万人を突破し、順調な推移を見せているが、一方で日本国内での認知拡大は大きな課題と捉えているそうだ。

「実は来場者のうち割り合い多くが海外からのお客様。自分の生活をサポートしてくれるロボットが欲しいと、インターネット検索から私たちの元にたどり着いています。

日本でも急速に高齢化社会について言及されるようになったものの、当事者意識を持って捉えられている人は海外の方に比べるとまだ少数派なのかなという印象を受けています。

子どもはコミュニケーションロボットに触れて楽しめるし、祖父母世代には福祉・介護ロボットなど、全世代にとって生活支援ロボットが身近なものになっていくことが理想だから、ぜひ一度家族連れで遊びにきてほしいです」(秋本氏)

子ども向けのプログラミング教室やセミナーの開講で、
認知を広めていきたい

地域に根ざした団体が運営するからには、ゆくゆく、藤沢市に拠点を置く企業からロボットが生まれるのが目標だが、2020年から小学校でのプログラミング教育の必修化も始まることから、子どもたちへの教育にも力を入れていきたい、と秋本氏は語る。

すでに数回開講したScratch(プログラミングソフト)の講座は毎回すぐに満席になるほど好評を博し、小学校教員向けのプログラミングの勉強会も開催した。

「教育系のイベントは財団としての管轄ではないから、どこまで踏み込んでいいのかは探り探り。ただ、神奈川県の青少年課からはいち早く、ここでイベントをやりたいとオファーしてもらっているので、これからうまく情報共有していきたい」と、県の関連部署を越えた連携にも意欲を示す。

地域と密着した施設、そして最先端の技術を国内外に発信していく場として、ロボテラスが今後どのように飛躍していくか要注目だ。

(text: Yuka Shingai)

(photo: 増元幸司)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー