福祉 WELFARE

いよいよ実用化された「Hondaの歩行アシスト」を体験しにいこう!

HERO X 編集部

「Hondaの歩行アシスト」を手に取れるイベントが10月、東京ビックサイトで開催される。今年、欧州の「医療機器指令(MDD:Medical Device Directive)」より認可も取得。スマートなデザインでユーザーからの評判も良い。

本田技研工業は最新の福祉機器が集まる「国際福祉機器展」(10月10日(水)~10月12日(金)・東京ビックサイト)で「Hondaの歩行アシスト」の展示を行なう。同社は今年、「Honda歩行アシスト」について、欧州の「医療機器指令(MDD:Medical Device Directive)」に認可を申請、欧州での実用化など海外での販売も視野に入れはじめている。

二足歩行ロボットの研究で培った技術を用いて、医療機関・リハビリテーション施設向けの歩行訓練用機器として開発、2015年11月より国内の施設へのリース販売を開始した。2018年7月末現在、全国約250の病院・リハビリテーション施設に導入されている。欧州で許可がおりたとなればシェアは世界をまたいでますます広まりそうだ。

Honda歩行アシストは、「倒立振子モデル」に基づく効率的な歩行をサポートする歩行訓練機器。歩行時の股関節の動きを、左右のモーターに内蔵された角度センサーが検知、制御コンピューターがモーターを駆動するという仕組みだ。股関節が屈曲することによる下肢の振り出しを誘導し、伸展することによる下肢の蹴り出しの誘導も行う。この一連の動きが、使用者の身体に負担をかけることなく、スムーズで自然な歩行をアシストしてくれる。

また、腰フレーム、モーター、大腿フレームの3つという非常にシンプルな構成。腰フレームの両側にモーターがあり、背中部分に制御コンピューターとバッテリーを内蔵している。重量は、バッテリーを含めても約2.7 kgと非常に軽量。使用時に重さを感じさせにくいことも大きなポイントである。

装着もシンプル。ベルト機構であるため、非常に簡単で手軽に着脱ができる。立位の状態ではもちろん、座位の状態でも装着できる。装着可能な身長の目安は140cm以上であるが、腰フレームと大腿フレームのアジャスト機構であるため、幅広い体格にフィットする。

歩行のアシストのみにとどまらず、ステップ訓練にも適応した3つの訓練モードも兼ね備えている。付属のコントローラーで、モードの設定や、左右それぞれの脚に対する股関節の屈曲や伸展のサポート強度の設定も簡単に行うことができる。

追従モード…使用者の歩行パターンに合わせて、歩行動作を誘導
対称モード…使用者の歩行パターンを基に、左右の屈曲・伸展のタイミングが対称になるように誘導
ステップモード…連続歩行ではなく、下肢の振り出しや蹴り出し、重心移動の反復練習をサポート

さらに、歩行時の左右対称性・可動範囲・歩行速度などを計測し、その場で確認することもできる。使用者ごとに計測履歴の参照や比較ができ、PCにてデータを集計することも可能だ。 病気や怪我などで正しい歩行が困難になった患者の歩行訓練だけでなく、正しい歩行ができているかどうかを測定することもできるため、健常者が歩行の仕方を矯正することにも役立てられる。

自分の足でスムーズかつ正しい歩行ができる喜びは、その人を新たな目標やステージに導いてくれるかもしれない。

国際福祉機器展
https://www.hcr.or.jp/exhibitions/visual

(text: HERO X 編集部)

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福祉 WELFARE

ポジティブなマインドは、ネガティブから始まる。TEAM POSITIVE代表・鈴木隆太

中村竜也 -R.G.C

健常者、障がい者を問わず、スポーツを通して新たなことにチャレンジする人をサポートする団体がある。彼らは、身体的な不利を一切障がいとは考えず、とにかく楽しむことに全力を注ぎ、人生を生き抜くことを笑顔で広めていくという、夢物語のようなことを実践しているチームなのだ。その名も「TEAM POSITIVE」。

TEAM POSITIVE 代表を務める鈴木隆太さん(以下、鈴木さん)自身も、バイクでの通勤途中に車と正面衝突し、左下腿を失った。その時若干17歳。しかし、転んでもただでは起きないのが鈴木さん。そこでの経験や気持ちが、後の TEAM POSITIVE の発足に繋がったという。

「正直その時は、人生が完全に終わったと感じ、3日間泣き続けました。そして3日目に、当時勤めていた鳶の親方がお見舞いに来てくれたんです。普通なら掛ける言葉も見つからず、ただ傍観するしかないような状況ですよね。でも親方は、『馬鹿野郎、いつまで泣いてんだ! 早く戻って来い!』と喝を入れてきたんです。その言葉で正気に戻りました。

その時に決意したのが、鳶に戻る、そして大好きなバイクにもう一度乗るということ。この2つの決意が僕を突き動かし、半年の入院予定のところを、3ヶ月での退院にこぎつけました。しかもその時には、担当だった看護師さんと付き合っていました()。実はこれも密かな目標だったんです()

笑いながらそう話す鈴木さん。しかしその裏には、大好きなバイク、しかもハーレーという大型バイクを乗るために、自ら義足でも運転できる教習車を作り、それを教習所に持ち込んで免許を取ったという、並大抵ではない努力もあったのだ。ひとつの目標を達成するためには迷いのない行動力を発揮する。真似したくてもできない精神力の強さがそこにはあるのだ。

不便を感じたことが、
TEAM POSITIVE結成への第一歩

鈴木さんが義足になった当時は、まだインターネットが普及していない時代であったため、何か新しいことを始めようと思った時には全てが手探りの状態。足を失った者が再びバイクに乗るための情報にしても、パラリンピックを目指したスノーボードにしても然り。

「何か新しいことを始めようとした時、多くの方はできない理由を考えたり、周りからの声で、前進することを止めてしまうと思うんです。でも僕は、障がいがあろうが無かろうが、まず自分で答えを出し、解決しないと気が済まない性格でして。何かトラブルが起きてからようやく誰かに相談するんです()。そういうことを繰り返していくうちに、情報のポータルを作れたら面白いなと思い始めました」

「時代は、インターネットの普及とともに情報社会へと移行していく中、ある時テレビ取材のお話をいただいたんです。その時のディレクターの方がすごく面白い方で、『今までに取材させてもらった障がいをもつ方の中でも、鈴木さんはぶっ飛んでる』って言われたんです()。普通は一生懸命さを売りにするのに、バイクやジェットスキーに乗っているところなど、楽しむ姿ばかり撮らせますよねって。

そんな姿を見てか、その方に『何か団体を作ろう』と声をかけられました。以前から、サーファーやBMX、スノーボード、バイカー、陸上競技者など、とにかく多方面で活躍する人を集め、チームに対してスポンサーを付けていく動きをしたら面白いと考えていたので、よし、形にしよう!って思いました。これがTEAM POSITIVEの発足です」

surfing“kneeboard”の小林征郁選手(左)と伊藤健史郎選手(右)。ともにTEAM POSITIVE所属

スノーボードクロスでのピョンチャンパラリンピックの出場を目指し、ナショナルチームに所属していた頃、アメリカチームとの出会いが大きな転機だったという。鈴木さんがTEAM POSITIVEを通じて実現したかった、教育や選手育成、雇用サポートなどを、すでに彼らは実践していたからだ。

「スポーツ選手として日本国内でやっていくうえで何に苦労するかというと、絶対的に金銭面のウェイトが大きいんです。厳しい言い方をすると、スポーツで夢を与えることはできても、現実成り立たないのが日本の現状。

オリンピックの金メダリストで考えても、賞味期限は正直3年くらいだと思っていて、その後は忘れられていく。パラリンピックの選手となったら、簡単に名前が出てこないことも、悲しいですが頷けることが現状です。加えて金銭面もキツい。それではスポーツから離れる人は多くなります。

そんな状況を打破すべく、企業と選手の橋渡しをできるような活動を行なっていきたいと思い、アメリカのナショナルチームのやり方を学びに渡米しました。正直、スポーツに対する向き合い方が日本とは大きく違い衝撃でしたね。そのような現状を伝えるためにも、草の根活動的な講演会などは、僕がやっていくべきだと。スター選手は他にいるので()

チームの中に、左手一本しかない子がいるんですが、その子にやってもらっているのは、僕らのボイスチェンジ。たとえば、僕が今喋っていることは、興味を持ってくれた方には刺さるんですが、同じ境遇の方には刺さらないんですね。そこを同じ思いを持っている子が同じ思いを伝えることで意味が生まれてくる。左手一本しかない人が、どれだけ前向きに生きているかが伝わるじゃないですか。そういった意味で講演活動では、伝えるということに重きを置き活動しています」

講演中の山田千紘さん

TEAM POSITIVEの存在意義

「まず自分の置かれた状況を一生懸命楽しんでいるのかが、僕の価値観ではすごく重要なんです。たとえば、危険が伴うことは、すぐ周囲の人が危ないからという理由で止めてしまったりすることが多いですよね。そんな状況を回避し打破するために、TEAM POSITIVEは存在すべき。新たな挑戦をしようと思った時の光になれれば、みんなの可能性が広がるわけで。ひとりの力だと、たかが知れているかも知れないけど、様々な方面で活躍している人の生きた情報を与えることができたら、輪が広がっていくじゃないですか。そして、とにかく楽しむことを目的とした集団を作り上げたかったんです」

スノーボードのトレーニングをする鈴木さん。

自分たちにしかできないことを明確にし、それに向かって前進する。大袈裟かも知れないが今の日本人が忘れかけた精神を思い出せたような気がする。では、鈴木さん自身は、チャレンジすること、ポジティブでいることの意味をどのように考えているのだろうか。

「それは楽しむということに尽きますね。楽しくないと嫌なんです()。でも『楽しむために嫌なことは全部やらないんでしょ』ってよく勘違いされるんですけど、そうではない。やりたいことを実現するために、ただ貪欲に突き進むということなんです。そこにはもちろん、嫌なことも沢山ありますし、やりたくないことにも向き合わなくてはいけない現実もあります。そして何より、人としてかっこいいか、かっこ悪いかが、僕のチャレンジ精神の大きな判断基準なんです」

足を失ったことで、さらに世界を広げてきた鈴木さんが、最後にこう語ってくれた。

「困っている人がいたら手を差し伸べる。そんな当たり前のことが様々な壁を取り払い、誰もが住みやすい世の中へとつながる、真のバリアフリーだと思っています」
この言葉を聞き、自分の気持ちに正直に生きているのが、鈴木さんであり、所属するメンバーも含めたTEAM POSITIVEの姿なんだと感じた。そして、シンプルな生き方こそが、究極のポジティブなのかもと。


オフィシャルサイトhttps://www.teampositive.biz/

(text: 中村竜也 -R.G.C)

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