テクノロジー TECHNOLOGY

髪の毛一本より薄い!?皮膚貼り付け型心電計測デバイス

Yuka Shingai

近年、海外などでも開発に拍車がかかる皮膚貼り付け型の計測機器は、ここ日本でも研究が進められている。理化学研究所は2018年9月、東京大学の研究チームと共同で「皮膚貼り付け型心電計測デバイス」を開発したと発表した。この研究が進めば、心電図を無意識のうちに計測することが可能となる。

医療機器の開発現場では今、日常の状態を計測できる機器の開発が目覚ましい。心拍計、心電計、血圧計の機能を搭載したスマートウォッチ、アクティブトラッカーのような日常使いできるアイテムから、在宅看護・介護や遠隔医療などに対応するものまで、トレンドは “ウェアラブルな計測” といったところだろうか。今後、更なる小型化、軽量化が予想されるが、理化学研究所が東大との共同チームで開発したのはなんと、皮膚に貼り付ける心電計測デバイス。しかも外部電源が必要のない超薄型有機太陽電池で駆動する画期的な代物だ。

同チームは、髪の毛の厚さよりもはるかに薄い1マイクロメートルの超薄型の基板上に透明電極、電子輸送層、半導体ポリマー層、正孔注入層などを規則正しく重ねる技術の開発に成功、同時に、光の入射角度による発電効率の低下を抑える研究も進め、これらの技術を合せることで、太陽電池のエネルギー変換効率を10.5%まで引き上げることに成功した。

ナノグレーティング構造を持つ超薄型有機太陽電池の構造 (理化学研究所提供)

この研究成果を基に、外部電源なしに駆動させることができる心電計測デバイスを開発したのだ。皮膚に密着させることで長時間安定的に生体情報をモニタリングし続けることが可能になる。今回は心電計測デバイスを搭載したが、超薄型有機太陽電池を応用すれば、他の計測にも使えそうだ。着けていることを忘れるほどの薄さと小ささで、人体への装着時の負荷が軽減されるほか、バッテリー交換の煩わしさもなくなるため、まさに次世代を担うセンサーデバイス開発の相棒として期待されている。もはやつけていることさえ忘れてしまいそうなウェアラブルなデバイスは、無意識的に心電や心拍、他の生体情報を取得するものとして、実用化の日が近づいている。

(画像提供:理化学研究所)

(text: Yuka Shingai)

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人工眼で失われた視力を取り戻す!?人生を変えるテクノロジー「バイオニック・アイ」

岸 由利子 | Yuriko Kishi

「網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう)」って、聞いたことがありますか?これは、網膜の視細胞が、数年から数十年かけて、ゆっくりと退行変性していく遺伝性の眼の病気。米・メリーランド州の「ナショナル・アイ・インスティチュート」(The National Eye Institute)によると、世界の約4000人に1人が発症すると推測されています。

暗いところでものが見えにくい「夜盲」や視野が狭くなる「視野狭窄」、「視力低下」などの症状が見られますが、進行度も重症度も、個人差が大きいことが特徴です。生涯良好な視力を保つ人がいる一方、中途失明の三大原因のひとつでもあり、視力を失う人も少なくありません。

(引用:curechm.org)

網膜色素変性症により中途失明した人にとって、希望の光となり得るのが、米セカンド・サイト社の開発した「アーガスⅡ・バイオニック・アイ」と呼ばれる人工眼。システムが少し複雑なので、ステップ・バイ・ステップで説明したいと思います。

まず、患者の眼球内に光受容体が搭載された「人工網膜」を移植します。網膜のインプラントとも言い換えることができますが、この移植だけで、裸眼による視力が回復するわけではありません。

(引用:futurism.com

「アーガスⅡ」は、「VPU(ヴィデオ・プロセッシング・ユニット)」という外部デバイスと、ビデオカメラを搭載した専用サングラスを通して、人工網膜に映像を転送することで、視覚情報を再現できるシステム。網膜色素変性症の患者にとって、初の実用的治療だと言われています。

ここで注目したいのは、イギリスの国民保健サービス「NHS(ナショナル・ヘルス・サービス)」の取り組み。網膜色素変性症により視力を失った10人の患者を対象に、アーガスⅡの効果を測るための臨床研究を実施するのです。

「この極めて革新的な取り組みは、患者に真の約束を示すもの。人生を変えることも可能でしょう」とNHSのジョナサン・フィールデン博士。

対象者は2つのグループに分けられ、2017年中に、マンチェスター・ロイヤル・アイ・ホスピタルと、ムーアフィールド・アイ・ホスピタルで治療を受ける予定で、術後は、1年をかけて、じっくり経過観察を行い、有用な治療法であることを証明していく方針です。

イギリスのガーディアン紙によると、現在、同国内で網膜色素変性症を患う人は、約16,000人。そのうち、アーガスⅡの治療を受けるに相応しいのは、160~320人と推測されています。より多くの人が光を取り戻せるよう、まずは臨床研究の成功を祈るばかりです。

[引用元]curechm.org / futurism.com

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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