福祉 WELFARE

地下に潜む日本の力はいかに。世界も注目の東京メトロ【2020東京を支える企業】

宮本さおり

日本が誇るもののひとつ、鉄道。最近、ネット上では正確に、安全に動く日本の鉄道に舌を巻く外国人観光客のコメントが話題になった。大都会東京の鉄道を地下で支えるのが東京メトロ。東京2020オリパラでは、会場を繋ぐ交通網としての役割に期待がかかる。メトロはどんなことをするのか。東京の地下で繰り広げられている構想を探る。

オリパラ会場への足となる東京メトロでは今、大規模な工事が進んでいる。主要駅で進めているのはホームドアの設置。2020年度末には全体の83%にあたる148駅で整備が完了する予定だ。また、バリアフリー化の一環として進める「エレベーター1ルート計画」は、予定では2018年度末までに全ての駅で整備を完了、地上へ出るためのバリアフリー化が一層進む見込みだ。

聴覚障がい者も気兼ねなく使える

使い方は簡単。まずはアプリをダウンロード

いくつもの路線が入り組む東京の地下鉄駅では、目的地の近くの出口が分からずに、地下通路で迷うこともある。そんな不便を解消してくれるアイテムの実証実験が今年はじめ、表参道駅周辺で実施された。「かざして駅案内」は、事前に東京メトロのアプリをダウンロード、目的地を設定して駅構内にある「i」マークにスマホをかざせば、目的地の最寄りの出口をアプリ上で表示してくれるというものだ。これならば、人に道を聞くことに気兼ねしていた聴覚障がい者も目的の出口にスムーズに出られそうだ。NTTと共同で開発に取り組んでいる。

これだけでは終わらないのが日本のすごさ。こうしたハード面の強化と同時に急ピッチで進めているのが、「人」の力の強化。

「介助士」研修を社内で実施

専門家を招いて資格取得講座を開講

車いすユーザーや視覚障がい者などが電車に乗るためには、いくつもの介助が必要になる。例えば、車いすの場合、電車とホームの間に溝があるため、それを埋める取り外し式のスロープを設置といった支援がいるのだ。また、目の不自由な人の場合は駅により、改札までサポートが必要な場合もある。こうしたニーズに的確に応えるために、介助をスムーズに行うための資格である「介助士」の資格を積極的に取得させようと社内でも研修をはじめたのだ。2017年度中を目途に全駅社員がこの資格を取得の見込み。おもてなし力に磨きがかかる。加えて、効率的に移動の補助ができるようにと、目の不自由な乗降者が多く利用する高田馬場駅など7駅にハンズフリー型インカムも導入した。東京メトロ担当者は「高田馬場駅近くには、点字図書館等の施設があり、目の不自由なお客さまのご利用が多くあります。ハンズフリーインカムを利用することで、情報共有の迅速化、安全確保上の連携強化が図られるようになりました。」と話している。

ここまで徹底したサービスを目指す地下鉄は世界でもまれ。東京2020オリパラでは、世界のあらゆる人々に安全で安心、そして快適な移動を提供することになるだろう。

(text: 宮本さおり)

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障がい者支援も、人工衛星開発も、三菱電機の考え方は同じだった!【2020東京を支える企業】前編

朝倉奈緒

東京2020において、エレベーター・エスカレーター・ムービングウォークカテゴリーのオフィシャルパートナーである三菱電機。また、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会や一般社団法人日本車いすバスケットボール連盟のオフィシャルパートナーでもあり、障がい者スポーツの本格的な支援も始めている。今回、家電製品から宇宙システムまで、私たちの生活と密に関わる製品を生み出し、開発し続ける三菱電機が、「共生社会の実現」に向けてどのように動いているのか、東京オリンピック・パラリンピック推進部長の松井久憲さん、次長の小峰即彦さん、推進担当課長の平山哲也さんに、課題も含めお話を伺った。

2020年に向け描く理想は、
心のバリアフリーがあってこそ
完成するもの

ーエレベーター・エスカレーター・ムービングウォークカテゴリーのオフィシャルパートナーとして、大会関連施設や周辺インフラのバリアフリー化を支えられるとのことですが、今それらの事業はどのくらい進んでいるのでしょうか。

新国立競技場はご存知の通り、基礎工事が始まって、これから建物が建っていくといった状況です。アクセシビリティガイドラインに応じた設計がされ、私たちのエレベーター・エスカレーターなどもそれに沿った提案をしています。設計はだいぶ進んでいますが、施工に関してはまだこれからです。また、駅周辺や空港から鉄道を使ってホテルに向かったり、駅から競技場へ向かうといったアクセシビリティを高めるという点において、日本の街はそれなりに進んでいますが、まだまだ不十分なところがあります。2020年に向けて、そのあたりも交通事業者の方々の計画立案をお手伝いしています。

ー都内の地下鉄の駅には数年前まではエレベーターのない駅もありましたが、ここ12年で設置されていたり、現在工事中だったりするのを見かけます。2020年まであと2年程で理想の形に追いつくのでしょうか。

2020年に向けて、鉄道各社は、急ピッチでなんとかしようという想いで進めています。ただ、物理的なアクセシビリティだけでなく、困っている人がいたら押しつけがましくなくサポートできるような、人の心のバリアフリーを築いていくことも大切です。人の気持ちや意識が変わっていかないと、全体のバリアフリーは進まないというのが私たちの考えでもあります。

企業が諦めずに取り組むことで、
2020年東京の街と人を変える

ー鎌倉市にある三菱電機大船体育館をバリアフリー化し、車いすバスケットボールチームへ練習場所として貸し出されていますね。こういった施設を、これから増やされていく予定ですか?

具体的な計画はまだないですが、増やしていきたいなとは思っています。ただ当社一企業だけが取り組んだところで、十分な練習機会の確保には至らないと思います。ぜひ様々な企業さんにも、お持ちの施設をコネクションしていただくなどし、今後そういう活動が広がっていけばいいなと思っています。

ー車いすバスケットをするには、体育館の予約も取りにくかったりという、困った現状もあります。このような取り組みを進めている御社の視点から、インフラをどのように整えていくべきだと考えますか?

体育館に関しては、サポート対応する人がいないとか、床に傷がつくかもしれないといったことで残念ながら断られてしまうところが多いと聞いています「当社も参画しているオリンピック・パラリンピック経済界協議会の参加企業でも施設の貸し出しに向けて、どのように協力ができるか考えていただいています。」東京都と(公財)東京都障がい者スポーツ協会では、競技者を受け入れるために、施設職員の対応マニュアル「障がい者のスポーツ施設利用推進マニュアル」をつくり、ソフトの部分での対応力を上げて、少しでも使える施設を増やすための働きかけをしているところです。

ー以前よりも、みなさんのパラスポーツに対する興味・関心が強まったり、競技との距離感が縮まっている実感はあります。

メディアのみなさんが扱われる機会が増えているというのもありますし、リオ2016やピョンチャン2018、そして東京2020と段階的プロセスでもって、より共生社会に向けた感覚というのは培われているはずです。ロンドンパラリンピックで「ロンドンの街も人も変わった」、と関係者の方が口々に述べている。東京2020もそうなって欲しいので、少しでもお手伝いできることを願っています。

後編へつづく

三菱電機東京2020スペシャルサイト
http://www.mitsubishielectric.co.jp/tokyo2020/?uiaid=top2013

三菱電機Going Upキャンペーン
http://www.mitsubishielectric.co.jp/goingup/

(text: 朝倉奈緒)

(photo: 壬生マリコ)

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