テクノロジー TECHNOLOGY

体が7kgも軽くなる感覚!ウェストバッグのようなパワードスーツ「Exosuits」

Yuka Shingai

英語ではpowered exoskeleton(強化外骨格)と総称されるように、体を包む大ぶりなものが主流のパワードスーツ。今回紹介する、「Exosuits」は、そのコンパクト感や柔らかい素材から、一見するとランニングやワークアウト時に身に着けるウェストバッグのようだが、実は、足への負担を軽減してくれるパワードスーツの超進化系アイテムだ。

「Exosuitsを装着して15分もたつと、システムに手助けされているという感覚はなくなり、完全に自分で歩いているような気になります」とハーバード大学のロボットエンジニアであるDavid Perry氏は語る。

ただ、システムをシャットダウンすると、突然足が重く感じられ、いかにシステムに手助けされていたかを実感するという。その感覚は、空港などにある「歩く歩道」を降りた時のあれとよく似ているとのことだ。

Perry氏ら、研究チームは純粋な足の力だけで動かすのと、ロボットの補助を利用した場合の差異を定量化するために、Exosuitsユーザーをロードランナーに乗せ、呼吸でどれだけの酸素を消費しているかを算出しながら調査を進めた。
その結果、歩行時に9%、走行時には4%の代謝量の削減に成功。これは歩行時で16.3ポンド(約7.4kg)、走行時で12.6ポンド(約5.7kg)軽く感じるのとほぼ同等の効果があり、災害エリアのレスキュー隊員から、兵士、レジャーでハイキングを楽しむ人まで、全ての長距離歩行者・ランナーに大きく貢献するほか、病気やケガで歩行に制限のある人にとっての医療的補助にもなる。

Perry氏とハーバード大学の同僚たちは、リハビリ患者用のデバイスを商用化しているReWalk Roboticsと協業して、Exosuitsの現行モデルの60%の重量、かつ各個人の足の形や歩行にぴったり合う新バージョンの開発に乗り出している。
現段階では非常に難解とされている歩行のパーソナライゼーションをどう解消していくか、プロジェクトの動向にも注目が集まりそうだ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/uB289EV0ABw

(text: Yuka Shingai)

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もし、明日から手の指が6本になったら?人類の可能性を拡張する「第3の親指」

岸 由利子 | Yuriko Kishi

イギリス・ロンドンにあるロイヤル・カレッジ・オブ・アートは、世界で唯一、修士号と博士号を授与する美術系大学院大学。彫刻家のヘンリー・ムーア、映画監督のトニー・スコットやダイソンの創業者、ジェームス・ダイソンなど、多彩な分野の異才を輩出してきた名門校として知られている。今年6月24日から7月2日に開催された同校の卒業展で、ひと際注目を浴びたのが、ダニ・クロードさんによる「The Third Thumb Project」と題したプロジェクト。小指の隣に“第3の親指”を追加することで、人間の能力を拡張する試みとして制作された。

第3の親指は、自然な親指の動きを実現するために、弾力性に富んだ「ニンジャフレックス」と呼ばれるプラスチック繊維を使って、3Dプリンターで出力されている。靴の中に埋め込まれた圧力センサーをBluetoothで接続すると、操作が行える仕様だ。車を運転する時、ミシンを踏む時やピアノを弾く時などに連動する手と足の動きを活用しようと、クロードさんはこの方法を選んだ。2つのモーターが作動すると、デバイスの可動部をさまざまな方向に動かすことができる。

このデバイスは、義手や義足などの人工装具に対する従来の概念にチャレンジするために作られた。

「人間のオーグメンテーション(添加増強すること)を探索し、体の機能を拡張するものとして、人工装具を見直すことを目的としています」

プロテーゼ(人工補綴)という言葉には、本来“加える”という意味が含まれている。これにインスパイアされたクロードさんは、障害を治したり、置き換えるためのものではなく、能力を拡張するためのものとして、新しい人工装具の形を提案している。

第3の親指は、能力を拡張したい人なら、誰でも装着できる。片手で3個が限界のワイングラスをもう1個持てたり、いつもとは違う音色のギターが弾ける、トランプカードが多く繰れるなど、ちょっと面白い経験から、タブレットを片手で持ったまま、画面をスワイプできる、ペンチを器用に動かせるという実用的な用途まで、人の数だけ拡張の仕方もさまざまにある。

「第3の親指は、道具の一部であり、経験の一部であり、自己表現の一部でもあります」とクロードさんは話す。3Dプリント技術を使えば、人によって異なる手の大きさに合わせて、カスタマイズもできる。第3の親指が日本に上陸する日は、そう遠くないかもしれない。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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