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彫刻のように美しく、唯一無二の存在を目指して。Scott Summitが義肢に込めるデザイン哲学

Yuka Shingai

タトゥーやレース、パンチング模様…まるで工芸品かオブジェのようなデザインに思わず目を奪われてしまう。「生きている人間のためにデザインをするならば、最低限の使用仕様で満足してはいけない。それを実現できればそれ以降の誰かの生活の質を日々改善することができる」とデザイン哲学を掲げる Scott Summit 氏は、義肢をただの装具品としてではなく、ひとつのアートとして、また、クリエイションとしても捉える工学デザイナーだ。

Summit 氏が手掛ける作品は PC やオーディオ関連、スケートボード、骨折時に腕にはめるギプスに至るまで、独創的でかつ洗練されている。全く同じ物を多く生み出す工業デザインが個性に欠けることを危惧する彼は、「体は彫刻。大量生産に縛られるのではなく、体を考慮した個性的な唯一無二のデザインであるべき」と義肢のデザインにも独自性や優美性を追求している。

前述の通り、義肢に限らず多くのプロダクトを3Dプリンターから作り出している Summit 氏。体をスキャンし、機能している脚を反転させると左右対称が実現でき、指紋と同じくらい唯一無二のものが出来上がる。

デザインの力によって驚くべきことは、元サッカー選手の友人のために、義肢にスポーツバッグを彷彿とさせるデザインを施したところ、装着時に体が記憶していた感覚を取り戻し、ボールをコントロールできるようになったという。はたまた、バイク事故で片足を失った友人には、ひざ下のタトゥーを柄としてあしらい、バイクの素材を用いたハイブリッドな義肢を作り上げた。

さらに、使用するカーボンフットプリントは極小で資源ゴミとして再生でき、制作費用は4000ドルほど。低予算で高品質の義肢を作れることも大きな特徴だ。

Summit 氏が世に送り出したいのは「人間らしいものではなく人工的なもの、かっこよく、美しく、姿を変えたことを世界中に見せたくなるもの」。これからも工業デザインの世界に新しい風がどんどん巻き起こりそうだ。

[TOP動画引用元: https://www.youtube.com/watch?v=fir5HI0Gwrc&t=29s

(text: Yuka Shingai)

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知ってた?「aibo」の癒し効果を科学的に検証

HERO X 編集部

1999年、初の家庭用エンターテインメントロボットとしてソニーが手がけて誕生した犬型ロボット「AIBO」を覚えているだろうか。未だに家族のように愛用する人もいるという「AIBO」だが、廃盤となり久しい中、新たな分野での活躍に期待がかけられている。度重なる進化を遂げ「aibo」と名を変え生まれ変わったこのロボット。もともと、愛着を持つ人も多かったロボットだったが、見た目をさらに愛らしく変身させた「aibo」を使っての病院での検証は2018年からはじまった。試されたのは癒し効果。今では見守り機能を持たせた進化版も発売となっているこの「aibo」。当時の検証から見えた癒し効果は現在、一般ユーザーの間でも話題となっているようだ。

検証が行われていたのは国立成育医療研究センター。伴侶動物と呼ばれる犬や馬などの力を借りて、人の健康状態を向上させるために実施される補完医療を動物介在療法 (アニマルセラピー) というが、動物介在教育・療法学会の報告によれば、とくに犬による介在療法では、痛み、疲労、ストレス、イライラ、不安、悲しみ、怒りやすさの軽減が生じ、落着き、喜び、快活さが増大されることがわかっているという。しかし本物の犬の場合、感染症のリスクや、外傷、咬傷などの副作用が懸念されることから、皮膚疾患や動物アレルギー、免疫力低下のある患者などには適用されていないのが現状だった。

小児医療現場で始まった検証

犬のような良さを持ちつつ、アレルギーなどの心配がないとして注目されたのが犬型ロボットの「aibo」。医療分野でのロボット技術応用に関する研究は日進月歩を続けているが、小児においてはロボット技術の汎用性が狭く、十分に臨床応用されてこなかったという経緯もあった。

乳幼児の場合、人に興味を持ち、動きに注目することで築かれる特別な関係性が対人コミュニケーション発達に大きく影響するとされていたが、対ロボットであっても乳児とやりとりができたり、人のような形にすると、ロボットの行動を見たり、視線を追ったりすることが近年の研究により、判明していた。そこでお呼びがかかったのが「aibo」。犬の形をした「aibo」の場合、動物介在療法という観点からも試すことができた。同センターによれば、「aibo」と定期的にコミュニケーションすることで、情緒交流、気分転換、さらには癒しの効果が期待されるような結果も確認されたという。そんな検証も踏まえつつ、市場に出回り始めたのが動画で紹介されている「aibo」。新しい「aibo」は『家庭で新たな楽しみを提案する進化した自立型エンタテイメントロボット』として販売されている。昨年もいくつかの癒し系ロボットの発表があった。人とロボットとの新しい関係は今年も益々広がりそうだ。

参考
国立成育医療センター:https://www.ncchd.go.jp/press/2018/20181129.html
動物介在教育・療法学会:https://asaet.org/

 [TOP動画引用元:https://youtu.be/sJciRIZQTg4 ]

(text: HERO X 編集部)

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