テクノロジー TECHNOLOGY

世界初、AIが可能にした「メガネをかけたまま、メガネをバーチャル試着できる」JINSの新サービス

富山英三郎

メガネの販売本数日本一を誇るJINSが、世界初となる「メガネをかけたままバーチャルにメガネを試着できる」サービスを、JINS 渋谷パルコ店でスタートさせた。メガネ着用者にとって長年の悩みだった、「メガネ試着時に(視力矯正されていないため)自分の姿が見えない」という問題を解決するサービスは、どのように生まれたのだろうか。

AIが高速でレタッチして
メガネを顔から消す技術

店頭に陳列されているメガネの中から気になるメガネを選んだら、フレームに付けられたQRコードを機械に読み取らせる。その後、ディスプレイに表示される枠に顔をおさめると、元々着用していたメガネが消え、試着したいメガネが自分の顔に装着されて映し出される。それと同時に、AIがメガネの似合い度を100点満点で採点してくれるというサービスが登場。『MEGANE on MEGANE(メガネ オン メガネ)』と名付けられたこのマシーンは、2019年11月にオープンした次世代型店舗「JINS 渋谷パルコ店」の目玉となっている。

「『MEGANE on MEGANE』の開発に向けて動き出したのは2018年で、約1年かけて完成しました。ポイントは、かけているメガネを消すという技術。これは、AIに同人物のメガネをかけている画像とかけていない画像を1セットとして大量に覚えさせ、メガネをかけている画像からかけていない画像を推察させてレタッチしています。つまり、ディープラーニングさせたAIが、高速でレタッチをおこなっているんです」

そう語るのは、ジンズのCX戦略本部 本部長である向殿文雄氏。CXとはカスタマーエクスペリエンスを略したもので、付加価値のある新しい顧客体験の設計を主な業務としている。

瞳孔間距離を計測し、
そこにフレームを合わせることでフィット感をアップ

メガネを消したあとにメガネをバーチャルでかけさせる技術に関しては、スナップチャットなどの着せ替えアプリと同じようなAR技術を使っているとか。しかし、さまざまな顔にしっかりフィットさせるのは難しいことでもあったようだ。

「バーチャル試着への挑戦というのは、実は10年ほど前からいろいろやってきているんです。そこで問題になったのがメガネのサイズが顔にうまくフィットしないこと。今回は、瞳孔の位置を認識させることでその点を改善させました」

メガネのフレーム設計は、「このエリアに瞳孔がくる」と想定して作られる。もちろん、瞳孔間距離(PDと言われる黒目と黒目の間の距離)は人によって違うので、その距離を『MEGANE on MEGANE』で計測しつつ、平均値と組み合わせながらフレームを顔の最適な場所にフィットさせているのだ。また、このサービスでは顔を左右に動かしても追従してくれるので試着時の横顔も確認できるというのも嬉しい。

「もうひとつの機能として、似合っているかどうかを判定するAIを搭載しています。これは2016年に『JINS BRAIN(ジンズ・ブレイン)』という名でローンチしたAIを入れています。これもまた画像認識によるディープラーニングが軸となっています。仕組みとしては、JINSのスタッフ3000人に約30万枚のメガネ着用カットをチェックしてもらい、似合う似合わないを判定。それをAIにディープラーニングさせ、JINSスタッフによる平均評価値を点数表示しています」

説明なしにお客さんが
自然と使ってくれている

『MEGANE on MEGANE』は渋谷パルコの新装開業の話題性とプラスされ、当初はテレビ取材なども入り大きな賑わいを見せたとか。それから約3ヶ月が経ち、目新しさが消えた現在は、自然に定着してお客さんがフツーに使っているという点で大きな成功だったといえる。

「こういうサービスは企業の独りよがりになりがちなんです。しかし、『MEGANE on MEGANE』はスタッフがとくに説明しなくとも、お客さまが無意識に使ってくださっている。そういうソリューションを常に目指しているので、手応えを感じています」

視力がいい人にはわからない、メガネ常用者でないとわからない悩みの解決。それはお客さんのみならず、眼鏡屋さんの課題でもあったとか。ゆえに、前述のとおりJINSでも以前から試行錯誤をおこなってきていた。

「2009年、まだガラケーの時代には、お客さまにご自分の顔写真を送ってもらい、メガネをかけた正面画像を送り返すというサービスをECでしたこともありました。その後、webブラウザー上で試着できるというサービスも。さらにはアプリを使えば特定の商品が試着できるということもやりました。今回、ここまでのクオリティのものができたのは、日進月歩で進化している技術のおかげともいえます。また、これが成功した一因として、お客さまがバーチャルなものに抵抗がなくなっているという側面もあると思います」

アイウエア界のイノベーターであるJINS

バーチャル試着のみならず、JINSではブルーライトを軽減させる『JINS PC(現JINS SCREEN)』(2011年)、瞳とフレームの隙間最小化を図り花粉を現在では98パーセントカットする『JINS 花粉CUT』(2012年)、アプリでオリジナルデザインのメガネを注文できるサービス『JINS PAINT』(2015年)、世界で初めて三点式眼電位センサーをアイウエアに搭載したセンシング・アイウエア『JINS MEME』(2015年)など、技術革新に積極的な企業として知られている。

「アイウエア業界において、真っ先に新しいことにチャレンジしていくという使命感はあります。『MEGANE on MEGANE』に関しても、現在はJINS 渋谷パルコ店だけのサービスですし、同店舗で扱っているフレームのみが試着可能と限定的です。まだまだ、今後も技術革新を続けていきたいと考えています」

(text: 富山英三郎)

(photo: 壬生マリコ)

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物流も自動化の時代に突入か!?日本政府や業界団体も注目する輸送トラック自動運転の動き

HERO X 編集部

自動運転車は先進国を中心に各国で開発が進められており、この新しい分野をどの国がリードするかが大きく注目されている。そんななか、輸送トラックの自動運転化も焦点のひとつとなってきている。先日は物流システムサービスのトランコムと日野自動車の提携が発表された。トランコムでは、日野自動車の隊列走行や自動運転技術などの先進技術も取り入れた新規プラットフォームの構築を目指したいとしている。自動運転により、トラック輸送も変革されるのだろうか?

物流の自動化への取り組み
米では “レベル4” の自動運転も

タクシー業界と同様に、物流の世界でもドライバーの不足が指摘されている。特に日本ではドライバーが高齢化し、ドライバー不足は年々深刻化しているようだ。物流を担う長距離トラックの運転は長時間労働で危険も多く、若年層のなり手が少ない。コロナ禍で人の移動は減っても、逆に通販市場の増加などで輸送は増え、ドライバー不足は恒常的な悩みだ。
そこで持ち上がっているのが、自動運転輸送の話。物流トラックを自動運転化し、モノを速く確実に届けようという試みだ。政府や自動車の業界団体なども、この動きを後押ししている。昨年は東名高速で自動運転トラックの隊列走行の実証実験も行われた。
年末には車両マッチングサービスのシステムを提供するトランコムと、日野自動車が、物流の社会問題を解決するために提携を発表。提携している物流業者のトラック輸送機能をシェアし、トランコムのシステムと日野自動車がもつ自動運転の技術などを合わせ、物流の新たなプラットフォームの構築をめざしている。

ドライバー不足の問題は国内だけでなく、アメリカでも深刻化しており、自動運転トラックの隊列走行(ネットワークにより連携された数台のトラックが隊列車群を構成し走行すること)は、日本に先駆けて一部商用化されている。
さらに、先日、コロラド州に本拠地を置くOutrider社は、トラックヤード内の積み下ろしやトレーラーの連結を自動でできる電動ヤードトラックのためのシステムソリューションへの投資額、合計5,300万ドルを調達した。同社が提供する自動運転システムは最高で “レベル4” (特定の場所に限り、完全に自動運転で対応できるレベル)を達成できるとされている。その様子を映し出したのが上で紹介している動画だ。

トラックヤード内での作業は人の手に頼っている部分が多く、人的コストがかさむ。一般道路に加え、物流ハブでの車両の自動運転化は、多くの在庫をもつ業者にとって大きな課題だろう。すでにティッシュ・パルプ・紙などの米最大手業者とのパイロットテストが始動しているとのことだ。労働力の負担が大きい物流の世界。自動運転が導入されることで、人手不足やコスト、過重労働などの改善にもつながっていきそうだ。

 

トップ画像引用元:https://www.outrider.ai/

(text: HERO X 編集部)

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