医療 MEDICAL

一秒でも早くSOSを伝えよう! AEDをスマホで誘導せよ

Yuka Shingai

2004年に一般使用が認められるようになってから、病院や診療所、救急車だけでなく空港、駅、スポーツクラブなど身近な場所でも目にする機会が増えたAED(自動体外式除細動器)。 しかし、実際心肺停止者に対してAEDが使用された割合は4.9%とまだ高くなく、改善が求められている。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市・以下、国循)とフィリップス・ジャパンによる「健都Heart safe cityプロジェクト」はスマートフォンを使った実証実験により、AEDの普及を目指している最中だ。

SOSボタンとスマホで、
救護者とAEDをすぐに現場へ

大阪・吹田市と摂津市は2019年7月に国循が吹田操車場跡地に移転したことを契機として、「北大阪健康医療都市 (以下、健都)」として健康・医療のまちづくりに取り組んでいる。救急隊に引き継ぐまで適切に応急手当てができる最初の救護者(ファーストレスポンダー)の育成にも注力しており、国循の移転から1年余りで、近くの商業施設スタッフや病院事務員、大学生らを対象に約100人の救護者を育てた。

本プロジェクトは、フィリップスが開発した「SOSボタン」とスマートフォンアプリとを連携、育成した救護者をはじめとした一般市民が、心肺停止など一刻を争う状況でも即座にAEDを用いた一次救命措置にあたることができる。「SOSボタン」は、健都内の東西2キロ、南北1キロ圏内にSOSボタン16台、AEDは5台を設置する予定だ。

仕組みは簡単。AEDが必要な場面でこのボタンを押下すると、10秒強で近くにいる救護者のスマートフォンアプリ 「MySOS」に一斉通知され、ボタンが押された位置・近くにあるAEDの位置をアプリ上で表示して、救命に向かわせる。

今後開催される大規模イベントや2025年に予定されている日本国際博覧会での救護体制を視野に入れながら、実証実験を通してボタンの設置感覚、ボタンとアプリの最適な距離などを模索していくとのこと。

健都(北大阪健康医療都市)はこんなことも

以前HERO Xでは、住むだけで健康になれるマンションプロジェクトの紹介をしたが、これも今回紹介した健都の取り組みのひとつである。入居者のバイタルデータを国循の健康管理システムが解析・医療視点からのアドバイスを提供したり、健康増進のためのスポーツ施設を医療とスポーツの両面からのサポートを受けれるなどのサービスが受けられる。

【記事URL:http://hero-x.jp/article/3700/

これらに止まらず、自治体や企業と連携した健康・医療のまちづくりのノウハウを蓄積し、先進的な事例として成長していくことにも期待したい。

 

 

(text: Yuka Shingai)

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腸や子宮内環境も改善可能?ヘルスケア最前線

Yuka Shingai

コロナ禍でライフスタイルが激変し、健康により一層の関心を抱いている層も多いだろう。 日進月歩のテクノロジーの中でも特に進化が目覚ましいのがヘルスケアの領域。まだまだ一般的とは言えないものの、ニッチだからこそこれからの飛躍が大いに期待されるトピックを2つまとめてご紹介しよう。

健康促進もフードロス問題も解決!
注目の食材“グリーンバナナ”

腸内環境を整える=「腸活」に乳酸菌やビフィズス菌の摂取が効果的であるというのはかなり浸透しているが、「レジスタントスターチ」と呼ばれる難消化性のでん粉が腸活に大きく効果ありだ。胃や小腸で吸収されずに大腸まで届き、腸内で善玉菌を活性化、便通の質を高め、腸内を酸性に近づけてくれる。ジャガイモや豆、さつまいもにも含まれるレジスタントスターチだが、含有率が非常に高いのが、黄色く熟する前のグリーンバナナ。スマートスターチ社はこのグリーンバナナを高純度で抽出するとともに、量産化まで実現している。
事のきっかけは中南米のバナナ農園で熟す前にグリーンバナナが大量廃棄されるフードロス問題。フードロスの軽減と健康促進という二つのイノベーションに加えて、今後は海外でプラントを建設することで現地の雇用創出にも期待がかかっている。

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不妊症から子宮頸がんまで、
子宮内フローラが予見する
女性のヘルスケア

いまや国内カップルの5.5組に一組が悩むと言われている不妊。不妊の原因は様々だが、不妊症解決の糸口として脚光を浴び始めているのがゲノム解析による子宮内フローラの検査。Varinos社は腟や子宮から採取した検体を用いて子宮内の菌の種類や割合を調べる検査を行っている。
現在は検査を導入している病院から送られてきた検体をラボ内で解析し、ドクターにフィードバックを行う。より気軽に検査を受けられる状況を目指すべく、自宅でできる検査キットの開発にも取り組んでいる。さらに子宮内フローラを整えることが不妊だけでなく、早産や子宮頸がん、月経周期の乱れなど女性のヘルスケアの多くを改善、予防できる可能性が高いという。
不妊治療は現状保険適用外のものがほとんどで、まだまだ誰もが気軽にトライできるものではないというのが実情だ。2020年の出生数が統計史上最少となり、少子化が加速する今、これらのテクノロジーがどのように受け入れられていくかにも注視したい。

記事を読む▶不妊治療も子宮頸がんも予防の時代へ 子宮内フローラが教えてくれること

(text: Yuka Shingai)

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