スポーツ SPORTS

渋谷のど真ん中に陸上トラックが出現!60m世界最速は誰だ!?

中村竜也 -R.G.C

11月5日の日曜日、渋谷駅へと向かうファイヤー通りに、突如60mの陸上トラックが現れ、行き交う人々を驚かせた。渋谷芸術祭2017「渋谷シティゲーム〜世界最速への挑戦〜」と題し、8年間破られていない世界記録の6.39秒にトップ義足ランナーがチャレンジすることを目的に、渋谷区とSONYの協力のもと開催されたこのイベント。

休日の昼間の開催ということもあり、多くの通行人がこの非日常の光景に驚きながらも、好奇心にあふれた顔で、これから始まる歴史的な瞬間の目撃者となるべく足を止め楽しむ姿がとても印象的であった。

オープニングセレモニーでは、発起人のソニーコンピュータサイエンス研究所 リサーチャーで、Xiborg代表・遠藤謙さんをはじめ、HERO Xでの編集長対談(http://hero-x.jp/article/2122/)にもご登場いただいた、渋谷区の長谷部健区長やタレントの武井壮さん、為末大さん等のトークで会場を温めながら、オープニングランがスタート。

普段からこの界隈をランニングしている、スターターを務めた武井壮さんは「なぜ僕が走らせてもらえないのか!」と冗談交じりに話し会場を盛り上げた。

為末大さん、義足ランナーの山下知恵さん、長谷部区長でのオープンニングラン

この日のメインレースは、100m(10秒61)、200m(21秒27)、そして60m(6秒99)の世界記録保持者、リチャード・ブラウン選手(アメリカ)、今夏の世界パラ陸上選手権大会200m金メダルのジャリッド・ウォレス選手(アメリカ)、リオパラリンピック100m銅メダルのフェリックス・シュトレング選手(ドイツ)の3人による「世界最速60m義足レース」。

レース前からすでに、3選手が出すオーラが会場を飲み込み、張り詰めた雰囲気に。そのせいからか、フェリックス・シュトレング選手がウォームアップ中に大きく転倒し怪我が心配されたが、無事にレースに参加でき、肩をなでおろした。そしていよいよ緊張のスタート。

左からジャリッド・ウォレス選手、リチャード・ブラウン選手、フェリックス・シュトレング選手

レースは終始、60m(6秒99)の世界記録保持者、リチャード・ブラウン選手が先行しながらも接戦の中ゴール。記録は7秒14と、残念ながら世界記録には及ばなかったが、世界のトップアスリートが風を切りながら走るそのスピードと迫力に、会場は大きな歓声に包まれていた。

その他にも、日本が誇るパラアスリートの佐藤圭太選手、春田純選手、池田樹生選手の3名によるエキシビジョンランや、一般参加者の子供や学生のレースも行われ、盛り上がりの中イベントは幕を閉じた。

スポーツをエンターテイメントへと昇華させるべく、この歴史的なイベントを開催した、遠藤さんはこう話す。

「本当に選手が輝く瞬間というのは、実際に勝負が掛かったレースの時だと思うんです。その瞬間を渋谷のど真ん中で出来たというのは、本当に歴史的なことだと思います。勝ったリチャード・ブラウンの喜び方や、負けた選手の滲み出る悔しさ。あれこそがリアルでありスポーツの素晴らしさなんです。」と普段冷静な彼が興奮気味に語ってくれた。

健常者だから、障がい者だからとかではなく、そこにいた誰もが圧倒的なエンターテイメントを陸上というスポーツを通して体感できたこのイベント。開催までの道のりを考えると、容易でなかったことも想像できる。だからこそ世界の中心地である渋谷という街でやることに意味があったのだろう。これを機に、日本各地でこのようなイベントが派生的に開催され続けたら、東京2020の成功に繋がるかもしれないと感じた。


(text: 中村竜也 -R.G.C)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

スポーツ SPORTS

マシンを操り巧みにゴール!「Powerchair Football」って知っている?

HERO X 編集部

バスケットボールのコートの中を勢いよく走り抜ける電動車いす。車いすの先についたフットガードを使い、繊細なパスを繰り広げて選手たちはゴールを狙う。このスリリングな競技を知る人が今、日本でどれほどいるだろうか。最高時速は10キロ。小さなピッチの中ではその早さに驚くだろう。男女の性別も、ハンディキャップのあるなしにもこだわらない、まさにボーダレスなスポーツがこの「Powerchair Football」だ。

この競技の日本名は電動車椅子サッカー。国内の競技人口は500人を超えるとも言われる新しいジャンルのサッカーだ。動画に映し出されている通り、世界大会も開かれるほど、競技人口は広がりを見せている。日本では1982年に入ってきたスポーツで、まだその歴史は浅い。当時、大阪市の身体障がい者スポーツセンターに勤めていた現協会名誉顧問の山下義則氏が、アメリカやカナダなどで行われていた「パワーサッカー」にヒントを得て考案されたスポーツだ。電動車イスを操ることができる人ならば誰でも競技を楽しむことができる。

国内各地域に協会が組織化され、スポーツとしての認知が高まりだしており、年々その競技人口は増えている。ルールは簡単。ゴールキーパーを含む4人が1チームとなり、2本のゴールポストでできたゴールを狙うというもの。ピッチサイズは14〜18メートル×25メートルから30メートル。室内競技のため、天候の影響も受けにくい。世界大会のルールでは最高時速は10キロ以下。国内では6キロ以下と定められているが、この範囲内ならばどれだけ早いマシンを使ってもよいらしい。

国際大会に繋がる公式戦などはハンディのある人しか出場できないが、普段の大会では、ハンディのあるなしも関係ないため、誰でも楽しむことができるスポーツなのだ。サッカーと同じようにワールドカップも開催されており、実は日本は、2013年のアジア太平洋オセアニア選手権では優勝を納め、2017年に行われた第3回FIPFAワールドカップフロリダ大会にも出場、なかなかの強さを誇る。試合の情報は同協会の公式FBページなどで随時アップされているので、白熱の試合を生で見てほしい。

[TOP動画引用元:https://vimeo.com/224964220

(text: HERO X 編集部)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー