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最高時速100キロ以上!雪上のF1チェアスキーを、素人にやらせてみた【X-Challange】

岸 由利子 | Yuriko Kishi

プロアスリート×芸人がお届けする『X-CHALLENGE』とは!?「X-CHALLENGE」は、パラアスリートのエクストリーム・スポーツの凄さを、お笑いコンビ、シンプルの大蜘蛛さんが体を張ってお届けする連載企画。マシンの乗り方や操作方法など、プロのアスリートに直接手ほどきを受け、その場で実践するというエキサイティングかつ危険をはらんだ内容です。

「骨折覚悟で挑みます!」と男気あふれる抱負を語ってくださった大蜘蛛さん。「危ないから、やっぱり止めておきません?」と躊躇する人はなく、HERO-X編集部の誰もがその勇気にかけてみたいとワクワクしました。さすがは芸人さん!

とはいえ、アクシデントが起こる可能性は無きにしもあらず。スタッフ一同、全力でサポートすることを胸に、記念すべき第一回の取材地へと向かいました。

今回は、エクストリーム・スポーツの代表格、チェアスキー
日本代表の夏目選手が直々、伝授!

都内から車で約3時間。長野県の白馬八方尾根スキー場に現れたのは、チェアスキー日本代表の夏目堅司さん。2010年のバンクーバー、2014年のソチと、パラリンピックには2度の出場を果たし、現在は、来たる2018年のピョンチャンパラリンピックに向けて、トレーニングの真っ最中。夏目さんいわく、「全日本選手権のようなもの」というジャパンパラ競技会では、金メダル獲得も間近と期待される注目のアスリートです。

シュゴゴゴゴ、シュゴゴゴゴ。雪を切る轟音と共に、チェアスキーに乗った夏目選手が、猛スピードでゲレンデを滑り降りてきました。種目によっては、時速100kmを超えるスピードで雪上を走るチェアスキーは、まさにエクストリーム・スポーツと呼ぶにふさわしいアグレッシブなパラ競技。風と同化したかのように軽やかな身のこなしで、舞い上がる雪と共に、私たち一行の前で立ち止まった夏目選手。

初対面した大蜘蛛さんは、開口一番、「スキー場に行くっていうから、ソリかスノーボードかと思ってたんですけど…。チェアスキー、僕がやるんですか!?」。ゲレンデだというのに、額には汗。慌てふためくのも、無理はありません。今の今まで、チャレンジの詳細は、知らされていなかったのです。


「足の感覚がない。腕だけで歩いてるみたい。めっちゃ怖いです…」

有無を言わさず、早速練習スタート!チェアスキーのマシンは、1本のスキー板の上にシートが取り付けられています。(2本のタイプもあるそうです)そのシートに座り、「アウトリガー」と呼ばれるストックを両手に持ち、左右のバランスを取りながら滑るのですが、滑る以前に、そもそも、素人にとっては、静止状態で立つことすら難しいことが、早くも判明。

シートは見た目よりずっと小さく、細身の女性のお尻がちょうどはまるくらいのサイズ。そこに、体重85キロの大蜘蛛さんが乗ること自体、無理があるのではないかと心配するも、「大丈夫です」という夏目選手の言葉に背中を押されて、ひたすら立つ練習の繰り返し。

「足の感覚がないんです。腕だけで歩いてるみたい。めっちゃ怖いです…」と、大蜘蛛さん。筆者も試乗してみたのですが、腰回りと膝部分をベルトで固定しているため、下半身の自由がほとんど効かず、支えてもらって、かろうじて数秒立てる、支えがなければ、すぐにバランスを崩して転ぶという感じなのです。

一度転ぶと、立つのがまた大変。要は、マシンと下半身が合体したような状態なので、マシンごと起き上がらせなくてはならないのです。しかも、大蜘蛛さんの体重と合わせたら、総重量は約100キロ。まったく予期しなかった力仕事でしたが、取材スタッフ一同、“起き上げ隊”となり、支え続けました。(翌日、ひどい筋肉痛に襲われた人も発生)

「安定して風に乗ったら、めちゃくちゃ気持ち良かった!」

「見てください、この安定感!もうこのまま、寝れますよ」。そうこうするうちに、立てるようになっていた大蜘蛛さんに、夏目選手からアウトリガーの使い方が伝授されました。左右の手に持ったアウトリガーに重心をかけて、マシンごと、自分の体をグッと持ち上げるーコツをうまく掴めたようで、チェアスキーに乗る姿も、だんだんサマになってきた…。

しかし、おちおちしてはいられません。今回のミッションは、日が暮れる前に、チャレンジをやり遂げること。「平坦な方が、命の危険は少ないだろう」と判断した一行は、リフトに乗り、白馬八方尾根スキー場の山頂エリアを目指すことに。

真下に広がるのは、銀世界の白馬村。周りを見渡せば、雪化粧の山々。ここまで来たら、もうやるしかありません。「やったるで!」という芸人魂が、大蜘蛛さんの真剣な眼差しに現れていました。

夏目選手の滑る姿は、とにかく美しく、ただ見惚れるばかり。その後を追うように、滑っては転び、転んでは立ち上がり、挑戦し続ける大蜘蛛さん。

マシンごと背後からスタッフがトーンと押し、その勢いに任せてなだらかな傾斜面を滑るー最初はバランスを崩して転ぶこともありましたが、何度か繰り返すうちに、滑る時間も長くなり…。しかし、先ほどとは打って変わって、「コレ、めちゃくちゃ難しいですよ」となんだか険しい表情。どうやら、本気スイッチがONになったもようです。

朝から食事も取らず、ロクに休憩することもないままの強行特訓でしたが、それにもめげず、短い時間に物凄い集中力を発揮して、ついにここまで滑ることができるまでに!

「最初は、やっぱりめっちゃ怖かったんですけど、安定して風に乗ったら、めちゃくちゃ気持ち良かったですね。転んだら、一人では立てへんし…この競技のそういう大変さも分かりました。そして、起き上げ隊の皆さん、本当にありがとうございました。人のありがたみっていうか、温かみを感じました」

チャレンジを終えたシンプル大蜘蛛さんいわく、滑走中、風が耳元で語っていたのだそうです。「オレは、大蜘蛛の味方だよ。大蜘蛛じゃないと吹かないぞ」と。

X-CHALLENGE、いかがでしたか?次回は、さらにエクストリームなスポーツにチャレンジするかも!?乞うご期待ください。

夏目堅司(Kenji NATSUME)
1974年、長野県生まれ。白馬八方尾根スキースクールでインストラクターとして活躍していたが、2004年にモーグルジャンプの着地時にバランスを崩して脊髄を損傷。車いす生活となるも、リハビリ中にチェアスキーと出会い、その年の冬にはゲレンデへの復帰。翌年、レースを始め急成長、わずか1年でナショナルチームに入り2010年バンクーバー、2014年ソチへの出場を果たした。

シンプル 大蜘蛛英紀
サンミュージックプロダクション所属。キングオブコント2012 / 2016にて準決勝進出の実力 を持つお笑いコンビ「シンプル」のボケ担当。
http://www.sunmusic.org/profile/simple.html

(photo・movie: 大濱 健太郎 / 井上 塁)

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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東京2020まであと1年!俳優・斎藤工「特別記者」就任記念イベントレポート

Yuka Shingai

東京オリンピック・パラリンピックの開催までいよいよあと1年。2002年からJOCオフィシャルパートナーとして日本選手団を応援してきた読売新聞は先日、CMキャラクターを務め、この度、東京2020の特別記者に就任した俳優・斎藤工さんと、3名の豪華オリンピアン・パラリンピアンを迎えトークイベントを開催した。「タレントが記者をやっている、というところはぶち壊して、ギリギリのところを攻めていきたい」と特別記者就任について意気込みを語った斎藤さん。初仕事となったのが、この日開催されたトークイベント「読売新聞スペシャルトーク〜東京 2020 開催まであと 1 年!〜」の司会進行。腕章をつけ、記者としての準備も万全に整ったところで、ゲストが登壇。オリンピック、パラリンピック出場時のエピソードや、今後活躍が期待される選手など、東京2020が一層楽しみになるトークが繰り広げられた。

オリンピアンが語る、注目の選手とは?

ミー太郎 (読売新聞日曜版の連載マンガ「猫ピッチャー」の主人公) から「特別記者」任命状を授与された斎藤工さん。俳優業に加え、映画監督、モノクロ写真家、YouTuber などマルチな活躍ぶりで知られている。

1人目のゲストは、前回リオ2016大会で200m平泳ぎの金メダルに輝いた元水泳選手の金藤理絵さん。東京2020は現役引退後、初めての大会となる。

「リオから3年経ったと思うと時間の流れが速く感じます。現役時代は『あの大会まであと〇日』とカウントダウンすることも多かったし、練習していると、1日1日長かったのに、終わってみると何でこんなに速く感じるのか不思議ですね」と選手時代と今の違いについて語った。

続けて2人目のゲストは、元サッカー日本代表の城彰二さん。1996年アトランタオリンピックで強豪ブラジルを下した、通称『マイアミの奇跡』に貢献した城さんに、サッカー少年だった斎藤さんから「オリンピックとワールドカップは2年おきに開催されてますが、代表に選ばれる意味合いというのは?」という質問が飛ぶ。

「サッカーのオリンピック代表は少し特殊で、23歳以下という年齢制限が設けられていて、プラス3人オーバーエイジで選ばれる。僕が出たアトランタオリンピックでは全員23歳以下でしたが、その勢いで2年後の日本代表に入ろうという気持ちを全員持っていましたね。当時はJリーグの選手がメインでしたが、今は海外のクラブチームに所属する選手も増え、日本のサッカーがレベルアップしたことを感じています。今回の大会では、現在スペインのレアル・マドリーで活躍している久保建英選手に期待しています」と時代の変化や注目選手についても言及した。

運命的なミスが、車いす陸上の金メダリストを生んだ!?

3人目のゲスト伊藤智也さんは、2008年北京パラ車いす陸上金メダリスト、2012年ロンドンパラ銀メダリスト。HERO X でも度々紹介、編集長で株)RDS代表の杉原との競技用車いすレーサーの開発で東京2020を目指す、58歳現役の車いすランナーだ(参考記事:http://hero-x.jp/article/1811/)。パラリンピックまで残りちょうど400日という区切りでもあったイベント当日、伊藤選手は今の心境と現状についてこのように語った。

「選手からするとパラリンピックまでは階段が何段もあって、出場するための階段を確実に一段一段昇っていかなくてはいけないので、今は冷静かつ落ち着いた時間ですね。11月の世界選手権で確実な成績を収めることがパラリンピック出場のカギとなるので、国内の選手はまずはそこに照準を合わせています」

今回登壇したゲストのうち唯一の現役アスリートである伊藤選手は、34歳で多発性硬化症を発症したことから自立歩行が困難となり、車いす生活が始まった。2008年北京パラリンピック、2012年ロンドンパラリンピックでそれぞれメダルに輝き一度は引退したが、この度現役復帰、東京2020のトップを目指している。伊藤選手と車いす陸上競技とのドラマティックな出会いから、トークイベントは盛り上がりをみせる。

伊藤智也選手(以下、伊藤):「たまたま同じ病院に入院して友だちになった方の息子さんが車いすを扱う会社に勤めていて、買ってくれないかと言われたんです。渡りに船だと思って『持ってきてください』とお願いしたところ、営業担当の人が間違って競技用の車いすを持ってきた。それが競技を始めたきっかけです。

初めて出場した2004年のアテネパラリンピックではボコボコにやられました()。ですが僕は究極の負けず嫌いで、このままでは終われないと思いました。そもそも競技を始めた年齢が引退するくらいの年齢ですが、僕たちの競技は競技者個人だけでなく、道具の進化も大きく関係してきます。競技用マシンが変貌を遂げていくのを見て、育てていくことも楽しい。それが努力という形となり、成果として現れたのかもしれません」

城彰二さん(以下、城):「嘘みたいな話ですね、僕は絶対嘘だと思っていますけど ()

斎藤工さん(以下、斎藤):「金藤さんと城さんは負けず嫌いな一面はありますか?」

金藤理恵さん(以下、金藤):「我が家は兄弟3人とも水泳をやっていて、同じ平泳ぎ専門だった3つ上の姉に対しては勝ちたいって気持ちがありました。あとは男子には短距離では勝てないのも、どうしてどうして、と思っていましたね」

:「僕は意外と負けず嫌いではないんです。エースの下で可愛がられる子分みたいに、要領の良さでやってきたタイプ。あと、ゴールキーパーはちょっと変わった人、ディフェンスは緻密で真面目な人、中盤は色んな対応ができる人、ストライカーは勢いがある人みたいにポジションによっても変わる傾向がサッカーにはありますね」

斎藤:「なるほど。おふたりがオリンピックを意識しだしたのはいつ頃ですか?」

金藤:「私は小学校の卒業文集に将来の夢はオリンピックって書いていたんですが、その時は絶対行きたいというより、ぼんやり思っていた程度でした。本当にオリンピックに行きたいと思ったのは、北島康介選手が2連覇を果たして『なんも言えねえ』と言っていた北京オリンピックの時で、やっぱり私もここに立ちたいって思いました。それから10年くらいかけてオリンピックが絶対叶えたい目標に変わっていきました」

:「サッカーというとやはり大きな大会はワールドカップなので、僕はそっちに目が向いていて、オリンピックを意識したのは予選大会くらいからでした。アトランタでのオリンピック出場はメキシコ大会以来28年ぶりで、僕たちがまだ生まれてなかった頃というのもあって、なかなかピンとこなかったのかもしれませんね」

斎藤:「確かに、オリンピックでサッカーというイメージを作ったのはアトランタのマイアミの奇跡があったからかもしれませんね」

競技用レーサーは自分専用にカスタマイズ。値段はなんと

マシン側面には HERO X のロゴも。

ここで伊藤さんが、競技用レーサーに乗って再登場。その近未来的なデザインに斎藤さんの口から思わず「AKIRAの世界みたい」と感嘆の声が漏れた。もちろんこのモデルは、エクストリーム・スポーツのマシン開発に精通したエンジニアや気鋭のプロダクトデザイナーらと結成したRDS社のチーム伊藤で開発したマシン。

伊藤:「普段使っている車いすはアルミ製ですが、この競技用レーサーは素材にカーボンを使っています。最大の特徴はマシンに乗って漕いでいる姿を全てデータ化して可視化しているんです。そこから一番早く走れると思われるフォームを想定した形で自分の体にフィットするマシンを作っていただいています。実はこのレーサーに正座する形で乗っているので、12時間も乗っていると周りには『脚が痺れてきませんか?』と心配されるんですが、元々痺れてるんで分からないんですよ()

齋藤:「そこ、突っ込み方が分かりません()

:「笑っていいのか分からないですよ! ちなみにこれ1台でおいくらくらいするんですか?」

伊藤:「従来のマシンですと、ホイール込みで560万円くらいですかね。僕が今乗っているものだと、開発からワンセットなので、正確な値段は言えない、というか分からないというのが正しいですね。」

金藤:「値段がつけられないレベルなんですね」

伊藤:「はい、絶対に壊せないですね(笑)」

金藤:「以前、競技用の車いすを拝見したことがあるんですが、メカって感じですよね。すごいとしか言葉が出てきません」

そんな伊藤さんの注目マシンから、話題は現在放映中のNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』へシフトする。本作でアムステルダムオリンピックのメダリストでもある競泳選手、高石勝男役を演じる斎藤さんを中心に話が飛び交い、終始笑いの絶えないトークイベントは無事に終了。

その後は斎藤さんの単独記者会見。記者としてどのように情報源やインプットを広げていくかという質問には「情報が蔓延するなかで、どういうことが人の奥底まで記憶に残せるのか例題を挙げていっている最中。自分自身を実験することで見える景色もあるので、記者としての活動も特殊なものになっていくのではないかと今探っているところです」と特別記者として意欲をみせ、また「レーサーの機動力に感動しましたし、競技者とメカニックの共同作業だなと実感しましたね。水泳やサッカーなど期待しているオリンピック競技もありますが、パラリンピックは更に選手のドラマがありそうで楽しみです」とパラリンピック競技やマシンへの強い関心も語られた。

(画像提供:読売新聞東京本社)

(text: Yuka Shingai)

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