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青木拓磨がバイクに復活!鈴鹿を華麗に疾走

HERO X 編集部

元ロードレース世界選手権(WGP)ライダーの青木拓磨選手が22年ぶりに鈴鹿サーキットを駆け抜けた。王者の走りは健在。青木選手の華麗なる走行に会場からは歓声が沸き起こった。

2018年から2019FIM世界耐久選手権(EWC)の最終戦となったコカ・コーラ鈴鹿8時間耐久ロードレース第42回大会決勝レース会場に現れ、デモ走行を披露した青木選手はRDS提供の青木モデルの車いすに乗って登場。バイクに乗り換え颯爽と鈴鹿を走り抜けた。

青木選手は1995年、96年と全日本ロードレース選手権スーパーバイククラスでチャンピオンを獲得、1997年からはWGPGP500クラスにフル参戦、ホンダのバイクで表彰台を何度も経験した経歴の持ち主。1998年に本番前のテスト走行中の転倒で脊髄を損傷、下半身付随となりバイクからは遠のいていた。その後、手だけで運転できるようにしたレースカーで四輪レースに参加、2020年にはWEC世界選手権のル・マン24時間レースの特別枠への出場が決まっている。

バイクに乗るのは22年ぶりのこと。『青木拓磨がバイクで走る“Takuma Rides Again”プロジェクト』と名付けられた今回のデモ走行には同じくレーサーの兄・宣篤選手と弟・治親選手が協力した。兄は現在MotoGPマシン開発者として活躍、弟はオートレースとそれぞれの道を歩んでいる3兄弟。同プロジェクトの発端は弟の治親選手が海外のGPでハンディキャップライダーだけで競われるレースを見たこと。もう一度兄の拓磨選手が「バイクで走る姿を見たい」と思ったという。そんな弟の思いを受け、拓磨選手は2019年の春あたりからバイクでの走行に向けてトレーニングを重ねてきた。

当日はシフトチェンジを手元で行えるようにカスタムした青木モデルのホンダCBR1000RR SPで素晴らしい走りを見せてくれた青木拓磨選手。『HERO X』では以前、『HERO X』編集長の対談をきっかけに青木選手の車いす (WF01) を開発、提供し応援してきた。(対談の模様はこちらhttp://hero-x.jp/article/6365/)

次々と挑戦を続ける青木拓磨選手、次はどんな挑戦を見せてくれるのか、今後も目が離せない。

(text: HERO X 編集部)

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“マーダーボール(殺人球技)”のジャンヌ・ダルク。日本代表、史上初の女性選手【倉橋香衣:HEROS】前編

岸 由利子 | Yuriko Kishi

「マーダーボール(殺人球技)」の異名を持つウィルチェアーラグビーは、車いすを激しくぶつけ合い、突き飛ばすこともあれば、吹っ飛ばされることもある凄まじい競技。それでいて、れっきとした男女混合の団体球技だ。昨夏のリオパラリンピックで銅メダルを獲得したウィルチェアーラグビー日本代表は、2020年東京パラリンピックの金メダル獲得をめざして、新たなスタートを切った。そんな中、今年1月、女性としては、史上初となる代表候補に選ばれたのが、倉橋香衣(くらはし・かえ)選手(商船三井)。プレー中も笑顔を絶やさず、生き生きとコートを走る倉橋選手の魅力に迫る。

唯一、本気の激突が許されたパラスポーツ

ウィルチェアーラグビーは、唯一、車いす同士のタックルが認められたパラ競技。通称「ラグ車」と呼ばれる競技用車いすは、敵から引っ掛けられないように、車体の前面をウィングで囲ったハイポインター用と、長い車体に相手の車いすを食い止めるためのバンパーが付いたローポインター用の2種類がある。いずれも、激突に耐えうる強靭な構造だ。ボールを運んで、ゴールへと向かうハイポインターに対し、倉橋選手は、味方のためにディフェンスに徹するローポインターの役割を担っている。

「ウィルチェアーラグビーの一番の見どころは、タックルのぶつかる音や衝撃の迫力。吹っ飛ぶくらい、本気でぶつかり合うことが許されたスポーツって、他にはないと思います。特に外国人選手は、体も大きく、スピードもパワーもあるので、バーンと当たってきますが、それが面白くて。控えめに当たってくる選手もいますが、容赦なく当たってくれた方が、私は楽しいですね。あ、来た来た!みたいな感じで。ぶつかっても、怒られませんし(笑)」

さらに、この競技は男女混成。男性選手と女性選手が同じコートで戦えることも、ウィルチェアーラグビーの魅力のひとつだと倉橋選手は話す。

「まだ本当に怖い目に遭ったことがないからかもしれませんが、怖いと感じることはないですね。転んでも、頭や顔を打つ程度なので、“あ、ちょっと痛いな”と思うくらいで。試合中、ハイポインターたちが、物凄いスピードで走って、ぶつかり合って吹っ飛ぶ時、その振動を感じつつ、“今日も、めっちゃ飛んでるわ~!”とつぶやきながら、次のポジションに移動しています(笑)」

女性初、2020東京パラリンピックの日本代表候補に選ばれたからには、チームに貢献できる強さを鍛えたい

小学1年から高校まで、体操ひと筋の少女時代を過ごしてきた倉橋選手。教師をめざして進学した大学ではトランポリン部に所属し、大学2年の時には、全日本インカレBクラスに出場した。その翌年の春、次のAクラスの出場を目標に公式練習に励んでいた矢先、背中で弾むはずが首から落ちて、頸髄(けいずい)を損傷し、車いす生活になった。

「四肢にまひが残る人ができるスポーツって、本当に少ないんですね。リハビリ中に、陸上や水泳などいくつか体験しましたが、その中でも競技としてやってみたいと思ったのがウィルチェアーラグビーでした。あの激しさに惹かれました」

2013年10月からウィルチェアーラグビーを始め、東京に拠点を置くクラブチーム「BLITZ」でプレーする中、今年1月、2020年東京パラリンピックの日本代表候補に、女子選手として初めて選出された。

「いつかはそこにたどり着きたいと思っていましたが、最初、呼ばれた時は、“なんで、私が?”という感じでした。でも選ばれたからには、もっと上手くなりたいです。私は0.5ですが、実質0なので、それもメリットとして呼ばれた部分は大きいと思います。0.5の男性選手に負けないくらいにならないと意味がないから、本当に頑張らなくちゃダメです」

ウィルチェアーラグビーには、最も軽度な3.5から最も重度な0.5まで、障害のレベルによって異なる7段階の持ち点がある。コートに入る4選手の持ち点は、8.0以内でなければならない。だが、そこに女性選手が加わる場合は、1名につき合計点から0.5マイナスされる。倉橋選手の言う実質0とは、このルールに依るものだ。

3月に、カナダのブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市オリンピックオーバルで開催された「バンクーバー・インビテーショナル・ウィルチェアーラグビー・トーナメント」をはじめ、5月はアメリカ、8月はニュージーランドで開かれた国際大会に出場するなど、今年に入って、海外に行く機会が増えた倉橋選手。アメリカの「トリ・ネーションズ・ウィルチェアーラグビー・インビテーショナル」では、所属する日本代表チームが優勝を果たし、ニュージーランドの世界選手権アジア・オセアニア地区予選では、持ち点「0.5」の最優秀選手に選ばれた。

優勝できて嬉しい気持ちはもちろんありますが、それよりも、色んな経験ができたことが一番大きな収穫でした。試合に出場する度に、新しい何かが見えたり、知れることが楽しかったです。今まで海外旅行に一度も行ったことがなかったので、各国を旅して周るという初めての経験は、スタンプラリーみたいでワクワクしました」 

後編へつづく

倉橋香衣(くらはし・かえ)
1990年、兵庫県神戸市生まれ。小学1年、須磨ジュニア体操クラブで体操を始め、市立須磨高(現・須磨翔風高)まで体操選手として活躍し、文教大進学後はトランポリン部に所属。2011年、全日本選手権に向けた公式練習中に、頸髄損傷し、車いす生活となる。2013年10月よりウィルチェアーラグビーを始め、現在は、埼玉県所沢市に拠点を置くクラブチーム「BLITZ」でプレー。2016年4月に商船三井に入社し、人事部ダイバーシティ・健康経営推進室に所属。2017年、ウィルチェアーラグビー界史上初の女性日本代表候補に選ばれた。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 壬生マリコ)

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