テクノロジー TECHNOLOGY

温もりや冷たさが遠隔でそのまま伝わる!テレイグジスタンスシステム「TELESAR V」

Yuka Shingai

HERO Xではこれまで、ハプティクス、テレロボティクスといったVR/AR内のオブジェクトや、遠隔地にある物体を実際に触ったような体験ができるコンテンツを数々紹介してきた。果たして「実際に触ったような」とはどれくらい本物に近い感覚なのか。初めて3D映画を見たときに感じた「まるで本物みたい!実写映画にしか見えない!」という衝撃が待ち受けているのだろうか。これらのテクノロジーは、多くの人が関心を抱いているもののひとつであろう。

最新テクノロジーとしての印象が強い遠隔体験、遠隔就労などは、実はコンセプトとしては長い歴史を持ち、日本では東京大学名誉教授、慶應義塾大学特任教授である舘 暲(たち・すすむ)氏がこの分野の先駆者的研究者として知られている。

1980年代より「テレイグジスタンス」という概念を提唱し、感覚伝達技術の研究開発を進めてきた舘氏らの研究グループが2011年に開発した「TELESAR V(テレサファイブ)」は人と同期して同じ動作をするアバター(分身)ロボットを介して、遠隔地にいながらまるで目の前の物に直接触れているかのような感覚を味わえるシステムだ。

指先が押し込まれる力(押下力)と指先に加わる水平方向の力(せん断力)と物体表面の温度を伝えることで、ユーザーは物を握ったときに指先に力を感じ、温もりや冷たさまでも感じることができる。この時点では、まださらさら、ゴワゴワといったオブジェクトの質感までは伝達できなかったが、圧覚・振動覚・温度覚を伝える触感伝達技術を新たに開発し、「TELESAR V」と統合することにより、遠隔環境の細やかな触感を伝えることに世界で初めて成功した。

エンターテインメントや教育、福祉などテレイグジスタンスが貢献できる分野は幅広い。近年人気のライブビューイング、パブリックビューイングなどはより「体感型」のエンタメに昇華されていくだろう。

そのほか、ネットショッピングではなかなか確かめることのできない商品の質感、実際手にしたときの重量から、日本国内ではなかなかお目にかかれない動物や植物など、リアルに触れてみたいものがより身近になっていきそうだ。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=KoC1iTOmYTg

(text: Yuka Shingai)

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テクノロジー TECHNOLOGY

まるでドクターオクトパス?人の作業をサポートしてくれるバックパック型ロボットアーム

Yuka Shingai

掃除機、スピーカー、ペットなど、ロボットの存在が私たちの生活の中でもかなり身近になっている。HERO X でもいくつか取り上げているロボットアームは、これからますます発展に期待がかかる分野。かつてヘビ型ロボットを発表し、その名を世に知らしめたペンシルバニア州ピッツバーグのカーネギー・メロン大学 (CMU) のバイオロボット研究室からもバックパックのように背負って使うロボットアームが登場した。

車や飛行機を組み立てるときなど、何かを頭上に持ち上げながら、天井を修繕する作業が発生する場合、部品を取り付ける人と、屋根の部分を押さえておく人の二人体制で取り組む必要がある。

「2本の腕ではちょっと難しい作業を1人で完了させることができないだろうか」と考えたことがこのプロジェクトの発端だったと CMU 博士課程の学生、Julian Whitman 氏は語る。

現段階では、ゲームコントローラーで1本のアームを制御しているが、Whitman 氏いわく、「人が運搬できる限り、アームを増やしていくことは可能」とのこと。制限があるとしたら1人でどれだけのアームをコントロールできるかがカギのようだ。

現在はボタンと音声コマンドでコントロールしているため、アームを追加することで、必要なボタンと音声コマンドも増えて、かえって使いづらくなってしまうのではないかということが懸念事項ではあるが、これに対し Whitman 氏はアームをより自立的にして、独自の知覚や意思決定のプロセスを持たせたいと考えているそうだ。

スパイダーマンの敵役であるドクターオクトパスは4本のロボットアームを装着したキャラクターだが、Whitman 氏の計画が成功すれば、アメコミの世界が現実で叶ってしまうかもしれない。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/dPRed3LymcA

(text: Yuka Shingai)

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