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あのオムロンが卓球ロボット!?その先に見つめる「人と機械の融和」とは

中村竜也 -R.G.C

オムロンのコア技術「センシング&コントロール+Think」を通じてオムロンが目指す「人と機械の融和」をわかりやすく体現するために、2013年の第1世代より開発を続けている卓球ロボットがある。その名も「フォルフェウス(FORPHEUS)」。卓球というスポーツを通して世の中に何を訴求し、そして何を残そうとしているのか。ロボティクス技術が導く人類の明るい未来に迫る。

中国で開催したプライベート展示会で


今回、オムロンが研究・開発を進める卓球ロボット・フォルフェウスの軌跡に迫るべくお話を伺ったのは、現在、開発チームのリーダーを務める八瀬哲志さん(以下八瀬さん)。2013年に第1世代の開発をスタートしたプロジェクトチームだが、その経緯はいかに。

「中国で行われたオムロンのクローズドな展示会に合わせ、オムロンの技術とコンセプトを訴求する何か面白い展示が出来ないかという話があったんです。『じゃあ、人と機械のインタラクションがあり、馴染みやすい卓球でやってみよう』というのがきっかけでした。ロボティクス、センシングの技術が組み合わさった、非常に面白い開発内容であったのと、人とフォルフェウスが直接ラリーをすることで、コミュニケーションを取りながらお互いに成長していくことが、オムロンが考える『人と機械の融和』の未来像を分かりやすく伝えることができるいい機会ということで、現在まで続いているプロジェクトなのです。今では、オムロンの技術コンセプトの象徴になっています」

ロボットだからこそ発生してしまう制限との戦い

当初は、オムロンが持つ既存の技術を使うというのがテーマだったという。しかし人が打った球を人が返すという一連の動きのなかで理想に近づけるためには、新たな技術の開発も必要になってきた。そこには、当然ながら想像以上の苦労も。

「純粋に卓球をするという動きのなかでは、人が簡単に行なっている行動が、ロボットにとってはとても難しいんです。例えば、ロボットに山なりの球を打たせるのって想像以上に大変でして。その理由のひとつが、人であれば山なりの球が来たら、直感的に下がって打つという動きをしますよね。でもロボットは動ける範囲が決まっているので、どうしてもそれが壁になってしまいタイミングがシビアになり打てない。あとは、単純に卓球というスポーツ自体が、工場で使われているロボットに比べ、より正確で速い動きが必要とされるので、そういった部分の作り込みはすごく難しく、年々改良を加えていっています」

人間ができる、反射神経を含めた直感的な動きの再現というのは確かに難しいところだ。しかし、第5世代ですでにここまで来ているのを目の当たりにすると、次世代以降にはさらなる期待しかない。ではその動きを教えるのにどの程度の時間を要するのか。

「今まで平打ちしか出来なかったロボットにドライブを打つことを学ばせるのに半年から10ヶ月くらいの開発期間がかかりました。今後は、教えるという形ではなく、ロボット自ら学ぶ機能が搭載されれば、この時間は格段に短縮されてくると思います。見た瞬間に出来るようになるのが理想です」

第5世代フォルフェウスの最大の進化とは


「今までのフォルフェウスから比べた第5世代での進化は、人への理解が深まっているところです。すなわち、人の意図や能力を理解し、それに合わせたフィードバックをしてくれるというのが、第1世代から第5世代を見た時の一番大きな進化です。AIのような頭脳に身体性が加われば、世の中のあらゆることに対し、今まではあり得なかった人の成長や、新しい価値を生み出していけると思っています。もちろんそれに伴い、卓球能力もどんどん上がっています」

将棋の藤井聡太七段や、囲碁の伊田篤史八段のような、素晴らしく強い若手の出現がいい例かもしれない。基本的に練習といえば、地元の道場で習っていただけが、プロレベルのAIと自宅で練習が出来るようになったことにより、今まで無かった戦術が生まれたり、彼らのような人たちが現れたわけだ。

「現状として卓球に限らず、何かスポーツを教えるときって、基本的にみんなに同じように教えますよね。でも成長の過程って、実は人それぞれ違う。つまり、その対象者に対する感情や個性、筋肉の付き方など、様々な情報を元に理解がもっと深まれば、その人に最適なコーチングができ、今までにあり得なかった成長速度を実現できる可能性があるのです。

そして次の第6世代では、モチベーションをどうやって上げるかなど、感情の部分に踏み込んで何かできたらなと考えています。相手の欲しているものや、心を動かすラリーをして、もっと卓球が楽しくなるようにできたらなと思っています。

それと、プロとラリーしても対応出来るくらいに、卓球能力ももっと上げていきたいです。ちなみに先日、ドイツで開催された展示会への出展時に、元プロ選手の卓球ジャーナリストとラリーをしたときの様子がこちらです」

「来年は新しい機構にも挑戦しようと思っているので、それが完成すれば、今は返せない隅の方も打てるようになり、スイングスピードもアップできるかなと。来年お披露目の目処で開発にあたってます」

5Gを始めとした通信の発展とともに、フォルフェウスが飛躍的に進化を遂げることは考えられるのだろうか。

「卓球の性能でいうとそこまで多くはないと思いますが、コミュニケーションの幅は飛躍的に広がると思います。今は、ロボットはロボットとして動いていますけど、VRゴーグルを装着しロボット視点でスイングした感覚が遠隔操縦者の手に伝われば、まさに自分がロボットを動かしている感覚になるので、プロのスマッシュを老人ホームにいるおばあさんが打ち返すとかが可能になってくる。そういったことで日々の活力にも繋がれば素晴らしいですよね。人間とフォルフェウスが楽しみながらインタラクションしていくことで、お互いが成長し、人類自体の限界を超えていくというひとつのシンボルになったらいいなと思っています」

技術の発展とともに、我々の生活圏にロボットがより深く関わってくる。これこそがオムロンが掲げる「人と機械の融和」なのだ。フォルフェウスが切り拓くであろう未来には希望しかないと、八瀬さんの話を伺い強く感じた。

オムロンオフィシャルホームページ
https://www.omron.co.jp/

(画像協力:オムロン株式会社)

(text: 中村竜也 -R.G.C)

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実はスンゴイ経済効果!各国がこぞって開催地に手を挙げるワケ

高橋二朗

コロナの影響で開催が危ぶまれる東京オリンピック。一流選手を間近で見られるというチャンスと共に、経済効果も注目を集めていた。オリンピックの中止は経済に対する打撃もあるため、安全か経済かという議論が沸き起こるのは当然だろう。実は、各国にもたらす経済効果としての視点で見ると、モータースポーツも同じことが言えるのではないか。今回は、そんな経済とスポーツ興行の関係性をモータースポーツジャーナリストの高橋二朗氏が解説する。

どれだけ知ってる?
モータースポーツ

誰もが知るF1を筆頭とする華やかなレースで人々を魅了するモータースポーツだが、その裏で繰り広げられる経済活動についてはあまり知られていないかもしれない。今回はそんなモータースポーツの裏側を紹介しよう。

まずはモータースポーツの説明から。ひとくちにモータースポーツといっても、いろいろなカテゴリーが存在する。モータースポーツのために造られたコースで行われるのがサーキットモータースポーツ。レースがその代表で、その最高峰が世界フォーミュラ・ワン選手権(F1)となっている。一方、専用に造られたコースだけでなく、公道と一部の特設コースを使って行われるのがラリーだ。こちらのトップレースが世界ラリー選手権(WRC)だ。そして、サーキットで距離の長い競技を行うのが世界耐久レース選手権(WEC)、有名どころだけでも三種類があるわけだ。

各々シリーズによって参加できる車両の規則が異なり、各シリーズは年間に複数の大会を催してそのトータルポイント(または有効ポイント制)で年間のチャンピオンを決定している。ワールドステイタスのシリーズ(世界選手権)では、グローバルに転戦、日本も開催地のひとつである。今年はF1の日本グランプリ(鈴鹿サーキット)、WECの日本大会 FUJI 6時間レース(富士スピードウエイ)、WRCの日本大会 Rally Japan(愛知県・岐阜県内)が予定されている。世界的なコロナ禍でも予定通りのイベントが行われることを祈るばかりだ。また、日本国内だけで完結する国内選手権もある。レースでは全日本SUPER FORMULA選手権、SUPER GT選手権。ラリーでは、全日本ラリー選手権をトップカテゴリーとしてこちらは日本各地で競技が行われている。F1は、グランプリ=GPという、その国でのトップイベントである名称が与えられている。各国名に「GP」が付けられるトップステイタスのレースは格式が高く、華やかで、煌びやかで他のシリーズとはグレードが違う扱いとなる。

当然、F1GPに参戦する車両も一流のものが集まる。モータースポーツの最高のテクノロジーを結集した車両は、参加チーム独自で製作したものでなくてはならないというルールがあるため、独自のファクトリーで製作されたシャシー(自動車の基本骨格)に、エンジンメーカーから供給されるエンジンを搭載しているという組み合わせでマシンは作り出されている。今シーズン7年ぶりに参戦する日本人ドライバー角田裕毅選手がハンドルを握るのは、イタリアに本拠を置くアルファタウリチームのマシンだ。シャシーには、日本のホンダエンジンが搭載されている。

ところで、一体このマシンはいくらくらいするのだろうか? 最高水準のレーシングマシン製作技術によって製作するマシンは金額で換算することが難しいと言われているのだが、F1に参戦しているチームの年間予算はトップチームで約600億円、下位チームでも約100億円を下らないと報じられる。これはチームの運営全体の予算額で、マシンの開発・製作費も当然この中に含まれている。とにかく膨大な軍資金がいることに違いはない。

ここで登場するのがスポンサーだ。各チームはこうした経費を賄うためにマシンのボディーにスポンサーのロゴを大きく露出させている。このため、F1マシンは“走る広告塔”とも言われるのだ。あまり知られていないことだが、スポンサーの中には金銭的なサポートと共に技術パートナーとして参画する企業もある。チームの年間予算が莫大であることや、スポンサー料、ドライバーの報酬など、やはりF1GPにうごめくお金は、他のシリーズとは桁が違う。

意外と知らないF1と経済の関係性

F1GPの運営は現在、『F1グループ』が行っていて、権利関係のマネジメントの全てを司っている。F1グループは、各国の主催者(日本は鈴鹿サーキット)から興行開催権料を支払ってもらい、F1GPシリーズの運営をし、各チーム・ドライバーへ利益分配を行なっている。

当然F1GP開催地への経済効果は大きなものとなる。全日本選手権レベルの大会の例を見ても、SUPER GTは、一大会で約1,000人の関係者が開催地に移動。その関係者の移動費、宿泊費、飲食費など地元に投下される金額、それに伴う税収入は、数日という短期間でも一つの産業並みとなる。つまり、モータースポーツは、転戦する産業という一面を持っているのだ。

サーキットは、観客の入場収入と大会のタイトルスポンサー、サブタイトルスポンサーからスポンサー料金を得ている。その対価としてスポンサーは、看板でのスポンサー名の露出、中継TVでの露出、その他の方法でスポンサーの存在を周知させる。関係者だけでなく、サーキットへの観客の移動費、宿泊費、飲食費などが発生するわけで、それが地元の税収入になるのだから、サーキットのみならず、その自治体も大規模なイベントの誘致を望むわけだ。F1GPがヨーロッパ大陸で転戦する場合には、自国の観客だけでなく隣接する国から国境を超えて観戦に来ることも期待できる。

そして長年モータースポーツの取材を続ける筆者も、モータースポーツの経済効果を痛感する出来事があった。2004年、日本初のWRCが北海道の帯広市を中心にして開催された(以後、2007年まで毎年開催)。筆者ももちろん取材で参加していた。開催から数年経て帯広を訪れた際に、WRC主催者からメディアに配布されたイベントのロゴ入りのバッグを肩にかけて駅前の駐車場に立ち寄ると、料金所の老人に声をかけられた。

「あなたは、ラリーの人か? もう一回ラリーを呼んでもらいたい。ラリーは帯広の商店、飲食店、うちみたいな駐車場を儲からせてくれた。もう一度お願いしたい」地元の方からの声は、モータースポーツがもたらす開催地への経済効果を証明していた。

短・長二つの経済効果とは

モータースポーツが開催されるサーキットのグランドスタンドの裏で展開される公式グッズ販売は、チームやドライバーの人気度によって売り上げが大きく左右される。ファンはご贔屓チーム・ドライバーのグッズを求めるのは当然だ。F1GP開催日のトータル売り上げは1店舗で数百万円を記録したということを聞いたが、その金額の数十倍、数百倍という規模で長期的な効果も生み出している。エンジン供給メーカー、ホンダは、創業間もなく、そのモータースポーツ活動によってホンダファンを生み出し、4輪・2輪のホンダオーナーを生み出している。この状況もいち自動車メーカーの利益だけでなく、開催国、開催地への利益供与と捉えても良いだろう。

近年、世界的な観光地がF1GPの開催誘致に積極的なのだが、先日2022年アメリカ・マイアミでの開催が発表された。原則として一国内の開催はひとつのGPだけ(1国1GP)だったのだが、イタリアのようにモンツァサーキットで行われるイタリアGPに加えて、サンマリノGPの名称でイモラサーキットにおいて開催される例もあった。今シーズンは第2戦としてエミリア・ロマーニャGPを同イモラサーキットで開催する。多額のF1GP開催権料をF1グループに支払っても利益が見込める故に、開催に名乗りを上げたのだ。F1GPの開催は、地元への経済効果を望むだけではなく、その国の経済発展、経済力を世界に示す役目も持っている。

1950年からスタートして現在に至るF1GPは、伝統的に開催をしてきた国々に新たな開催国を加えて、今シーズンは23戦を予定している。新たに加わった東欧の国はその存在感を世界に示し、また中近東の国々は、その経済力をアピールするためにF1GPを開催しているともいえる。小国ながら世界のセレブの憧れの地、モナコは、公道を一時的に閉鎖してレースを開催している。近代的なサーキットに比べて安全性は決して高いとは言えないモナコGPだが、これは伝統を重んじる一面をF1グループが継承しているがゆえだろう。アジアの小国、シンガポールでも海側の埋め立て地に広がる新市街の公道を用いて、ナイトレースを開催している。世界に放映されるテレビ中継の時間帯としても欧米に有利な時間帯で生中継できるナイトレースは、観光立国のシンガポールとして、経済効果でもダブルのメリットが期待できる。最終戦、第23戦の地、アブダビGPもナイトレースで開催される。こちらのダブルメリットはテレビの放映時間帯と夜間に気温が下がるという点だ。

オランダGPが今年復活する。1985年以来開催されていなかった同GPは2020年に行われる予定だったが、コロナ禍で延期を余儀なくされ、今シーズンの第13戦でカレンダーに組み込まれた。その裏には、世界チャンピオン最有力候補であるレッドブルチームのオランダ人ドライバー、マックス・フェルスタッペン選手の存在が大きい。オランダGPが開催されていなかった時には多くのオランダ人ファンがベルギーGPや、他のヨーロッパ大陸のサーキットへ詰めかけた。ホンダのエンジンを駆るレッドブルはホンダの供給最終年にオランダ人初のF1チャンピオンの可能性が高くなり、経済効果だけではなく、モータースポーツ好きの国民の高揚を狙っている。お国柄、日本とはその度合いは異なるが、角田選手とホンダの活躍による国内の経済効果は明確な数字には表れないが、有形無形の経済的な効果を生み出しているのは事実だ。

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(text: 高橋二朗)

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