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医療機関、飛行機…コロナ対策で緊張が続く現場を守るロボットたち

Yuka Shingai

コロナウィルスの影響で、医療従事者や公共交通機関の職員など「エッセンシャルワーカー」と呼ばれる人たちの奮闘が続くなか、ロボットの力で現場の負担を軽減しようという流れが加速している。ロボットの働きはどこまで進化し、ウィルスの拡大を食い止められるのか。広範囲での活躍が見込まれるロボットを2種紹介しよう。

来院者の検温や受付対応も!
医療機関を助けるロボット「Cruzr」

ファーウェイ、テンセント、Ankerなど有数のハイテク企業が集まり、「中国のシリコンバレー」とも呼ばれる深セン市発のロボットメーカーUBTECH社は、2012年の設立以来、Alphaなどの二足歩行ロボットや、世界中に展開しているSTEMロボット「Jimu Robot」、スター・ウォーズの「ストームトルーパー」などの販売を行ってきた。いま同社のクラウドベースのヒューマノイドロボット「Cruzr (クルーザー)」をベースとした医療機関向けロボットを開発、販売を見越した実証に向けて動きが進んでいる。

その「Cruzr」をベースとした医療機関向けロボットでは、医療機関の来院者の検温や受付支援を行うことができ、神奈川県川崎市にある麻生総合病院など複数医療機関での実証実験を行い、金融機関やホテル、交通インフラ、学校などを中心に3年間で1500台のロボットを販売する予定だ。ロボットがツールとしての役割を飛び越えて、仕事仲間として日常生活に溶け込む未来がもうそこまで迫っているのかもしれない。

UV-Cライトで飛行機内を
滅菌するロボット『GermFalcon』

コロナウイルス以前からSARSやMERS、そして毎年流行するインフルエンザなど、ありとあらゆる感染症の蔓延危機と闘ってきた飛行機。アメリカ・カリフォルニア州のイノベーション企業Dimerが開発した『GermFalcon』はUV-Cライトでウイルスやバクテリアを殺す、飛行機内の滅菌に特化したロボットだ。機内のプラスチック、金属、皮革やそのほかのファブリックなどに使うことができ、オペレーションモードを座席部分、調理室、洗面所の3種類に切り替えて使用ができる。ボーイング737シリーズやエアバスA320シリーズであれば3分程度で99.99%除去できるほど、そのスピーディさも大きな特長と言えるだろう。

Dimerはコロナウイルスの流行が始まった1月下旬に、米国内の主要空港であるロサンゼルス国際空港、サンフランシスコ国際空港、ジョン・F・ケネディ国際空港に『GermFalcon』を無償で提供を開始している。世界各国の航空会社が国内線、国際線ともに大幅に減便や運休を行っているとはいえ、検疫体制が強化されるなど空港内の緊張も続く今、機内での感染拡大が堰き止められることを願うばかりだ。

事態の収束はもちろんのこと、ヒューマンリソースに余裕ができ、現場に安心感がもたらされることにも期待したい。

(text: Yuka Shingai)

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吸い込むと危険!?複雑すぎて分かりにくい次亜塩素酸水問題 用法用量を守れば安全説も

HERO X 編集部

文部科学省が全国の学校に対して配布した「学校における消毒の方法等について」により、注目を浴びることになった次亜塩素酸水。人体への影響があるとして、人がいる空間での噴霧について注意を呼びかけているのだが、ここに「待った」を唱える人もいる。「次亜塩素酸ナトリウム」と、「次亜塩素酸水」「次亜塩素酸水溶液」などを混同しているという指摘だ。素人にはわかりにくい違いについて、編集部は取材を進めてみた。

危険視された次亜塩素酸

マスコミで取り上げられるきっかけとなった上記の配布書類、中身を確認すると、日常的な消毒については物の表面の消毒として
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消毒用エタノールや 0.05%の次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使用。また、一部の界面活性剤で新型コロナウイルスに対する有効性が示されており、それらの成分を含む家庭用洗剤を用いることも有効
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とあるのだ。

だが、この次亜塩素酸ナトリウム消毒液については、同じ書類の中で
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次亜塩素酸水は、「次亜塩素酸ナトリウム」とは異なるものであり、新型コロナウイルス に対する有効性についてはまだ十分確認されていません。 *児童生徒等には次亜塩素酸ナトリウムを扱わせないようにしてください。

・次亜塩素酸ナトリウムの噴霧は、吸ったり目に入ったりすると健康に害を及ぼす可能性 があるため、絶対に行わないでください。
・製品の使用上の注意を熟読の上、正しく取り扱ってください。

○次亜塩素酸水の噴霧について
・次亜塩素酸水の噴霧器の使用については、その有効性及び安全性は明確になっているとは言えず、学校には健康面において様々な配慮を要する児童生徒等がいることから、児童生徒等がいる空間で使用しないでください。
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となっていた。経済産業省と製品評価研究機構(NITE)が5月29日付けで次亜塩素酸について文章を発表、これをうけ、文科省が同書類を作成し、配布にいたったという経緯があるのだが、一部マスコミがこれらを独自解釈、〝次亜塩素酸水は危ない!〟という話が出回ったという経緯がある。

これに対し、「情報の混同が見られる」と言うのは当媒体でも紹介した(http://hero-x.jp/article/9088/)、株式会社いけうちの中井志郎代表だ。同社では特許を取得している微細な霧を放つドライフォグノズルを開発、イタリアなどでは実際に駅構内などの除菌に使われている。「確かに、イタリアの除菌には、過酸化水素( H2O2)という別の物が使われているのですが、次亜塩素酸水溶液が危険というニュースには少し疑問を持っています。次亜塩素酸系ということで、情報がごっちゃになっているのでは」と言うのだ。

食器の漂白に使われる次亜塩素酸ナトリウム
レストランなどでも除菌として使われる
次亜塩素酸水

まず、はじめに次亜塩素酸ナトリウムと次亜塩素酸水の違いについて、わかりやすくしておこう。次亜塩素酸ナトリウムとは、家庭でもよく見かけ、「混ぜるな危険」でおなじみのあの漂白剤などがそれだ。食器の漂白や消毒として使われることが多く、コロナウイルスについても効果が確認されている。ただ、手に付くと皮膚に異常があるなど危険なため、必ずゴム手袋などを着用して使用、もちろん、人に向けて散布することは避けなければならない。

一方、次亜塩素酸水は、次亜塩素酸ナトリウムよりも酸性の側にあり、食品加工現場などでも使用されている。食品添加物としても認められているが、最終食品には入ってはいけないとされているものだ。最近では専用の装置で電解し生成される次亜塩素酸水を殺菌目的に調理場に導入するレストランなどもある。こうした水溶液と次亜塩素酸ナトリウムは別物だ。

例えば、森永乳業が展開している製品を見ると、食品を扱う場面で使う水溶液の場合、有効塩素濃度は10~30ppm、pH5.0~6.5などとなっている。株式会社いけうちによると、ドライフォグノズルを使って電解次亜塩素酸水溶液(有効塩素濃度50ppm)を噴霧した場合、噴霧した空間の気体中の塩素濃度は労働安全衛生法の基準である0.5ppm以下となるとしている。大学系の研究機関の実験では、これだけ薄い濃度でも、微生物に対する殺菌効果が得られているという発表も見られるという。

吹き付けてもぬれないほど小さな粒子を発するドライフォグ

規定が曖昧なため招かれた誤解

「次亜塩素酸水溶液について、全てを人体に危険と言い切るのはどうでしょうか。今のところ次亜塩素酸水溶液は雑貨品目に入るため、濃度などの基準があいまいなところがあります。最近参入した業者の中には亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸水溶液として販売しているケースもあり、ここを危険視しているんだと思うのですが、これらの製品と、製品安全データシート(SDS)をつけて正しく販売している製品とを一緒くたに危険視するのはよくないのでは」(中井氏)

また、マスコミなどが取り上げる際に論拠として引用していたNITE(製品評価研究機構)の公表について、とうのNITEは追加コメントを発表、
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「NITEが公表したとする一部の報道については、次亜塩素酸水の利用や噴霧の安全面の是非について何らかの見解を示した事実はなく、新型コロナウイルスに対して一定の効果を示すデータも出ている」https://www.nite.go.jp/information/osirasefaq20200430.html
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としている。素人にはなかなか分かりくい今回の次亜塩素酸問題。

きちんとした生成方法で作られたものを容量、用法を守って使えば危険ではないということなのか。中井氏は「適正な濃度、すなわち有効塩素濃度(50ppm)以下の噴霧では、人体への影響も考えにくい」と主張する。短時間に広範囲を消毒できるため、期待がかかる次亜塩素酸水溶液。それでも、大事を取って無人噴霧をという場合は噴霧器を搭載したロボットを作ればいいという発想も生まれるだろう。開発の視点でみれば大きなチャンスが存在するとも言える。

(text: HERO X 編集部)

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