対談 CONVERSATION

ドローンによって世界はどこまで変革できる? Drone Fund代表パートナー・大前創希が見据える未来 後編

浅羽晃

20世紀、乗り物が都市の空を飛ぶ未来像はSF的なイメージだったが、ドローンの登場によって、夢物語ではなくなろうとしている。実験フィールドでは被災地を想定した実証実験も進んでおり、災害救助における実用化は近いだろう。ドローンを活用できる4つのカテゴリーを中心に話を進めた前編に続き、後編はドローンに欠かせない位置情報の最新技術なども含めて、編集長・杉原とDrone Fund代表パートナーの大前創希氏が対談する。

ドローンには精度の高い
位置情報が不可欠

杉原:現在、実験フィールドではどのようなことを行っているのですか?

大前:たとえば、福島ロボットテストフィールドというところでは、本物のように建てたプラントの縦坑に小さいドローンを入れてみて、内部がどのように見えるかとか、破壊された街にドローンを入れるときのシミュレーションとか、そういったことの実証実験をしています。ほかにロボットテストフィールドで注目を集めたのは、100機のドローンを一気に動かしたときにどのような状況になるのか、複数のオペレーターが複数のシステムでドローンを動かしたとき、どういう状況になるのかといった実験ですね。

杉原:ジャムしちゃうかもしれないし。

大前:そうそうそう。有人ヘリと無人ヘリを衝突ラインに乗せてみて、ちゃんと回避行動がとれるかという実験もあります。もちろん、安全に配慮しながらやるんですけど。

杉原:ドローンは、位置情報をどれだけ正確にするかっていうことが大事じゃないですか。最新技術にはどのようなものがあるのですか?

大前:日本には準天頂衛星があり、GNSS(Global Navigation Satellite System)という技術を使えます。GNSSの斜めからの位置情報をGPSと組み合わせることによって、より精度の高い位置情報を得ることができます。なぜ精度の高い位置情報が必要かというと、たとえば農業においては、10cmのずれによって農薬の空白ゾーンや農薬過多のゾーンができてしまう。農作物の品質を保つためにも、コストの無駄を省くためにも、精度の高い位置情報は絶対に必要なんです。いまはそれにプラスアルファして、RTK(Real Time Kinematic)というものを使います。RTKは、自分の位置情報は正しいということを前提としたマーカーを置き、それと通信しながら位置情報の精度を高めていく。農業のドローンはまさにRTKなしでは動かない状況になってきていますし、測量の分野でも使われています。

道路が寸断された被災地での
要救助者の発見や状況の把握に役立つ

杉原:大前さんが投資されているA.L.I.Technologiesも含めて、パッセンジャー系は多くの人たちに未来を想像させるものになっていると思います。パッセンジャー系はエンジンを使うのか、モーターを使うのか、どちらの方向に進むのでしょうか?

大前:パッセンジャードローンに限らず、未来の乗り物はすべて電力で開発されていくべきだと、僕らは思っています。ガソリンだと、都市交通網のアップデイトの難易度が高いんですよ。たとえば、ビルの上にガソリンスタンドをつくるわけにはいかないので、エンジンにするとパッセンジャードローンは常に地上に降りなくてはいけないという世界観になってしまう。SDGs文脈でも、エネルギー消費が環境に及ぼす影響を考えると、電力のほうがまだ影響は小さいでしょう。

杉原:大前さんが考えている近い未来のパッセンジャードローンは、どのくらいの高さを飛ぶんですか?

大前:A.L.I.が進めているホバーバイクという部類のものは、道の上を浮くというものになるので、それこそ数10cmということになります。ただ、彼らのつくっているものは、性能的には数m浮くことができるので、たとえば、自衛隊が災害救助に駆けつけるとき、4~5m程度の障害物を乗り越えることが可能です。山間部などは災害が起きたときに道路が寸断されて、駆けつけることが難しくなる。いまでもヘリはありますが、一部、陸路を使いながらドローンを飛ばすという方法論なら、要救助者の発見や状況の把握が早くできるようになります。

杉原:日本には超高齢化社会が来るじゃないですか。ドローンはどのような影響を与えると思いますか?

大前:高齢化が進むということは、労働人口が減るということです。そうなると、たとえば宅配業は、現在のように全国一律に近いサービスをすることが難しくなる。山間部などでは、人間が個配するよりもドローンで届けたほうが効率的ということになるでしょう。

ロボット技術が進むと
新しい仕事が生まれる

杉原:お話をうかがっていると、大前さんはロボットがイノベーションをもたらすという考えですね。そのひとつのツールがドローンだと思うのですが、日本はあと何年くらいで大きく変わりそうですか?

大前:いま、変わり始めているところです。10年後にはもっとロボットを活用していたり、人間がやらなくてもいい仕事はロボットがやる世界になっていると思います。

杉原:そうすると、僕たち、時間を手に入れられますもんね。

大前:そうです。今後、ふたつの大きな変化が訪れるでしょう。ひとつは、人間からロボットへの仕事の置き換え。これまで、技術は人間が人間に継承してきました。その技術自体は重要なものですが、なかには、もう人間が継承し続けることが難しい部分もあると思うんです。たとえば、高いメンテナンス精度が求められるような技術。人間がやっても重大事故につながるようなミスは起きるわけです。将来的に、メンテナンスはロボットが行ったほうが、高精度になると考えられます。

杉原:24時間、365日できますもんね。

大前:そうです。人間よりもロボットに適している仕事は置き換えられていくと思います。もうひとつ、ロボットのサポートによって、必ず人間が関わらなければいけない分野の効率化が著しく進みます。たとえば、農業は最終的に人間が関わらなければできませんが、大きいフィールドでロボットを使うと、圧倒的に効率が良くなります。

杉原:在宅で農業ができますね。

大前:新しい仕事が生まれる可能性は高いと思いますよ。人間は技術の発展とともに、新しい職種を手に入れてきましたから。効率が良くなり、収益性が上がれば、農業に就労する若い人も増えます。

杉原:プログラミングをはじめとして、僕らが小学校、中学校のときにはなかったカリキュラムが増えていますが、そのなかにドローンがあったら面白いですね。

大前:通信技術が高度に発達していくと、ロボットのサポートをする人間が必ず必要になってきます。特殊スキルを身につけておくのはいいでしょうね。

杉原:僕も早めに大前さんにスキルを教えてもらおう。

大前:ドローンなんて、勝手に飛ばせばいいだけ。もちろん、ちゃんとした場所でね(笑)。

前編はこちら

大前創希(おおまえ・そうき)
1974年、大前研一氏の長男として生まれる。2002年に株式会社クリエイティブホープを創業し、戦略面を重視したWebコンサルティングを展開。Web戦略の立案・ブランディングから、アクセス解析に基づく科学的サイト分析、Webサイトの設計・構築・運用に至るワンストップサービスを立ち上げ、自らもWebコンサルタントとして数々のナショナルブランドや国際的な企業・団体の大規模Webサイトを成功に導く。2014年末より個人的なドローンの活動を開始。2016年5月(株)ドローン・エモーション立ち上げに参画。2017年5月Drone Fund アドバイザリーボードに参画。2018年9月よりDrone Fund 共同代表パートナーに就任。ビジネス・ブレークスルー大学/大学院 教授(専門はデジタルマーケティング)。

(text: 浅羽晃)

(photo: 増元幸司)

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対談 CONVERSATION

圧倒的なリアリティを手に入れた「CYBER WHEEL X」がもたらす未来予想図とは? 後編

長谷川茂雄

株式会社ワントゥーテンが、2017年に発表した車いす型VRレーサー「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」。そのアップデート版「CYBER WHEEL X(サイバーウィル エックス)」が、東京2020オリンピック・パラリンピック大会開催から1年を切ったいま、遂に発表された。前編では、キーマンであるワントゥーテンの代表、澤邊芳明氏と、共同開発者のHERO X編集長兼RDS代表の杉原が、その驚くべき進化のポイントについて語ったが、後編では、さらに“リアル”にこだわったという開発過程の裏側とこれからの構想へと話は進んだ。二人が「CYBER WHEEL X」を通して描くユニークな世界とは?

将来的には現実世界との
完璧な融合も可能になる?

CYBER WHEEL XのCG空間は、すべてリアルな東京の街並みから作られている。それは、今後このVRが、現実世界とリンクする可能性を広げたともいえる。

澤邊「Ver.1は、2100年の東京といいながらも、完全に妄想の世界をCG空間で作り出しましたけど、CYBER WHEEL Xは同じCG空間でも、実は街並みをすべてレーザースキャンで立体計測をして、ビルの形もリアルな東京の街を再現しています。銀座、新宿、渋谷、お台場、秋葉原……、各々のリアルがCG化されているというのは、明らかな進化だと言えますね」

杉原「僕らがもう生きていないであろう (笑)、100年後の東京はこうなっているみたいなイメージを、いまのリアルな街を読み取って形にしたようなものですよね。その世界を車いすで走るというのは面白い」

澤邊「だからXを体験すると、いい意味で、脳に混乱が起きると思いますよ。これはモビリティなの? それとも車いすなの? という感じで(笑)」

杉原「もうリアルなゲームとしても成立しますよね。楽しみながらトレーニングになるというのもポイントですけど」

澤邊「将来的にはリアル空間と繋がって、目のなかにオンタイムの映像が写し出せるようになれば、現実世界との融合も完璧にできる。そこまでいけたら、めちゃくちゃ面白いよね」

杉原「そういうことができるようになれば、例えばCYBER WHEEL Xを使って、東京はどの街が車いすで行きやすいのかな? とか、リサーチもできますよね。小上がりになっている場所、バリアフリーになっているのはどこかとか、実際に街に行く前に体感することもできる。エンタテインメントを通して、そういうことができれば、また世界は広がりますね」

 CYBER WHEEL Xの登場は
発想のリミッターを外すきっかけになる

澤邊氏(左)と杉原は、常に意見交換を行っている。モノづくりの視点は、もう2020年の東京が盛り上がったあとの世界にあるという。

澤邊「そういう使い方はいいよね。あと究極のバリアフリーは、段差とか面倒臭いから車いすのドローン化だよね(笑)」

杉原「ちょっと話が飛びましたけど(笑)。澤邊さんは飛びたいってずっと言ってますよね。しかも不意にメッセンジャーで送ってくる、何度も (笑)。ホイールをプロペラ化して、飛べるようにするという案を」

澤邊「リアルにホイールが羽になると仮定すると、4mぐらい必要なんでしたっけ?」

杉原「しかもホバリングできるようにするのに、体重制限とか出てくる可能性もありますよ(笑)」

澤邊「そうでしたね(笑)。でもある意味、そうやって発想のリミッターを外してもいいよね。とにかくいまは、多くのベンチャー企業の方々がパラスポーツ関連のことを、あれこれ考えてくれるようになっているし、ここからもっと大胆で面白い広がりも生まれると思うんですよ」

杉原「CYBER WHEEL Xは、そういうきっかけ作りになるかもしれませんね。ビジネスという観点もそうかもしれませんけど、発想がまた一歩前に進む時の一つの絵というか、イメージになれるような気がします。そういう絵を描くことは、自分も澤邊さんも得意ですし。ただ、毎回それを提示されるエンジニアやスタッフは本当に大変かもしれないけど(笑)」

澤邊「でも正直、我々がCYBER WHEEL Ver.1を世に出した時は、杉原さんはかなり悔しいと思ったんじゃない?(笑) モビリティのプロなわけだから、きっとイラッとしたんだろうなって思うんだけど」

杉原「確かに、悔しい気持ちはありましたよ(笑)。でも、誰かがコンペティターにならないと、せっかく澤邊さんたちが作った流れが潰れてしまうとも思いました。じゃあ、自分は何をやるんだ? となったときに、ハードウェアそのものを作ることもそうですが、CYBER WHEELのようなものを使って、人の細かな動きの計測ができないかなと、考えましたね」

CYBER WHEELのようなプロダクトがさらに進化していくためには、澤邊氏いわく「異分野のアイデアやコンペティターも欠かせない」。

澤邊「それは興味深いですね。また違ったモビリティ作りに活かされるということ?」

杉原「例えば、Xを通じて多くの人のお尻のデータを取りたいなと思っています。人は座っているとお尻を動かして自然と減圧をしているんですが、僕らは、座席部分に触覚センサーを入れて、そのデータを取る仕組みを開発したんですよ。そのデータは、福祉や医療にも活用できますから」

澤邊「そういう次なるモビリティの新たなヒントにも繋がっていけたらいいよね。ああ、こうやってもいいのか? みたいな気づきを与えることになると思うし、エンタメ業界の人もパラ分野のプロダクトをやっていいんだ、とか、なんかそういうふうに思ってもらえるきっかけになればね。もちろんコンペティターも欲しいし、発想が広がっていくことは重要だね」

 2020年の東京では、何より
“面白い”を発信することが重要

サイバー空間の東京を駆け抜けるCYBER WHEEL Xは、新たなモビリティや仕組みを作るヒントを投げかけている。

杉原「自分としては、パラ関連のイベントばかりではなく、Xは渋谷の駅前とかに置かれるようなものにしたいんですよ。オンラインで世界中の人と対戦したり、例えばeスポーツ化することもできるかもしれない。それで、上位に老若男女、色々な人がいるみたいな、そういう未来は楽しいですよね」

澤邊「5Gになれば、オンラインはいまよりずっと楽しめるしね。あとは、仮にCYBER WHEEL Xでラグビーができるようになったときに、リアルな衝撃を感じられるようにするとか、技術的に可能なことをどんどん実現させたいね」

杉原「最近は二人でそんな話をよくしていますよね。次への課題はいろいろと出てきてキリがない。シートを動かすために、アクチュエーターを入れて、宙ぶらりんにするとか、アイデアはいろいろと出てきますね」

澤邊「Ver.1の時点では、完全にSFの世界だったから、そういうことはできなかったけど、Xで機能の受け皿としてのハードウェアが、ある程度のレベルまで行けたかなと思いますね。これから先の未来は、もっと発展していけるという実感も持てたし」

杉原は、CYBER WHEELの体感のリアリティを上げるアイデアは尽きないという。

杉原「これから、また、ああしたい、こうしたいってなったときに、澤邊さんとお互いの強みと弱みを共有していければ、通常の2倍ぐらいのスピードで進んでいけると僕は思います。あとは、やっぱり2020年の東京を、日本のモノづくりの驚きと面白さを世界にアピールする契機にしたいという気持ちは大きいですね」

澤邊「いい意味で、世界からバカだなぁって言われたらいいよね(笑)。また日本がわけわからんもん作ってるって」

杉原「絶対、作った人たちトロンもスターウォーズも好きだろって言われるとは思います(笑)」

澤邊「それはそれでいいと思うし、バリアフリーがどうとか、共生社会がどうとかだけではなく、まずは、“面白い”という見方をしてもらえれば、また次のステップに進んでいけるからね。障がい者を記号化するのではなくてね」

杉原「そうですね。CYBER WHEEL Xは、単純に見た目もいいから、インスタ映えしますから(笑)」

澤邊「小学生に、お父さん、あれ欲しい!買ってよ!って、普通に言わせたいよね(笑)」

前編はこちら

澤邊芳明(さわべ・よしあき)
1973年東京生まれ。京都工芸繊維大学卒業。1997年にワントゥーテンを創業。ロボットの言語エンジン開発やデジタルインスタレーションなどアートとテクノロジーを融合した数々の大型プロジェクトを手掛けている。2017年には、パラスポーツとテクノロジーを組み合わせたCYBER SPORTSプロジェクトを開始。車いす型VRレーサー「CYBER WHEEL(サイバーウィル)」、「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)」を発表した。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 アドバイザー、東京オリンピック・パラリンピック入賞メダルデザイン審査員、日本財団パラリンピックサポートセンター顧問、リオデジャネイロパラリンピック 閉会式フラッグハンドオーバーセレモニー コンセプトアドバイザー等。

CYBER WHEEL X
http://rds-pr.com/cyberwheelx/

(text: 長谷川茂雄)

(photo: 壬生マリコ)

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