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音もバリアフリー!? 湾曲がキーワードの「ミライスピーカー」

HERO X 編集部

聴覚にハンディのある人の年齢層は幅広い。加齢による衰えが現れるのも耳という人も多く、国内の補聴器の利用人口は年々増加傾向にある。そんな中、東京都に会社を構える株式会社サウンドファンでは、独自に開発したスピーカーを使った聴こえのバリアフリー化を目指している。

株式会社サウンドファンは、音のバリアフリーを実現する「ミライスピーカー®」の開発を手掛けている。耳の聞こえが悪くなると、補聴器をつけていてもテレビ視聴時の音が大きくなりがちに、しかし、同居家族はその大きさをうるさく感じてしまうことがほとんどだ。同社創業者の佐藤和則氏の実家でも父親の耳が遠くなったのをきっかけに、こうした状況が生まれていた。家族が不快にならず、耳の聴こえに不自由を感じる人も聞きやすい手立てはないかと、スピーカーを思いつき開発したのがきっかけだ。今年1月には新モデルの「ミライスピーカー・モビィ」を発売した。

従来のスピーカーは空気を押しだすことで音を響かせていたのだが、一点の音源から音を発するため、音は直線的に散布した形となり、音源から離れるほど聞こえにくくなっていた。「高齢者は、通常のスピーカーより蓄音機の方が聴こえやすい」という話から、蓄音機のラッパ部分の“曲がり”をヒントに開発がスタート、湾曲させた振動板全体から音が飛び出す構造にすることで広い範囲に特殊なエネルギーのある音を生成することに成功した。100年来変わらなかったスピーカーの構造を見直すことで実現した聞こえのバリアフリー。

湾曲させた板から発生する音は従来の音波とは異なるものを発し聞き取りやすくなる。引用元:https://soundfun.co.jp

このスピーカーから生み出される『曲面サウンド』は、従来のスピーカーと変わらない音質で、広く遠くまでハッキリと音声を届けることができ、誰にとっても聴こえやすい音のバリアフリー環境を実現することができると言う。

新型のMoby(モビィ) 引用元:https://soundfun.co.jp

新型の「ミライスピーカー・モビィ」は、マイクを使って音声アナウンスを行うセミナーや高齢者施設、防災訓練、教育施設などのユーザーニーズを基に、“言葉を伝える事”に特化した製品として開発された。新たな特許技術を活用した小型の曲面振動板ユニットを2本、フルレンジユニット2本の合計4本を搭載し、これまで以上に快適な聴こえに導いた。ワイヤレスマイクの利用が可能で電源はリチウムイオンバッテリー、軽量で持ち運びにも便利だ。

実際に、市役所や銀行窓口での呼び出しに使われるなど、街でこのスピーカーを見かける機会も増えだしている。個人ユーザー向けにレンタルも用意。技術は世界初の特許として登録、世界中の聴こえに不自由さを感じる人たちを日本の技術が救う日も近そうだ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/EHQKKPLUNTk

(text: HERO X 編集部)

(photo: 株式会社サウンドファン)

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マツナガが世界に誇る、“しなる”バスケ用車いすとは!?【松永製作所:未来創造メーカー】前編

長谷川茂雄

1974年の創業以来、車いすメーカーとして確固たる地位を築き上げてきた松永製作所。“マツナガのものづくり”は、多くの公的機関で採用され、高いシェア率を誇るとともに、福祉用品、医療機器分野の名門として、広く認知されている。2000年代以降は、スポーツ用車いす分野でも頭角を現しはじめ、特にバスケットボール用車いすに関しては、多くの代表選手から絶大な支持を得ている。松永製作所が手がけるプロダクトには、いったいどんな特性があるのか? 自身も選手として、かつて4度のパラリンピック出場を果たした、スポーツ車いす開発室の神保康広氏にお話を伺った。

松永製のスポーツ用車いすは
唯一無二の“セミアジャスト”式

スポーツ用車いすを手がける日本の著名メーカーのひとつとして、必ず名前が挙がる松永製作所。とはいえ、スポーツ用車いす事業に本格的に乗り出してからの歴史は、まだ12年余りだという。他メーカーよりも後発でありながら努力を重ね、現在、バスケットボール用に関して、日本代表チームの実に12人中8人(リオデジャネイロ大会実績)が松永製車いすを使用している。その理由のひとつには、“セミアジャスト”という同社独自の構造があった。

「まず自分がもともと車いすバスケの選手だったということもあり、(車いすの)開発に関わるようになった2006年頃から、スポーツブランドである“MP”のプロデュースに力を注いできました。なかでもバスケ専用車いすは、自分の経験から導き出したアイデアや、多くの選手の意見を反映させて、理想的な構造を追求し続けています。基本的にバスケ用車いすは、“リジッド”と呼ばれるフレームすべてが溶接で固定されたものが主流ですが、松永製のものは、“セミアジャスト”。多少の調整ができる構造を採用しています。それを発売したのは業界初でしたし、そのままウチの強みになりました」

セミアジャスト構造の松永製車いす“MP”。ボルトとナットで調節できる部分と溶接で固定されたフレームが混在している。

車いすが調整できれば
ベストパフォーマンスが目指せる

セミアジャストというのは、簡単に言ってしまえば、ボルトとナットで座面やステップの位置、角度等を微調整できる構造。単純に部品が増えると総重量が増えるのと、強度が下がると思われていたため、それをよしとしない風潮は根強かったという。しかし、2008年に松永製作所がセミアジャストモデルを発表すると、瞬く間に大ヒットを記録した。蓋を開けてみると実態は違ったのだ。

「自分の選手時代もそうでしたが、体重の増減や体調の変化は、常にあります。ですから、自分専用の車いすを作ったとしても、長く使っていくと微妙なズレが生じてくる。なので、常にベストパフォーマンスを目指すなら、試合に臨む選手の状態に合わせて微調整できる車いすがいいと考えたんです。あらゆる角度やポジションが自由に変えられるフルアジャスト構造も発売していますが、セミアジャストは、それを進化させたもの。初心者は、まずフルアジャストで自分の特性を知って、より自分のプレースタイルが見えてきたら、微調整で済むセミアジャストにするというのが理想的です」

4大会連続でパラリンピックに出場した神保氏は、日本のパラスポーツ発展の功労者の一人。「いまも遊び程度ですがバスケはやってます」。

もともと第一線で活躍していた車いすバスケの選手である神保氏ならではの視点とアイデア、セミアジャスト構造は、多くの選手たちの共感を得た。微調整できることの利点もさることながら、セミアジャストの車いすには、リジッドよりも操作性がしなやかという大きな特徴があるという。

「すべてを溶接で固定するリジッドと違って、セミアジャストの車いすには、フレームに“しなり”が生まれるんです。実際に操作すると柔らかくしなやかで、思い通りに動かせる印象があります。ですので、器用に車いすを操って華麗なプレーをしたいと望む選手にとっては、松永製の車いすは、まさに願ったりなんです。でもハードにぶつかりあって、よりパワフルなプレーをしたいという選手もいますから、そういう場合には柔らかすぎる、パワーロスしていると感じることもあるようです」

座面の角度なども細かく変えられるだけでなく、フレームに“しなり”がある車いすは、操作性が高くなる。

“しなり”のあるフレームは
操作しやすく折れにくい

車いすバスケというとハードなイメージがあるため、どうしてもそれに使う車いすも頑丈で衝撃に強い作りが求められると思われがちだが、“しなり”があって操作性が高い構造が広く好まれているというのは興味深い。しかも、実はセミアジャスト構造のほうが、完全に溶接された車いすよりも衝撃に強く耐久性も高いという。

「フレームを溶接で固めたリジッドモデルは強度が増すと勘違いされがちですが、衝撃に対して逃げるところがないので、実は折れやすいんです。軽量化はできるのですが、すぐにクラック(ヒビ)が入ったりもします。セミアジャストにすると“しなり”が生まれますし、衝撃がうまく逃げるので、折れにくくて長く使えるんです。しかもコーナリングもクイックなターンも断然しやすいので、その良さを知ると乗り換える選手は多いですね」

後編へつづく

神保康広Yasuhiro Jinbo
1970年東京都生まれ。16歳のときバイクの自損事故で脊髄を損傷。18歳で車いすバスケットボールに出会い、積極的に技術を磨くようになる。90年、「千葉ホークス」に入団。日本代表にも選出され、バルセロナ(92)、アトランタ(96)、シドニー(00)、アテネ(04)と4大会連続でパラリンピックに出場を果たす。その後、渡米しNWBA(全米車いすバスケットボール協会)1部の「デンバーナゲッツ」に所属。全米選手権ベスト4の成績を残す。帰国後の2006年、(株)松永製作所入社。ブランド“MP”のブランドマネージャーを主軸に、スポーツ用車いすの企画、開発に従事。日本財団パラリンピックサポートセンター事業「あすチャレ!スクール」では講師を務めるほか、全国各地でパラスポーツの魅力を伝え続けている。http://www.matsunaga-w.co.jp/

(text: 長谷川茂雄)

(photo: 長谷川茂雄)

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