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これはインスタ映えしそう。カナダ発、お洒落すぎる義足プロダクト

岸 由利子 | Yuriko Kishi

洋服を着替えて、靴やアクセサリーのコーディネートを楽しむように、“義足カバー”も、ファッションの一つとして自由に選べるようになった。生みの親は、カナダに拠点を置くALLELES Design studioだ。

ALLELES Design studioアートディレクターのマッカレー・ワナ―氏(左)と、テクノロジーディレクター ライアン・パリブローダ氏。引用元:https://www.alleles.ca/

「私たちは義肢装具士ではなく、アーティストです。このスタジオを立ち上げたのは、義足の人たちが抱える“スタイル”の問題を解決するためであり、四肢のそれについてではありません。無機質で、無骨な形状の義足が多い中、そのSF感あふれるものを、エレガントに、スタイリッシュに変身させるということが、私たちの義足カバーの試みです」

引用元:alleles/Instagram

ふくらはぎの自然なシルエットをみごとに具現化した義足カバーは、既存の義足の上に装着できる。ALLELES Design studioは2013年の創立以来、パリ、ミラノやニューヨークで開催されるコレクションと同じように、春夏、秋冬のシーズンごとに、新作をローンチしており、ヴィクトリアン、デジタルロココ、アポロ、ペイズリーなど、現在約55種類のデザインが揃う。バックストラップなどのディテールやカラーバリエーションを含めると、その組み合わせは無限大。まさに洋服を選ぶように、自分の好みに合った義足カバーが選べるのだ。もちろん、カバーの長さや幅も自分のサイズに指定できる。

引用元:alleles/Instagram

「私たちのミッションは、ファッションがメガネにしたのと同じことを義足の人々に行うことです」とディレクターたちは語る。本来、メガネの役割とは、低下した視力を矯正するためのレンズ。それが今では、伊達メガネやレンズなしのフレームなど、お洒落アイテムの一つになったのと同じように、義足カバーも、自己表現を楽しむアイテムとして、人々の生活に当たり前にあるものにしていきたい。そんな作り手の想いは、ユーザーたちに確かに届いているようで、愛用者は世界各地で増え続けている。

引用元:alleles/Instagram

ALLELES Design studioの究極のゴールは、シックなデザインと新鮮なスタイリングのインスピレーションを人々に与え、その人たちのワードローブに革命を起こすこと。愛用者の一人、リオパラリンピックの競泳400m自由形S10で銀メダルを獲得したオーストラリアのモニーク・マーフィー選手はこう話す。

「義足をファッショナブルにできるのは楽しいわ。ドレスアップする時、他の人ができない方法で、足も美しくドレスアップできるんだもの」

革命は、すでに起き始めているようだ。

Alleles Design Studio
http://www.alleles.ca

[TOP動画 引用元]CTV News(http://www.ctvnews.ca

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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彫刻のように美しく、唯一無二の存在を目指して。Scott Summitが義肢に込めるデザイン哲学

Yuka Shingai

タトゥーやレース、パンチング模様…まるで工芸品かオブジェのようなデザインに思わず目を奪われてしまう。「生きている人間のためにデザインをするならば、最低限の使用仕様で満足してはいけない。それを実現できればそれ以降の誰かの生活の質を日々改善することができる」とデザイン哲学を掲げる Scott Summit 氏は、義肢をただの装具品としてではなく、ひとつのアートとして、また、クリエイションとしても捉える工学デザイナーだ。

Summit 氏が手掛ける作品は PC やオーディオ関連、スケートボード、骨折時に腕にはめるギプスに至るまで、独創的でかつ洗練されている。全く同じ物を多く生み出す工業デザインが個性に欠けることを危惧する彼は、「体は彫刻。大量生産に縛られるのではなく、体を考慮した個性的な唯一無二のデザインであるべき」と義肢のデザインにも独自性や優美性を追求している。

前述の通り、義肢に限らず多くのプロダクトを3Dプリンターから作り出している Summit 氏。体をスキャンし、機能している脚を反転させると左右対称が実現でき、指紋と同じくらい唯一無二のものが出来上がる。

デザインの力によって驚くべきことは、元サッカー選手の友人のために、義肢にスポーツバッグを彷彿とさせるデザインを施したところ、装着時に体が記憶していた感覚を取り戻し、ボールをコントロールできるようになったという。はたまた、バイク事故で片足を失った友人には、ひざ下のタトゥーを柄としてあしらい、バイクの素材を用いたハイブリッドな義肢を作り上げた。

さらに、使用するカーボンフットプリントは極小で資源ゴミとして再生でき、制作費用は4000ドルほど。低予算で高品質の義肢を作れることも大きな特徴だ。

Summit 氏が世に送り出したいのは「人間らしいものではなく人工的なもの、かっこよく、美しく、姿を変えたことを世界中に見せたくなるもの」。これからも工業デザインの世界に新しい風がどんどん巻き起こりそうだ。

[TOP動画引用元: https://www.youtube.com/watch?v=fir5HI0Gwrc&t=29s

(text: Yuka Shingai)

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