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格好いい!おもしろい!パラスポーツの新たな魅力を発信する仕掛け人たち【日本財団パラリンピックサポートセンター】後編

岸 由利子 | Yuriko Kishi

リオパラリンピックのメダリストや、和製スティービー・ワンダーの異名を持つ全盲のシンガーソングライター、木下航志さんなど、超人たちが繰り広げるスポーツと音楽の祭典「パラフェス」。あるいは、障害のある人もない人も、チーム一丸となってタスキをつなぎ、東京の街を駆け抜ける「パラ駅伝」や、自分に合うパラスポーツを見つけるマッチングサイト「マイパラ!Find My Parasport」など、日本財団パラリンピックサポートセンター(通称・パラサポ)は、かつてないユニークな取り組みで、パラスポーツの魅力を次々と世に広めている。現在の活動は?今後、どんな展開を予定しているのか?パラサポ推進戦略部のプロジェクトリーダーを務める前田有香さんと中澤薫さんに話を伺った。

障がい者のイメージを一新するカッコいい&ダイナミックなイベントを展開

推進戦略部プロジェクトリーダーとして、パラフェスやパラ駅伝などのイベントを手掛けている中澤薫さん。大学ではスポーツビジネスを専攻し、卒業後、IT企業で5年ほど働いたのち、スポーツマネジメントなどを学ぶために、2014年にアメリカの大学院に進学した。

「留学中にパラアスリートたちとの出会いがありました。話していると元気をもらえるような面白い人ばかりで、今も友人としてお付き合いさせていただいています。話を聞くと、中々恵まれた環境で競技ができていなかったり、多くの人に知ってもらえる機会がなかったり、課題はさまざまにありました。元々は、プロスポーツの分野に進もうと考えていたのですが、そんな中、2020年のオリパラも決まり、彼らとの出会いを通して、パラアスリートの力になりたいと思うようになりました」

昨年6月末、アメリカから帰国してすぐパラサポに入職した中澤さん。第一弾プロジェクトとして担当したのが、「パラフェス2016 ~UNLOCK YOURSELF~」。同年11月22日、国立代々木第一体育館に5000人の観客を無料で動員し、話題をさらったビッグイベントだ。

「誰が見てもカッコいいものを作る」ことをテーマに、プロジェクションマッピングなどを駆使した壮大な映像と音楽を演出。

ウィルチェアーラグビーの池崎大輔選手、男子400mリレー リオパラリンピック日本代表の佐藤圭太選手、400m(T47)リオパラリンピック日本代表の辻沙絵選手など、メダリストたちによる迫力のデモンストレーションやトークショーのほか、全盲のシンガーソングライター木下航志によるブラインドコンサートや、義足・松葉杖ブレイクダンサーのパフォーマンスに加え、大黒摩季やサラ・オレインなど、各界のトップランナーが集結し、圧巻のステージを見せた。

ParaFes 2017公式サイト https://www.parasapo.tokyo/parafes/

きっかけはパラフェス。競技ファンが増えた!

「パラフェスは、障がい者の人に対する世の中のイメージを変えようというところから始まった挑戦的な企画です。障がい者というと、どこか福祉的なイメージがあることは否めません。それが悪いということではなく、この世界には、想像を絶するような超人たちが大勢いることもまた事実です。障害を持ちながら、類まれな才能やパワーを発揮し、輝いている人たちです。私自身、その素晴らしさを身をもって知りました。彼らの存在や魅力を知ってもらえる場を作ったら、面白いのでは?そんな発想が元となり実現したのがパラフェスです」

「一番嬉しかったのは、このイベントをきっかけに、ウィルチェアーラグビーなどの競技を初めて知った方たちが、競技会場に足を運んでくださるようになったことです。“今日は、パラフェスに行った仲間で応援に来ました!”、“パラフェスを見て、試合も見たくなった”、“カッコよかった!楽しかった!”と、ツィッターなどで発信されている方も多く、競技や選手の魅力が伝わっていることを実感できた瞬間でした」

今年のパラフェスは、11月15日(水)に両国国技館で開催される予定だ。2018年ピョンチャンパラリンピックでメダルの期待がかかる、アルペンスキーの森井大輝選手、狩野亮選手や鈴木猛史選手、音楽界からは、両手のないブラジルのピアニスト、ジョナタ・バストスや、ブレイクビーツ・ユニットのHIFANAなど、豪華な超人たちが勢ぞろいする。「イベントに登場する方たちを見て、自分も何かやってみようと思う人が出てきてくれると嬉しいですね」と中澤さん。

2020年は、インクルーシブな社会を実現するためのひとつの通過点

パラサポの活動の中枢を担う前田さんと中澤さん。最後に、お二人が考えるパラスポーツの面白さや今後の展望について伺った。

「パラスポーツって、不可能なものはないと教えてくれている気がします。見方をいくらでも変えていけば、何だって乗り越えていけるものだよと。もし、みんなと同じことができなくて落ち込んだり、一般的な基準に対して、違和感が否めずに、生きづらさを感じたりしているとしたら、パラスポーツに触れることで生きやすくなる人は多いのではないかと思います。かく言う私もその一人。この仕事に携わるようになってから、とても生きやすくなりました。

より多くの方にパラスポーツの面白さを知ってもらう意味では、パラリンピックはひとつの大きなきっかけになると思います。ただ、私たちのビジョンは、パラリンピックの成功ではなく、2020年をひとつの通過点として、インクルーシブな社会を作っていくということでもあります」(前田さん)

「障がいを持つ人たちがもっと自信を持って、世の中に出やすいように、イメージを変えていくことができたらいいなと思います。パラスポーツは、それを可能にするひとつの大きなパワーを持っているので、その力を借りながら、当事者たちのカッコよさや魅力をどんどん伝えていくことで、もっと普通に街に出てこれるような社会づくりの一助になれたら理想的です。例えるなら、かつてただの必需品として見られていたメガネが、今は当たり前に、お洒落アイテムのひとつになったように。多分、面白い人たちがもっと潜伏していると思うので、彼らを引っ張り出したいですね(笑)」(中澤さん)

アスリート、アスリートを支える競技団体、そして、彼らを支える前田さんや中澤さんら、パラサポのスタッフが三位一体となり、世に次々と発信しているパラスポーツの面白さ。身近に触れる機会がきっとあるはずだ。今後も、さらなるパラサポの活動を追っていく。

前編はこちら

日本財団 パラリンピックサポートセンター
https://www.parasapo.tokyo/

パラフェス2017 ~UNLOCK YOURSELF~
https://www.parasapo.tokyo/parafes/

マイパラ! Find My Parasport
https://www.parasapo.tokyo/mypara/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 壬生マリコ)

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監修は、蜷川実花。パラスポーツと未来を突き動かすグラフィックマガジン『GO Journal』創刊!

岸 由利子 | Yuriko Kishi

パラスポーツの興奮とパラアスリートたちの息づかい、それらを取り巻くカルチャーとの交錯点を伝える新グラフィックマガジン『GO Journal(ゴー ジャーナル)』が11月22日創刊された。クリエイティヴ・ディレクターを務める蜷川実花氏をはじめ、記念すべき1号の表紙を飾るリオパラリンピック銅メダリストの辻沙絵選手(陸上女子400メートル)や、モデルとなったボッチャ日本代表の高橋和樹選手などが集まり、銀座蔦屋書店で記者発表会を行った。

パラスポーツがもっと好きになる、パラアスリートをもっと応援したくなる。興奮と魅力が詰まった斬新なグラフィックマガジン

日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)の発案により刊行された『GO Journal』は、かつてないクールでホットな切り口で、パラスポーツの興奮とパラアスリートたちの魅力を発信するフリーマガジン。美しい写真に加えて、アスリートのインタビューなどが掲載された1号は全64ページ、A3サイズのタブロイド版、オールカラー印刷。「本当に無料?」と聞きたくなるほど、写真集のような上質な仕上がりだ。銀座店をはじめ、代官山、中目黒、京都岡崎、梅田など、全国の蔦屋書店で配布されるほか、日本財団が助成する多言語発信サイト「nippon.com」では、中国語、フランス語、スペイン語など7言語に翻訳され、世界に向けて発信する。

パラスポーツ観戦のボトルネックとなっているのは、「なじみが薄くてよく分からない」、「障がい者はかわいそう」といった先入観や認識。『GO Journal』が目指すのは、それらを揺さぶり、転覆させ、2020年以降のインクルーシブ社会の発展に向けて、一人一人の行動を喚起するための“トリガー”になること。

©大谷 宗平(ナカサアンドパートナーズ)

この日は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会会長森喜朗氏と共に、東京オリンピック・パラリンピック担当大臣・鈴木俊一氏も創刊のお祝いに駆けつけた。

「夏季パラリンピック大会が同一都市で二度行われるのは、東京が(世界で)初めて。パラリンピック大会の成功なしに、東京大会の成功とは言えない。国民の関心はオリンピックに偏りがちで、パラスポーツやその最高峰であるパラリンピックに対する理解がまだまだ少ない。このグラフィックマガジンには、一般の方がおそらくイメージするのとは違うパラアスリートの一面が映っている。それらを見てもらうことが、理解の増進にも繋がると思う」と話し、『GO Journal』の今後の発展に期待を寄せた。

トップアスリート×蜷川実花が魅せる、美しきパラスポーツの世界

次に、監修を務めた蜷川実花氏と辻沙絵選手のトークショーが行われた。
「なんだろう、これ?というある種の違和感からでもいい。パラスポーツに興味のない方を含めて、少しでも多くの方に手にとってもらいたい。そこから(パラスポーツに対する興味が)広がっていくようなきっかけになるといいなと思って作りました」と、冒頭でマガジンに込めた想いを語った蜷川氏。

最先端のファッションをみごとに着こなし、創刊号の表紙と巻頭グラビアを飾った選手との出会いのきっかけは、なんと“ナンパ”。昨年、リオパラリンピックの開会式に向かう蜷川氏が、リオの空港で見かけた選手に「一目惚れ」した。

「可愛らしく、華やかな外見だけでなく、内面から輝く力強さを感じ、どうしてもこの人を撮ってみたいという写真家の欲が走りました(笑)。撮らせて欲しいと約束をして、次に会ったのは、GO Journalの撮影当日でした」と蜷川氏は振り返る。声をかけられて、びっくりしたという選手は、「ファッション誌のような撮影は初めてだったので、不安もありましたが、撮影現場はナチュラルな雰囲気で、実花さんやスタッフの方たちが、ありのままの私を引き出してくれました。もう一回やりたいくらい、楽しい撮影でした」と笑顔いっぱいで語った。

選手のお気に入りは、表紙の写真。「目の前に金メダルがあると思って、睨んで」といわれた時の表情には、「ファッションと競技中の私、そして実花さんの世界観の全てが混ざり合っている」と熱のこもった声で話す。

蜷川氏は、当初、義手をどう見せるかなど、細かいバランスを考えていたが、撮影を進める中、片手があるかないかは、もはや関係のない域に達したという。

「何気ない時に、『私、ただ片手がないだけなんですよ』と選手に言われたのが心地良い衝撃でした。この感覚をもっと多くの人と共有していきたいと思いました。フリーマガジンの形に出来て良かったです。アスリートたちは、自分と戦ってきた圧倒的なパワーがにじみ出ている。とにかくカッコよかった!」

選手の内面から輝く強さが覗えたのは、「普段から義手を付けているか」という質問が上がった時。

「私は、生まれてからずっとこの状態で生きてきて、髪を縛ったり、靴ひもを結んだりしています。この状態だからできるんです。嘘の手をつけても何も変わらないし、私は私だし、ありのままの自分を受け入れてもらった方が良いので、変える気もないです」

「GO Journalを見て、パラスポーツやパラアスリートのイメージが、ガラッと変わったと言ってくれる人が多かったです。健常者と障がい者という区別のない、共生する社会に繋げていけたらいいなと思います」と選手は締めくくった。

トークセッションの後、リオパラリンピック日本代表・高橋和樹選手も登壇し、ボッチャの実演が行われた。この競技が初めてという蜷川氏のボールは、ステージから飛び出すほど勢い良く転がった一方、ボールを触ったことがある選手は、片手にマイクを持ったまま、しなやかなフォームで投球を決めた。

次に、最も障がいの重いクラスの勾配具“ランプ”を使って、みごとな投球のデモンストレーションを披露した高橋選手。この日、初めて組んだ競技アシスタントに、ランプの設置角度や位置を細かく指示を出し、目標球にボールをぴたりと当てた。

11月29日で、東京パラリンピックまであと1000日のカウントダウンが始まった。「感無量だけど、ここがスタート」と話す蜷川氏が監修する『GO Journal』は、毎年2回発行予定。見たことのないクールなアスリートの魅力にぜひ触れてみて欲しい。

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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