医療 MEDICAL

テクノロジーのベースはヨガや武道!脳卒中リハビリテーションデバイス「SynPhNe」

Yuka Shingai

脳卒中の患者が筋肉の機能回復のために病院で行う治療は長期間に渡ることが多く、社会復帰まで時間を要することについての課題解決が全世界中で求められている。インド人の医師、Subhasis Banerji氏とシンガポール人の医師 John Heng氏が開発した「SynPhNe」は、ニューラルセンサーを搭載したヘッドセットと、筋肉の動きを捉えるセンサー付きのグローブで構成されている。脳と筋肉へアプローチすることで、自宅でのリハビリテーションを行える、世界初のウェアラブルデバイスだ。

Banerji氏は34歳の時に自動車事故で臀部を強打したことから脳への損傷を受け、自らのリハビリを兼ねて実験を始めた。
ヨガや武道の習得がリハビリに大きな効果をもたらしたことから、Banerji氏はセラピストを志し、Nanyang Technological大学で生体医学の研究を開始する。
そこで、ロボット工学を専門とするHeng氏と出会い、脳卒中患者が新たな脳の部位で発生する信号と、動かそうとする筋肉の信号をゲーム感覚で結び付けられるようにして、機能の回復を早めるデバイスを共同開発した。
通常、5、6か月から1年ほどかかるリハビリも「SynPhNe」では15~20日間で機能性の回復が見られ、2、3か月のうちに日常的な作業が行えるようになるという。
通院の手間が省けることは患者にとっても介助者にとっても、大きな負担の軽減となり、病院側のマンパワー削減の一助にもなっている。

環境・社会・経済の面で世の中を持続可能にしていくサステナビリティの3原則になぞらえて「SynPhNe」のシステムは
・Physical Connectivity(デバイスと自分自身の物理的な繋がり)
・Electronic Connectivity(データのモニタリング、治療のパーソナライゼーション、カスタマーケアを行うためのインターネットやモバイルによる繋がり)
・Knowledge Connectivity(ウェブやソーシャルメディアを通じた教育、リアルイベントや地域などの知的な繋がり)
というように、これらを3つの柱として掲げている。

技術のレベルの高さだけではなく、作り手のフィロソフィーも合わせて、今後世界でどのように浸透していくかが楽しみな好事例だ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/IxYJ50ku9k0

(text: Yuka Shingai)

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コロナ期だからこそ乳がんなど基礎疾患の早期発見を予防医療に役立つテクノロジー2選

HERO X 編集部

新型コロナウイルスの流行で、人間ドッグなどの予防医療にも影響が出ている。しかし、気になる症状を放置していたり、定期健診をおろそかにしたりすることは、重大な疾患を見逃す事態にもつながりかねない。そこで、触診などを受けなくても、病気の予防ができるシステムやアイテムに注目してみた。がんの早期発見に役立ちそうなテクノロジー2例を紹介する。

「乳がんミアテスト」の精度向上に
AIを提供着けるだけで早期発見!
乳がんリスクを感知するブラジャー

「乳がんミアテスト」の精度向上にAIを提供

血液だけの検査で疾患因子を検出し、疾患リスクの判定に役立てる「ミアテスト」。このたび、株式会社ミルテルが提供する乳がんミアテストに、AIプラットフォーム「DataRobot」と、診断への支援プログラム「AIサクセスプログラム」が提供されることになった。

従来の乳がんミアテストでは、手動で作成した数式ベースの予測モデルを活用していた。今回、乳がんミアテストの開発にAIプラットフォームやプログラムを適用することで、さらなる乳がんの早期発見・診断をめざす。また、AIによる分析で検査の精度を上げていくと同時に、人材育成支援なども推進していく。

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着けるだけで早期発見!
乳がんリスクを感知するブラジャー

元記事URL:http://hero-x.jp/article/4068/

バイオセンサーに特化したメキシコの企業 Higia Technologies では、乳がんの早期発見を促すブラジャーも開発された。同社が昨年量産化に踏み切ったのは、『EVA』というセンサーブラジャー。乳がんの腫瘍発生時の部位の変化や、乳房の体温の変化に注目し、その変化が続けば乳がんリスクが高いとして、ユーザーに警告する。

装着は1週間に一度、1時間でOK。Bluetoothを介してユーザーのタブレット内のアプリへ結果を送信し、乳がんリスクを分析する。1着120ドル (約1万3千円)というお手軽さも良心的。高めの下着を購入する感覚で手に取ることができる。

疾病流行下では、予防医療や定期健診は後回しにされがちだ。しかし、健康を維持するためには、早期発見が重要。通院しなくても病気のリスクが感知できるテクノロジーは、今後ますます必要とされそうだ。

(text: HERO X 編集部)

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