こんなに近未来的でスタイリッシュなリフトを見たことがあるだろうか? こちらは人通りの多いロンドン・パディントンのとあるビル。エントランスに通じる大理石で作られた階段の一部が、引き出しのように水平にスライドして内部に格納され、地面からは車いす用リフトが現れる。そして、落下防止用の囲いがあるリフトが昇降して、車いす利用者を安全にエントランスへと導く。
まるでスパイ映画の秘密基地に出てきそうな斬新な仕組みと、スタイリッシュなデザインが同居したこのリフトは、英国セサミ社が開発したセサミ・アクセスである。1996年にロンドン・スレッドニードル街のMerchant Taylor’s Hallに初めて導入され、現在では英国内はもちろん海外まで広く採用されている。国内ではオックスフォード大学、ケンブリッジ大学、イングランド銀行、海外ではオーストラリア・シドニーのオペラハウス、カタールの国立図書館など、広範な納入実績を誇る注目企業なのだ。
その特徴は、歴史的建築物の美観を損ねることなく、設置スペースの問題もクリアする独自の機構にある。アイルランド・ウェストミンスターで採用されたセサミ・アクセスはその好例。厳かな雰囲気と美しい祭壇の造形美を損なうことなく、カーブした階段からリフトが出現するのだ。
あらゆる建築物や階段にも対応するセサミ・アクセスは、車いす利用者の利便性を高めると同時に、リフト設置の諸問題をクリアすることを可能としたのだ。その革新的な機構と優れたデザイン性が高く評価され、2016年にはクイーンズ・アワーズを受賞。バッキンガム宮殿で行われた式典では、女王陛下にもその功績が認められたほど。
スタイリッシュかつ安全、そして利用者と設置者の双方に嬉しいリフトが、今まであっただろうか? 来たる東京2020を前に、日本でもこうしたイノベーションが導入され、広く普及することを期待したい。
[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?time_continue=27&v=tXHY6WbTShA]