テクノロジー TECHNOLOGY

「妊活」「不妊治療」にAIとセンシングが使われる時代へ!悩めるカップルに最新技術が貢献

HERO X 編集部

日本の夫婦の10組に1組は不妊に悩んでいるといわれている。不妊治療は保険適用されず、経済的な負担も大きいことが社会問題となっている。政府もこれを重く見て、公的保険適用の拡充を検討しているが、年末までには不妊治療への助成額・条件等の見直しを決定する方針だ。そんな中、不妊治療に貢献するテクノロジーが注目を浴び始めている。新しい技術が少子化問題の光明になるか!?

センシング技術を不妊治療に応用
良好な精子の抽出を自動化

不妊の原因の40%から50%は、男性側に原因のある「男性不妊症」という。厚労省の調査によると、男性不妊症のうち、約8割は無精子症や、精子の数が少ないこと、精子の運動性が悪いことなど、精子を造る機能の障害だそうだ。不妊治療では、こういった精子の中から良好な精子を選別することが非常に重要になるが、従来はこの作業を胚培養士と呼ばれる専門家の経験と勘で行っていた。

作業は手作業で行われているため、胚培養士の経験やスキルなどにも依存する。不妊クリニックによって、成果にバラつきが出ることも。そんな折、AIを使って良好な精子を自動抽出できる装置が誕生した。医療機器系スタートアップの日本医療機器開発機構(JOMDD)と、国際医療福祉大学・東京大学の共同チームが開発した「自動精子選別装置」だ。

この装置では、熟練した胚培養士の「良好な精子像」データと、AIによるディープラーニングを組み合わせて、採取した精子の中から良好な精子を判別する。実はAIによる自動判別の技術自体は他の研究チームも開発しているのだが、今回の技術が新しいのは、選別した精子を素早く抽出できること。JOMDDでは2020年中に市場に出したいと考えているという。

今まで男性側の不妊にアプローチするのは難しいとされており、男性側が治療をいやがるケースも耳にする。しかし、自動抽出という手段が広まれば、治療への心理的なハードルも下がっていくのではないだろうか。「子どもが欲しい」と願う夫婦にとって、新技術が妊活を支えることを期待したい。

妊活にテクノロジーで光!
ウェアラブル計測器「Ava」

肉体的な負担も多い不妊治療。できれば、無理せずに継続していけることが理想だ。「妊活」自体がストレスになり、妊娠を妨げているケースもあるという。不妊治療には、まず女性側の基礎体温がベースになるが、これがなかなか厄介。起きて活動する前に検温しなくてはならず、正確な体温が測れないこともある。

アメリカやスイスに会社を置くAva Scienceが開発したウェアラブル計測器「Ava(エイバ)」は、そんな悩みを解決してくれるアイテムだ。シリコン製のブレスレットを装着すれば、体温、脈拍、呼吸数、心拍変動、組織の毛細血管系の血流や睡眠リズム、発汗量などがセンシングできる。同社によれば、月経周期が安定している人ならば、妊娠可能な期間についてもかなり信頼できるデータが取れるという。

あまり知られていないことだが、実は妊娠可能な日数は、1回の生理周期の中でたった6日間。従来の排卵日検査薬ではそのうち2日間ほどしか検知できなかったが、同社の臨床検査では、妊娠可能日を正解率89%で平均5.3日検出できたという。

「Ava」は毎日、寝る前に女性が腕につけるだけで済む。計測されたデータは自動でスマホに転送される。基礎体温をコツコツ測る手間が省けるだけでも、女性にはありがたい。妊活だけではなく、日々の体調管理にも役立つため、月経前症候群(PMS)のケアにも役立つ。テクノロジーの力を借りるだけで妊活のプレッシャーがほんの少しでも和らぐのなら、当事者たちにとっては朗報といえるだろう。

(text: HERO X 編集部)

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お待たせいたしました!Boston Dynamicsの四脚ロボット「Spot」の一般発売がスタート

Yuka Shingai

車両が走行できない荒地において、兵士に随伴し物資を運搬する四足歩行ロボットBigDogなど、軍用や業務用ロボットの開発で知られるBoston Dynamics。2013年にGoogle社が、そして2017年にはソクトバンクグループによって買収されたのちも、ロボットの開発を続けているが、去る9月、四足歩行の新型ロボット『Spot』の一般発売がスタートした。

Boston Dynamicsがこれまで世に送り出してきたロボットはいずれもリアルな生活で使えそうというシロモノではなかったが、すでに商用が開始された『Spot』はアーリーアダプタープログラムの顧客たちの手元に届き、実際に使われているそうだ。

「『Spot』をどのような場面で活用するのですか?ということが早期のカスタマーたちに質問したいことです。最初に私たちが想定していたアイデアももちろんありますが、本当に重要なこと、私たちが望んでいるのは実際の使用例ですから。」とBoston Dynamicsのビジネス開発部門の副代表を務めるMichael Perry氏は語っている。

価格についてはPerry氏いわく、「自動車一台分くらいと考えてもらえるといいと思います。もちろんどれくらい素敵な自動車かにもよるとは思いますが」とのこと。オプションの多寡次第だが、現在は直接購入ではなく、リースでの利用が基本となっている。

ボタンを押すだけで石油のパイプラインを探してくれるようなロボットではないため、カスタマー側で必要な作業もいくつかあるものの、ほとんどの企業はGitHub(ソースコードをホスティングするプラットフォーム)のレポジトリにアクセスして少し作業する程度で問題なく使えている様子だ。

現在は問い合わせのメールが殺到しており、ペットのような存在にして冷蔵庫からビールを持ってきてもらいたいとの声もあるようだが、そのような使い方は果たして実現するかどうか。今後の展開が気になるところだ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/wlkCQXHEgjA

(text: Yuka Shingai)

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