テクノロジー TECHNOLOGY

本当はもっと身近な存在。3Dプリンター理解してますか?

HERO X 編集部

金型がなくても立体物を作ることができる3Dプリンタの登場は、モノづくり業界に大きなインパクトを与えまた。多様な造形を少量でも低コストで生み出せるため、製品開発の試作に多く活用されている。その一方で、製造業を変えるほどの革新に至らなかったという印象もある。ところが今、その現状が変わりつつある。3Dプリンタの急速な進化より、ついにモノづくり革命が起ころうとしている。今回は3Dプリンタについて2つの事例をご紹介しよう。

3D設計で変わるものづくりの未来を体験しに、
「3DEXPERIENCE World 2020」に潜入!

元記事URL:http://hero-x.jp/article/8675/

世界中で熱狂的なファンをもつ、3次元CADソフト「SOLIDWORKS」。そのユーザーたちが集う祭典『3DEXPERIENCE World 2020』が、2020年2月9~12日におこなわれた。会場となったのは、テネシー州ナッシュビルにあるミュージック・シティ・センター。基調講演には開場前から多くのファンが並び、ドアがオープンすると駆け足で椅子を取り合うほどの熱気。そこには、プロダクトデザインや設計という枠を越え、製造~販売に至るまで、ものづくりの未来を変える景色があった。

「SOLIDWORKS」は、ミドルレンジの3次元CADソフトブランドであり、以前紹介したダッソー・システムズ(http://hero-x.jp/article/7301/)の傘下にある。同カンファレンスは、約20年に渡り『SOLIDWORKS World』と名付けられていたが、今年から『3DEXPERIENCE World 2020』という名称に変更。3Dエクスペリエンスとは、3Dによる新しい体験のことだ。

つまり、プロダクトデザインを最初から3Dで設計してしまえば、耐久性などの検証作業、各種コラボレーション、製造、生産管理、マーケティング、販売に至るまで、プラットフォームを通じてあらゆる部署との連携がスムーズに行えるというもの。

製品が完成する前にヴァーチャルの世界で各種検証ができるので、いまや試作品を作らずにいっきに生産へと進むケースも増えている。また、3Dの設計データがあれば3Dプリントするのも容易など、あらゆる面で効率化が図れるのだ。

パラアスリート待望の体組成計。
“世界初”“国内初”を生み出す、
タニタのものづくりとは?

元記事URL:http://hero-x.jp/article/8675/

タニタといえば、今や日本一有名な社員食堂を持つ会社として広く知られているが、体組成計・体脂肪計の国内トップシェアを誇る健康計測機器のリーディングカンパニーだ。常に業界の先駆けとなる商品を世に送り出してきたタニタが、新たなコンセプトで挑んだのは“履物を脱がずにはかれる”体組成計。靴や靴下などを脱がずに手軽に計測できることを目的に企画・開発された本商品は、想像を大きく超えて多くの人々に歓びをもたらしている。

(text: HERO X 編集部)

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最短3日で退院できる!手術支援ロボット「ダビンチ」の可能性に迫る

Yuka Shingai

2018年、大ヒットしたドラマ「ブラックペアン」には「スナイプ」と呼ばれる最新手術医療器具が登場したが、ロボットや機械が手術を補助する場面は今後ますます増えると推測される。なかでも、先端を行く存在として注目されているのが手術支援ロボット『ダビンチ』だ。ダビンチによる手術を行うニューハート・ワタナベ国際病院を訪ね、ロボット手術の現状や課題、医療の未来について話を伺った。

痛くない、血が出ない。
患者の負担が最低限で済むので、最短3日で退院できる。

米粒にすら文字が書ける精密さ。医療用ロボット「ダビンチ」とは? (http://hero-x.jp/movie/5178/)

まず最初に説明しておきたいのは、ダビンチとは厳密には「ロボット」ではなく「世界初、遠隔操作型の内視鏡器具」であるということ。

「現在はマニュアルを基にした医師の操作が必要ですが、いつか熟練した人の腕を再現できるような時代が来るのだろうという希望をこめて、ロボットと呼んでいるのかもしれません」

そう語るのは、ニューハート・ワタナベ国際病院 総長 兼 理事長の渡邊剛氏。ダビンチを使用した心臓弁の形成術や、心臓の血管を繋げるバイパス手術をはじめとした心臓血管外科領域において国内外での豊富な経験を誇り、日本ロボット外科学会の理事長も務める、まさにダビンチを広めた第一人者だ。

ニューハート・ワタナベ国際病院 総長 兼 理事長・渡邊剛氏

ダビンチと従来の内視鏡との違いは、まずその機能性と自由度の高さにあると言えるだろう。

3D内視鏡で捉えた患者の術野を立体画像として映し出すステレオビューワ、鉗子 (「ペアン」に代表されるように、手術や治療の際血管などの組織をつまむ器具のこと) や内視鏡カメラを自在に操作できるマスターコントローラ、瞬間的に鉗子や3D内視鏡の切り替えができるフットスイッチなどを駆使し、医師は患者から離れ、座った姿勢のまま遠隔操作で執刀する。

動かした手の幅を縮小して伝えるモーションスケール機能を使えば、手を5cm動かすと、鉗子は1cm動く仕組みに設定ができるし(この対比は2対1、3対1にも設定可能、手術前に設定した後、術中の状況に応じて変更することもできる)手ぶれ補正機能や左右を反転できる機能など、狭い空間での作業や、血管の縫合や切除なども精密さを求められる作業にも適している。

また、鉗子の種類も100種類ほど揃っており、臓器や目的に合わせた器具が発展しているそうだ。

「ダビンチを使うメリット、それは、まず患者さんの負担が少ないことです。患者さんの皮膚を1~2cmの幅で数か所切開し、そこから鉗子を挿入して手術をするので痛みも少ない、開放手術と比較すると出血が少ない、小さな傷口を開くだけなので、術後の疼痛が軽減され傷が早く治る、手術後に後遺症も残りにくく、手術痕が綺麗なことが特徴と言えるでしょう。当然、手術する部位や状態にもよりますが、最短であれば術後3日で退院して、仕事や学校に復帰することができますよ」(渡邊氏)

早く退院できるというのは、手術後回復を待っている間に体力が低下してしまい、そのまま寝たきりになってしまうことも多い高齢者の手術にも大きな効果が期待されるであろう。

ダビンチは2000年に米国で誕生した。当時、世界で初めての内視鏡下冠動脈バイパス術を行った渡邊氏は、いつかダビンチを使って心臓の手術を行いたいと考えていた。

大学への交渉や文部科学省からの資金拠出を経て、渡邊氏が日本国内ではじめてダビンチを使った手術を行ったのは、金沢大学と東京医大で教授職に就いていた2005年のこと。2009年に先進医療として認定されるまでは、研究費でダビンチによる手術を行うなど、試行錯誤を重ねながらもチーム ワタナベは2005年12月から2018年10月にいたるまで、553件もの手術を実施してきた。

そして、2014年に開業したニューハート・ワタナベ国際病院では弁形成術をはじめとして、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、心臓腫瘍などの心臓手術のほか、国内で唯一のダビンチによる甲状腺手術も行っている。

「年間、弁形成の手術が4000例ほどあるなかで、私たちが担当しているのはその5%、200件ほど。シェアという意味では大きいですが、保険適用がスタートしたのは2018年の4月とごく最近のこと。認知が広がっていくのはこれからではないかと考えています」

医師の腕が手術のクオリティを左右する。
誰にでも扱える万能なロボットではない。

元々、心臓外科の手術用で始まったダビンチ、現在アメリカでは2500台ほど導入されており、そのなかでも泌尿器科の手術の8割以上はダビンチで行われている。この15年で、開放手術の件数とは逆転現象が起こったほどだ。一方、日本に入ってきたダビンチは500台ほどで、泌尿器科での件数はようやく6割に届く程度と言われている。

患者数や医療制度は国ごとに異なり、一般化することは難しいながらも、これまで日本での普及がなかなか進まなかった理由は、コストの問題と並んで、医師の腕が大きく左右される手術であることも大きく関係している。

「胸やお腹を大きく開けば、術部がよく見えるし、どこまで取るか、どう縛るかなど相談もしやすく標準化できます。しかしダビンチをはじめとした内視鏡手術は、ほぼ1人で手術を行うもので、手術時間にしても吻合技術 (心臓血管手術において血管等を繋ぎ合わせる技術のこと) にしても、医師の腕が手術のクオリティに大きく影響してしまいます。

ダビンチは誰でも使える万能なロボットだと思われることもありますが、結局は医師の判断や裁量によるところが大きく、誰が使ってもいいものではありませんし、新しい技術に挑戦するには勉強も臨床経験も必要です。たとえば車の運転がロクにできない人がF1カーを運転したらエンジンをかけることもままならないですよね。自分のかわりに手術を行ってくれるロボットではないですから、ダビンチを使って手術ができるようになるためには、まず外科医として一人前にならなければならない」(渡邊氏)

日本ロボット外科学会の
サーティフィケートが今後の判断基準になる

更なる認知の向上を目指すも、医療機関はもちろん広告を出すことはできず、インターネット上に患者さんの声を反映する際にも制約がある。

それでも、「日本に導入したものの責任として、安全に正しく広めることが必要だと感じています」と語る渡邊氏は医師の育成もかねて、日本ロボット外科学会を立ち上げた。経験や症例数に応じて、国際A、国際B、国内A、国内Bの4種類のライセンスを与え、認定証書を授与している。

「このサーティフィケートが今後、患者さんの判断基準にもなっていくと思います。より認知が広がっていけば、大腸がんならこの病院、甲状腺ならこの病院、と手術を受けるべき病院も分かって、後悔のない治療を受けられるのではないでしょうか」

まだ、件数は少ないものの、これからは産婦人科の手術での活躍に期待が集まっている。泌尿器などに比べると、産婦人科は臓器も病気の種類も多く、より多くの患者に安全な治療を施せる将来性にも満ちている。

日本に導入しようとした当初は、厚生労働省から薬事法承認が下りるまでのハードルが高かったダビンチも現在は第4世代まで進んでおり、川崎重工とシスメックスによる国産手術支援ロボット「メディカロイド」も2019年の販売に向けて開発が大詰めを迎えるなど、技術の進歩は止まらない。

今後、患者にとって当たり前の選択肢としてロボット手術がより発展していくことに期待したい。

(text: Yuka Shingai)

(photo: 河村香奈子)

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