テクノロジー TECHNOLOGY

オムロン×スクエニ!?異色のタッグが進化させた卓球ロボ「フォルフェウス」

Yuka Shingai

オムロンが「人と機械の融和」を目指して2013年より開発を続けている卓球ロボット「フォルフェウス (FORPHEUS)」。 2019年夏に行ったフォルフェウス第5世代の取材では、第5世代でまだ実現しきれていない、ロボットとラリーするプレイヤーのモチベーションをいかに向上させるか、感情の部分に踏み込むかが今後の課題としている旨を伺ったが、ついにこの度、その課題部分がアップデートされた第6世代がお目見えとなる。1月7日からアメリカ・ラスベガスで開催される、「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2020」に出展が決定している。

今回、オムロンが共同研究を行ったパートナーはスクウェア・エニックス。コンシューマーゲームから新型エンタテインメントまで、ゲーム業界の全分野を網羅するリーディングカンパニーとタッグを組んだ背景には、個々人のモチベーションを引き出すインタラクション技術の強化が求められていたことがある。

アスリートが競技に集中、没頭し、モチベーションが最大化されるさまを「フロー状態」→「ゾーンに入る」と称することがあるが、退屈気味の人には厳しい球を打ち込む、はたまた困惑気味の人には易しい球を返すなど、感情や能力に合わせてチャレンジ度合を調整することで、第6世代のフォルフェウスはモチベーションの向上を図るインタラクションを実現することを狙いとしていた。

スクウェア・エニックスはゲームプレイヤーの感情などを推定し、個々に適したコンテンツを提供することを目指すAI技術(メタAI)に関する技術と知見を豊富に備えている。ゲームAIはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つのAIが連携しているが、その中でも状況を監視し、ユーザーの心理を推測し、キーとなる役割を適切なタイミングでエージェントに指示するメタAIを活用することで、どのようなラリー計画が人のモチベーション向上に寄与するかを検証してきた。直近では、プレイヤーのスキルや推定した感情に基づいて返球内容を導き出しているが、今後はその人の性格や欲求も考慮に入れていきたいとのことだ。

また、超初心者から上級者まで対応できる柔軟なロボティクス技術、人の能力を向上させる知覚/身体拡張技術進歩を並行しながら、プロの球も返せる、そしてプロのような球も打てるロボットを目指す予定。

機械が人を追い越し、人の役割を奪うだろうとAIの台頭が脅威として語られる場面はこれまで幾度となくあったが、フォルフェウスが目指すのは、機械と人が共に高めあい、成長しつづける世の中だ。代替とも共存とも、また一味違う「融和」の発展を追い続けよう。

(text: Yuka Shingai)

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日本にMaaSは定着するのか!?国内モビリティ改革の障壁とは?

HERO X 編集部

MaaS(マース)=Mobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)は、いまや欧米諸国では新しいムーブメントだ。移動のサービスをシームレスにつなぐMaaSは、現代社会とのマッチングもよい。しかし、日本国内では、まだ限定的な取り組みにとどまっている。課題はなんだろうか? 国内MaaSの問題点を探ってみた。

日本のMaaSはレベルゼロ!?
単なる「乗り継ぎ案内」では意味がない

MaaSを具体的に説明すると、乗用車以外のバス、電車、タクシー、レンタサイクル、シェアライドなどの移動サービスを統合的に提供するシステムのことだ。ITを活用して予約・決済なども一括で提供し、その時点で最適な移動サービスの組み合わせをユーザーが選択できる。交通の乗り換え案内情報は日本でもシームレスに提供されているが、MaaSの場合は、運用会社の壁を乗り越えて、単一のサービスとして提供していることが特徴だ。

例えば、MaaS先進国のフィンランドでは、ヘルシンキで「Whim」というシステムが稼働している。(参考記事:http://hero-x.jp/article/9470/)「Whim」アプリを使えば、電車、バス、タクシー、バイクシェアなどのサービスが統合的に利用できる。決済もスマホ上ですべて完了し、交通機関を使う際に決済画面を提示すればいいだけだ。画期的なのは都度決済のシステムに加え、定額で乗り放題になるサブスプリクションサービスを提供していることだ。今ではサブスクを利用する市民のほうが多いという。

「Whim」は日本でも昨年末から千葉県柏の葉エリアなどで実証実験がはじまっている。
動画元:https://www.youtube.com/watch?v=rgsr5ZwsY1Q

また、ドイツでも産官学が一体となり、ドイツ鉄道によるモビリティサービス「Qixxit」を実用化。鉄道だけではなく、飛行機や長距離バス、レンタサイクルなどのサービスも一括化した。アジアでは、台湾第二の都市、高雄でMaaSアプリ「MeN Go(メンゴー)」が実用化された。こちらも、官民共同の事業として推進されている。

高雄で使えるMaaSアプリ「MeN Go(メンゴー)」
画像元:https://apps.apple.com/tw/app/id1415685647

一方で日本はどうだろうか。現在、世界でのMaaSのレベルは
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レベル0:統合なし
レベル1:情報の統合(アプリやWebで経路や料金を提示できる)
レベル2:予約・決済の統合(一括予約・決済ができる)
レベル3:サービス提供の統合(事業者間が提携し契約・支払いなどが統合される)
レベル4:政策の統合
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とされているが、日本は0~1レベルにとどまっているのだという。

確かに、日本でも政府主導のプロジェクトを含めMaaSの実証実験がいくつも進められている。しかし、その内実は、民間の交通機関同士の連携にとどまっていることが多い。「モビリティを通じ、新たな価値や新たなサービスを生み出していくこと」がMassの概念であるはずなのに、日本では情報提供と決済のみの統合のような、小規模なものになりがちとの声も聞かれる。

この背景には、日本の法規制の問題があるとされている。日本の産業は業法の中で工夫して発展してきた歴史があり、その中で進化してきたのが日本モデルといわれている。ある専門家は「既得権益から発生する小さいビジネスに対応することは得意だが、そもそも新しいビジネスモデルが生まれにくい土壌がある」と話す。

さらに、日本の交通業者はサービスの囲い込みをしたがる傾向にあり、なかなか提携が進まない現状もある。MaaSのような複合的なシステムは、どこかが一社独占を狙っても、上手くはいかないだろう。

この状況を打破するためには、やはり法改正も含めた、官民一体となった改革が必要だ。前述の海外の例でも、欧州やアジアでうまくいっているケースは、政府や自治体が主導し、企業との連携を果たしている。日本のMaaSが小さくまとまらず、ブレークスルーを起こすためには、まずはMaaSとは単一のビジネスではなく、新たなモビリティの概念だととらえ、プレイヤー同士が協力していくことが大事なのではないだろうか。

(text: HERO X 編集部)

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