対談 CONVERSATION

テレビゲームの枠に収まらない、本当のeスポーツとは!?犬飼博士がつくりたい未来【前編】

eスポーツという言葉が先行しつつも、その実態はよくわからないという人が大半なのではないだろうか? 一般的にはテレビゲーム大会と同義に捉えられることが多いが、eスポーツの黎明期からさまざまな角度で関わってきた、運楽家である犬飼博士氏のヴィジョンは壮大だ。RDSの代表であり本誌編集長の杉原と、ゲーム遊び・ゲーム作りに没頭してスポーツにたどり着いた犬飼氏が、未来について語り尽くす。

テレビを使って遊ぶようになった
最初の世代

杉原:犬飼さんは、映画監督を経てゲーム監督(開発)の道に進まれ、その後はeスポーツのプロデューサーとしても活躍されていました。そこでお聞きしたいのですが、一般的にeスポーツ=テレビゲームというイメージだと思うんです。しかし、犬飼さんが現在やられていのは実際に身体を動かすものが多いですよね? そこが面白いと思うのですが、犬飼さんは「eスポーツ」というのをどう捉えられているのでしょうか。

犬飼:「ゲームはスポーツだ」ということは、すでに1994年くらいから言っていたんです。自分は1970年生まれなので、カラーテレビがすでに普及していた世代。小学校低学年でアタリ社のテレビゲームが出てきて、高学年になって任天堂のファミコンが発売され、中学くらいでゲーム業界がいろいろ盛り上がってきた。つまり、テレビという装置を見るだけでなく、使って遊ぶようになった最初の世代なんですよ。

もっと言うと、1920~30年代にモータースポーツが生まれるわけですけど。工業社会が成熟してコモディティ化し、車が社会の中に浸透したことで、仕事や遊びに使われ、モータースポーツが生まれるわけです。経済成長をした日本でも1970年代後半にスーパーカーブームがおこりますよね。そういう風に、時代の流れとともに世間へ浸透していく。ファミコンが誕生したとき僕は13歳でしたが、同時に『キャプテン翼』の影響でサッカー人気もおこった。子どもにとっては、どちらも「面白い」というだけで境目はないんです。カウンタックが走っていればカッコイイと思ったし。何も考えず、区別もなく受け入れていた。その感覚はいまでも変わらないんです。

犬飼:小学校の頃にはパソコンも普及してきて、テレビゲームも作っていましたから。

杉原:えっ、作られていたんですか?

犬飼:今ならみんな作るでしょ? 猫を右から左に動かすとか、プログラミング教室でやるのと似たようなものですよ。僕が小学生の頃からできる環境はあったんです。ポケットコンピューターみたいのが、1万円で買えましたから。MSXというパソコンも3~4万円。なので、僕らはグラウンド(校庭)だけでなく、テレビのなかでも遊び始めた世代なんです。そこにはルールがなかったから何をやってもよかった。

杉原:そんな昔から、プログラムの環境が整っていたとは知らなかったです。

犬飼:サッカーもテレビゲームも区別なくゲームに熱中してきたので、「テレビゲームのゲームもスポーツと呼んでもいいでしょ?」というのが僕のeスポーツ感。

2035年には、たくさんの人が
eスポーツの恩恵を受けるようになる

杉原:eスポーツって犬飼さんが提唱したんでしょうか?

犬飼:いや、最初は人から聞きました。1999年頃、『Quake(クエイク)』というゲームをやるイギリスのチームがあって、彼らのチーム名に「eスポーツ」という単語が入っていたんです。それを見て、「eスポーツって表現はいいね」と僕らの周りが言い始めた。当時は、部活のようにテレビゲームをやるニュアンスで使っていたんですけどね。その後、2000年に韓国で『World Cyber Games』という大会が始まって、そこが「eスポーツ」という単語を大々的に使った。そのへんから、eスポーツというものの認識や状況が変わってきたんです。

杉原:へぇ~、ハンゲームが流行った頃ですよね?

犬飼:厳密に言うと、ハンゲームが流行る2~3年前ですね。

杉原:僕は2010年くらいに「eスポーツ」という言葉を聞くようになって。そこから急激に盛り上がって、市民権を得た印象です。

犬飼:う~ん、市民権を得たとまでは言えないかな…。2000年頃、eスポーツ事業を始めるにあたって35年計画を作ったんですよ。そのタイミングで僕はゲームの開発をやめたんです。というのも、作るだけではなくプレイすることもちゃんと伝えたかった。それで、2000年から数えて35年後には、おそらくたくさんの人がeスポーツの恩恵を受けると思ったんです。

杉原:それはどういう意味でしょうか? 詳しく教えてください。

犬飼:スポーツって、スポーツが大嫌いな人にも恩恵を与えていますよね? というか、溶けている。国の政策など、何らかのカタチでスポーツは生活に入り込んでいるという意味。eスポーツもそうなります。

杉原:今年の茨城国体では、文化プログラムとしてeスポーツ選手権がおこなわれますしね。

犬飼:多分これから10~20年くらいで、そういうものが積み重なって、みんなにとって普通なことになる。ひょっとしたら、eスポーツという言葉もなくなっているかもしれない。

杉原:「ただのスポーツじゃないか!」、みたいなことですか?

犬飼:そうそう。スポーツという言葉に反発する人もいるから、スポーツという名称すらなくなるかもしれない。

杉原:それは「ゲーム」という言葉にも当てはまりそうですね。

犬飼:いや、そもそも「ゲーム」という言葉が当てはまらないから「スポーツ」に言い換えた経緯があるんです。ゲームという言葉は誤解が多いんです。現代社会においては、多くのことがゲームと呼ばれるようになっている。IT社会、情報社会になって、人間の行動をゲームとして扱えるようになってしまったから。このように、あまりにも広範囲にゲームという言葉を使っているので、「ゲーム文化」と言ったときに何を示すのか不明瞭になってしまいました。というわけで、議論が成り立たないので、ゲームという言葉は使いたくないんですよ。

杉原:そこで「eスポーツ」という言葉に置き換えられていったということですね。

身体情報をすべて測定するのが
当たり前の時代になる

犬飼:よくする例え話ですが、「音楽」はもともとアコースティックなものでしたよね。その後、電気が普及することでエレクトリックギターやシンセサイザーなどが出てきて、「エレクトリック音楽」が生まれる。言い換えば「eミュージック」なんです。そういう感じで、「スポーツ」も「eスポーツ」になるだけ。メールもそうでしょ? いま郵送の手紙を指すとは思われていない。

杉原:昔は、「eメール」って呼んでいましたもんね。

犬飼:そう、「eスポーツ」も「スポーツ」の中に溶けていく。

杉原:つまり、今後はもっと大きなものになっていくわけですか?

犬飼:普通になっていく。コモディティ化していきます。

杉原:そう考えると、犬飼さんが2013年に『スポーツタイムマシーン』を発表された理由がよくわかりますね。

犬飼:そうなんです。情報化はあらゆるところで起こっていて、僕たちは身体情報をすべて測定するという意味での「情報化」をやっている。それが当たり前になる社会を目指しています。まだ珍しいことなんで早めにやったほうがいいですよ。

杉原:もっと早く知っていたら、10年前の自分と100m走で戦いたかったですよ。でも、あの映像を見ると、みんなすごく楽しそうですよね。

犬飼:人間ってくだらないから、走るだけで大喜びする(笑)。走っているときは、背景に映し出されている対戦相手の映像も見えないんですけどね。

杉原:それってリアルなスポーツと似ていますよね。サッカーをやっている人と、観ている人は乖離している。

犬飼:そういうことです。

eスポーツに関する
プラットフォームを作っていきたい

杉原:『スポーツタイムマシーン』はどこかに常設されているんですか?

犬飼:まだないです。『スポーツタイムマシーン』を作る前、2010年頃には『eスポーツグラウンド』という、4×6mくらいの設備を作って売っていたんです。床面にプロジェクターを当てて、キネクトで各種データを取って、デジタル空間で遊べるというもの。簡単に言えば、床に大きいiPadがあって、指の代わりに人間が動いて遊ぶような感じ。アプリは誰もが開発できるようにして、eスポーツのグラウンドとして使いたかった。

iPhoneもまだ完全には普及していなかった時代なので、当時は理解してくれる人が少なかった。いまは、それよりもサイズを大きくした『IT体育館』を目指しています。

杉原:それはすごいですね。人間の各種計測データが遊びに変化する。

犬飼:でも、昔からなかなか資金調達ができないんですよ。未来は必ずそうなる、そうならざるを得ないことを描いているのに。

杉原:稲見昌彦(東京大学先端科学技術研究センター教授)さんとやられていることも、そのひとつですか?

犬飼:そうですね。稲見さんは『超人スポーツ』という名前で研究をしているということです。

杉原:計測データを使って遊ぶという意味では、ワントゥーテンさんがやっている『サイバーボッチャ』とも似ていますよね。

犬飼:そうそう、彼らは『サイバーボッチャ』という単体の遊びを提供していますけど、僕らはプラットフォームを提案している。それくらいの差ですよね。

杉原:今後、iTunesストアみたいにeスポーツに関するプラットフォームを作っていくわけですね。将来的には、情報化させた身体情報をどう活用していくのでしょう。

犬飼:データ(身体情報)をリアルタイムで取って、クラウドに貯めて、過去の情報をほしいときに引っ張れるようにしたいと思っています。

後編へつづく

犬飼博士
1970年、愛知県一宮市生まれ。運楽家/遊物体アソビウム/ゲーム監督。映画監督山本政志に師事後、ゲーム業界にて『TOY FIGHTER(アーケードゲーム)』、『UFC(ドリームキャスト)』、『WWF RAW(Xbox)』といった作品を制作。2002年より、スポーツとゲームを融合する「eスポーツ」の事業を開始。『World Cyber Games』、『Cyberathlete Professional League』、『Electronic Sports World Cup』といった国際eスポーツ大会の日本予選をオーガナイズ。2007年度文化庁メディア芸術祭にて、ゲームソフト『Mr.SPLASH!』が審査員会推薦作品に選出。2012年には、日本科学未来館で常設されている『アナグラのうた 消えた博士と残された装置』に参加。2013年には、YCAM公募企画『LIFE by MEDIA』国際コンペティションや、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞などを受賞した『スポーツタイムマシーン』を発表。

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【HERO X × JETRO】トップランナーは中国発のスタートアップなのか!世界が注目する無人販売EV

HERO X 編集部

「New Normal (ニューノーマル) 社会と共に歩む」をテーマに昨年開催された日本最大級のテックイベント『CEATEC 2020 ONLINE』にて、17カ国・地域から45社の有力スタートアップが集結した、JETRO設置の特設エリア「JETRO Global Connection」。参加した注目の海外スタートアップ企業を本誌編集長・杉原行里が取材。無人配送にも使える小型自動運転車両を提供する中国の新石器(Neolix)。同社の小型自動運転車両は、受注台数を着々と伸ばしており、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、ピザハット、コカ・コーラ等のリテールや飲食企業も顧客に含まれている。中国から日本へ、国境を超えたイノベーションの創出をめざす、同社の海外事業総代表にお話をうかがった。

マルチに使える自動運転車両

杉原:御社が手掛ける事業内容について教えて下さい。

呉:自動運転車両の研究・開発と生産を行っています。自動配送のみならず、小売、セキュリティパトロールなど、さまざまな業種で幅広いサービスの展開を考えたカスタマイズ可能なモジュール方式のスマート車体、電池交換により7日間24時間連続稼働を実現するノンストップサービス、車体の製造とシステムの構築を自社で手掛けており、現在の工場(の設計上)生産能力は1年間に1万台ほどです。

杉原:ホームページを拝見し、「時代の潮流に乗っているな」と。医療サービスの提供や食品の販売など、あらゆるソリューションを柔軟に搭載でき、搭載された内容に合わせてEVが自由自在に走り回る。その姿に感激しました。

呉:ありがとうございます。最新モデルの『X3』はモジュール設計になっていて、用途によってさまざまなスマートハードウェアを組み合わせ、コンテナ部分をカスタマイズできます。たとえば食品の小売では、食品ごとに最適な温度管理がされた貨物ボックスのモジュールを用いることで、天候に左右されず、温かい食事や冷たい飲み物などを最適な温度管理のもとで運搬し、ユーザーに提供することが可能です。今後もこうしたモジュールを追加していく予定です。また、車両に搭載されたタッチパネルやスマートフォン上での簡単な操作で、購入や決済もできるといった、エンドユーザーにとって高いインタラクティブ性も実現しています。

杉原:御社の取り組みは、次世代の流通サービス「ラストワンマイル」の課題解決という面において、非常に価値の高い製品だと感じました。

呉:そうですね。物流や配送に限らず、リテール、パトロール、教育等公的サービスなど、さまざまな用途を構想できるのが弊社のサービスの強みです。

杉原:現在日本においても、このような無人走行はさまざまな分野の課題解決につながるものとして、熱い注目を浴びています。スペック面ではどのような特長があるのでしょうか。

呉:国の規制や利用条件などによってかわりますが、スピードがある程度出ることも特長だと思います。平均運行時速は5-11km、最高時速は時速50kmに達することが可能な設計です。

杉原:先程の話だと、自社でバッテリーも開発しているのですね。

呉: そうです。自社でバッテリー工場を有しており、一回の充電で満載状態の無人車を100km走行させることが可能です。

法的壁を乗り越え実証へ

杉原:ハード面・ソフト面に加え、開発・製造・サービス展開まで自社で手掛けてるところに、御社の製品の独自性やプライオリティ(優位性)があるように思います。このサービスの開始当時は、どのような分野から取り組んでいったのでしょうか。

呉:この会社を立ち上げたのが2012年、自動運転車両に着手したのは2015年頃です。アイデア段階から車両の研究・開発を行い、2018年には現在の小型自動運転車両のモデル車両が完成し、ローンチしました。

杉原:なるほど。中国で無人運転を行うのは法律や規制の面で障壁はありましたか。

呉: 公道の走行許可取得には相当な時間を要しました。政府の関係部門は事故の危険を防ぐために安全性の調査を実施するとともに、半年ほどの時間をかけて地域住民へのメリットの有無を仔細に検討します。許可証の取得条件はエリアによっても異なりますが、2021年5月25日には北京のハイレベル自動運転模範地区の無人デリバリー車管理政策で、当社は初めて無人デリバリーのトップ企業として「NX0001」無人デリバリー車両ナンバー(図参照)の交付を受け、中国初の合法的な公道走行を実現しました。また、お客様に一番近い無人デリバリーコンビニエンスストアとして、中国初のスマートネットワーク自動車政策先行実施エリアで無人車サービスネットワークを構築し、今では(エリア内の)お客様に広くご利用いただいています。

杉原:とくに御社のテクノロジーに高い関心を寄せてくるのはどのような分野の方々なのでしょうか。

呉:サービスをスタートした当初から、いろいろと用途が広がってきています。中国では現在フードカートの需要が最も高く人気があり、今後も力を入れる予定です。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって非接触型のサービスが一気に高まり、徳邦物流(デッポンロジスティクス)、中国郵政(チャイナポスト)、スイスポストなどから受注をいただいています。

医療サービスや街の安全も無人EVにお任せ!?
パトロール車としても役立つ

杉原:コロナ禍で小売業のみならず、医療サービスの分野でも自動運転車両のニーズが高まっています。御社でもそうしたサービスを展開しているのでしょうか。

呉:はい。医療分野に関してはタイのバンコクにある病院とパートナーシップを結んでいます。そのほかにも用途は多岐にわたり、中国では無人セキュリティパトロールの実証が始まっており、遠隔で授業ができるスマートキャンパスの実験など、教育サービスへの活用もスタートしています。

シンガポールの病院と行ったコロナの感染予防キャンペーン

オーストラリア企業YDriveとのオーストラリアでの自動運転教育車分野の活用

杉原:日本では超高齢化社会をはじめ、さまざまな問題を抱えていますが、それらに対しても御社の技術は大きく貢献してくれそうです。今後日本ではどのようなサービスを展開していこうとお考えでしょうか。

呉:日本での展開に関しては新しい用途を考えていて、すでに日本企業とのパートナーシップを締結しています。

杉原:すでに御社の製品に対する注目は高いですが、今後の展望や課題はありますか。

呉: 当初は大手企業の用途に合わせて、受注生産のような形で対応してきましたが、それには大規模なコストがかかり、導入可能なのは大企業に限られています。今後私たちのビジネスをスタンダートなものにしていくために、いま挑戦しているのが、製造費をコストダウンし、大規模な商用化を実現することです。製造費を安く抑えることができれば、より広い分野で、より大規模にビジネス展開が可能になります。製造コストと大規模商用化においては、現在のところ、我々は業界のトップリーダーの地位を占めています。

杉原:これだけマルチに使えるとなると、今後御社の製品はますますシェアを大きく広げていくでしょうね。それによって大きなパラダイム・シフトが起きると予想されますが、今後5年で未来はどんなふうに変貌していくと思いますか?

呉:そうですね。実は今、街の管理やセキュリティのような公的サービスのほか、広告サービスも考えています。多岐にわたるパートナーと組んでいくことで様々なニーズを網羅し、自分たちの技術でスマートシティを実現したいと思っています。また、情報をプラットフォーム化したり、データ化したりして、より細かなニーズや潜在的なニーズにも対応できるようにし、新しいライフスタイルを提供したいと願っています。

杉原:スマートシティの実現が目に浮かぶようで、とてもわくわくするお話でした。ありがとうございました。

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(text: HERO X 編集部)

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