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「WF01」で車いすの概念を変える!!RDSが送り出す最新パーソナルモビリティー

中村竜也 -R.G.C

「世界で一番、ボーダレスなメディア」をコンセプトに掲げるHERO Xの編集長・杉原行里(以下、杉原)が代表を務める株式会社RDS(以下、RDS)が、世界で一番ボーダレスなパーソナルモビリティ・WF01を発表した。オリジナリティ溢れる新しいモノ作りのカタチを世界に発信する株式会社RDSらしく、障がい者の使用を目的としただけではない、誰もが使用できる、よりパーソナルなモビリティとして開発した背景には、どんな未来を見ているのだろうか。開発者であり弊誌編集長の杉原がその全貌を語りつくす。

培った技術や知恵をボーダレスに共有する|WF01

WF01紹介サイト:http://rds-pr.com/wf01/

未来感のある洗練された革新的なデザインに、徹底追求されたドライバビリティを融合することで、「いつか乗ってみたい」「いつか遊んでみたいと」思える新たな選択肢として生まれた “WF01”。ではいったいどのような目的で開発に至ったのだろうか。

「私たちの会社がパラリンピックの種目である、チェアスキーや車いすレーサーに携わってきたことで培ってきた技術やノウハウを凝縮させ、どこかにアウトプットしていかなくてはいけないなとずっと感じていました」

例えばF1がそうであるように、そこで開発された最先端のテクノロジーは、私たちの知らぬ間に乗用車や街づくりのインフラなど身近なものに使われていることが多々ある。その発想からRDSがどこに落としこめるかと考えた時、モビリティとしての車いす開発に辿り着いたようだ。さらに、開発理由について杉原はこう話す。

「もうひとつの理由は、所有欲を満たすプロダクトって今のような世の中にこそ必要だなと長年思っていたんです。いつか乗ってみたい車があるのと同じような感覚で、いつか乗ってみたい車いすがあってもいいじゃないですか。乗り物として選択肢の余白を増やしていきたいという気持ちが、開発という行動へと繋がりました。

以前、車いすバスケットボール元日本代表の根木慎志さんとの対談(http://hero-x.jp/article/3747/)でも話題になりましたが、例えばカッコいい腕時計を身につけたいと思うように、自分をカッコよく見せる機能のついた車いすがあったら、乗ってみたくないですか? “WF01” の開発を進めるなかで、根木さんが僕らに提起したコンセプトは “靴がカッコよく見えること”。従来の車いすの選択肢にはあまり考えられなかったことです」

ほとんどの人は、固定観念にとらわれている。おそらくは、意見することにより、そこに責任が生じてくるからだろう。だからこそ、そういった風潮に風穴を開けるべく、RDSは長い時をかけ培った経験や技術を惜しみなく世の中に提供する覚悟を決めたのだ。これぞ、所有から共有へとシフトチェンジしている、いまの時代にふさわしい考えではなかろうか。

男心をくすぐる遊びのあるデザイン

“WF01” は、フットレストが光る仕様となっている。先日授賞式に参列した、タキシードに身を包む根木氏の足元は、もちろんフォーマルシューズ。“WF01” のライティングは、光沢のある革靴をよりカッコよく魅せてくれる。

スタイリッシュなフォルムや暗闇で浮かび上がるライトは、CGを世界で初めて多用した映画『TRON』を彷彿とさせる。従来の車いすとは明らかに一線を画すデザインのコンセプトはいかに?

「『カッコいい』って思う気持ちには、障がい者だからとか、健常者だからって関係ないんですよね。乗り手を選ばないというか。そのあたりの概念をボーダレスにすることによって境界線を曖昧にできれば、ものすごく面白い物が出来るのではないかと思っていました」

安全性や視認性はもちろんだが、この “光る” というところに、開発陣がこだわった、純粋なカッコよさの追求を感じることができる。

とはいうものの、スタイリッシュなデザインをキープしながら実用性を兼ねる、言い換えれば圧倒的な機能美を追求することで苦労した点は少なくないはず。

「それは “ルール” かもしれません。『これなんですか?』っていう質問もあったりするわけです。車いすはこうあるべきだという固定観念をある程度取り除かないと、カッコよさを追求するのはすごく難しくて。最初は否定的な意見はどうしても出てくると思うので、僕らの目標として、最初にこのマシンをみた時『これいくら?』という一声よりも、『超カッコいい!』『なにこれ!?』という会話がスタートすることを目指しました。

欠損を補うのではなく拡張していく視点で、『俺こんなの持ってるんだぜ』という所有欲が生まれてくることが、先ほども述べた選択肢の余白になるのではないかと思っています。

それと、実は私たちは “WF01” をミニ四駆的と呼んでいるんです(笑)。それは、フレームと言わる部分をミニマムに抑えることにより、様々なパーツを組み替えられるようにしているから。そうする事でこの車いすがパーソナライズされていき、使い手や、使い方によって、各パーツが組み替えられる楽しさも持ち合わせているんです」

開発者が楽しみながら作ることはモノ作りの基本かもしれないが、車いすを “ミニ四駆的”に考えたというのには驚きでしかない。さらにシートに関しては、5年以上の歳月をかけ培ってきたシーティング測定技術が凝縮されているという。車いすにとって、“座る” 行為とは、かなり重要な部分を占めているのだ。

美しい容姿から汲み取る、
作り手たちの想い

「こういうモビリティに大切なことって、実は軽さよりも、少しの力でより早く前に進むことが重要なんです。そこは我々も力を注いだところなので、かなり計算して作られています。また、ブレーキについても、タイヤ中心にある赤い部分を手で回転させることで、ハブブレーキが作動する仕組みになっています。」

最後に、“WF01” の登場により、世の中にどのような変化をもたらすことに期待しているかを聞いてみた。

「期待の部分はやはり、選択肢の一部になること。僕らのモビリティでそれが叶えば、これまでたくさんの人びとが培ってきた技術や、それぞれの観点を持ち寄って、車いすだけでなく未来も、共に創造していけるのではないかと考えています。新しい扉ですね、ワクワクしかありません(笑)」

まさにこの言葉が全てではないだろうか。なぜなら筆者の私自身この乗り物を初めて見た時に、ヘルメットを被り、プロテクターを装着し、もちろん氷上ではないが、Red Bullのクラッシュドアイスのような競技をこれでやってみたいと思ったからだ。

そう夢が膨らんだ時点で、このモビリティはボーダレスであることが証明されたと言ってもいいだろう。車いすという見方をすることなく、単純にスタイリッシュで、乗った自分を想像できる乗り物として自身が認識したのだから。

「プロダクトに対してデザインと情緒を付与しよう」 “WF01” の開発時に杉原が言い続けてきた言葉だという。感情を動かすモノづくりをしようという気概を、社内開発チームに強く感じて欲しい想いがあったからだと感じた。そして、RDSはこれからも新たな文化を創造し続けてくれることに期待する。

株式会社RDSオフィシャルページ
http://www.rds-design.jp/

(text: 中村竜也 -R.G.C)

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アスリートの100%に100%で応えたい。義肢装具士・沖野敦郎 【the innovator】前編

岸 由利子 | Yuriko Kishi

トラックを颯爽と駆け抜けるパラアスリートの身体と義肢の見事な融合は、義肢装具の製作や調整を行うプロフェッショナルである義肢装具士の存在なしに実現しない。日本の義足陸上競技選手初のパラリンピック・メダリスト山本篤選手や、リオパラリンピック4×100mリレー(T44)で銅メダルを獲得した佐藤圭太選手など、名だたるトップアスリートの義肢装具を手掛ける義肢装具士の沖野敦郎さんは、「選手が、100%の力を発揮できる義肢装具を作りたい」と話す。なぜ、ジャスト100%にこだわるのか。東京都台東区・蔵前の一角にあるオキノスポーツ義肢装具(以下、オスポ)の製作所で沖野さんに話を伺った。

専業制を選んだ理由は、人にあり

山梨大学機械システム工学科在学中の2000年、シドニーパラリンピックのTV中継で、義足で走るアスリートの姿を初めて見て衝撃を受けた沖野さん。大学卒業後、専門学校で義肢装具製作を学んだのち、義肢装具サポートセンターに入社した。以来、たゆまぬ努力を重ね、義肢装具士としてのキャリアを積み上げていき、2016年10月1日、満を持して独立。自身の名であるオキノと、スポーツを掛け合わせた「オスポ」をその名に冠する義肢装具製作所を設立するに至った。

一般的に、義肢装具製作所は「分業制」と「専業制」に分かれているが、オスポは、完全専業制。断端の採型(型採り)から義足の組み立て、納品に至るまで、すべて沖野さんが一人で行っている。一方、10名以上のスタッフがいる作業所では、分業制を取るケースが多く、型を採る人、削る人、組み立てる人、納品する人と作業別の担当に分かれ、流れ作業で作り上げていく。

「分業制だと、確かに作業の質は上がるのですが、例えば、削ることを専門としている義肢装具士の場合、自分が削った商品がどのように納品されるのか、あるいは、調整が必要になった時、どこに不具合があるのかということが書類上でしか分からず、“人”が見えなくなるのではないかと思いました。実際に、義肢装具を付ける人のことですね。私が専業制を選んだ理由の一つは、その人たちと直に接したかったからです。要望をしっかりと捉え、本当に満足していただける義肢装具を作るためには不可欠なことでした」


完全オーダーメードのソケットは、義足の要

沖野さんが左手を携えるパーツが、ソケット

義足に関して、義肢装具士が主に製作するのは、断端(切断面)を収納し、義足と接続する「ソケット」と呼ばれる部分だ。

「その人の足の太さや長さ、筋肉の付き具合などを見極めて、石膏で断端部分の型採りを行い、完全オーダーメードで作ります。F1に例えるなら、義足はレーシングカー、ソケットは車のシートに当たる部分。どんなに優れたタイヤやエンジンを積んでいても、シートの出来が悪ければ、レーサーは長時間乗るに耐えられません。それと同じで、ソケットは、義足の履き心地に関わる重要な部分。その人の断端の形状や動きにぴったり合わせられてこそ、意味を成します」

新たなものが生まれては、消え、また生まれる。日進月歩で進化を続けるソケットの製作技術だが、「真に価値ある技術を見定めることが大事」と沖野さんは話す。その上で新たに製作したソケットを、アスリートをはじめとした義肢装具ユーザーに使用してもらい、生の感想を次の製作にフィードバックすることで、オスポ独自の技術にさらなる磨きをかけていく。

優れた義肢装具は残らない

日常用の義足(左)と競技用義足(右)。中央は、スパイクソールの付いた競技用義足の板バネ

日常用の義足と競技用義足とでは、使用目的が異なるように、構造も大きく違う。だが、ジョイント部品や「板バネ」と呼ばれる炭素繊維強化プラスチック製の部分など、ソケット以外のパーツについては、基本的には、アスリートや義肢装具ユーザーの要望をもとに、メーカーが開発した既製品を組み合わせていくという点では共通している。

「板バネは、主にJ型とC型がありますが、メーカーによっても特性はさまざまです。陸上競技はJ型、幅跳びはC型、あるいは、その逆の組み合わせというように、種目によって板バネを変える選手もいますし、求める動きや好みによって皆、違います。オスポでは、ユーザーの数だけ存在する多種多様な要望を満たすために、さまざまな技術を駆使していますが、既製品で対応できない場合は、埼玉県にある(株)名取製作所と共同で、オリジナル部品を製作しています」

国境や時代を超えて、誰もが絶賛する絵画は、美しい額縁で飾られ、極めて優れたコンディションで保存されて残っていく。だが、沖野さんによると、義肢装具の場合は、その逆だ。もし、キレイな状態で残っていたとしたら、それはすなわち、使われていないことを意味する。

「(身体に)合わない義肢装具は、使わないからキレイに残っているんですね。乗りやすい車をとことん乗り倒すのと同じで、ぴったりフィットした義肢装具なら、壊れるまで使うので、残らないんです。だからこそ、メンテナンスが大事。 “どんなオリジナル部品を作っているんですか?”とよく聞かれるのですが、その選手のためだけに作ったものなので、本人に来てもらわないかぎり、お見せすることができないのが残念なところなのですけれど」

後編につづく

沖野敦郎(Atsuo Okino)
1978年生まれ、兵庫県出身。オキノスポーツ義肢装具(オスポ)代表、義肢装具士。山梨大学機械システム工学科在学中の2000年、シドニーパラリンピックのTV中継で、義足で走るアスリートの姿を見て衝撃を受ける。大学卒業後、専門学校で義肢装具製作を学んだのち、2005年義肢装具サポートセンター入社。2016年10月1日オキノスポーツ義肢装具(オスポ)を設立。日本の義足陸上競技選手初のパラリンピック・メダリスト山本篤選手リオパラリンピック4×100mリレー(T44)で銅メダルを獲得した佐藤圭太選手の競技用義足、リオパラリンピック男子4×100mリレー(T42-47)で銅メダルを獲得した多川知希選手の競技用義手や芦田創選手の上肢装具など、トップアスリートの義肢製作を手掛けるほか、一般向けの義肢装具の製作も行う。

オスポ オキノスポーツ義肢装具
http://ospo.jp/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

(photo: 河村香奈子)

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