テクノロジー TECHNOLOGY

進化するAR技術、視覚障がい者のために作られた“ウェアラブルな拡張現実”

岸 由利子 | Yuriko Kishi

最近、よく耳にする「AR(拡張現実)」という言葉。「聞いたことはあるけど、何のことかは分からない」という方、知らず知らずのうちに、実は利用しているかもしれません。身近なところでいうと、昨年世界的なブームになったポケモンGOをはじめ、MSQRDやSnapchatなどのスマートフォンアプリ。これらはすべて、AR技術による娯楽の賜物なのです。

ARとは、ライブビデオ映像や写真など、私たちが知覚している現実世界をベースに、その一部がアニメ―ションなどのコンピューティング技術によって、改変・拡張されたリアルタイムな状況や環境のこと。

大幅に進化したAR技術を使って、視覚障がい者のために作られたのが、今回ご紹介するヘッドセット「eSight3」です。同製品をローンチしたイーサイト(eSight)社によると、2017年2月時点で、約1000個を販売しており、同社の技術を試した約75%の人が、すでに効果を実感しているのだそう。

(引用:wareable.com

eSight3は、ここ10年間の研究によって、成熟した同社の技術が凝縮されたといえる第3世代にあたる最新バージョン。ヘッドセットに搭載されたハイスピードのHDTVカメラが捉えた映像は、ユーザーの周辺視野と連携しながら、目のすぐそばにある有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイに表示される仕組みになっていて、HDTVカメラと共に、光を分散し、屈折や全反射、複屈折させるプリズムを使うことで、ユーザーの中心視力を復元します。

「ひとつ前のモデルは、ユーザーの平均視力を20/25(視力 約0.8)にまで復元しましたが、eSight3は、さらに鮮明な視野を提供するものです」と話すのは、同社のブライアン・メック最高経営責任者(CEO)。

eSight3は、自動的にフォーカスしますが、手元のリモートコントローラーを使えば、ユーザーが見たい視野をコントロールできる一方、手動によるズーム機能も可能になりました。Wi-Fiをはじめ、Bluetoothやスピーカー、マイクなどの機能を搭載し、約6時間の充電も可能。これだけの機能を備えながらも、驚くことに、重さはわずか100グラムほど。

非の打ち所がないポータブル・デバイスは、メガネをかけても視力が回復しない弱視の人をはじめ、視神経症や緑内障、加齢黄斑変性症などの視覚障害を持つ人にとって、吉報であることは間違いありません。ただ、人生にも光と影があるように、eSight3にもいくつかの難点があります。

ひとつは、完全に盲目の人には使用できないということ。もうひとつは、価格の問題です。従来のモデルが、15,000ドル(約150万円)だったことを踏まえると、現在の9995ドル(約100万円)という値段は、比較的手の届きやすい価格になりましたが、一般消費者にとっては、まだまだハードルは高いのが実情。

eSight3は米食品医薬品局(FDA)からクラスⅠの医療機器として認定を受けていますが、現時点ではほとんどの保険は適用されていないとのこと。アメリカでの進歩が、世界の視覚障がい者への普及のカギを握っているといえます。加速するAR技術の発展に期待して、今後の展開に注目です。

[引用元]wareable.com

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

テクノロジー TECHNOLOGY

オムロン×スクエニ!?異色のタッグが進化させた卓球ロボ「フォルフェウス」

Yuka Shingai

オムロンが「人と機械の融和」を目指して2013年より開発を続けている卓球ロボット「フォルフェウス (FORPHEUS)」。 2019年夏に行ったフォルフェウス第5世代の取材では、第5世代でまだ実現しきれていない、ロボットとラリーするプレイヤーのモチベーションをいかに向上させるか、感情の部分に踏み込むかが今後の課題としている旨を伺ったが、ついにこの度、その課題部分がアップデートされた第6世代がお目見えとなる。1月7日からアメリカ・ラスベガスで開催される、「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)2020」に出展が決定している。

今回、オムロンが共同研究を行ったパートナーはスクウェア・エニックス。コンシューマーゲームから新型エンタテインメントまで、ゲーム業界の全分野を網羅するリーディングカンパニーとタッグを組んだ背景には、個々人のモチベーションを引き出すインタラクション技術の強化が求められていたことがある。

アスリートが競技に集中、没頭し、モチベーションが最大化されるさまを「フロー状態」→「ゾーンに入る」と称することがあるが、退屈気味の人には厳しい球を打ち込む、はたまた困惑気味の人には易しい球を返すなど、感情や能力に合わせてチャレンジ度合を調整することで、第6世代のフォルフェウスはモチベーションの向上を図るインタラクションを実現することを狙いとしていた。

スクウェア・エニックスはゲームプレイヤーの感情などを推定し、個々に適したコンテンツを提供することを目指すAI技術(メタAI)に関する技術と知見を豊富に備えている。ゲームAIはメタAI、キャラクターAI、ナビゲーションAIの3つのAIが連携しているが、その中でも状況を監視し、ユーザーの心理を推測し、キーとなる役割を適切なタイミングでエージェントに指示するメタAIを活用することで、どのようなラリー計画が人のモチベーション向上に寄与するかを検証してきた。直近では、プレイヤーのスキルや推定した感情に基づいて返球内容を導き出しているが、今後はその人の性格や欲求も考慮に入れていきたいとのことだ。

また、超初心者から上級者まで対応できる柔軟なロボティクス技術、人の能力を向上させる知覚/身体拡張技術進歩を並行しながら、プロの球も返せる、そしてプロのような球も打てるロボットを目指す予定。

機械が人を追い越し、人の役割を奪うだろうとAIの台頭が脅威として語られる場面はこれまで幾度となくあったが、フォルフェウスが目指すのは、機械と人が共に高めあい、成長しつづける世の中だ。代替とも共存とも、また一味違う「融和」の発展を追い続けよう。

(text: Yuka Shingai)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー