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パラリンピアンたちがもたらした10個のメダル~日本勢の活躍を振り返る

田崎 美穂子

2018年3月9日~18日の10日間、障がい者スポーツの国際総合大会である第12回冬季パラリンピックピョンチャン大会が開催された。
6競技80種目で争われた今大会には、日本勢は車いすカーリングを除く5競技に38選手がエントリー。雪をも溶かす熱い戦いの中で、選手らが魅せた活躍を紹介していこう。


今大会でもっとも目覚ましい活躍を見せたのは、入場行進で旗手を務めたアルペンスキー代表の村岡桃佳選手(早大)。滑降座位で銀メダルを獲得、日本に今大会初のメダルをもたらした。続くスーパー大回転座位では銅メダル、さらにアルペンスキーのスーパー大回転と回転で競うスーパー複合座位で2個目となる銅メダルを、そして大回転女子座位では今大会初の金メダル、最終日の座位回転では銀メダルと、自身で5個ものメダル獲得という快挙を成し遂げた。

今大会で6大会連続出場を果たしているクロスカントリースキー競技のレジェンド新田佳浩選手(日立ソリューションズ)は、ノルディックスキーの距離男子スプリント・クラシカル立位(1.5キロ)で銀メダル。1位との差は約0.8秒という悔しさを跳ね返すかのように、距離10キロクラシカル立位では見事金メダルを獲得した。

また、ノルディックスキー距離立位の川除大輝選手(日立ソリューションズ)は、日本選手団最年少の17歳で出場。パラリンピック初レースは、入賞の一歩手前の9位という結果だった。新田選手、川除選手に加え、出来島桃子選手(新発田市役所)、阿部友里香選手(日立ソリューションズ)がチームを組んだ混合リレーでは、日本過去最高の4位と大健闘した。

そして注目の新競技、スノーボード。成田緑夢選手(近畿医療専門学校)は予選第1位で決勝に進出、スノーボードクロスでは銅メダルを獲得した。スノーボードで日本選手がメダルを獲るのは初めてのこと。迎えたバンクドスラロームでは金メダル、堂々の初代王者に輝き、自身で2個目のメダル獲得となった。

メダル獲得に沸く中で、悔しい結果に終わった種目も多くある。パラアイスホッケーは、5戦全敗最下位、次大会に向けて大きな課題が残った。また、HERO-Xでも注目していたアルペンの狩野亮選手(マルハン)は、滑降座位でスタート直後にバランスを崩し転倒、惜しくも途中棄権。男子スーパー大回転では5位となり、連覇を逃す結果となった。同じく注目選手の夏目堅司選手(RDS)は、大回転座位で13位、スーパー大回転座位では途中棄権など、これも惜しい結果となった。鈴木猛史選手(KYB)は、スーパー複合と大回転で4位と健闘、しかし前回ソチ大会で金メダルを獲得した回転座位では、1回目の滑走で転倒、途中棄権となり、その悔しさを滲ませた。

また、これまでアルペンスキー界を牽引してきた、今季で5大会目となる森井大輝選手(トヨタ自動車)は、滑降座位で2位につけ、4大会連続の銀メダルを獲得。世界屈指のターン技術を持つ森井選手だが、スーパー大回転では8位、スーパー複合座位では途中棄権という悔しい結果となってしまった。森井選手悲願の金メダルは獲得ならず、次回大会に期待したい。

全種目全選手の結果は紹介できなかったが、今大会で日本勢が獲得したメダル総数は10個。選手個人が持つ技術と、選手を支える用具やコーチ陣が、今大会も大きな感動を生み出した。

(text: 田崎 美穂子)

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視力を失ったスケートボーダーが再び宙を舞う!「PROJECT BISHOP」に迫る

Yuka Shingai

Not Impossible Labsは「HELP ONE,HELP MANY」の哲学のもと、ありとあらゆる社会問題に対してテクノロジーでのソリューションを提供するプロフェッショナルチームだ。2018年の夏に始動した「PROJECT BISHOP」では、視力を失ったスケートボーダーの復帰を実現した。「永遠に不可能なものなんてない」と謳う彼らのプロジェクトに迫ってみよう。

スケートボーダーのJustin Bishopは25歳の時に網膜色素変性を患い、左目の視力を完全に失い、右目は網膜剥離となった。目の端で物の形と影のみを感じることはできるが、視力を失ったことで悲しみに暮れたJustinは、しばらくスケートボードから遠ざかることになった。

そんな彼を再びスケートボードの世界へ連れ戻したのはNot Impossible Labsのチームメンバーで、自身もスケートボーダーであるJovahn Bergeronだった。Not Impossible Labsの創設者、Mick Ebeling氏が不条理だと感じるものや、不条理な想いをしている人に向けて立ち上げた「Abusurdity Project」のアイデアを集める中で、Jovahnは「Justinが、かつてのようにスケートボード界にカムバックできるような解決策を生み出したい」と発案し、Justinにプロジェクトへの参画を持ちかけた。

視力を失ったJustinがスケートボードをするためには、遠近感を伝え、自分のいる環境を理解する必要がある。そこでプロジェクトが作り上げたのは、ビープ音とともに方向指示を行うビームを出す小さなスピーカーだ。Mickいわく「Justinのスケートボードはすごくスピード感があってあっという間に移動してしまうから、高速かつ正確にナビゲートできる必要があった」と開発の苦労について語っている。

またJustinも「音がどのように聞こえるかで自分がスケートしている様子が頭の中に思い浮かぶようになったよ。サウンドスケープ(音の風景)って感じだね。ただ、Not Impossibleは僕が再び宙を舞うテクノロジーを作り出したわけだから、それはすごく危険なことだと思うけど」とスケートボードの世界に戻った喜びを感じているようだ。当該のメンバーは「このプロジェクトの成果はテクノロジーではなくて、Justin本人だと思う。彼がエキサイティングなことをどんどん導いてくれたからね」と語る。

「HELP ONE,HELP MANY」が示すように、世界を大きく動かすのは、たったひとりの変化なのかもしれない。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/1NFXAAvVpUE

(text: Yuka Shingai)

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