対談 CONVERSATION

【HERO X × JETRO】トップランナーは中国発のスタートアップなのか!世界が注目する無人販売EV

HERO X 編集部

「New Normal (ニューノーマル) 社会と共に歩む」をテーマに昨年開催された日本最大級のテックイベント『CEATEC 2020 ONLINE』にて、17カ国・地域から45社の有力スタートアップが集結した、JETRO設置の特設エリア「JETRO Global Connection」。参加した注目の海外スタートアップ企業を本誌編集長・杉原行里が取材。無人配送にも使える小型自動運転車両を提供する中国の新石器(Neolix)。同社の小型自動運転車両は、受注台数を着々と伸ばしており、ケンタッキーフライドチキン、マクドナルド、ピザハット、コカ・コーラ等のリテールや飲食企業も顧客に含まれている。中国から日本へ、国境を超えたイノベーションの創出をめざす、同社の海外事業総代表にお話をうかがった。

マルチに使える自動運転車両

杉原:御社が手掛ける事業内容について教えて下さい。

呉:自動運転車両の研究・開発と生産を行っています。自動配送のみならず、小売、セキュリティパトロールなど、さまざまな業種で幅広いサービスの展開を考えたカスタマイズ可能なモジュール方式のスマート車体、電池交換により7日間24時間連続稼働を実現するノンストップサービス、車体の製造とシステムの構築を自社で手掛けており、現在の工場(の設計上)生産能力は1年間に1万台ほどです。

杉原:ホームページを拝見し、「時代の潮流に乗っているな」と。医療サービスの提供や食品の販売など、あらゆるソリューションを柔軟に搭載でき、搭載された内容に合わせてEVが自由自在に走り回る。その姿に感激しました。

呉:ありがとうございます。最新モデルの『X3』はモジュール設計になっていて、用途によってさまざまなスマートハードウェアを組み合わせ、コンテナ部分をカスタマイズできます。たとえば食品の小売では、食品ごとに最適な温度管理がされた貨物ボックスのモジュールを用いることで、天候に左右されず、温かい食事や冷たい飲み物などを最適な温度管理のもとで運搬し、ユーザーに提供することが可能です。今後もこうしたモジュールを追加していく予定です。また、車両に搭載されたタッチパネルやスマートフォン上での簡単な操作で、購入や決済もできるといった、エンドユーザーにとって高いインタラクティブ性も実現しています。

杉原:御社の取り組みは、次世代の流通サービス「ラストワンマイル」の課題解決という面において、非常に価値の高い製品だと感じました。

呉:そうですね。物流や配送に限らず、リテール、パトロール、教育等公的サービスなど、さまざまな用途を構想できるのが弊社のサービスの強みです。

杉原:現在日本においても、このような無人走行はさまざまな分野の課題解決につながるものとして、熱い注目を浴びています。スペック面ではどのような特長があるのでしょうか。

呉:国の規制や利用条件などによってかわりますが、スピードがある程度出ることも特長だと思います。平均運行時速は5-11km、最高時速は時速50kmに達することが可能な設計です。

杉原:先程の話だと、自社でバッテリーも開発しているのですね。

呉: そうです。自社でバッテリー工場を有しており、一回の充電で満載状態の無人車を100km走行させることが可能です。

法的壁を乗り越え実証へ

杉原:ハード面・ソフト面に加え、開発・製造・サービス展開まで自社で手掛けてるところに、御社の製品の独自性やプライオリティ(優位性)があるように思います。このサービスの開始当時は、どのような分野から取り組んでいったのでしょうか。

呉:この会社を立ち上げたのが2012年、自動運転車両に着手したのは2015年頃です。アイデア段階から車両の研究・開発を行い、2018年には現在の小型自動運転車両のモデル車両が完成し、ローンチしました。

杉原:なるほど。中国で無人運転を行うのは法律や規制の面で障壁はありましたか。

呉: 公道の走行許可取得には相当な時間を要しました。政府の関係部門は事故の危険を防ぐために安全性の調査を実施するとともに、半年ほどの時間をかけて地域住民へのメリットの有無を仔細に検討します。許可証の取得条件はエリアによっても異なりますが、2021年5月25日には北京のハイレベル自動運転模範地区の無人デリバリー車管理政策で、当社は初めて無人デリバリーのトップ企業として「NX0001」無人デリバリー車両ナンバー(図参照)の交付を受け、中国初の合法的な公道走行を実現しました。また、お客様に一番近い無人デリバリーコンビニエンスストアとして、中国初のスマートネットワーク自動車政策先行実施エリアで無人車サービスネットワークを構築し、今では(エリア内の)お客様に広くご利用いただいています。

杉原:とくに御社のテクノロジーに高い関心を寄せてくるのはどのような分野の方々なのでしょうか。

呉:サービスをスタートした当初から、いろいろと用途が広がってきています。中国では現在フードカートの需要が最も高く人気があり、今後も力を入れる予定です。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって非接触型のサービスが一気に高まり、徳邦物流(デッポンロジスティクス)、中国郵政(チャイナポスト)、スイスポストなどから受注をいただいています。

医療サービスや街の安全も無人EVにお任せ!?
パトロール車としても役立つ

杉原:コロナ禍で小売業のみならず、医療サービスの分野でも自動運転車両のニーズが高まっています。御社でもそうしたサービスを展開しているのでしょうか。

呉:はい。医療分野に関してはタイのバンコクにある病院とパートナーシップを結んでいます。そのほかにも用途は多岐にわたり、中国では無人セキュリティパトロールの実証が始まっており、遠隔で授業ができるスマートキャンパスの実験など、教育サービスへの活用もスタートしています。

シンガポールの病院と行ったコロナの感染予防キャンペーン

オーストラリア企業YDriveとのオーストラリアでの自動運転教育車分野の活用

杉原:日本では超高齢化社会をはじめ、さまざまな問題を抱えていますが、それらに対しても御社の技術は大きく貢献してくれそうです。今後日本ではどのようなサービスを展開していこうとお考えでしょうか。

呉:日本での展開に関しては新しい用途を考えていて、すでに日本企業とのパートナーシップを締結しています。

杉原:すでに御社の製品に対する注目は高いですが、今後の展望や課題はありますか。

呉: 当初は大手企業の用途に合わせて、受注生産のような形で対応してきましたが、それには大規模なコストがかかり、導入可能なのは大企業に限られています。今後私たちのビジネスをスタンダートなものにしていくために、いま挑戦しているのが、製造費をコストダウンし、大規模な商用化を実現することです。製造費を安く抑えることができれば、より広い分野で、より大規模にビジネス展開が可能になります。製造コストと大規模商用化においては、現在のところ、我々は業界のトップリーダーの地位を占めています。

杉原:これだけマルチに使えるとなると、今後御社の製品はますますシェアを大きく広げていくでしょうね。それによって大きなパラダイム・シフトが起きると予想されますが、今後5年で未来はどんなふうに変貌していくと思いますか?

呉:そうですね。実は今、街の管理やセキュリティのような公的サービスのほか、広告サービスも考えています。多岐にわたるパートナーと組んでいくことで様々なニーズを網羅し、自分たちの技術でスマートシティを実現したいと思っています。また、情報をプラットフォーム化したり、データ化したりして、より細かなニーズや潜在的なニーズにも対応できるようにし、新しいライフスタイルを提供したいと願っています。

杉原:スマートシティの実現が目に浮かぶようで、とてもわくわくするお話でした。ありがとうございました。

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(text: HERO X 編集部)

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対談 CONVERSATION

テレビゲームの枠に収まらない、本当のeスポーツとは!?犬飼博士がつくりたい未来【後編】

前編ではeスポーツが生まれた背景や現状を語り合った。そして今後は、eスポーツは一般的なスポーツのなかに溶けていくだろうと予測。後編では具体的な未来予想図を展開。犬飼氏が構想する『IT体育館』の可能性について話が展開していく。

人の動きを解析すると未来が見える

杉原:僕は人の動きを解析することが好きなので、リアルイム身体情報を測定してクラウドにストックしていくという犬飼さんの『IT体育館』構想に共感するんです。RDSは車いすレーサーの開発をしているのですが、「人間が45分くらい座り続けるとどんな動きをするのか」、「何回減圧するのか」といったことから、その人の身長や体重、年齢が予測できて面白いんです。

犬飼:そういう研究データはみんな欲しくて仕方がないんですよ。たとえば、『アナグラのうた –消えた博士と残された装置–』という科学展示が、日本科学未来館にあるんですけど。それは、「空間でどういった情報を取って、どう利用すれば、どう幸せになるか」という空間情報科学に関する展示なんです。面白いのは、僕たちがそれを作っている様子を、京大の先生がさらに研究している。つまり、入れ子構造になっているんです。京大の先生たちは、僕らの会議や制作風景をすべてビデオに録画した後、「犬飼が立ち上がった」「◯◯と喋った」とかを全部書き出して、「犬飼が立ち上がると議論はこう変わる」とか「何分くらいでこう変わる」とかを解析して論文にしているんです。そういうことを自動化させたい。

杉原:そんな研究があるんですね。

人間のためではなくて、
テクノロジーが成長するためにやっている

犬飼:最終的には意思決定に使いたいんですよ。AIがディープラーニングした過去のデータと、リアルタイムで起きていることを対峙させれば未来予想ができる。そうなると、未来の選択肢はAmazonのおすすめ商品みたいに表示される。つまり、「今日の会議は何をする?」という時点で、すでに「結論」が出ている。未来の会議は、その結論に対しての意思決定の場になっていく。

杉原:会議室に入ってきたときの雰囲気やサーモグラフィーだったりを踏まえてですよね。

犬飼:今日のような対談も、最初から結論の記事ができあがっている状態。それが対談のなかでリアルタイムに変化していく。

杉原:そのためのデザインや構造はすでにあって、あとはどう数値化、AI化して使えるコンテンツにするかということですか?

犬飼:いまやっているのは入力部分です。発見のための「眼」を作っている感じ。それは人間のためではなくて、テクノロジーが成長するためにやっているんです。そういうと反感を買うんだけど、僕は「人のために働く」とか「ホスピタリティ」とかいうのがすんなり理解できない人間だから。

杉原:その感覚は僕も少しわかるところがあります。RDSで車いすを作ったり、『HERO-X』のようなメディアをやっていると、「いろんな人の助けをしていて偉いですね」とか言われることがあります。でも、僕はただ「無いものを作りたい」だけなんですよね。時速50kmのスポーツカーみたいな車いすがあったら面白いとしか思っていない。

犬飼:そこには、時速50kmの車いすがあるだけですよね、ただ作ってみたいだけ。

杉原:頭の中に描いている未来をやらないと気持ち悪い。やらないなら、キレイさっぱり消し去りたい。

犬飼:そう、「思いついたから」って結構重要で。思いついたから、作らなければいけないから、作るだけ。「誰のために作っているのですか?」と聞かれたら考えるけど。

杉原:コンクルージョンが大事だと思っていて、イントロは誰かが書いてくれればいいかなと思っています。

犬飼:とはいえ、こういう場所に呼ばれたからには、「自分の言葉で話せ」「批評は自分でしろ」とか、そこも含めてやらないといけない。

東京オリンピックの開催が
決まってから空気は変わった

杉原:eスポーツのプラットフォーム化は、今後どんどん大きくなりますか?

犬飼:はい。先ほどもお話したように、まずは『IT体育館』を作りたいんです。過去のデータと、リアルタイムを対峙させて未来予想をすると言いましたけど、そこにみんなが気づき始めたときに、そういうソリューションを提供したいと考えています。

杉原:多くの人が共鳴して、一緒にやっていくイメージですか?

犬飼:2010年くらいから、苦労して自力でやっていますけど、いまだに始まってない。「いつ儲かるんですか?」と聞かれるから事業計画を書くんだけど、僕がヘタクソなのかそこから動かない。でも、2013年、東京がオリンピックの開催地に決まって、そこから急に空気は変わりましたね。それまでeスポーツなんて誰も興味を持っていなかったですから。日本のターニングポイントだと思いますよ。結局、オリンピックでスポーツへの関心が生まれて、次のスポーツを探したときに、具体的に使えるのがeスポーツだけだったということなんでしょうけど。

杉原:従来型のスポーツとのギャップが面白かったんですかね。

犬飼:2020年までに何かしら投資するに値するものが、そこしかなかったんですよ。「eスポーツ=テレビゲーム」としてくくれば、ゲームプレイヤーの10%が真剣に取り組めば幾らになると試算できる。「超人スポーツ」みたいなものに投資が集まらないのは、その市場がそもそも文化になっていないから。酔狂なエンジェル投資しかあり得ない。

IT体育館が普通になると、
次にくるキーワードは「作る」

杉原:犬飼さんたちは、新たな市場を作ろうとしているんですね。

犬飼:いまはニーズを先に作ればいいと思っているんです。スマホが当たり前の時代になって、次はデータを取ることが当たり前になって、情報が取れる体育館が当たり前になり、取れない体育館に違和感を覚えるようになったら、みんながIT体育館を欲しがるようになる。実際、山口の情報芸術センターでは2015年からやり始めていて、子どもたちは学校にある旧来の体育館に違和感を感じ始めているんです。IT体育館が普通になると、次にくるキーワードは「作る」になんですよ。

杉原:どういうことですか?

犬飼:スポーツ庁のスポーツ基本計画では、「する・見る・支える」をキーワードにしている。するスポーツ、見るスポーツ、支えるスポーツという三角形。その面積を大きくすることで、人々が健康になって、医療費も下がって、健康寿命がながくなるという説明。それを一緒にやっているのが超人スポーツをやっている人たち。

僕らは、そこに「作る」という縦軸を作って立体的に増やしていきましょうという提案をしているんです。やる種目が増えればスポーツ人口が増えるという考え方です。というのも、eスポーツがスポーツに与えた影響のひとつに、スポーツデベロッパーが増えたことが挙げられるんです。テレビゲームでいえば、ゲームクリエーターが増えたのと同じ。問題点としては、スポーツクリエーターには給料や賞がなく、社会的評価もないということ。さらに、新しいスポーツを作ったあとに、それは誰のものかっていうことになる。スポーツって誰のものでもなく、パテントもとれない。

杉原:確かにそうですね。

犬飼:そこで僕が提案しているのは「デベロップレイヤー」、デベロップとプレイをかけた造語です。新しいスポーツを考案して、プレイしながらルールを決めている途中の段階では、「デベロップ」と「プレイ」の境界線がないわけです。プロトタイピングに近い。ITの世界のように、プロトタイピングをアジャイルに作っていき、ちょうどいいところが見つかったら人にプレゼンする。作りながら遊ぶ体験ですよね。とはいえ、これもまだどうマネタイズするのがいいのか、回答は出てないんです。僕たちはまだアイデアがないので、それが「作る」の次にくるキーワード。

杉原:そう考えると、「スポーツ」というワードを使ったほうがいいのか、面白いものが生まれるならスポーツと呼ばなくてもいいのでは? ということになりますよね。

犬飼:そうなんですよね。「スポーツ」や「遊び」という言葉が使いにくくなってしまったので、新たに自分で「運楽」という言葉を作っちゃったんです。運楽の中に、スポーツや音楽があるような感じです。

杉原:なるほど。音楽のなかに、さらにジャズやヒップホップがあって、演歌もあってみたいなものですよね。

犬飼:そうそう、プレイヤーも観客も楽しんでいるに過ぎないというのは、音楽ではすでに起こっている。

杉原:もしかしたらeスポーツはジャズに近いのかもしれない。

犬飼:即興的に作っていくという意味ではジャズに近いかもしれないですね。僕らのやっている『運動会ハッカソン』※1とか、『未来の運動会』※2とかね。
——————
※1 伝統的な運動会の道具、紙、棒、ボールからドローン、コンピューターなど、使う道具の制限をなくした状態で、みんなで新しい運動会の「種目」や「出し物」を作る試み。
※2 『運動会ハッカソン』で生まれた、新しい競技で楽しむ運動会のこと。
——————

杉原:それをテレビのショーとしてやるのか、YouTubeとしてやるのか、ジャズバーでやるのか。

犬飼:そうそう、IT体育館をそういう場所にしたいんです。そういう場所を用意しておけば、コンペティティブな環境が生まれて、そのうちにすごい奴が現れますから。

杉原:xでも、eスポーツというものをテレビゲームの大会では終わらせず、ここまで広げて考えている方は少数派ですかね。

犬飼:そんなに難しくないし、便利で普遍的な捉え方だとおもうんですけどね。でも、eスポーツ=テレビゲーム大会のような認識になってしまったことには、僕も反省があるんです。2005年頃は、「eスポーツって何ですか?」と聞かれたら、みんながわかりやすいように「たとえばテレビゲームをスポーツとしてとらえるようなことです」と答えていたので。

杉原:今後、犬飼さんの考えるeスポーツが普及していくと、「ゲームばかりやっていないで、少しは体を動かしなさい!」という定番文句が家庭から消えていきそうですね(笑)

犬飼:『ポケモンGO』をやって、1日5km歩いている子どもを否定できないですよ。「お母さん、僕は今日ポケモンがんばったよ。」って言ったら、「ゲームばっかりしてないで外で遊びなさい」と、なぜか怒られてしまう矛盾と戦ってきた人生なんです。僕はお母さんに苦言を言われる理由がわからなかった。そこを説明したくて、苦肉の策で生まれたのがeスポーツでもあるんです。

前編はこちら

犬飼博士
1970年、愛知県一宮市生まれ。運楽家/遊物体アソビウム/ゲーム監督。映画監督山本政志に師事後、ゲーム業界にて『TOY FIGHTER(アーケードゲーム)』、『UFC(ドリームキャスト)』、『WWF RAW(Xbox)』といった作品を制作。2002年より、スポーツとゲームを融合する「eスポーツ」の事業を開始。『World Cyber Games』、『Cyberathlete Professional League』、『Electronic Sports World Cup』といった国際eスポーツ大会の日本予選をオーガナイズ。2007年度文化庁メディア芸術祭にて、ゲームソフト『Mr.SPLASH!』が審査員会推薦作品に選出。2012年には、日本科学未来館で常設されている『アナグラのうた 消えた博士と残された装置』に参加。2013年には、YCAM公募企画『LIFE by MEDIA』国際コンペティションや、文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門優秀賞などを受賞した『スポーツタイムマシーン』を発表。

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