医療 MEDICAL

増える関節症。3倍に増えた手術を助けるロボット「NAVIO」に注目

HERO X 編集部

高齢化の影響もあり、近年、患者数が増加している膝などの関節症。関節症の総患者数は125万人に上ると言われている。当然、人工関節手術の件数も増加しているのだが、医師の数は限られている。そんななか、一貫性の高い正確な手術を達成することを目指した術者を支援するロボットの導入が日本でも始まっている。

関節系の置換術 5年間で約3倍に

動画で骨を削る仕組みなどが紹介されているのは、近畿大学医学部整形外科学教室に入った人工膝関節置換術の手術支援ロボットと同じ『NAVIO』。今年に入りこのロボットを使った手術が行われ始めているという。

日本人工関節学会が公表している2017年度の報告書によれば、関節の動きを補うために人工関節を入れる手術の件数は、人工膝関節置換術で2万5892件、人工股関節置換術の初回と再手術を合わせたものが2万2935件。これら2つの手術だけで約5万件となっており、5年前から約3倍に膨れ上がっていることが分かった。増える患者に対応するべく、導入が進んできたのが手術を正確に行なうための補助となる支援ロボット。すでに海外では導入されていた人工膝関節手術に特化したロボット支援システムを近畿大学医学部整形外科学教室が導入をはじめたのだ。

この支援ロボットを開発したのは1856年創業のイギリスのヘルスケア製品メーカー、スミス・アンド・ネフュー株式会社。同社は人体を構成するさまざまな組織、特に皮膚、骨、関節、軟部組織の治療と保護に焦点を絞り、最新技術を駆使して革新的な製品の開発を続けてきた。その成果として発表されたのが人工関節手術のロボット支援システム。人工関節置換術を行なう場合、金属を埋め込む部分の骨の一部を切除しなければならないのだが、ここにはどうしても医師の腕による出来上がりの違いが生まれていた。しかし、支援ロボットを使えば切除する部分をガイドしてくれるため、一貫性の高い手術が可能だという。また、手術時間の短縮も期待できる。多くの患者が手術を待つ状態の今、執刀医によるバラつきのない手術が受けられるのはありがたい。このロボット支援技術の導入が日本でも進んでいけば、痛みを抱えたまま手術の順番を待ち、長期間不自由な日常を送る日々は減りそうだ。

[TOP動画引用元:スミス・アンド・ネフュー

(text: HERO X 編集部)

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医療 MEDICAL

米粒にすら文字が書ける精密さ。医療用ロボット「ダビンチ」とは?

HERO X 編集部

これは、映画ではなく、近未来の話でもない。すでに世界中の先端医療の現場に配置がはじまっている手術支援ロボの映像だ。その名も「ダビンチ」。日本ロボット外科学会が紹介したデモンストレーション動画では、アームの先端で米粒に文字を書く映像や、小さなオリガミを折る映像も公開されている。患者の負担を最小限に抑えた手術ができるという手術支援ロボ、日本でも最新型の薬事許可がこの春、承認された。

2018年春、手術支援ロボ開発のリーティングカンパニー、アメリカのインテュイティブサージカル社は、最新型モデル「ダビンチ X サージカルシステム」の薬事許可を取得、5月から日本国内での販売を開始した。「ダビンチ」は1990年代にアメリカで開発され、89年代より臨床用機器として米国で販売がはじまった手術支援ロボ。人間の手よりもはるかに小さいアームは、内視鏡とともに使うことで、患者に負担の少ない低侵襲医療を行なうことができるというもの。内視鏡カメラから送られる映像は3Dモニターで映し出されるため、執刀する医師は術野が目の前に広がるような状態で「ダビンチ」を操ることができるのだという。

Da Vinci X[引用元: https://www.intuitive.com/

ダビンチサージカルシステムはすでに複数のモデルが販売されている。日本では2009年に厚生労働省から許可を得て実用化が進み、徐々に導入する病院が増えだしている。今回、販売になったのは「ダビンチ」の第4世代のモデル。「ダビンチX」は前立腺悪性腫瘍手術、腎部分切除手術、子宮悪性腫瘍手術をはじめとする一定の術野範囲で行われる手術に対応する。動画で紹介されているのは上位機種の「ダビンチ Xi」。サージョンコンソールとビジョンカート、共通 の鉗子類が使えるため、「ダビンチX」導入後に、上位機種の「ダビンチXi」にアップグレードすることも可能という。これらのロボはあくまでも手術の支援を行なうロボット。医師に代わり手術をするものとは異なる。

日本販売にあたり、インテュイティブサージカル合同会社社長の滝沢一浩氏は、「日本における外科手術は、治療の成績と患者さまのQOL向上のために絶え間なく進歩を続けており、そのためにロボット支援手術を選択される先生や病院が増えてきています。新たに手術支援ロボットの導入を検討している病院もあれば、より多くの症例を、より多岐にわたる症例で検討されている病院もあります。ダビンチ Xは、病院や地域医療におけるさまざまなニーズに対応する選択肢のひとつとして、先生方や患者さまに貢献できると確信しています」と述べている。ロボット技術と医師の力の掛け合わせは医療の未来を明るくしてくれそうだ。

[参考:日本ロボット外科学会
[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=_q-YQwFjIj0

(text: HERO X 編集部)

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