対談 CONVERSATION

MEGABOTS社の巨大ロボットが、あなたの街にもやってくるかも!?

川瀬拓郎

先日お台場特設会場にて行われた CHIMERA GAMES Vo.7。その前夜祭イベントとして、米カリフォルニア州の MEGABOTS (メガボッツ)社の巨大ロボット、アイアン・グローリーがお披露目された。今回は日本にメガボッツをもたらした張本人、三笠製作所代表の石田繁樹氏と本誌編集長であり RDS代表の杉原行里との対談をお届けする。

おふたりの出会いは、どのようなものだったのでしょう?

石田「初めて出会ったのはドイツのシュトゥットガルトでした。私の会社では制御盤を取り扱っていて、ドイツに支社があるのです。お互い製造業だから、話が合うだろうと、共通の知人を通じて会食したことがきっかけでしたね」

杉原「当時まだ僕は30歳になる前で、石田さんは先輩ですが、共通の趣味であるサッカーの話で盛り上がり、それ以来長い付き合いになります。いつかロボットの分野で何か一緒にやりたいですね、という話をしていましたが、ようやく今回それが現実のものとなりました。日本人にとってロボットは、アニメで慣れ親しんできた身近な存在。実際に操縦できる巨大ロボットを、多くの人に間近で見て、触れてもらえる機会を作ってみようと」

石田「パズルの足りないピースが埋まっていったというか、点と点が線になって、メガボッツの事業が共同出資という形で実現したのです。今回は1年間という期限付きのプロジェクトなのですが、単にロボットを持ってきてどうだ!というだけではなく、ロボットに触れた人たちがどんな反応をするのか、実地マーケティングの意味合いもあります」

石田繁樹
1972年、愛知県生まれ。名古屋の本社を含めた国内の支社と海外支社を持つ、制御盤の会社である三笠製作所の代表取締役。堀江貴文氏と共同開発した自動配達ロボット Hakobot や、ドバイ警察で導入されている移動式交番の開発と納入、eスポーツ選手の支援や普及のための事業団チーム KYANOS(キュアノス)の活動でも知られる。

メガボッツ社が行ったロボットファイト(DUEL=デュエルと呼ばれる)の動画が、SNS を通じて多くのロボットファンの間で話題になっていましたね。

杉原「もちろん、デュエルはロボットを使ったエンターテイメントのひとつとしてアリだと思います。でも、戦うロボットにはどうしても軍事利用というイメージがつきまとってしまう。だからこそ、そうしたネガティブな面を一切出さずに、新しい切り口を見出したいのです。例えば、ボクシングのように、ルールがあるスポーツに置き換えてみたら面白いかもしれないと」

石田「ロボットが殴り合う姿を見るのは、確かにエキサイティングですよね。その反面、ボロボロになっていく姿を見るのは、生みの親である開発者としては悲しいですけどね(笑)」

ブースからキャタピラーで移動して、その動作を披露したアイアン・グローリー。往年のアニメファンの男性からは、サブングルやボトムズの名が挙がった。予想以上に、多くの女性がこの巨大ロボットに興味を持って、近づいていたのも印象的だった。

日本初披露の舞台が CHIMERA GAMES だったのは、そういう理由があったのですね。

石田「テクノロジー系の展示会にこのロボットを持ってきたとしても、反応は薄いと思うのです。CHIMERA GAMES という、アーバンスポーツの祭典にロボットを持ってきたことに意味があるのです。もちろん、日本でも巨大ロボットは、これまでにいくつか作られています。でも、ロボットを作ること自体がゴールになってしまっていて、その先がない。だからこそ、自分たちがロボットを使ってこういうことができるのではという仮説を立て、それが正しかったかどうかを実証したいのです」

杉原「今後はロボット・パイロットという、子どもたちが憧れる新しい職業が生まれるでしょうね。メガボッツをきっかけにして、アジア中にいるロボット好きとつながって、新しい取り組みが始められるかもしれません。現時点で僕らが思い描いているひとつの試みは、ロボットによるスポーツ競技や遠隔操作による eスポーツですが、もちろん違ったアイデアがあってもいい。むしろ自分たちよりも若い世代や、これからの大人になる子ども達がロボットについて考えるきっかけになればいいなと思います」

例えば、ロボットに仕事を奪われるのではないか……。そんな不安を持つ方も少なくないのではないでしょうか?

石田「だからこそ、ロボットが共存する未来が楽しいものだということを、我々が提示しなければならない。ロボットがあることで、新しいレクリエーションや新しいマーケットが生まれるはずだし、そこで得たものからさらなるイノベーションが生まれる可能性だってあります」

杉原「今回アイアン・グローリーを日本に持ってきた目的は大きく分けて2つあります。ひとつ目が、先ほどから話しているきっかけ作りであり、人々の反応を見てみたかったこと。ふたつ目は、エンジニアリングの面から見て、人のために役立つロボットとして何ができるのかを探ることです」

記者発表会時に乾杯の音頭を取る、MEGABOTS社代表のマット氏と杉原。会場には多くのマスコミや関係者が訪れ、注目度の高さをうかがわせた。この頃、短時間ではあるがパネルディスカッションも行われ、各人それぞれのロボットがある未来について話が及んだ。

石田「皆が嫌がるような仕事を、ロボットを使ったエンターテイメントにすることができるかもしれません。例えば、炎天下の草刈りは誰にとっても辛いものですが、遠隔操作したロボットで誰が一番早くきれいに草刈りできるか、というゲームにする。給与ではなく賞金を付ければ、エントリーする人がたくさん出てくるはず。そうなれば、安い人件費を求めて海外実習生を呼び寄せるということも少なくなり、結果として社会問題の解決にロボットが寄与できるかもしれません」

杉原「確かに石田さんのおっしゃる通りですね。そんな風に、物事を違う角度から見ることで、楽しいものにもなるし、辛いものにもなる。だからこそ、ロボットは大きな可能性があるコンテンツなんです。このロボットはこういう使い方をするのですと限定するのではなく、何に使うのかわからない余白の部分にこそ、人をワクワクさせる新しい技術があるはず」

今回のお披露目と試乗体験を皮切りに、いくつかのイベントも控えているそう。このアイアン・グローリーと直に触れる機会が、あなたの住む街にやってくるかもしれない。スポーツかエンターテイメントか、まだはっきりとした用途が提示されたわけではないが、この2人が考えるロボットの未来は、子どもからお年寄りまでもワクワクさせるものに違いない。

会場に遊びに来ていたお子さんとアイアン・グローリーのワンショット。誰もがコックピットに乗れるということもあり、子どもからお年寄りまで多くの人が展示ブースに集まった。抽選によって選ばれたラッキーな人たちは、操縦まで体験することができ、終始盛り上がっていた。

(text: 川瀬拓郎)

(photo: 増元幸司)

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対談 CONVERSATION

大切なのは、東京2020のレガシー。「HERO X」プロデューサー佐藤勇介が登場 前編

宮本さおり

Webメディアから飛び出して、ラジオやリアルな展開を進める「HERO X」。この度、さまざまな広告やプロジェクトをプロデュースする株式会社マグネットの佐藤勇介氏が総合プロデューサーとして就任。就任したての佐藤氏と編集長、杉原行里がこれからの「HERO X」について語り合う。

「HERO X」 対談から生まれた繋がり

杉原そもそも、私たちが知り合ったのはHERO Xの対談(http://hero-x.jp/article/4252/)で本村さんとお話したのがきっかけで、会うことになったのですが。

佐藤本村さんから僕に、「すっごいおもしろい人がいるのでどうしても佐藤さんに会わせたいから、是非一度時間を作ってもらえませんか」って言われて。それは是非にということで紹介してもらうことになって。僕は、2年に渡って、パラスポーツ推進の企画に携わらせてもらっています。

「ロンドンパラリンピックをどうやって成功させたのか」ということを聞き出したいと思い、ロンドンパラ6年後、ロンドンがどのような状況になっているのかを研究するため、2018年に本村さんとロンドンでパラリンピックに貢献した17名程度の人々にインタビューをしました。そこでいろんな人の話を聞くなかで、「なんだ、オリンピック・パラリンピックって、お祭りとして盛り上げるだけじゃなくて、本当はそれ以降の方が世の中にとってめちゃくちゃ大事なんだ」っていうことを知ったんです。じゃあ果たして僕たちは、東京2020以降のその先を見据えて動けているのかな?って。その後に繋げようって誰か思ってるの?と、その時漠然と思ったわけです。杉原編集長を紹介してもらった時はちょうどそうしたことを考えている時期で、話をしてみるとやはり同じように、東京2020以降をどのように繋げていくかっていうところをすごく考えていて。ただね、最初に会ったときは…なんていうのかな、もうとにかく延々と質問攻めで、まさに尋問でしたね(笑)。

杉原え? 本当に? 全然覚えていませんけどね(笑)。

佐藤なんで僕、初対面の人にこんなに質問攻めにされてるんだろうって…(笑)。そんなことを思いながらその時は帰ったんですけど、それから2日後ぐらいに杉原さんから「食事行きましょう」ってお誘いがきました。

杉原僕はファーストインプレッションで「この人おもしろそうだな」と思うと探求心や興味がすごい出てきてしまうんです。

佐藤で、尋問になるわけですね(笑)。

杉原尋問じゃなくて質問です(笑)!

佐藤2日後、編集長に「本当にやる気あるの?」と聞かれたんです。本気で行動して変えていかないと何も変わらないじゃないですか。だから「佐藤さんは本気で行動して変える気があるの?」っていうことを再三確認されたんですよね。でもその時の僕って、漠然とやりたいなって思ってたけど、聞かれたことできちんと考えるようになりました。実際に行動して、果たして自分がその渦中になってちゃんとやれるんだろうか…っていうことを。さらに「子どもたちにいい未来を見せたくないですか? 子どもたちにお父さんカッコイイって思われたくないですか?」って編集長の言葉も印象的で。そう言われて僕は、パラスポーツを盛り上げていくということは結局、高齢化社会をはじめ日本が抱えている様々な課題を解決していける世の中を創っていくことに繋がっていくんじゃないか、日本の未来を考えたときに自分が子どもたちにどんな未来を残してあげることができるのかと本気で考え、行動していく時期に来ていると強く思いました。

杉原僕が佐藤さんにやるのかやらないのかを問うた理由のひとつには、オリンピック・パラリンピックの話になった時によく感じることがあって。みなさん熱い議論を重ね、もちろんそれは間違っていませんが、僕には、ただ議論をしたことで満足してしまっているような雰囲気に思えたこともよくあって。別の例で言えば、何のために勉強しているのかは分からないけどとりあえず宿題はやっておく、みたいなね。過程や目の前にあるものだけにフォーカスしていたら勿体ないですよね。僕もいろんな会議に出席させていただいて、熱い議論の後に点と点が繋がっていってはいるんだろうけど、もっと爆発的なモノがつくれるはずなのになって悶々とすることもあります。

お酒の席なんかでは、アルコールも入ってくるのでみんな結構いい話をするんですよ。でもなぜか翌日にはみんなトーンダウンしちゃう。自分が言った言葉に対して責任を持つのって結構大変じゃないですか。そういう思いもあって、佐藤さんに「今日の話、明日になって忘れちゃってたりしないよね?」っていう確認作業をしたまでです(笑)。

佐藤さんとの出会いがきっかけで二人が持っている点と点コミュニティなどの種がいま少しずつ蕾になろうとしていると思います。それと東京2020は通過点という見方をしている人って意外と少なかったりするんですよね。

懐かしむだけで終わらせてはいけない

佐藤もともと東京にオリンピック・パラリンピックを招致するという話になったとき、みんなの視点は、東京2020がどんなオリンピック・パラリンピックになるのかなというところに主眼があった。

それは僕もすごく大事なことだと思うし、まずそこが盛り上がらなければ全く意味がないから、とにかくそこを盛り上げたいっていう気持ちはめちゃくちゃ分かるんですよ。でもね、国を挙げて盛り上げていった結果が、「あの頃はよかったよね」っていうような、懐かしさとか、ただ過去のモノとして捨て去られていってしまうのはすごく危険なことだと思っていて。

やっぱり東京2020以降に、どんなふうにビジネスや生活環境がよくなって、それがどれだけ多くの人たちに幸せをもたらしていくのかっていうことが指針とならないと。オリンピックで観客が満席になったという話だけで終わらせちゃいけないなって思うんですよね。

後編へつづく

佐藤勇介
株式会社 マグネット取締役。1981年生まれ。北海道出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、制作プロダクションに入社。広告プランニング部門のマネージャーを経て株式会社マグネットを設立。大手菓子メーカーや日用品、化粧品など、多くの広告プランニングを手掛けてきた。WEB、MOVIE、GRAPHIC、EVENTなどを横断、コンテンツプロデューサーとしても活躍、上海、台湾など海外でのブランディングも行っている。

(text: 宮本さおり)

(photo: 増元幸司)

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