テクノロジー TECHNOLOGY

自ら起き上がり方を学ぶ 犬型四脚ロボット“ANYmal”の未来とは?

長谷川茂雄

数々のメディアで取り上げられ、その高い能力が世界で認知されている犬型四脚ロボット“ANYmal”。そもそもは、被災地での救助目的で、研究、開発されたこのプロダクトは、これまで、悪路を難なく移動するだけでなく、荷物を運搬したり(10kg程度まで可能)、音楽に合わせてダンスを創作したりと、ユニークなパフォーマンスを披露してきた。そしてこの程、スイスのチューリッヒ工科大学の Robotic Systems ラボが発表した論文によると、進化途上の ANYmal は、開発されたシミュレーション・システムにより、転んでも自分で起き上がることを学習するようになったという。その驚くべき能力とは?

ロボットが強化学習すれば
これまでにない進化が得られる

スイスのチューリッヒ工科大学の Robotic Systems ラボで開発されたANYmal は、防水・防塵性能に優れ、あらゆる地形に対応してスムーズに移動できる画期的な犬型四脚ロボットだ。

高度な自律性を持つことから、オペレーターが操作せずとも、人間が踏み入れることができない場所で作業をしたり、物資を運搬したりすることができる。それゆえ、被災地での救助作業を中心に活躍が期待されている。

2016年に設立された会社、ANYbotics で商品化されると、常にその機能をアップデートさせてきた。とはいえ、ロボットに新たな動作を教え込むには膨大なコストと時間、そして労力がいる。

その問題をある程度解決するには、適切なシミュレーション・システムを備えて、ロボット自らが強化学習することが求められる。Robotic Systems ラボは、それが可能だと実証する論文を発表した。

この論文のなかには、「シミュレーションデータを、以前よりも簡単に、ロボットへ変換できるニュートラル・ネットワークが開発できた」と書かれている。

このネットワークにより、同時に2000台の ANYmal の動作を、リアルタイムでシミュレーションすることができるという。それはつまり、どんなアルゴリズムがどんな結果をもたらすのかを、短時間で調べることが可能になったということだ。

さらなる進化を果たした ANYmal は、エネルギー効率がアップし、スピード・ウォーキング記録を25%上回り、加えて、一定の速度で動くという命令にも従うことができる。

しかも人間がどんなに転ばそうとして蹴ったとしても、常に直立状態を保つことができるばかりか、驚くべきことに、転倒させた場合は、どんな姿勢であっても自ら起き上がる能力を獲得したのだそうだ。

この従来の方法では得られなかった進化は、同様の複雑さを持つ他の四脚ロボットにはないものだ。これからも強化学習によって ANYmal がいったいどんな進化を遂げるのか? 期待せずにはいられない。

 

(text: 長谷川茂雄)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

RECOMMEND あなたへのおすすめ

テクノロジー TECHNOLOGY

視線入力技術でどんな姿勢もお手のもの!最強の車いす現る

Yuka Shingai

デザイン、スペック、機能の多様化、高度化とともに今日もまた進化し続けている車いす。その勢いはまだまだ止まりそうにないが、2019年9月に開催された「国際福祉機器展 H.C.R.2019」に登場した最新の車いすもまた、新たなイノベーションを起こすに違いない。

動画はこちらhttps://twitter.com/i/status/1177519985431760896

分身ロボット「OriHime」(オリヒメ)や重度肢体不自由患者のための意思伝達装置「OriHime Eye」(オリヒメアイ)などのプロダクトを開発するオリィ研究所は、孤独化の要因となる「移動」「対話」「役割」などの課題をテクノロジーで解決することをミッションとしている。

研究所を主宰するロボットコミュニケーターの吉藤健太郎氏(通称・吉藤オリィ)が国際福祉機器展でお披露目したのは、なんと、視線入力だけで自由自在に動き回れる車いすだ。

車いす工房「輪」と合同で開発した視線入力車いすには「OriHime Eye」の視線入力技術が使われており、視線を動かすことで立った状態から寝た状態まで体勢を自由に変えられることが特徴だ。

車いすユーザは寝返りなどの動作で行う「体圧分散」ができないために、床ずれが多発する。そのうえ介助者に気付いてもらえない場合もあるため、視線など自分の意思で姿勢を変えられることが重要だと感じていたと吉藤氏は語る。

具体的な発売時期や価格などはまだ明らかになっていないものの、その技術力の高さで国内外でも評価される吉藤氏が手がけていることから、今後の飛躍が期待される。

最強の車いすの到来と実用化が楽しみでならない。

(text: Yuka Shingai)

  • Facebookでシェアする
  • LINEで送る

PICK UP 注目記事

CATEGORY カテゴリー