医療 MEDICAL

通院不要の「Smile Direct Club」は歯列矯正のニュースタンダードになるか?

Yuka Shingai

見た目の美しさだけでなく、虫歯や歯周病のリスクが低減する、かみ合わせが良くなるなど、整った歯並びが健康面に及ぼす影響は大きい。しかしながら、定期的な通院が必要かつ費用が高額なことから、歯列矯正に踏み切るには覚悟してという声もよく耳にする。 米国で今年の9月にNasdaqに上場した「Smile Direct Club」は、これまでハードルが高かった歯列矯正のニュースタンダードとなるかもしれない。

「Smile Direct Club」の共同創設者であるAlex Fenkell氏とJordan Katzman氏の出会いは、13歳の時のサマーキャンプに遡る。キャンプの参加者ほぼ全員がびっしりと矯正のワイヤーを装着していたこと、またAlex氏自身も矯正器具を着けて青春時代を過ごしていたことを振り返り、2人は手頃でより良い歯列矯正の手法を作ろうと決意した。2014年の設立時より、投資グループCamelot Venture Groupの協力を得ながら、顧客が在宅で医師とやり取りできるビジネスモデルの実現に成功している。

「Smile Direct Club」の具体的なサービスは「イメージ作り」「マウスピースでの治療」「アフターケア」の3ステップで構成されている。実店舗でスキャンを行うか、もしくは自宅に送ってもらう専用キットで取った歯型のデータを元に、歯科医がレビューを行い、治療プランを策定して、3Dプリンターでマウスピースを作成する。

顧客はどのように笑顔が変化していくかプレビューで確認したのちに、日々、オーダーメイドのマウスピースを装着して理想の歯並びに向けて治療する。治療が完了した後は、就寝時に装着するリテーナーを別途購入して、矯正した歯並びが後戻りしないようキープすることもできるし、90日ごとに医師がオンライン上で状況をモニターしてもらうこともできる。

気になる価格は、月々85ドル×24ヶ月プラス初回のデポジット250ドルでトータル2290ドルか、1895ドル一括払いの2パターン。米国内での平均費用6000~8000ドルと比較するとかなり手頃で、定期的な通院が不要という手軽さから、すでに75万人以上の笑顔に貢献した実績を誇る。国外展開を含め、市場規模がどれくらい拡大するかも要注目だ。

[TOP動画引用元:https://vimeo.com/336377978

(text: Yuka Shingai)

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テクノロジーのベースはヨガや武道!脳卒中リハビリテーションデバイス「SynPhNe」

Yuka Shingai

脳卒中の患者が筋肉の機能回復のために病院で行う治療は長期間に渡ることが多く、社会復帰まで時間を要することについての課題解決が全世界中で求められている。インド人の医師、Subhasis Banerji氏とシンガポール人の医師 John Heng氏が開発した「SynPhNe」は、ニューラルセンサーを搭載したヘッドセットと、筋肉の動きを捉えるセンサー付きのグローブで構成されている。脳と筋肉へアプローチすることで、自宅でのリハビリテーションを行える、世界初のウェアラブルデバイスだ。

Banerji氏は34歳の時に自動車事故で臀部を強打したことから脳への損傷を受け、自らのリハビリを兼ねて実験を始めた。
ヨガや武道の習得がリハビリに大きな効果をもたらしたことから、Banerji氏はセラピストを志し、Nanyang Technological大学で生体医学の研究を開始する。
そこで、ロボット工学を専門とするHeng氏と出会い、脳卒中患者が新たな脳の部位で発生する信号と、動かそうとする筋肉の信号をゲーム感覚で結び付けられるようにして、機能の回復を早めるデバイスを共同開発した。
通常、5、6か月から1年ほどかかるリハビリも「SynPhNe」では15~20日間で機能性の回復が見られ、2、3か月のうちに日常的な作業が行えるようになるという。
通院の手間が省けることは患者にとっても介助者にとっても、大きな負担の軽減となり、病院側のマンパワー削減の一助にもなっている。

環境・社会・経済の面で世の中を持続可能にしていくサステナビリティの3原則になぞらえて「SynPhNe」のシステムは
・Physical Connectivity(デバイスと自分自身の物理的な繋がり)
・Electronic Connectivity(データのモニタリング、治療のパーソナライゼーション、カスタマーケアを行うためのインターネットやモバイルによる繋がり)
・Knowledge Connectivity(ウェブやソーシャルメディアを通じた教育、リアルイベントや地域などの知的な繋がり)
というように、これらを3つの柱として掲げている。

技術のレベルの高さだけではなく、作り手のフィロソフィーも合わせて、今後世界でどのように浸透していくかが楽しみな好事例だ。

[TOP動画引用元:https://youtu.be/IxYJ50ku9k0

(text: Yuka Shingai)

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