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車いすよりもっと自由にフラットに。足蹴り専用自転車「Alinker」

Yuka Shingai

「Alinker」は足蹴り専用の3輪自転車。ペダルがなく、足で蹴って進むという構造が子ども用のストライダーによく似たこのユニークな自転車は、高齢者や足腰に痛みを抱えている人の自由な行動を後押しするものとして、車いすの一歩先を行く存在だ。

開発したのはオランダ人デザイナーであり建築家でもあるBarbara Alink。事の発端は、彼女の年老いた母が、歩行器やスクーターを使っている高齢者を目にして「あんなものを使うなんて私は死んでもいやだね」と発したこと。老いは誰にでも平等に訪れるもの。ならば来るべきものを恐れるのではなく、アクティブにエネルギッシュでいられる、社会を変える乗り物が求められているではないかとBarbara氏はデザインに乗り出した。

「Alinker」の魅力のひとつとして挙げられるのが車いすと比較したとき、周囲と視点が変わらないことだ。同じ視点でいられることは、自分は周囲と平等に扱われていると感じることに繋がり、利用者が自由に行動する上で大きな心的メリットとなる。体の不自由さに対する先入観を覆してくれる黄色と黒のカラーリング、クールなデザインもインパクトは十分。重量は12kg、コンパクトにたたんで持ち運びもできるので、体の不自由のあるなしに関わらず、アクティブに生活したいと望む人にはうってつけだ。

実際に、利用者からは、「Alinker」に乗ったまま美術館に出かけたり、スーパーマーケットで買い物したり、犬の散歩に久しぶりに出かけるなど行動範囲が広がったという声が数多く寄せられている。また、「Alinker」のアンバサダーである義足のインフルエンサー、Jerris Madisonが L.A.ファッションウィークで紹介されるなど各メディアからの注目を集めている。

2014年にクラウドファンディングを経てオランダの市場に紹介された「Alinker」は2016年にまた別のファンディングを通じて北アメリカでローンチされた。公式オンラインストアでの価格は$1,977と、決して安価ではないが、素材や技術力にこだわり、長く使えるものを提供したいというBarbala氏の信念はサスティナブルな社会を考えるきっかけともなりそうだ。

[TOP動画引用元:https://www.youtube.com/watch?v=3JBP2cejzp0

(text: Yuka Shingai)

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あのBMWが本気になった!車いす陸上、最速マシンに注目せよ

岸 由利子 | Yuriko Kishi

BMWが、エンジンを搭載しない最速マシンを開発した。通称・レーサーと呼ばれる車いす陸上競技用のマシンだ。設計を手掛けたのは、南カリフォルニアに拠点を置くBMW Designworks社。6人の米国選手のために開発されたマシンは、リオパラリンピックでお目見えし、金メダル3個、銀メダル3個、銅メダル1個を獲得するという好成績を残し、タチアナ・マクファデン選手が女子T54クラス5000mレースで、11分54.07秒のパラリンピック記録を樹立するなど、目覚ましい活躍ぶりを見せた。

「これまで選手たちは皆、異なるブランドが開発する同じマシンに乗っていました。でも、私たちは、彼らのパフォーマンス力を極限化するための力になることに目を向けています」と話すのは、BMW Designworks社の副責任者、ブラッド・クラチオーラ氏。

車体のベースは、「シャーシ」と呼ばれるフレーム。いわば骨組みにあたるこの部分には、従来のアルミニウムの代わりに、剛性と振動吸収性に優れたカーボンファイバーを採用し、軽さはもちろん比強度の面でもアップグレードした。

開発の初段階では、各選手の3Dスキャンを作成。それらを基に、ソフトウェアを使って、空力抵抗を最も受ける箇所を探っていった。そこで明らかになったのは、空力抵抗の約50%はマシンからではなく、アスリート自身の体によって生じていたということ。

この結果から、同社は、空力抵抗を減少させるための細かな工夫を随所に施し、エアロダイナミクス(人間工学)を考慮したオーダーメイドマシンを開発した。シートの形状からレース時に両手に装着するグローブまで、走行時に不可欠なあらゆるものが、選手によって異なる姿勢や体型、ポジションといった多面的な角度から収集した緻密なデータに基づいて設計されている。

同社によると、これらの創意工夫によって、レース中の選出の姿勢による空力抵抗が約10~15パーセント減少したという。

「選手たちにとって、“革命”である必要はありません。でも、私たちは、彼らに少しでも優位に立って欲しいのです」とクラチオーラ氏は言う。

2020東京まであと3年。世界トップレベルのアスリートが集結するパラリンピックの舞台裏は、最高峰の技術を誇るメーカー同士の技術競争の場でもある。BMWがどんな進化を見せてくれるのか。レースファンにとって、楽しみがまた一つ増えた。

[TOP動画 引用元]United News International(http://unitednews.international/

(text: 岸 由利子 | Yuriko Kishi)

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